ＣＦＭ「空中分解」 #0205の修正

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★内容（1行全角40字未満、500行まで）

「所長！そんな事ばっかりしていて、書類を取り戻す見込みは、たったんですか？
　前受金に手を付けましたから、失敗したらお金は返せませんよ」

冬野所長は、煙を吹き上げると自信タップリに言った．．．

「タマちゃん、君は何年ここに勤めているのかね？僕が、その気になって解決しない事
　なんて無いんだ．．安心したまえ．．」

玉井礼子は、事務机から身を乗り出して、右手に持った紙片を差し出すと「はいはい、
じゃあこれも解決して下さいね」と言って、冬野所長に渡した．．

「なに？電話料請求書？？えーーっと．．．５万６千円！！なんだこれは？」

「所長が、先月アスキーネットのグラフィックで、ＮＡＰＬＰＳとか言うのに
　夢中になって、仕事もせずに東京に何度も長い電話してましたでしょ？
　パソコンつないで．．
　そんな事してると、電話代が沢山来ても知りませんよって言ったでしょう．．」

一瞬にして血の気が引いた冬野所長は、目を丸くしていたが、しばらくして正気に戻っ
たのか、テレ笑いをして「ま、まあ仕方無いなぁ．．．経費でなんとか落して．．」
と上目使いに事務机の玉井礼子のほうを見た。

玉井礼子はキッパリと「駄目です！そんなもの、なんで必要経費で落ちるんですか？
私が少し私用電話を掛けると、所長は貯金箱を差し出して１０円取るじゃありません
か」

「しかしねタマちゃん．．これじゃあ僕は日干しになってしまうよ．．僕が死んで、
　この事務所が倒産したら、君に退職金も払えない．．．そうなるとタマちゃんだって
　結婚資金に困るんじゃないかね？」

この「退職金が払えない！」と言うのが冬野所長の切り札である。

玉井礼子はため息まじりに「分りました．．今度だけですよ、もう二度と支払いません
からね．．．」と弱々しく言葉を吐き出した。

してやったりとニヤリとした冬野所長は、背広を掴んで立ち上がると．．．

「さあ、タマちゃん出かけよう！」

玉井礼子は不思議そうに、「え？どこにですか？？」

「フジ・システムの前の公園さ、アベックの名所で楽しい夜が過ごせるぞ」

浮き浮きした調子の冬野所長に、眉をひそめて疑わしそうな表情の礼子は．．．

「どうして私が、所長と一緒にアベックの名所なんて行くんです？
　今日は疲れたから早く帰って寝ます．．．」

「誰と？」

怒りで、玉井礼子の顔が真っ赤になった。

「所長！なんて事言うんです！タチの悪い冗談は止めて下さい！
　ほんとに、これだからスケベな中年ってイヤよ！」

「スマンスマン．．つい．．本当は犯人を捕まえに行くんだが、言った通りアベックの
　名所なので、一人ではバレそうだし、何より痴漢かノゾキに間違われそうなんだ」

「所長が一人でそんな所に出入りすれば、誰だってノゾキと間違えますよ」

冬野所長は、大いに不満そうだ。

「この俺の顔が、ノゾキなんかするように見えるか？」

「モチロン、見えますわ」

玉井礼子に、即座に言い切られて、冬野所長はガッカリした。
フジ・システムに向かうタクシーの中での二人の会話である．．．

「じつは杉浦の奴に、警察の掴んでいる情報をリークさせたんだが、近藤智彦という
　アリバイの無い男が事件とは関係無いという情報だけだった．．」

「所長！杉浦さんを脅迫してはいけませんよ、あの人は気が弱いんですから．．
　自殺でもしたら、どうするんですか？
　それで、何か新事実でも？」

探偵事務所の事務員だけあって、好奇心は旺盛だ。

「いや、ただ無かったアリバイが出てきただけだ」

「何だったんです？」

「やっこさん、深夜に自分の会社のある商業団地で、デートしてやがった」

玉井礼子は不思議そうな顔をして．．．

「そんなしっかりしたアリバイがあるのに、どうして隠したんでしょう？」

「彼女というのが、女子高生でな．．家を抜け出して、カーセックスなんぞしとったの
　がバレたら、退学なんだそうだ」

「え？あの．．デートって．．そんな事してたんですか？」

ポッと赤くなった礼子は、以外と純情な一面を見せた。

「タマちゃんは、アベックが深夜２時にトランプでもしとると思ったんかね？」

「だって．．．女子高校生なんでしょ？」

「最近のガキをナメちゃいかんよ．．．選挙の投票以外は、なんでもやるさ．．」

タクシーは、フジ・システムの前にある、公園に着いた．．．
冬野所長は、タクシーから降りるが早いかフジ・システムの門を伺うのに丁度良い位置
のベンチに向かって歩いて行く。
薄暗くなった辺りには、まだアベックらしき人影は無い．．．

「お客さん、１２００円です」

冬野所長はタクシー代を支払わずに降りたのだ！

「えっ？そんな．．所長が．．あの．．タクシー代ですか？」

一杯喰わされた玉井礼子は、ムカッ腹を立てながら鈴の付いた小さなガマグチから、
細かく折り畳んだ千円札を取り出して、渋々運転手に渡し、領収書を受け取った。

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