CFM「空中分解」 #0545の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
闇と混沌と一条の光。そこには、それしかない。そこ−−幾何学的な図形を 連想させる街−−は、その3つしか持ち合わせていない。 −−息ができない。何も見えない。光は、あまりにも弱々しい。 その光はどこから差し込むのか。それは、青白い肌をした少女の顔を照らした。 「みつけた。ここが、あの人の住む街。闇と混沌と狂気の街・・・。」 少女の、長いストレートの銀髪が搖れた。涼風が、髪をもてあそぶ。 少女は、長方形の図形から飛び降りると−−超人的な技で−−、軽やかに 走り去った。 残ったものは。闇と混沌と狂気・・・? 何も、要らない。物など、何も。ただ、彼は光を求めた。求めるのはたやすい。 だが、それを手にいれるのは不可能だ。太陽の光など、ここに有るはずがない。 だが、何故だ?何故に彼は光を求める?光などなくても、生きていけるはずだ。 彼の閉じ込められている牢獄は、ただただ暗く。闇の過剰に包まれる。 彼は、生まれたときからこの牢にいる。理由はただ一つ。 それは、彼が人外の者・・・犬だったからだった。 「こんばんわ」 銀の月よりも透き通った声が彼をよぶ。最も、彼は月を見たことがない。星も 見たことがない。見たことがあるのは、この暗い牢獄と、「所員」と呼ばれる名の 衛兵だけだ。 一人の「所員」は、彼に太陽や月、星の話や外界の話をしてくれた。彼は そのせいで、処分されたが。 振り向いた少年の目の前に、銀髪の少女。どうやって入ったのか。コンピューター ロックのキィは音もなく開けられていた。 「君は誰?」 ひとこと聞いて、少年は、無邪気に微笑んだ。 「ティンカー・ベル。」 彼女もまた、ひとこと。 「じゃあ、ピーターパンは?」 「あたしはね、妖精なの。知ってるかな、妖精って。」 ティンカー・ベルは悲しく微笑んだ。この機械だらけの世の中に、妖精の存在を 知るものは余りにも少ない。 その夜、彼女は一晩中彼に物語を語って聞かせた。少年は、幼子のように目を きらめかせ、その話に聞き入った。 彼女は、自分の知っている話を総て聞かせた。 話終ったあと、彼の唇が動いた。 −−外界に、太陽の光があるの? 「勿論よ。」 ふうん、と言って彼は、夢見るような微笑を浮かべた。少女もつられて笑った。 少女の姿を見ることができない、「所員」は気持ち悪そうに牢の前を数回、 通り過ぎた。 −−僕も外に出られるかな。 −−出られるわ、あなたはあの人の生まれ変わりですもの。 −−あの人? −−そう。あの人は、あたしのせいで死んだの。あたしも、元はあなたと同じ、 犬だったのよ。 少年は、胸に決意を秘め、不思議な少女−−ティンカー・ベルと別れたのであった。 数日後。センターの外の小高い丘に、金属でできたの墓標が立てられた。 彼は。死体となって太陽の光を目の当たりにしたのであった。 (fin)
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