CFM「空中分解」 #0623の修正
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<アップル・コンプレックス> 第1話「多すぎた遺産」 パート=u宵越しの金は持たないんだよ」その4 「ねえ、カズ。知ってるかい?」 ノバァが大きな伸びをしながら僕に尋ねた。 「ストーナー会長は病死じゃなくて、暗殺されたって話」 「なんだって!」 「よく分かんないけど、ここのメイド達が噂してたよ。射殺されたんだって」 ノバァはテーブルの上の更に盛られた果物の中からチェリーを摘んで口に運んだ。そ の食べ方の色っぽいこと。 「カズ。カールソンはカービン銃を持ってたんだよね。スコープの付いた」 カールソンの最後の言葉が僕の耳に響いた。ノリス、裏切ったのか、と。 「どうでもいいだろ。こっちは仕事が済んだんだから、報酬さえ貰えば終わり。誰が相 続しようと知ったこっちゃない・・・。あーあ・・」 僕は本当にどうでも良かった。 待つこと暫し、そう三時間が暫しならそうだ。やっと群衆が隣の会議室から出てきた ようだ。しかし、金の亡者共の顔はいささか膨れぎみであった。ドアや壁を蹴飛ばして いるハンス叔父さん。扇子の羽根を引き千切っては散らしているマリアン叔母さん。笞 を振り回しているキリーお姐さん。その他大勢が開け放たれたたドアの向こうの廊下を ゾロゾロと歩いて行く。 突然、僕達の方にキリーお姐さんがつかつかと歩いて来た。 「このお節介やき。ノリスなんか放っときゃ良かったのよ。しかもノリスを狙ってきた やつらまで始末して、このっ」 キリー女史は笞を振り上げた。ノバァが椅子から立ち上がって身構える。 「止めてよ、お姐さん。私の命の恩人よ」 キリーの後ろにはいつの間にかノリスが立っていた。 「これはこれは、ストーナー会長」とキリー。 「まだよ。処置が済んだらそう呼んでくれないかしら? でも、実権は既に私にあるこ とは忘れないでね。それからこの屋敷から出てってくれるかしら。あなたの顔なんかも う二度と見たくないわ」 「よく、そんなこと言えるわね。実の姉にむかって。あなたなんか、ブラック・ホーネ ットの餌食になれば良かったんだ」 ノバァの鼻がぴくっと動いた。 「なんですって?」 肩をいからせたノバァがキリー女史に詰め寄る。 「あのエアロダインがブラック・ホーネットだってどうしてあんたが知ってるの?」 「何のことよ」 キリー女史はノバァの迫力にうろたえた。 「ブラック・ホーネットはパシフィック・クイーン空軍の次期採用予定の試作機だよ。 超低空をホバリングできる最新鋭機だよ。ストーナー財閥系列のガング航空会社が開発 中の代物じゃない。それを持ち出せるって人間はそんなにいやしない」 僕には何が何だか分からない。ノバァはメカを扱うのは下手なくせにやたらメカには 興味がある。だから、またどっかのVANニュースで見掛けた話をしてるんだろう。そ う言えば確かトンネルの中でノバァが口走ってたっけ。 「あんた、どうやったかしらないけど、エアロダインをけしかけたね。口は災いの元だ ね。つい滑ったって感じだね」 「それじゃ、お姐様が・・・」と、ノリス。 なるほど話は簡単。キリー女史がノリスを殺そうとした?! おっとろしい。実の姉 妹が殺し合う。莫大な遺産は怖いもの。危うく、僕らも巻き添えを食うとこだった。 「どうして、姉の私じゃなくて、いつもあなたなのかしらね。昔から私はストーナー家 では嫌われてた。なぜだか知ってる、ノリス」 「姐さんの性格が悪いからよ」 「じゃあ、どうして私の性格が悪くなったか知ってる? 知る訳ないわよね、あなたは お姫様ですもの。教えてあげましょうか。私達の両親は結婚して十年も子供ができずに 悩んだ。そして他人の赤ん坊を実の娘として育てることにしたの。ある日、街中で急に 産気づいて、病院に運びこまれた女は、子供を産み落とすと死んでしまったわ。母親は どこの誰かも分からない。その赤ん坊が私。私が二つの時、完全に諦めていたのにあな たが生まれた。実の娘だもの。私たしより可愛がるのは当然。私がどうしてキリマンジ ャロに住んでるかも、分かるでしょ」 へっ、よくある話。でもよくできてんね。 「あなただけにいい思いさせてたまるものですか」 「ノリス、危ない!」 ノバァが叫んだ時には遅かった。キリーの振るった笞はノリスに巻きついた。薄いド レスの生地が裂け、ノリスの肌に笞が食い込んだ。苦しそうに呻くノリスをキリーは後 ろから羽交い締めにした。 「やめろ、彼女を離せ。逃げられないぞ」 僕は思わず叫んだが、いまいち迫力が無かった。テレビの刑事物の台詞と同じだ。 キリーはノリスの首に腰から抜いた刃幅のあるジャングルナイフを突き付けたまま、 後ずさりしていく。 執事達が集まって来たが、誰も手出しできない。ノリスお嬢様、キリーお嬢様とわめ いてオロオロするだけ。邪魔だーっと叫びたくなるのをじっと堪えて、ノバァと僕は長 い廊下を歩いて行くキリーとノリスの後を付いて行くだけだった。 そこに亡者の親戚共が集まって来た。ガヤガヤ、ワイワイ騒ぎ。お止めあそばせ。は したのうございますわよ。まあまあ、話し合いをしようじゃないか。行かず後家が頭に 来たか。ひがみだひがみ。ヒステリーだ。ノイローゼだ。祭りだ、わっしょい。お祝い だ、と馬鹿騒ぎを始める始末。とても明け方の四時だとは思えない。 ここまで来るとキリーも引っ込みがつかなくなってしまった。結局、キリーは一時間 も掛かって、ホールのエレベータ(百二十三段の階段ではなく)で玄関先に出た。 執事に命じて用意させたランクルにノリスを人質にしたまま、キリーは乗った。ノリ スの首筋にナイフを突き付け、彼女に運転するように命じる。 「ゲートを閉めるように警備に伝えて!」 ノバァの命令に忠実に従った執事。その執事の命令を素直に実行したゲートの警備だ が、二人を乗せた大型ランクルは難なくゲートをぶち壊すと走り去った。 なんでお城程もある大金持ちの屋敷のゲートがこんなに簡単に破れるのか不思議だ。 でも不思議がってる暇は無い。ノバァが腕のCB(コール・ブレスレット)で駐車場か ら呼び出したオンボロ・カーマインに乗って、ランクルを追う。 それから後の話はどうってことない。ただのカーチェイス。 二時間後、逃げまくったランクルが急に停車すると、ノリスが突き落とされた。彼女 を轢きそうになったカーマインは急ブレーキをかけた。それでも間に合わず、急ハンド ルを切った。僕らを乗せたカーマインは分離帯に乗り上げ、ついには裏返しとなった。 逆立ちしたままランクルを見送ったノバァと僕は、カーマインを罵った。 しかし、さすがのカーマインももう生意気な返事をしなかった。酷使していた回路が やられ、ついにシステムダウン。あわれただのガラクタとなった。スクラップから出た ノバァは物言わぬカーマインを見つめて項垂れていた。 唇を噛んだノバァの横顔が朝焼けに照らされて、やけに綺麗に見えた。 結局、キリーはシティポリスに逮捕された。 遺産相続ってのは嫌なもんだ。だが、事件はまだこれからだったのだ。 −−−−−−−−−−−−TO BE CONCLUDEDED−−−−−−−−−−
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