CFM「空中分解」 #0214の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
リレー小説 Aコース 第2話 オレンジ色の空の中に、ジャンボの機体が小さな点になって消えるのを見届ける と、おれはやっと踏ん切りをつけて駐車場を出ようとした。 その時、おれの名前を呼ぶ女の声が後ろから聞こえた。 「まって、健ちゃん、まってよ」 おれの名前は、黒沢健。そして今、おれに呼び掛けながら、向こうからかけてく るのが、おれのガールフレンドだった高倉ナオミ・・・なに、ナオミ? 「おまえ、なにやってんだ。いまの便に乗らなかったのか?」 おれはとりあえずバイクのエンジンをきって、ふうふうと息を弾ませているナオ ミに聞いた。 「う、うん」 「どうして乗らなかったんだ?」 「よくわからない・・・なんだかすごくいやな予感がして足が動かなかったの」 「いやな予感・・・?」 おれはナオミの言い訳を、内心ではニヤニヤしながら聞いていた。やっぱりナオ ミはおれと離れたくないんだな。それであんなおかしな言い訳をして・・・。 去年の大学祭の時、おれはボクシング部の模擬店に出ていて、そこに来ていたナ オミと知り合った。その時、ナオミはまだ高校生だったが大人っぽい雰囲気で、 髪が長くて色の白い、スレンダーな最高の女だった。その切長の目が、おれを捕 えて離さなかった。 そのナオミが、高校を卒業したらアメリカの大学に留学すると言い出したのは、 ふたりが初めて同じ朝を迎えた時だった。 その話しをする時のナオミは、キラキラと目を輝かせていた。それなのに、飛行 機に乗らなかったという。よく考えたら、おれに対する未練のせいだとはいくら おれが自信家でも言いきれない。 とにかくもう飛行機は飛び発ってしまったのだから、ふたりはとりあえずおれの アパートに戻った。ナオミは家に戻れば両親に訳を説明しなければならないが、 説明のしようがないと溜息をついている。 「いやな予感がして足が動かなかった・・・なんていう説明じゃ親父さんたちは 納得しないかもな」 「そうなの。私、新しい旅発ちに涙の見送りっていうのはいやだったから、ほら うちのママすぐ泣くでしょう、だからぜったいに誰も見送りにこないでって言っ てあったの。でも、こうなってみると、なにか勘ぐられてしまうような気がする わ。本当は最初からこうするつもりだったんじゃないかって・・・」 「でも、本当のこと言って、どうして乗らなかったんだ?」 「もう、健ちゃんまでそんなこと言うの? だから・・・そうあの時、声がした の。頭の中で響くように《乗ってはいけない。乗ってはいけない》って・・・・ 男か女か・・・どっちとも言えないような。ああいうの、テレパシーっていうん じゃない?」 「テレパシーねえ・・・」 おれはその時は、半信半疑だった。だが翌朝、ふたりでモーニングコーヒーを飲 みながら、見るともなく見ていたテレビのニュースでその出来事を知った時には、 彼女の言葉を信用する気が起きていた。 そのニュースキャスターは、ナオミが乗るはずだったジャンボジェットが、太平 洋上空で原因不明の空中爆発を起こし、墜落したと無表情に告げていた。 −− つづく −−
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