CFM「空中分解」 #1641の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
平野 年男 それは雨の日の夜の事だった。その日の午後九時頃、私こと作家平野年男 は友人の探偵・流次郎と警部補・吉田刑事と車で激しくなる雨の中、家路を 急いでいた。車は吉田刑事の物。珍しくも、吉田刑事が我々二人に飯をおご 驍チてくれたのだ。その帰り道、雨に出くわし、さらに表通りが通行止めにな っているとは、ついていない。仕方なく、裏通りにまわった。自然に、スピ ードが落ちる。何度目かの曲がり角を曲がった矢先、ヘッドライトに異様な 光景が照らし出された。人が襲われているのだ。一人はうずくまり、もう一 人は我々に気付き、逃げ出した。そこには傘が二つ、転がっている。 「平野君、追うんだ!吉田刑事は被害者を頼みます。」 流はこう言うと、私と共に犯人を追跡した。雨の中ずぶぬれになって追う。 もう息が切れる、そう私が思ったとき、犯人は角を曲がった。なんとか追っ て行くとそこにはアパートがあり、その後方はブロック塀に囲まれて行き止 まりだった。塀を乗り越えることは出来そうにない。が、犯人の姿はない。 私は言った。 「アパートの中にいるんだろう。」 「そうらしい。明りのついている部屋で、話を聞こう。」 流が答える。明りのついている部屋は三つ。まずは一階の一号室に流が、二 号室に私が訪ねることにした。少しハンカチで身体をふくが、効果は余りな い。呼びリンを押したが返事がない。強くドアを叩いてみると、やっと応答 驍ェあった。二号室の住人は、ぼさぼさ頭をした古田道男という男だった。 「何の用ですか。」 「夜分すいません。こちらの方に強盗が逃げ込んだようでして。何か物音 を聞かれませんでしたか。」 「知りません。耳栓をして、勉強をしていたものですから。今だっチ戟Aド アを叩いてくれなきゃ、気付きませんでしたよ。」 みると、彼の右手の小指の側は、鉛筆で黒くなっている。 「何の勉強ですか。」 「数学ですよ。あ、そうだ、刑事さん。隣の一号室の奴、ステレオがうる さいんです。今日はそれほどでもないけど、とにかく、文句を言っといてく ださい。」 どうやら、私を刑事だと思い込んだようだ。古田に別れを告げ廊下に出 ]と、ちょうど流と出くわした。 「ちょうどよかった。一緒に二階の五号室に言ってみよう。」 五号室でも呼びリンを押しても、なかなか返事がなかった。やっと出てきた のは、髪をタオルでふいている湯上がりらしい女性。 「何の用?今、髪を洗っていたのよ。」 「私、こういう者ですが・・・。」 流はそう言いながら、懐から黒革の手帳を見せた。 「まあ、刑事さん。何かあったのですか。」 女は流のことを刑事と思い込んだようだ。流は強盗犯らしき人物がこのアパ ートに逃げてきた事を告げた。 「えっ、本当?でも、私は何も聞かなかったわ。さっきも言ったけど、髪 を洗っていたから。」 「そうですか、どうもすみませんでした。」 女の名前は島倉日記子と言うことだった。アパートの他のどの場所にも人が 潜んでないことを確かめ、塀を乗り越えることも絶対に不可能だと確かめた。 「となると、犯人はあの三人の中にいるってことだな。」 「そうだ。しかし、雨で濡れた足跡が残っていることを期待していたんだ が、こう吹きっさらしじゃ、全部濡れてて判らないな。」 流が言った。結局、犯人は逃げはしないだろう、逃げたら犯人と認めるよう なものだから、と考え、我々は吉田刑事が被害者を連れて行った病院を聞こ うと、警察に電話をした。ところが出たのは、吉田刑事だった。 「あれ、吉田刑事、病院に行ってるんじゃないんですか。まさか、わざわ ざ遠い警察病院に行ったんじゃないんでしょうし。」 「流さん、被害者は死にました。」 「えっ?」 「強盗じゃなかった。殺人です。何も金目の物は取られてませんでした。」 すぐに、私と流は吉田刑事の所に行った。吉田刑事が言うには、 「害者を助け起こしてみると、腹部が真っ赤だった。ナイフが側に落ちて いました。すぐに車にのせて近くの病院に行ったのですが、着いたときには 死んでしまっていて・・・。ただ、こう言い残しました。『犯人は、に・・ ・。』と。何かの手がかりになるでしょう。身元は、Aアパート三号室の住 人、安井公里だと定期券からわかりました。」 「Aアパートだって?僕らが犯人を追いつめた所じゃないか。」 私と流は吉田刑事に三人のことを話した。流が訪ねた一号室の住人は、新田 美大という丸がり頭の男で、ステレオを聞いていたから物音は聞かなかった と言ったらしい。さらに調べてみると、新田は安井に金を借りており、返す のが遅れていた。古田と安井とは、共にヘアーデザイナーを目指しており、 ライバル意識が強かった。それによく、ヘアースタイルについて喧嘩ごしの 議論をしていた。そして島倉は、安井とは関係があったが、近頃は不仲にな っていたということであった。つまり、三人とも安井を殺す動機があるのだ。 「うーん、難しい事件になりそうだ。」 「そうでもないですよ、吉田刑事。」 「えっ、流さん、もう犯人が判ったと?」 「はい。あなたと平野君の話を聞いて判りました。被害者が残した『犯人 は、に・・・。』という言葉、雨の中を犯人は逃げたということを考えれば、 すぐに判りますよ。」 では、一体誰が犯人なのか、読者の皆さんには判りますか?答えの方をお待 しています。流次郎はながれじろう、平野年男はひらのとしお、吉田はよし だ、安井公里はやすいきみさと、新田美大はにったよしひろ、古田道男はふ るたみちお、島倉日記子はしまくらにきこと読みます。理由も忘れずに。 永山
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