CFM「空中分解」 #0561の修正
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<アップル・コンプレックス> 第1話「多すぎた遺産」 パート~「カズ、涎を拭きな! 」その2 ノバァはついに癇癪を起こして、僕の上に馬乗りになって、襟首を両手で掴んで僕の 上半身を引き起こした。 「カズ、そんなにおかしいかい?」 僕は笑い過ぎて息も絶え絶えだったが、どうにか返事をした。 「アッハハハ、おかしい」 殴られるかと思ったが、ノバァは襟首を掴んだまま、僕の唇にキスをすると、急に手 を放した。上半身の支えを失った僕は倒れて、嫌という程後頭部を打ち、目から火が出 た。 「てーな!」頭を押さえて文句を言う。 「あんまり笑うんじゃないよ」 「いいコンビじゃな、ノバァ。ところでまだその御仁と挨拶が済んでないが」 「この子はカズ、カズ・コサック。あたしのアシスタント。まだまだ甘ちゃんでね。マ マのおっぱいが恋しい歳頃なのさ」 「カズです」僕はぶすっとして挨拶した。 「わしはマッコイ・スタンレー。ご覧の通り、このラブホテルの経営者じゃ。ノバァに はバハマシティに居た頃、随分世話になった。それ以来の付き合いさ」 マッコイは手を差し出した。僕はその手を軽く握った。華奢な手だった。 「ところで、ノバァ、今日はどういう用件で来たのかな?」 「先に言っとくけど、別にレインジャーの真似事をしにやって来たんでじゃないよ」 「ふっふっふ、若いツバメとデートじゃないのか?」 「今は仕事中。終われば、この子とワンラウンドやるつもりなんだけどね」 ノバァは僕の方を見てウインクした。僕の背筋を冷たい汗が伝い落ちた。もしノバァ が本気なら、多分明日の太陽は真っ黄っきだ。くわばらくわばら・・・。 マッコイはニヤニヤして僕達を見ている。 「冗談ですよ。冗談。僕とノバァはそんな関係じゃないですよ」 「嫌ねぇ〜、この子、むきになって。本とに可愛いんだから」 あー、頭痛い。馬鹿ノバァ、淫乱女め! 「マッコイ、儲かってる?」 「へっ、餓鬼相手のラブホテルが儲かる訳ないだろ。慈善事業と同じさ。若き恋人達に 一時の安らぎと愛の巣を提供しているだけじゃ」 「そうかしら? 最近、知り合いのハザウェイ警部に聞いたんだけど、この頃3DPが かなり流れてるんだって。なかなかマニア受けする画質のいいやつらしいよ。でも出演 者がトウシロの盗み撮りらしくって、それがいいって輩が買い漁ってるらしいね」 3DPとは、三次元立体ポルノムービーのことだ。立体映像の質はまだまだだが、そ れでも平面映画とは違って迫力がある。上下左右前後斜め、映像を回転させてどの位置 からでも眺められる。3DPの中には非合法物があって、見える筈のない人気可愛い子 ちゃん歌手のスカートの中をコンピュータ合成でノーパン姿を見せるものがある。 「ほう、そりゃいい。わしも一つ買ってみるか」 マッコイは惚けた返事をする。 「あんたがそんな3DPを未だ手に入れてないなんて、不思議だね」 ノバァは話しながら、アールデコ調の額の掛かっている壁の前に立った。額の裏に手 を入れると、今までガラス越しに見えていたパシフィック・クイーンの夜景が消えた。 替わってくんずほぐれつの男女の姿がそのガラスの手前の空中に浮かび上がった。 ノバァは、マッコイの方に振り向くと、にこりと微笑んだ。 マッコイは肩をすくめた。 隠しカメラが写し出した映像は、結構若いカップルだった。それも励んでいる真最中 。女の方はどう見ても餓鬼、それも十二、三ってとこだ。男も十代半ばってところか。 慣れたもんだ。くわしく描写したいが、それは本題ではないので、残念ながらまたの機 会にしよう。 ほけっとして3DPを拝んでいると、ノバァの優しい声。 「カズ、涎を拭きな。あんなしょんべん臭い娘っ子なんかより、あたしの方がずっとい いよ。あとで遊んだげるから、仕事仕事」 まだあんなこと言ってる。 「さて、マッコイ。3DPムービーの制作費はどんなもん? この調子じゃ出演者には 出演料も支払ってやしないんだろ。丸儲けじゃない?」 「なあーに、手間賃を除くと儲けは微々たるものさ」 「そうかい。でもハザウェイ警部は喜ぶだろうね。わーっ、凄い。いいなあ、あんなの あたしもして欲しい。カズ、後でね!」 ノバァは立体映像のカップルの技を見て、僕にウインクした。まったく! 「ノバァ、まさかサツに訴えやしまい? 目的はなんじゃ?」 マッコイは、落ち着いたもんだ。カップの茶を旨そうにすすっている。 「人捜しを手伝って欲しいの。昨日の夜、ここに泊まった女の子で、歳は十七。名前は ノリス・クラウス・ストーナー。髪のブルーの餓鬼と泊まった筈なんだけど」 「聞こえたかね、マリア」 「はい、マッコイ。該当者はいます。如何致します?」 突然、天井から、いや? 壁から女性の声が聞こえてきた。それは、さっきノバァが このモーテルの入口で喧嘩をしたディスプレイの女性の声だった。 「キョロキョロしなさんな。わしの家内じゃ。恥ずかしがりやでな。人前には出て来な いんじゃが、わしが人と会っておる時は見守ってくれておるんじゃ」 「それじゃ、その奥さんに言ってノリス嬢を見せてよ」 ノバァの催促にマッコイは手を軽く振った。 三次元映像が替わって映し出したのは、妖艶と言ってもいい女性だった。背中まで伸 びた長い髪はプラチナブロンドだ。豊かな胸の頂きから流れるような曲線が逞しい腰へ と続いている。艶めかしく蠢く身体は、軟体動物のようだ。 「カズ、涎を拭きな!」 ノバァに言われて僕は反射的に掌で口許を拭った。 「マッコイ、こりゃ人違いだよ。ノリスは十七だよ。この女はどう見たって三十半ばの 熟女だよ。旦那に内緒でしけこんでる人妻ってとこだね」 「マリア、人違いじゃないかとおっしゃる」 「昨夜お泊まりになったお客様で十代半ばの女性は十人、その中でブルーの髪の男性と 御一緒の方はお一人だけです」 ということは、これがノリス。やっと顔が大映しになって捜査依頼で渡されたノリス の顔と重なった。とても十代には見えない。ノバァもあんぐりと口を開けている。 マッコイとマリアの助けを借りて、昨夜のノリスの姿態と行動をつぶさに調べた。彼 女は疲れて眠るブルーの髪の男の部屋を出て、別の部屋の男と一戦した後、その男とモ ーテルを出た。待ち合わせしてたってわけだ。その男は赤毛の小柄だが、がっしりとし た体格の男で、立派な物を持っていた。ノバァはそればっかり一生懸命見てた。瞳が潤 んでいた。自分こそ涎を拭けよ! 僕たちはスロータ・ヒルを後にした。カーマインを運転するノバァに僕は尋ねた。 「マッコイの奥さんってどんな人かな?」 「死んだよ。マッコイはもう三十年近く一人さ」 「じゃあ、あの声は?」 「コンピュータ合成さ。あたしもあんなに思ってくれる男と一緒になりたいね」 −−−−−−−−−−−−TO BE CONTINUED−−−−−−−−−−−−
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