CFM「空中分解」 #0628の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
そっと手を延ばす。柔らかな頼りないものをとらえて、慌てて追いかけた。それも またはかない夢でしかない。幾度となく漂い、待ちこがれていた。果てしない空間 の中をかなえられぬ夢を求めさまよう。一つ捉えては二つ逃し、二つ捉えては三つ 逃す。そんなおきまりのルーチンをこなしながらもいつまでも待ち続けていたのだ。 自らを破壊する何者かを。自己加虐的な連想が意識を巡り、歓喜に転じ、やがて最高潮 に達する。 ああ、このまま崩れ去ってしまえれば・・・。 ふと視線を落とせば、生み出されし者達が漂う。それも所詮隷属でしかない。同じく 自らの身を自ら卑しめた者達。ジャン・クリストフ、パーム・ライト、そして 芳岡たすく。彼等はいずれその銃口をこちらへ向けて来る事だろう。与えられた運命を 呪い、立ち向かって来るやも知れない。 シニカルな笑みを浮かべる。 だが、誰も私を倒せない。誰も私を侵せやしない。誰も私を傷つけられやしない。 深い絶望が襲いかかる。それも永遠のルーチンの一部分にすぎないのである。影は 影でしかありえない。全てを生み出す存在は影、何人たりとも踏み込めぬ存在。自らの 絶対者たる存在を憎み、激しく怨んだ。 者どもよ。怨むがいい。激しく憎むがいい。お前達の思いは私の思い。決して むくわれぬ思い。お前達がそれをどう乗り越えるのか、とくと拝見させてもらおう。 それをどの様な力に変えるのか・・・・。 悲痛な思いが空間を走る。そして、三つの駒に手をかける。絶望にも似た希望を 抱きながら・・・。 −−−−−−−−○−−−−−−−−○−−−−−−−−○−−−−−−−−○−−− 響いている。僕の鼓動。生きている証。 痛みを堪えながら暗闇の洞窟を、一歩一歩踏み締め歩いていく。内にこもる思いを 感じながら。忘れていたこの思い−−いったい何だったのだろう。心の底で蠢くこの 感じは・・・。啓子・・・益田啓子。僕の恋人。嫌われてたっていい。僕が彼女を好き なのは紛れもない事実なのだから。胸を張って言える。 彼女が好きだ。愛している。 ふと心をよぎる影−−そこに彼の姿が浮かぶ。トライアングルの頂点の一つを務めた 人物。田中健司。それが彼の名前だった。 悔しい。そうだ。悔しいのだ。啓子。健司。むくわれない思い。そして、追い打ちを かける様に神様は彼等を消し去ったのだ。僕はここでいったい何をしているのだろう? 悔しくて、呪わしかった。運命が、僕自信が。 「ジャンさん・・・・。」 僕は静かにジャンさんに問いかけた。 「あなたは以前・・・そう、僕と同じ様にあなたも・・・”大切なひと”が消えた・・ そう言いましたよね。」 「ああ、確かに言ったとも。」 ジャンさんは静かに答えた。 「もし、よければその人の事を話していただけませんか?」 僕はあえぎあえぎつぶやく。ジャンさんは考え込む様に洞窟の奥をにらんでいた。 「僕のことは・・・嫌と言う程話しましたよね。今度はあなたの番です・・・そうは 思いませんか?」 「わかった。話そう・・・俺の”大切なひと”のことを・・。」 ジャンさんは闇をみすえ、言葉を選ぶ様に語り始めた。 <<つづく>>
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