CFM「空中分解」 #1645の修正
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六月中旬の下関 ジトジトと雨が続いている 会員制高級ステーキハウスで二人の青年が向かい合っていた 「実は私は梅雨が好きだ」 「うむ このような時期こそ議論を闘わすにふさわしい」 「梅雨時に聞く山崎ハコは最高だ」 「しかし この店のステーキは少し大きすぎて品が無いじゃないか」 「うむ それにもう少しレアに焼いてくれなきゃ駄目だ」 「原因はこの店のシェフが女性だということだ」 「本当かい それは珍しいな これだけの高級レストランなのに」 「女性というのはプロの料理人にはなれないのだよ・・・宿命として」 「そうなのか?」 「女性というのは男性と違って本質的に変温動物だからな 体温が変化すると どうしても味覚も変わってしまうのだよ だから女性は所詮プロの料理人にはなれないのだよ」 「ところで ゐんば氏が大型バベッティ小説を書いたことはどうだ」 「うむ 大型が出れば中型が黙ってはいまい」 「どういう論理だ それは」 「パロディ・シンドロームというやつだ」 「しかし日本におけるパロディ小説の地位は不当に低い 筒井康隆や最近では清水義範がおもしろいのだが」 「そうだ芥川の自殺も実はそのへんにある」 「自殺といえば太宰の桜桃忌はいま頃だった」 「そうだ あの時玉川上水は梅雨で随分増水していた」 「話は変わるが新車を買ったらしいね」 「うむ 赤のポルシェにしたよ」 「調子はどうだい?」 「うむ快調だ」 「しかし 私達のような若造がこんな高級レストランで食事をして ポルシェに乗り 躯の弱いお年寄りが歩いていることに矛盾を感じないか?」 「感じない訳ではないがポルシェに乗ることも案外疲れるものだ」 「そろそろ出ようか」 「うむ」 「おばちゃん なんぼ?」 「二人で420万円やで」 「おお この店は高級レストランの割には安い」 「うむ ブタ玉とイカ玉で420円は安い」 「おおきに ぼく またきてや」 私達は『ぼてじゅう』と大きく書かれたノレンをくぐって外に出た 彼に別れを告げると私は駐車場に止めた愛車ポルシェにゆっくり歩み寄った サイドミラーの曇りを袖でグッと拭うと サドルに跨り勢いよくペダルをこぎ出した 六月の下関 雨はやみそうもない =====================================================================
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