CFM「空中分解」 #0191の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ある日教授は、その自転車に乗って町のパチンコ屋へ行った(何しろ教授は、 パチンコ大好き人間であった)。 その日、彼は珍しく勝って大きな紙袋をしっかり抱きしめて店頭の自転車置き場 へ戻ってきたのであったが、そのとき、一見ヤクザ風の三人の男達にとり囲まれ たのである。 「なっ、なんじゃね君達は」 「オッチャン、このチャリンコはどないしたんや?」 「どうしたのかじゃと!ワシがどんな自転車に乗ろうと、君達には関係なかろ う」 「ふざけんなようオッチャン、このチャリンコどこで手に入れたんや」 「なっ、何を言うんじゃ君達。これはワシが金を払って買ったもんじゃ」 「でたらめ言うんじゃないよ、これはわいのチャリンコや、この前ここで盗ら れたんや」 「す、するとこれは・・・・」 「そうや、オッチャン。盗ったのはおまえやな!」 鳴呼、なんと言うことだ。教授はこのとき事情が飲み込めた。そうか、あの学生 め、どうりで五百円とは安いと思った。あいつには絶対単位はくれてやらんから な・・・・等と考えるのであったが、とにかく今はこの場を切り抜けねばならな かった。 教授は泣く泣くパチンコでとった景品の数々と、自分の小遣銭のありったけを男 達に払うハメになったのである。 二台目の自転車は一年前に教授が町外れにある廃品置き場から拾ってきたもの であった。 (注:たとえ廃品を拾ってきたものであっても、黙ってそれを私有すれば、刑法 に抵触する。もっとも、大抵は黙って見逃してくれるであろうが) 教授は「ああもったいない。まだ使える物を捨てるなどと・・」嘆きながらも、 お陰で自分が得をしたという幸福感を味わっていたのであった。 前回に懲りて、今度の自転車は完全に塗装直しをしたのは当然であった。 この自転車は、最近まで使用していたが、これも遂に教授の手から去って行くこ とになった。 彼が町の駅前をこれに乗って走っていたとき、突然、この自転車の前輪が外れ るという、思いもかけぬ事故を起こしてしまったのである。 教授はもんどりうって路傍に投げ出され、外れた車輪は勝手に五十メートルも転 がって、最後に果物屋の中まで飛び込んでやっと止まったのであった。 彼は、衆人注目の中、華々しく臨終となった機械を背負って、とぼとぼとあの廃 品置き場迄、歩いて行かなければならなかったのである。只程高いものはなかっ たのである。 こんな訳で、教授がいま乗っている自転車は、過去の成行きに同情した彼の息 子からの、心温まるプレゼントであった。 今度ばかりはチンピラにすごまれる心配も、車輪を落とす心配もなく、楽しく走 り回ることが出来るようになった。但し、小さな事件が一つ作られた。 ある日のこと、いつものように野良理教授が朝早く大学へ向かおうと、家を出た ところ・・・、 「ない!」 自転車がなくなっていたのである。家族総出で捜したが見つからなかった。 仕方なくその日はタクシーで大学へ向かったのであったが、構内で車を降りた教 授は、そこで見覚えのある自転車を発見し同時に昨夜の記憶が蘇ったのである。 「そういえば、昨日は学部の会合があって、町の会議場からまっすぐ電車に乗 って家へ帰ったんじゃ」 その日の夕方、教授はその自転車で自宅近くの駅前まで走り、そこから歩いて 家まで帰ってきた。そうして息子にこう言った。 「おい、なんでも自転車泥棒って奴は盗んだ自転車を、よく駅前なんかに乗り 捨てて行くらしい。お前、ちょっと駅前駐車場辺りを見てきてくれんか」 野良地教授のバラード 第四話:野良理教授のバイコロジー(完)
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE