CFM「空中分解」 #0531の修正
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小林君はサッカー部のキャプテンで、女の子にもかなり人気は有るのだが、なぜか隣同 士の私と気が合って、言いたいことを言い合っているうちにクラス中から二人の仲を公 認された格好になっていた。 もちろん現在の所、ただの友達以上の関係ではないが、なんとなく将来に何か有りそう な予感もしている・・・ 「だらしないわねぇ、ちょっとサンダルが触ったくらいで・・・」 「触ったって・・・お、お前な・・痣が出来るほど弁慶の泣き所を蹴っといて、よくそ んな事言えるな・・・キスしてやらねぇぞ」 「今度は潰れるくらい男性の急所を蹴って欲しいの?」 「そ、そんな事したら久美子だって困るだろ?」 芳夫君はパジャマの股間を抑えて逃げ腰になる・・・ 「それ、どう言う意味よ?」 パジャマの腕をまくり上げてすごむ私を見て、小林君は後ずさりすると「そんなに怒る なよ・・冗談だよ、ジョーク・・・な、久美子はジョークが好きだったよな?」 二人が、にらみ会っているところへ警察に電話してきたおばさんが出て来た。 「今日はお父さんが夜勤でいないから芳夫を用心棒に連れていけばいいわ、頭は弱くて も喧嘩だけは強いから」 「チェッ、頭が弱いだけ余計だよ」 念のために芳夫君は金属バットを持ち出すと、先頭に立って階段を上がって行った。 深夜の誰もいない団地の階段に三人の足音だけがひっそりと響く・・・ 「あれ、こんな時間にエレベーターが動いてるぞ?」 芳夫君は5階のエレベーターの脇を通るとき階を示すランプが、ゆっくりと動いている のに気づいた・・・ 「誰か上がって来るんだわ、大変!いそがなきゃ」 三人がサンダルの音を響かせて階段を上がり、6階の通路の端に出たとき丁度エレベー ターの扉が開き、久野管理人が心配そうな顔をして出てきたところだった。 「皆さん、こんな夜更けに何事ですかな?」 この白髪混じりの人の良い初老の管理人は、不思議そうな顔をした・・・ 聞くところによると、元はこの近くの鉄工所に努めていたらしいのだが、足に怪我をし てその会社を辞め、今では週に2回ほどアルバイトに行っている一人暮らしの身の上と 言うことだ。 「管理人さん、窓の外に血が降ってきたのよ・・私の袖口を見て頂戴!」 久野管理人も私の袖口を見て驚いたようだ。 「ほう、これはひどい血だ・・・?」 小林君のお母さんが早口で説明する・・・ 「ほら、だから先日から6階の高田さんと8階の小原さんとこでモメてたでしょ?きっ とあれが原因で何か起こったんじゃないかと・・・」 「やっぱり、そう思われたかね?私もふと小用に立つと窓ガラスに血らしいものが流れ ているんで、不審に思って上がって来たんだが若い人が一緒なら、そりゃ心強い」 片手に鍵の束を持った久野管理人は無造作に6階の高田氏の部屋のブザーを押して、神 経質そうに鍵をブラブラさせている。 もし応答が無かったら、合鍵で入るつもりなのだ・・・ 少し間が有って、ドアの向こうに蛍光灯が点った・・「どなたですか?」 「夜分済みません、管理人の久野ですが、ちょっとお聞ききしたい事が有りまして・・ 」 「こんな夜遅く、なんの用ですか?」 ガチャガチャとドアチェーンを外す音がして、目付きに険のある痩せ形の中年男が顔を 覗かせた・・・これが浮気の張本人の高田氏だろう。 「上の方から血が降ってきたので、ひょっとしてお宅と8階の小原さんで、何か有った んじゃないかと・・・・何も無ければ良いんですがね?」 「バ、バカな事言わないで下さい!何で私が人殺しのような大それた事を!」 言葉は強く否定していたが、なにやら慌てた様子も見て取れる。 「おじさん、私のパジャマの袖口を見てよ、こんなに血が降ってきたんだから!絶対何 か有ったに違いないのよ!」 イライラしたように、高田氏は怒鳴った。 「そんな事、俺に関係無いっ!」 「警察は遅いわねぇ・・」 小林君のお母さんののんびりした一言に、高田氏はビクッとして「け、警察を呼んだの か・・?」と口ごもる、どうも怪しい。 「おじさん、こんな所で押し問答してても仕方ないし、こちらで何も起きていないなら 8階に行ってみましょうよ?」 「そうだな、そうしようか?」 久野管理人は、腕のデジタル時計にちらっと目を走らせてから廊下を歩き出した。 私の声を聞きつけたのか、ドアの後ろから不機嫌そうな女の声が・・・「あんたこんな 夜更けに何をしているの?まったくうるさくて寝られやしない・・・」 ドア越しにチラッとピンクのネグリジェが見えたのは、確かに団地の近くのスーパーで 時々見かける高田夫人であった。 私は小声で隣に立っている芳夫君の耳に口を寄せると「ここの奥さんは殺されていない ようね」とささやいた・・ 「久美子、今夜のおかずにギョーザ喰ったな?」 デリカシーのかけらもない言葉で、頭にきた私は芳夫君の足を木のサンダルで、思いき り踏んづけてやった。 「いてててて!久美子!おい!止めてくれ、痛いよ!」 回りの一同があっけに取られる程の間の抜けた大声に、私の方が赤くなってしまった・・・もう絶交だ! そんなやり取りが気分を和らげたのか、渦中の人物である高田氏もドアを開けて出て来 ると、ガウンを羽織った姿で一行と一緒に8階へと向かう。
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