CFM「空中分解」 #1605の修正
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おりしも平成元年の夏場所が始まり、両国のふれ太鼓がきこえてくるような、深川 八幡境内は夕影がただよい始めていた。 陽もかたむき参拝の人あしもとだえがちに、繁った若葉のかげは深く、さすが横綱力士 碑にも訪れる人の数は少ない。真近で見ると余りにも力強い彫り込みのため、字体さへ 定かでないが、その石碑は名力士の躍動する力こぶの隆起を思わせる見事なものだ。 境内を入った右手、木の陰にもう一つの大関碑がぽつんと建てられているが、ほとんど の人は気づかず通りすぎて行く。それには大部分知らぬ力士名が記録されているが、中 にはまだ彫りあとも新しく、最近活躍した名大関の名も見られる。 初代横綱、明石志賀之助から現代まで隆盛をつづけた相撲界の中で、努力に努力をかさ ねても、最高位をきわめた横綱の強さのかげで、何等かの理由により、ついに一歩およ ばなかった名大関達の碑を、覆う若葉のかげは深い。 また大関の下にも、角界をささえた数知れない力士の挫折と敗者があり、その上に横綱 と今の国技相撲の繁栄がある。大関はその人達を代表する役位、と言っていいかも知れ ない。果たされなかった夢と、その相撲取り達の第二の人生と苦労の数々、それ等も 今は時のかなたたに、大部分が埋もれていこうとしている。 相撲好きの人達さへこない夕暮れの境内、消えていった多くの力士達の夢と苦労が、人 の世の定めでもあるかのように、すべてはいま晩春の中にある。 大関碑人通り過ぐおぼろかな 完 ID:UMC62826 野水 淳
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