CFM「空中分解」 #0524の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
男は刺さっているナイフを自分で抜き取っていたのだ。 少しとて表情を変えず、溢れ出て来る血さえ気にせず。 そして、抜き取ったナイフをじっと見つめ、ナイフの血を長い舌でぺろりとなめる。 俺は、あとずさってしまった。 恐怖。 しかし、次第に覚めていくもう一つの自分の存在も感じていた。 この自分によって、俺は生き残ることができた。 足に力を込め、おもいっきり後ろに飛ぶ。 同時に、男がナイフを突き出した。 「はっ!」「ふっ!」 俺は後ろの床に降り立った。 「うっ!」 横腹に激痛が走る。 切られた。 銃をすばやく構え、男に向けるが、それ同時に相手の蹴りが俺の手を襲った。 「くっ!」 銃は両手から落ち、遥か後方にまで飛んで行った。 何も武器のなくなった俺に、相手のナイフが襲う。 頭、喉、腹。 断然有利と取った相手は、わざと急所をずらして攻撃してきた。 頭のこめかみの攻撃を少しずらし、髪が切れる。 喉に対する攻撃がずれ、肩を切り刻む。 腹の攻撃が、横腹を刺す。 殆ど俺は、なすすべもなく後退していた。 全身から血がしたたり、男がナイフを振る度に激痛が襲う。 目だけは、しっかり男をにらみ続け、すり足で後退した。 全身が鉛のように重くなっていき、自分の体とは思えなかった。 視界さえ虚ろになっていった。 すっと、ナイフの攻撃が止む。 相手はナイフを大きく構えた。 俺は、血が入り込み、見にくい目で必死にその姿を見極めた。 とどめだ。 その瞬間、俺は後方に大きくジャンプした。 相手のナイフの行方は知らなかったが、激痛はなかった。 しかし、無闇に後方にジャンプしたため、俺は机にぶつかり、無惨に転げ落ちた。 背中に激痛が走り、俺は顔を下にして床に倒れ込んでしまった。 息ができない。 俺は両手をつき、必死に立とうとした。 わずかに体が上がるが、再び崩れ落ちた。 殆ど全身はまひし、体は小刻みに振るえた。 「はぅ!………おぉ………は!」 幾ばくも体は動かなく、俺は顔だけあげた。 目の前には、ナイフがあった。 一瞬、男のナイフかと思ったが、違った。 ペーパーナイフだ。 それを必死に左手で取り、隠す用にして構えた。 カシュ 足音が、すぐ後ろで聞こえた。 奴だ。 男は、俺の半分けいれんしかけた俺の体を見、ほくそえんだ。 ナイフを構える。 わずかの間。 そして、男はナイフを一直線に俺の心臓に振り下ろした! 急に反転した俺の動きに男は対応できなかった。 男は俺がこれ程までに動けるとは思っていなかったようだ。 男のナイフは床をつき、俺のナイフは正確に男の心臓を突き刺す。 しかし、そのとき殆ど目は見えていなかった。 だが、しっかりした感触が手に感じられる。 男は死んだのだと、赤い目の男は死んだのだと思った。 突き刺したときの硬い感触と、手を包む暖かい血の感触が、そう俺を思わせた。 「ぐ………ぐ………ぐぅ」 ナイフごと男は床に倒れ、俺は仰向けに転がった。 「はあ、はあ、はあ」 息が荒いが、俺は生きていた。 激痛が走るのが、まだ生きていることを切実に感じさせてくれる。 そのまま、意識が遠くなっていき始めた。 戦闘が終わった安堵感が全身に広がっていく。 体中の傷など気にもしなかった。 <終わった……> 戦いが終わったと思ったのだろうか。 それとも、死を覚悟していたのだろうか。 とにかく、何かを成し遂げた満足感が、俺にそう思わせていた。 目の前が闇に閉ざせれ、感覚がなくなっていく。 寝かけているのか、気絶しかけているのか、それとも死にかけているのか。 闇に落ちていく。 その意識がなくなる、わずかの間。 俺は愛美を見た。 すぐ前に白く輝く愛美を。 明るく輝く、天使のような愛美が立っている。 空中にわずかに浮きながら、静かにたたずむ。 宝石のような光を放つ、淡い幻影。 <……ま……な……み……> それを見た俺は何かの安堵感を憶え、微笑みを浮かべたまま、目を閉じた。 「ひとり………」 暗闇の中、山のように体をした男が低い声で呟いた。 南に位置した窓から、月が淡く白い光をわずかに差し込ませている。 その冷たいような白い光は男の体の一部を照らしていた。 巨大な隆起する胸の肉。 ただ単に鍛えただけではとうていなれないような筋肉を持ち合わせていた。 全体は見えないが、その胸の一部だけで全体の様子が想像できた。 巨大な、山のような男。 国会議事堂内、首相のための部屋。そのそんなに広くない部屋の端にある椅子にどっしりと座っていた。 「…………死にましたね」 細く、若い声。 その逆に位置する壁に寄りかかっている男から発せられた物らしい。 白い純白の服に、月の白い光が反射する。 それほど大きくもなく、筋肉もあるようには思えなかったが、かなり背が高いらしく、それなりの筋肉は持ち合わせていた。 と言うよりも、敏捷性を重視した体形とでも言うのだろうか。 どこか、鋭い感じを与える男だった。 二人が話しているのは、その現場にいたわけでもないのに、どうやらさっきショウが殺した相手の事を話しているようである。 ならば、こいつらはその仲間? しかし、目はつぶっているらしく、確認することはできない。 「それもあるが」 大男が再び口を開いた。 低い、地響きのような声。 「他にも?」 「俺達同様、この星の者でない者が、天から、降ってきた」 「……仲間………でしょうか」 「おそらくは………違うだろう」 「どうしましょうか………」 しばらく、沈黙が続く。 大男は、目を開いた。 暗闇に、大きく、月よりも明るく輝く赤い光が二つ、宙に現れる。 赤い、輝く瞳。 そこだけ赤く、明るい。 彼らもやはり、赤い瞳を持つ男達だった。 そして、大男は一言だけ呟いた。 「消せ」
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