CFM「空中分解」 #0514の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
<アップル・コンプレックス> 第1話「多すぎた遺産」 パート}「皮かぶりのガキが、舐めた真似をおしでないよ!」その2 おっと、自己紹介が遅れた。僕の名前はカズ・コサック。このメガロポリス、パシフ ィック・クイーンのダート・ユニオン・カレッジの第三年生だ。いや、だったと言うべ きかな? と言うのも、今はカレッジを休学しているからだ。 一年前までは僕も真面目な学生だった。専攻は社会構造学で、歴史と都市文明論を少 々かじっていた。成績もまずまずで、特に経済学の教授には気にいられていた。そして 、カレッジではジェット・水上スキーのサークルに入り、太平洋選手権大会では三本の 指に入る腕だった。 アクアポリス、ネオ・パプアで開催された第十二回大会で、僕はエレナと知り合った 。彼女は、食料品会社の資材部長付の秘書をしていた。そして休日には、海でジェット ・スキーを楽しんでいた。歳は二十で、僕より一つ下だった。小麦色というよりは、真 っ黒に日焼けし、はちきれんばかりの若さと活力を秘めたしなやかな身体の持ち主だっ た。引き締まったウェスト、張り出した胸、贅肉のかけらも無い肉体美は、海岸で寝そ べっている男目当てのギャル達の中で一際光っていた。当然、彼女には男達が群がった 。僕もその一人だった。その中でどういう気紛れか彼女は僕を選んだのだ。僕達はあっ という間に恋に落ちた。しかし、楽しい夢のような時間は短く、その結末は余りにも呆 気なく、残酷だった。 ある日、僕の運転するジェットボートはジェットスキーを履いたエレナを引いて、ス キーヤー仲間が屯する沖合に向かっていた。そこへ別のジェットボートが接近してきた 。いかれた若い十代の男が三人乗っていた。スキーで滑っているエレナのすぐ側まで来 ると、そいつらはエレナに野卑な声を掛けた。彼女はそれを無視していた。その内、連 中はジェットボートの速力を上げて僕の運転するボートを追い抜いて行った。そして一 キロ程過ぎた辺りで急旋回すると、猛烈なスピードで接近してきた。 真正面から近付いて来る相手のボートは体当たりをかますように見えた。しかし、僕 はその時、エレナをからかっていた連中に腹を立てており、連中を許せない気持ちだっ た。僕はボートを真っ直ぐ、相手に向けた。相手も避ける気配は無く、ギリギリまで正 面衝突コースを取っていた。そしてぶつかる瞬間に、相手はコースを右に切った。水飛 沫が壁となって僕を襲った。反射的に顔を背けた僕の目に、ボートに引かれているエレ ナの姿が目に入った。そして次の瞬間、僕は一生忘れない光景を目にした。 いかれた連中のジェットボートは横滑りしながら、僕の乗るボートの横を通り過ぎる と、真っ直ぐにエレナに向かって行った。エレナが宙に舞った。長い髪がたなびいてい たのを今でも覚えている。 しかし、それだけでは済まなかった。エレナを引いていたロープは切れ、彼女に絡ま り、しかもそのロープは馬鹿どものボートの水中翼に引っ掛かってしまった。彼女はい かれた連中のジェットボートに引かれて行った。僕はその後を必死になって追い掛けた 。そいつらは十分近くもグルグルその辺りの海域を走り回ったあげく、ロープを切って エレナを捨てた。 僕は海底からエレナを引き上げた。ボートの上で人工呼吸をした。沿岸警備隊に無線 で連絡し、救急エアロダインで病院に運んだ。蘇生治療を受けたが、長時間、酸素を供 給されなかったエレナの脳細胞は復活しなかった。 えっ、そんな暗い話、聞きたくないって? そうだね。しかし、この話をしとかない と、ノバァと僕の奇妙な関係の話ができないんだ。 今、僕の横で地上を走るジェット戦闘機みたいなスピードで車をぶっとばしているノ バァ。彼女は実はエレナの生まれ変わりなのだ。 そう、外見はエレナと同じ。いや、ノバァの身体はエレナのものだったのだ。言い換 えると、ノバァはエレナの肉体を貰ったんだ。脳移植というやつだ。まだ、あまりやら れていない高等手術だ。 ノバァ・モリスは当時三十三歳、メガロポリス三十二分署の交通係だった。高速機動 パトで交通違反の摘発をしていた。その日、彼女はスピード違反の車を捕まえた。ドラ イバーに職務質問しようとした途端、相手の車の窓からハンドミサイルが飛んできた。 ノバァはパトごと吹き飛ばされた。全身の骨が折れ、内蔵はぐしゃぐしゃだった。折れ た肋骨が肺につきささり、口からは血の泡を吹き出していたということだ。 エレナが運び込まれた病院に、ノバァも救急車で運びこまれた。そして、脳を破壊さ れたが、他の全身が無事なエレナの身体と脳以外はぐしゃぐしゃのノバァを見た一人の 医師に浮かんだアイデアは、一プラス一イコール一の公式だったのだ。 そしてエレナの身体を受け継いだノバァ・モリスが生き返った。 僕は混乱した。エレナはこの世にいない。だのにエレナが生き返った。この矛盾は受 け入れられなかった。しかし、エレナへの思慕が絶ち切れない僕は、ノバァと友達にな った。そう、僕はエレナともう一度恋ができると思ったんだ。 ところが、現実はとんでもない代物だ。 エレナは活発な女の子で、気立ても優しかった。よく気がつく子で、何も言わないの に僕の考えていることを先に言ったりした。エレナはベットの中でも活発だったが、僕 を優しく包んでくれた。 僕は、ノバァともそうなると思っていたのだ。 だが、相手が悪かった。エレナであってエレナとは違うノバァに僕は失望し、逃げ出 そうとした。しかし、とある事件でノバァと腐れ縁になってしまったのだ。 ノバァは三十二分署を辞め、今は私立探偵をやっている。そして僕はいつの間にか、 ノバァの助手兼使い走りになってしまったのだ。 エレナの若さと美貌は探偵業に大いに役だっている。優しい顔と声は初対面の相手を 和ませ、信じさせるのにピッタリだ。スポーツで鍛えたエレナの身体は、聞き込みの時 に男達の警戒心を拭いさる武器でもある。 ちなみに、以前のノバァは、運動嫌いでビア樽のような腹を持つ伯母さん体型だった らしい。それがうって変わって身体の線を気にしていると、昔の同僚達は驚いている。 僕がエレナに対してしてやれる唯一のことは、ノバァがエレナの身体を大事に使うよ うに仕向けることぐらいしかないのだ。ノバァが運動をさぼりそうになると、僕がジム やプールに連れて行き、しごく。そしてその時は強情で柄の悪いノバァも僕の言うこと をきき、汗を流す。ノバァも口には出さないが、エレナに感謝しているに違いない。 エレナとは当然、愛しあった。だから、ノバァを見ていて、もよおしてくることもあ る。だが、ノバァの性格じゃ、どんなにエレナと同じ臭いを持っていても、ベットに一 緒に入る気がしない。ノバァの身体は二十歳そこそこだが、中身は三十路を過ぎた口の 悪いおばさんなのだ。 さて、僕は探偵なんてノスタルジックな商売で、今時、流行らないと思ったが、そう でもない。結構仕事が飛び込んでくる。今は、失踪した女の子を捜している最中だ。そ れもあと半日以内、正確に言えば十一時間と二十一分で捜さなければならないのだ。 捜索依頼の出ている娘は、ノリス・クラウス・ストーナー、十七歳。彼女は、ストー ナー財閥の会長、バーン・スタイン・ストーナーの孫娘だった。 ストーナー財閥と言えば、一口携行食のバリス食品や戦闘機も作っているガング航空 会社まで、自分の両手両足の指はおろか親戚や友人一同に借りまくって数えたって間に 合わない程の会社を持っている。 そのストーナー氏が、今朝、急死した。ストーナー会長の実の息子夫婦は、七年前に 飛行機事故で死んだ。今は血筋のつながっているのは、ノリスと彼女の姉のキリーだけ だった。キリーは今はアフリカにいるそうだが、そっちは僕達とは別の人間が探してい るだろう。それだけじゃない。世界各地にいるストーナー財閥の遺産相続権利を持つ親 族は今頃、慌ててこのシティにやって来ている筈だ。みんな忙しいのだ。 というのも、ストーナー会長の遺言で、彼の死後、二十四時間以内に遺産分けの親族 会議を行わねばならないのだという。僕達は、ノリスを捜し出し、その親族会議に出席 させなければならないのだ。 −−−−−−−−−−−−TO BE CONTINUED−−−−−−−−−−−−
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