CFM「空中分解」 #0245の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ある日曜日、夫はパソコンに向かい無言でキーボードをたたいていた。 「カチャカチャ」 無機質な音が広くないアパートに響く。 「ふうっ」 妻はため息を漏らした。夫がキーボードをたたいてもう何時間になるのだろう。 夫は何かにとりつかれたようにディスプレイをにらんでいる。 「はぁ」 妻は再びあきらめの混じったため息をこぼす。 「まったく嫌になるヮ」 翌日、妻は古い友達に愚痴をこぼした。 「ふーん。あなたも大変ね、そんなに夢中なの」 その友達はそう言って手元にあったパンフレットをとった。『21世紀型パーソナルコンピューター通信クラブ』とデカデカと出ている。 どこが21世紀なのか妻は夫に聞いた事がある。 夫は熱心に「やれ153600bps」やら「精密なCGだ」と騒いだが、妻にはチンプンカンプンであった。 「このままじゃ、あの人をそのなんとか、・・・ってのにとられちゃう。なにしろあの人ったら暇さえあればコンピューターにしがみついて・・・、電話もつかえないのよ! 私が電話するのにもいつも公衆電話を使えって!」 妻は少し涙ぐんでいた。そこでその友達はやっと笑っている場合じゃないことに気付いた。 「よし、私も協力するわ」 と、その友達は立ち上がると電話を始めた。 「カチャカチャ」 相変わらずの狭いアパート あれから2週間がたった。この2週間、妻は友達に言われた通りに黙っていた。決して楽では無かったが、妻はその友達を信頼していたのでなんとか耐えられた。 「ちょっと電話してきます。」 妻がそう言って出ていったのに夫は気にもとめなかった。 そして、それは突然やってきた。 夫は青くなってキーボードをたたいた。 「なんだ? これはっ!」 画面が狂い始めたのだ。文字が勝手に走り回る。 だめだ。コントロールできない。一体どうしたんだ。 「・・・でどうなった?」 「うん、また始めたけど結局同じ事の繰り返しだとわかってあきらめたわ。あれで800円なら安いわね。それに最近、あの人と一緒に出かけることが多くなったの、喜ばしいことだわ」 「でも、たまには使わせてあげなさいよ。バレたとき困るわよ、それに・・・」 「そうね。考えとく、あ、電話が入ったから切るわよ。・・・はい、もしもし・・・」 友達は考える。多分夫は感付いているだろうと、 高速になればなるほど影響を与えるキャッチホンの事ぐらいは。 でも、気付かないふりをしているなら私がくちばしをいれることはないか・・・ おしまい BMD66811/COLOR
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