CFM「空中分解」 #1583の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
一 一枚の古ぼけた大きな葬式の写真だ。 ある遺族達の素晴らしい写真だ。 ものすごく心を打つ、真実の写真だ。 だけど本当に悲しい辛い写真だ。 とてもやりきれない恨みの写真だ。 やり場のない憤りの写真だ。 写真は生き生きと、私達の心に訴える。 写真は泣いている。 皆のために泣いている。 二 父の遺影を胸に、幼い女の子が激しく泣いている。 二人の妹は母を挾んで、顔も隠さず泣いている。 真中で母親が崩れか って、ハンカチで涙を拭っている。 おばあさんが孫達を見ながら、手放しで泣いている。 おじいさんは下目づかいに、家族を見て涙を堪えている。 看護婦さんも後ろで、一緒に泣いている。 他の男達は涙を溜めて、じっと遺影を見詰めている。 写真は泣いている。 皆のために泣いている。 私の心も泣いている。 三五年前の第五福竜丸、船長の家族の写真だ。 三 みんな身も溶けそうに、涙で顔が光っている。 みんなの涙顔の奥に、恨みが吹き出している。 子供の顔は、悲しみと怨めしさで満ちている。 祖母にも、祖父の顔にも、憤りが満ちている。 母は中心を失い、愛を失って顔を覆うばかり。 みんな怒りに震え、涙にせかれ、心の底から恨んでいる。 写真は原爆を恨んでいる。 皆のために恨んでいる。 四 幼い子供は原爆という言葉が、父を奪った悲しさを泣く。 原爆が何か、何を本当に恨めばいいかを知らずに泣く。 けれどその顔には、心の底から純粋な恨みが溢れている。 母の顔は、嘆き、悲しみ、そのものだ。 母は言った。こんな辛さは、もう私一人でたくさん、と。 母のつとめは、何よりも平和を育てることだと。 父の船長は、人を殺すこんな兵器は、絶対許せない、と。 この世から無くさなければならない。と叫んで死んだ。 皆の顔も世を噴り、その空しさを感じつ 恨んでいる。 対象の大きさに、強さに、どうしようもない力に向かって。 写真はもっと多くの悲劇を訴えている。皆のために訴えている。 五 大きな 世の流れに、それも飲み込まれてしまったようだ。 誰も忘れはしないが、もう思い出そうともしない。 相変わらず大国の思惑は変わらず、原爆の実験も続いている。 恐ろしい、ショッキングな、馬鹿げたニュ−スが続々と押し流す。 けれど悲観してはならない。平和は育てなければ育たない。 写真から訴えかけられた人が、枯れないよう一滴を注ぐのだ。 自分の出来ることを、どんな小さなことでもやればよい。 やれば何かが起こる。希望に繋がる何かが生き続けていく。 写真は決して無くならない。 皆のために無くせない。 完 ID:62826 野水 淳
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