CFM「空中分解」 #0208の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
(絶対、払って貰いますからね!!今日の残業手当をつけて、3000円も請求して やろうかしら!) 「所長!...」 大股に冬野所長に近付いて、思いきり文句を言ってやろうとしたとき、急に真顔になっ た冬野所長が、唇に指を立てて「シーーッ!」と小さく、鋭く言った... と、同時に玉井礼子の腕を引っ張って、ベンチにぴったりと寄り添って座るスタイルに なった。 「静かに..ほら、向こうから車が..」 たしかに薄い闇を通して、ヘッドライトが近付いてくる... 「あまり、くっつかないで下さい..ちょっと!肩に手なんか回さないで!」 「タマちゃん、これは仕事だ...妙な遠慮は無用にしたまえ、愛をささやくアベック に見えなくちゃいかんのだから」 「遠慮って..バカな事言わないで下さい!タクシー代を立て替えましたから、明日 払って下さいね...変なところに触っちゃやだったら!」 その間にも、車はゆっくりと近付いて、ヘッドライトがベンチの二人を照らした.. とっさに玉井礼子のほうにおおいかぶさって、顔を見られないようにしたのは 良かったが、勢い余って本当にキスを... もがいて、声を上げようとする礼子に、そうさせないためには、一層強く抱き締めて 唇を強く押し付けている必要が有った... と、これはその後の冬野所長の言い訳である。 「チッ!よろしくやってやがる..」 ライトに浮かんだ、アベックの濡れ場に舌打ちをすると、運転してきた男はシートから 厚さ5センチはあろうという、書類封筒を手にして車を止め、ドアを開けてアスファル トに降り立った。 そのとき突然... 「わーーっ!いててて!」 先ほどからベンチで濃厚なキスシーンを展開していた(ように見えた)アベックの男の ほうが、大声を上げながら走ってきた... とっさに何が起こったか分らず、ポカンとした男のそばに走ってきた冬野所長は 書類封筒をひったくると、車の男の胸倉をつかんですごんだ。 「SYN−SYSTEMの運転手さん、ご苦労だった..さあ、業務上横領と窃盗で 警察に行こうか?」 細面の男は、昼間平野重役と同行した時、白のクラウンを運転した運転手であった.. 自分の胸倉を掴んでスゴんでいる、顔中引っかき傷だらけの男が、昼間平野重役と一緒 にいた探偵だと分った運転手は、急に暴れ出したが柔道3段の冬野所長にかかっては、 赤子の手を捻るようなもので、見事な跳ね腰が決り、運転手は道路にノビてしまった。 その翌日... 「いててて、タマちゃん、もっと優しく..重傷なんだから」 「なぁにが重傷ですか!乙女心のほうが、余程重傷です!慰謝料をふんだくって 上げますから覚悟して下さい!」 あの時ベンチで、顔面を玉井礼子にしたたか引っかかれた冬野所長は、すだれのように なった、赤チンだらけの顔を治療して貰っているのだ。 「でも所長、なぜ犯人がSYN−SYSTEMの運転手だと分ったんですか?」 冬野所長の顔にガーゼとテープを張り付けながら、礼子は聞いた.. 「それはね、最初平野重役が事務所に来て言っていたろう? 深夜2時に犯人が平野氏と入れ違いに3階にエレベーターで上がった時、 玄関でコーヒーを飲んでいた平野氏は車のエンジンの音もなにも聴いていないんだ。 犯人が逃げるときには、エンジンの音が聴こえたと言っているのにだよ... 「ふーーん、そう言われればそんな気もしますね..ほら、動かないで!!」 「いてて!そーーっとやってよ... 普通、盗みに入る泥棒は車のエンジンは掛けっぱなしにしとくもんだ... 逃げるときの為にね。 と言うことは、車のエンジンは止めてあったと考えられるだろ? 「そうですね..」 そうすると犯人は盗みに入ったのじゃないと言う仮説が成り立つ訳だ。 それから、泥棒の常識として窓に明りが見えている所に押し入るのに、隠れるものの ないエレベーターなんぞ使わんよ...そーっと階段から行くものさ。 とすると、犯人はいつでもオフィスに出入りしているものが、偶然出来心で犯した 事件だと言うことになる...」 「なるほど、そう聞けば簡単ねぇ..じゃあ、最初に平野さんが来たときに犯人の目星 は付いていた訳なんですね?」 「はっきりとは分らんが、自由にオフィスに出入りする人物を捜す気だった、 門から出て行った車もないとなれば、内部の犯行と考えて間違いなかろうし.. しかし平野氏がオフィスで深夜まで、書類を作る事は誰も知らんと言う..となると 必ずオフィスに来るのは、迎えの運転手だろう..平野氏は免許が無いんだから」 「そこまで分かっていながら、最初のときに警察に知らせなかったのはなぜですか? そうすれば、もっと早く解決したんじゃないですか?」 「それじゃあ、料金が取れないだろ?..探偵事務所というのは、事件の解決は二の次 で、気持ち良く料金を御支払い願うのが本業だよ...」 得意そうに鼻をうごめかしたが、傷だらけの顔では威厳もなにも無い... 「それにしても所長は良く犯人が、あの日あの時間に、あの場所に現れるって知って ましたね?」 「なに、書類は取ったものの、持ち込んで金にする所を知っているのは、あの会社で 幹部しかいないらしいのだ..それで、それとなく分るように運転手に教えてやった のだよ、昨日の昼すぎにね... で、あの会社が終って、しばらく様子を見てからフジ・システムに行くとすると、 あんな時間になるのさ..」 得意満面の冬野所長を見ながら、急に猫撫で声になった玉井礼子は「ところで所長.. あのキスの事なんですけど...慰謝料として、いくらくれます?」
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