CFM「空中分解」 #0195の修正
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「おや、お父さん。やっとお目覚めですか」 「ああ頭が痛い。いっとくが、二日酔いじゃないぞわしが酒でまいる訳が・」 「それはそうと、お父さん。明けましておめでとうございます」 「なにっ、正月にはまだ早いぞ」 「もう正月ですよお父さん、大丈夫ですか。丸三日も寝てらしたんですよ」 「そんな馬鹿な」 教授は足元をふらつかせながら、横目で真新しいカレンダーを見やりながら、テ レビの前に跳んで行った。スイッチを入れると丁度ニュースをやっていた。 「定期国会の再会の準備の為に一部の関係各省庁は、三が日も明けやらぬ 今日二日から、慌ただしい動きを見せております。それに加えてこの一月 中には各国からの来賓の入国が相次ぐことになっているため、・・・・」 実はこれは、かの、いたずら学生達の最高傑作なのであった。彼らはH大学の、 「政治問題研究部」というサークルが、この数年間の毎日のNHKのニュースを ビデオに撮っていることに目を付け、そのテープを拝借してきていたのである。 教授がNHK以外のチャンネルを入れれば、すぐにこのいたずらはバレてしまう 筈なのであったが、教授がNHK以外の局に目を向けるなどということがない、 という貴重な情報が、彼の家族からもたらされていたのである。 教授のこの後の行動はすざまじいものであった。何故なら一月二日といえばH 大の学長も出席して、大新年会が催される予定になっていた。しかも、今年の幹 事役として野良利教授が当たっていたからである、。 彼は取るものもとりあえず、反狂乱に近い状態で会場に予定されているホテルへ と走って行った。 ホテルに着くと彼は真っ先に新年会(が本当の一月二日に行われるはずの)会場 へ飛び込んで行った。 折しもそこでは盛大な結婚披露宴が繰り広げられていたのである。そこへ野良利 教授が飛び込んで行ったことで、一大パニックが起こったのである。何故なら、 このときの教授の出で立ち、形相たるや・・・顔はひきつり髪の毛を振り乱し、 慌ててパジャマの上から着てきた礼服は、ここに来るまで幾度となく転倒した結 果、いたるところが綻んでいた、といった状態であったためである。 鋭い悲鳴と共にグラスが砕ける音がした。これは、最初に教授を発見したひとり の女性が恐怖のあまり悲鳴をあげ、その悲鳴が丁度、彼女が持っていたグラスの 固有振動数と一致したため共振がおき、その結果おこった破壊現象であった。 騒然となった会場では、新郎は付き添っていた母親にしがみついて震えていた。 新婦はどこかの男性の腕の中に飛び込んで泣き出すという始末であった。 (このときの新郎新婦の家庭生活が、その後どうなっているか、筆者が知るとこ ろではない) ホテルのガードマンが駆けつけてきて、野良利教授が会場から外へ連れ出される まで、この恐慌状態は続いた。 彼はここまでに起こった一連の出来事を理解する術を持たなかった。 教授はこの日から、精神的ショックの為、床についてしまい本当の一月二日の 大新年会には出席することはなかった。いや、仮に出席できる健康状態であった としても、あのホテルには当分足を運べなかったことであろう。 教授の家族や学生達は、自分達の予想以上の結果をまねいたいたずらについて、 大いなる反省を余儀なくされたし、教授は教授で、この日以来一滴の酒も口にす ることがなくなったのである。 ただこの後、野良理教授は秀太郎君の「おじいちゃん、ボクおとしだまいらない から、はやくげんきになってねっ」と言う言葉によって、元気を取り戻したし、 家族達の仕打ちに対し怒りを向けることもなかったことは、幸いであった。 野良理教授のバラード 第六話:酒・酒・酒 (完)
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