CFM「空中分解」 #0471の修正
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WRITTEN BY SAKAKI ★★ MARUS ★★ <1> 序章 1999年 7月 天より悪の大王降りたる その後、戦いの太陽神マルス立ちて この世の民を導かん……… (「諸世紀」 第10章 72番より抜粋) (俗に言う、ノストラダムスの大予言の事である) *注 マルス ギリシャ神話の中などに出てくる、戦いの神。 邪神と見る者もあるが、戦いの他にも、自由、平和、太陽などの神ともされている、女性の神である。 第一章 破滅 「行ってきます!」 朝−8:00 俺は家を出た。 ドアを足で蹴り、駐車場に行き、愛車ユーラシアに荷物を積め、外に出る。 朝日がまぶしい通りを、俺は自転車で走り始める。 俺、成田将治「「「通称 ショウ 拳法などを子供の時からやっているせいか、少し運動神経はいい。 顔は(少なくとも自分では)中の上ぐらいだと思っている。 頭は……………まあまあと言っておこう。 まあ、そんな俺にも恋人がいる。 華島愛美「「「 1年前、新入生の歓迎会の時に、初めて会ったその時から、ずっとつき合っている。 彼女は、少し髪を長めにしていて、いつも笑顔を振りまいている明るい娘だ。 性格は至って明るく、天気のようにコロコロかわる表情は、見ているだけで飽きない。 彼女の可愛く、素直な性格は、昔の暗かった俺を明るくしてくれた。 恥ずかしい話だが、今では俺は彼女にぞっこんである。 昨日、ちょっとケンカをしたので、怒っているだろうが、俺はいつもの待ち合わせ場所へ急いだ。 俺は、まだ新しい自転車のペダルをおもいっきり踏み込む。 少しきしみながらも、その速度は増していき、涼しい風が体全体に吹きかける。 開き始めた商店街の狭い歩道を、俺は走り抜けていった。 「おじさん! おはよう!」 「おおー、早いな。」 魚屋のおじさんは、腰を上げ、しわだらけの顔を向けてくれた。 「ショウ君! おはよ!」 同じ高校の女学生とすれ違った。 気付かなかった俺に明るい声で挨拶をする。 「おはよ、美樹。学校でな!」 遠のきながら、彼女は笑顔で手を振ってくれた。 ちょっと手を振り返し、視線を元に戻す。 ボールで遊ぶ小学生が前から走ってくるのを見つけると、俺は器用によけて行った。 「あぶねーぞ!」 小学生の集団はその手を止め、俺の方を向き、下をだしやがった。 「あっかんべー」 「このやろー………」 さほど気にもならなかったが、ちょっとからかってやろうと思い俺は方向を転換し、小学生の方に向かって走った。 「きゃー」「うお!」「おっとっとっ」 慌てる子供達を横目にみながら、俺も舌を出してやる。 「あっかんべー」 商店街でのいつもの挨拶の日課を済ますと、右に曲がり、狭い横道にはいる。 人通りがなくなり、道が狭まる。 登ったばかりの太陽が、前面から差し込み、俺は手をかざし、いつものように太陽に挨拶をした。 少し行くと、前から車がきた。 狭い道なのに、この道は車が良く通る。 俺も相手も慣れたもので、慌てることなくすれ違い、通り過ぎて行く。 と思ったが、あと一歩の所で車が寄って来た。 すれすれの所を車は通り過ぎ、バランスを崩した俺は塀にぶつかりそうになった。 「うわっ! あぶねー」 俺は(この野郎!)と思いながら、振り返り、運転手を見た。 運転手はいなかった。 「えっ。ちょっと待て。」 どうして運転手がいないのかよく解らず、俺は自転車の速度をゆるめ、呆然と車の行方を見つめた。 速度を落としながら蛇行していた車は、やがて、家の塀に向かって行った。 瞬間、思わず俺は片手で顔を覆ってしまった。 そのすぐあと、腹に響くような音と共に、車は塀に激突した。 ギャリ ギャリ ギャリともドドドスン!とも聞こえた様な気がする。 「やった………」 俺は、恐る恐る腕を下げ、車の状態を見た。 その様子を見て、思わずため息が出てしまった。 「………悲惨……」 前面が見るも無惨に砕け、ボンネットが空を指していた。 幸い、爆発したり火が出る事もなさそうなので、俺は自転車を放り、車に近付いて行った。 ジャリ 一歩踏み出した足元で、変な音がした。 下はアスファルトのはずである。 俺は足元を見た。 ちょっとおかしな、いつもと感じの違うアスファルト。 ひび割れているようだが、実際はもっと細かい。 俺は、足を曲げ沈み込み、それを手で触ってみた。 さらっとした感触。その感触で俺はこれがなんであるか悟った。 「砂だ………」 (そんなはずは……)と思いつつ、俺は顔を上げた。 「…………?」 顔をあげた俺は、もう一つの事に気が付いた。 おかしいのはアスファルトだけじゃない。 周りの景色までおかしい。 何か不自然だ。 「何だ。これは………」 周りの景色が少し変わったような…… 壁が、家が、アスファルトが、少し崩れた感じになっていた。 その崩れた家などの風景に、どこか知らない場所に来たような疎外感を憶える。 「ここらって、こんなに古かったかな………」 さっきに比べ、妙な暗さを感じながらも、それが何故であるか気付かなかった。 俺はともかく立ち上がり、車に向かう。 そして、白のクラウンの横の四角い窓から、中をのぞき込んでみる。 車の中には、確かに人はいなかった。 「誰もいない…………?」 しかし、俺はすれ違う時にちゃんと見た。 紳士服を着た、30過ぎの男だった。 しかし、いなかった。 俺は周りを見渡した。 その時初めて、ここら辺に人がいない事に気が付いた。 元々人通りは少ないが、それにしても一人もいないのは珍しい。 妙に静かだ。 車の音さえ聞こえない。 見えるものはひびの入った壁、少し崩れかけた家、砂となったアスファルト。 それだけの光景。 不安と言うなの気持ちが心の中に広がっていく。 「誰か………」 人はいないかと、俺は後ろを振り向いた。 「「「「!」 振り返ってみた俺は、俺が元居た所の一部分だけが何も変わっていないことを知った。 つまり、ここらは全ての物が崩れかけているにも関わらず、さっき俺のいた〈そこ〉だけは何も変わっていないのだ。 <そこ>だけは<崩れ>など、片鱗も見えない。 <そこ>だけは元の世界であった。 「何なんだ…………」 俺は何が何だか解らなくなり、ふらふらと歩き始め、商店街に出た。
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