CFM「空中分解」 #0209の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「えっ!慰謝料?あれは業務上の事故だよ..そんなもんに慰謝料なんか..」 と言い掛けた冬野所長は、噛み付きそうな顔をして、机の灰皿に手を掛けた玉井礼子を 見てギョッとした。 「ま、まて!タマちゃん!..早まるな!話せば分る..」 「乙女心を傷つけておいて、よくもそんな事が言えますね!」 「分った、分った..話合いで解決しよう...ね?」 それから二人は、具体的な金額の交渉に入ったのだが、条件の折り合いがなかなかつか ない...と言うのも... 「ズルイよ、タマちゃん..始めてのキスと何度も経験したあとじゃ、その価値も 変ってくるのが当然なんだから、今までに何回くらいキスの経験があるのか、正直に 教えてくれなくちゃ...」 さすがにこういう事には、粘りのある交渉を展開する冬野所長である... 「所長みたいな、イヤラシイ中年に、そんな事言えませんわっ! 始めてにしといて下さい..」 「うんにゃ、そういう訳にはいかない...金銭の事はハッキリさせなくては.. 第一、23才にもなってファーストキスなんて、誰も信じないぜ? もしどうしても言えないなら、昼飯2回でどうだ?」 玉井礼子は真っ赤になってテーブルを叩いた! 「わ、私のキスがラーメン2杯だと言うんですか!」 結局、すったもんだの大騒動のあげく、休暇2日と半月分の昼飯でケリがついた... 「仕方無いから、これで許してあげます...大損だわ..」 ぶつぶつ文句を言いながらも、収支台帳を広げた玉井礼子は嬉しそうである。 「今月は、大幅な黒字ですね..所長..臨時賞与なんて、考えませんか?」 「う、うん..ま、まぁ、そのうちにね..」 さすがに、SYN−SYSTEMは景気がよく、即座に残金を振り込んできたのだ。 明るい顔で、冬野所長の方を見た礼子は、なんとなくソワソワしている所長の態度に 不信感を抱いた... 「所長!また何かしたんですか?まさか競馬なんて...」 冬野所長は、大慌てで手を振った。 「いや、そんな事はやらんよ!そんな..ギャンブルなんて..」 「じゃあ、何をしたんです?所長のその態度は、以前調査費用を全額競馬でスッた時と 同じじゃありませんか! 何かしたんでしょ!!」 ちょうどその時、階段を上がってくる足音がして、ドアが勢いよく開いた... 「やあ、タマちゃんも居たのか..ちょうどいいや、冬野さん出来上がりましたよ.. 手続きも済みましたから」 入ってきたのは、角の山口モータースの一人息子で、山口真一というドラ息子だった。 この事務所にも玉井礼子を狙って、チョイチョイ出没して遊んで行く顔見知りである。 「手続きって?どういう事ですか??所長!はっきり説明して下さい」 「い、いや..あの..この事務所も、調査にタクシーやバスじゃ経費がかかるし、 機動性も無いので、思い切って車を買おうと... ちょうど中古車で、いいのが出たってこの男が言うし..先行投資だから..ね?」 非常に歯切れが悪い説明だが、目の前の玉井礼子の顔をみれば、逃げ腰になるのもやむを得ない.. 「所長!車ですって?駐車場だって無いのに..一体いくらなんです?」 「安いよ、非常に程度が良くて安いんだ..赤のジェミニでね.. 3年落ちで80万だよ、エアコンも全部ついてるし..タイヤもついてる..はは」 「安いって..80万も!じゃあ20万しか残らないじゃないですか」 「それは僕の給料だろ..」 「臨時賞与は、どうなるんです?私のワンピースと旅行は...」 賞与をあてにしていた玉井礼子の落胆は大きい.. 「ドライブに連れて行くから、機嫌を直してくれよ.. 一泊二日の社員旅行でもいいぜ」 ついに、玉井礼子は怒りを爆発させた。 「所長と二人で社員旅行なんて、危なくて行けませんっ!ドライブだって、 いつモーテルに連れ込まれるか分ったものじゃないわっ!!」 いつのまにか、風向きの悪さを感じとったのか、山口真一の姿は消えていた。 岡崎の空は明るく晴れて、初夏の匂いが辺りに充満している... 開け放した窓から、明るい声が聞こえた... 「はい、こちら冬野探偵事務所です!」 −−−−−< 終り >−−−−−
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