CFM「空中分解」 #0549の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
私がダウンしたかと思ったら今度は橋本君が風邪で寝込んでしまったとはなんともは や・・・。元来、体の強いほうではなくて(それなのに山登りなんかにいくのよねぇ) 風邪でも高い熱が出てしまうらしい。脳波が小刻みになっているため、熱が出るとひき つけを起こしやすいのである。毎日そのため薬を飲んでいるとか。 彼が休んでいる間にクラスにドイツ研修生ロンバルト=フート君が入ってきた。彼は 西ドイツの出身だそうで、今度来た目的は″日本史における超自然現象″を研究するた めだそうだ。なにやら難しそうな事柄であるが、まぁ通常過ごしている点ではたいして 変わりのない普通の高校生といった感じだった。 そのフート君と初めて話したのはクラスではなく放課後の閲覧室であった。橋本君が いないのでいかないかなぁ〜(彼が物書きをしているので、それに付き合って読書して いるのだ。)とも思ったけれど、なんとなく帰るには早かったし、クラスにいても違和 感の中に浸かっているのは苦痛だったので・・・自然に来てしまった。 ファンヒーターにペコリとお辞儀をしてから、火をつけずにすぐ横の席に座って先日橋 本君の書き上げた作品が入っている″KSSSS−F1″と書かれた茶封筒を開いた。 これは11月から12月にかけて書きまくった(彼いわく)SSをまとめたものだそう で、″KSSSS−F1″とは″空想私小説的ショート・ショート−−ファイル1″の ことである、といっていたなぁ〜〜〜 開けてみるとあるわあるわ全部で30くらいかな?内5つくらいは一日のうちに書い たとか・・・・・・あぁぁぁ!何よこれぇ!ちょっともしかしてあたしなんかの話じゃ ない!口外しちゃいけないと、とりきめたのにぃ・・・ と、私がふと顔を上げるとフート君が何やら長いアンテナを延ばした黒い箱のような ものを肩にしょって、ゆっくりと閲覧室に入って来るのが見えた。よく見ると左手にマ イクのようなものをもってそれを左右にゆっくりと振りつつ。右手は箱の紐が邪魔をし ているのにかかわらず、何やら忙しく書き物をしている・・・ フート君、どんどん私の座っている奥の方へと進んできた。近付いてくるにつれて、 その箱のピッ、ピッ、という音のピッチが早くなってきているのが分かった。彼の眉間 に寄せられたしわがそのたびにピクピク反応した。 も、もしかしたら・・・これが超自然現象を観測するための機械なのかしら?そうい えばピッピッという音を発するところなんか、放射能測定のガイガー・カウンターそっ くりですもの・・・そしたらやばいじゃない!私、魔法使いだもの! 私は眼鏡を押し上げて、橋本君のSSを熱心に読むふりをした。それにもかかわらず 、彼はどんどん近付いてきた。そして、私のすぐ横に来るよこで箱がけたたましくビビ ビビビィ!と鳴った。あぁ、もうだめだぁ・・・ 「強烈な反応だ。」彼は凄く厭な顔をした。「こんなビニールの焼けた臭いは!」 フート君は、先輩から日本の学校の環境について、レポートを頼まれていたそうだ。 今日はためしにその機械を動かしていたところで、それがたまたまファンヒーターのこ びりついてビニールの臭気に反応したらしいのだ。ちなみにこの機械を作ったのはその 先輩だそうで、どういったふうな仕組みになっているのかは彼には分からないとのこと 。 「てっきり、それがあなたの仕事道具だと思いましたよ。」私は安心からか、顔がゆ るんでしまっていた。 「僕は機械なんか入りませんよ。僕は文献とかからいろいろ討論したり、説を立てたり するほうなのです。」 「ふ〜ん。で、具体的にいったら超自然現象というのはどんなことなのかなぁ?」フー ト君はなかなか流暢な日本語を使うなぁ。ときどき変な言葉を出す橋本君より聞きやす い・・・「その、なんていうか、お力添え出来るかと思いまして・・・」 「どうもありがとうございます。」彼は机の上に置いた″謎の箱″をいじくりながらう れしそうに言った。「僕の分野は″魔法使い″なんです。」 「えええぇ!」私は思わず閲覧室ではやってはいけない″絶叫″をしてしまった。とこ ろがフート先生、無邪気にも「いやぁ、あなたもそちらに興味がありましたか。ドイツ てでも興味本位だけという女の方はいらっしゃるんですが、あなたその歓声から察する とかなりの研究をやってらっしゃるようですね・・・」 ちょっと、困ったなぁ。フート君が″魔法使い研究家″だったとは・・・。気がつか れちゃったらどおしよう・・・このまま切り上げるのも変だし・・・第一、今は逃れら れても、これからクラスでいっしょに生活するのだからそれは時間をちょこっと稼いだ だけだし・・・あーぁ、どおしよう・・・ −−−− 珍しく、つ・づ・く−−−−
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