CFM「空中分解」 #1650の修正
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夕陽が燃えていた。 銃を手に背を向けて立つキサブローとヤサブロー。心配そうな顔でそれを見つ めるテコナ。厳しい目をそそぐ立会人、そして大勢の野次馬。 「……勝った方がテコナをとる。いいな」 ヤサブローが振り向きもせず言った。 「……よかろう」 キサブローもそれに答える。 「卑怯な手を使うなよ」 「そっちこそ」 「俺が死ぬか、お前が死ぬか、二つに一つだ」 「それは違うな」 思わず後ろを振り向くヤサブロー。キサブローが答える。 「俺が死んでお前が生き残るか、お前が死んで俺が生き残るか、あるいは俺が死 んでお前も死ぬか、お前も俺も生き残るか四つに一つだ」 ヤサブローはきっとキサブローを見据えたが 「この野郎」と絞り出すように言った。 「半殺しぐらいで勘弁してやろうと思ったが、こうなりゃ生かしちゃおけねえ」 「そうか。とするとまた違ってくるな」キサブローがつぶやく。 「俺が死んでお前が生き残るか、お前が死んで俺が半殺しになるか、お前が死ん で俺が生き残るか、お前が生き残って俺も生き残るか、お前が半殺しになって俺 が死ぬか、俺が死んでお前も死ぬか、お前が半殺しになって俺が生き残るか、お 前が半殺しになって俺も半殺しになるかどれかだ」 夕陽が二人を照らしつける。押し黙った人々の中二人の影だけが長く伸びてゆ く。 「すまん」 沈黙を破ったのはキサブローだった。 「お前が生き残って俺が半殺しになる、というのを忘れてた」 ヤサブローが銃を構える暇もあらばこそ、テコナと立会人と野次馬がよってた かってキサブローを袋叩きにした。 理屈っぽい男は西部に向かないのだ。 [完]
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