CFM「空中分解」 #0184の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
野良理教授の名声は金田町〜この町名にまつわる物語は第一話の中で述べたの で、読者はもう知っているだろう。あれ以外にも逸話は多々あるのだが、それは また、別の機会でもあれば紹介したい〜の住民のなかでは誰一人耳にしない者は なかった。だが彼の功名は残念にも教授としての功績とは余り関係のないところ にあるようだった。 それはそうとして、いかに教授が金田町界隈でその名を知られているかと云う、 エピソードがある。それは・・・ ある住民は(不幸にも)野良理教授のことを何一つ知らなかったのであるが、彼 はその為に町中の者から「モグリ」のレッテルを貼られ、「こんな奴とは口もき きたくはない!」とも言われて、ついに村、いや町八分にされてしまったという のであった。 野良理教授はこのように有名な人物であったのであるが、彼の名をこの上弥が上 にも高めるような大事件が起きてしまったのである。 その事件が起きた翌日の新聞の片隅には、次のように記されていた。(勿論それ は地方紙のその又地方版であったが・・) 見出しは『五才の坊や・老人を救う』とあった。 ここで言う「老人」とは勿論、野良理教授その人であった。(この表現に怒った 当人が、新聞社に記事の訂正を求めて掛け合ったのであるが、認めてはもらえな かった) ○月◎日の午後を少しすぎた頃、世田谷区金田町で散歩をしていた、野良 理秀右衛門氏(六三才)H大学教授は、路上に設置してあった清涼飲料水 の自動販売機に左手首を挟まれ軽傷を負うと言う、珍しい事故に遭った。 現場には、この事故をひと目見ようとして、およそ百人ほどの野次馬が集 まり、一時は付近の交通が渋滞するほどであった。事故発生から一時間後 に通報を受けた消防署のレスキュー隊が到着したのであるが、この種の救 助活動は前例がなかったために対応に窮していたが、野良理氏が連れてい た孫の秀太郎ちゃん(五才)の機転によって、氏は無事に救助された。な お、事故の原因は被害者の野良理氏の証言があいまいなため、現在のとこ ろ不明である。都は今回の事故を重視し、二度とこの様な事故が発生しな いように、自動販売機メーカー及び設置業者に対し厳重な注意を促した。 新聞の伝えるところは概ね以上のようなところであったが、読者の為にここで当 日の出来事を再現してみよう。 野良理氏はその日、孫の秀太郎君を連れて裏町の散歩を楽しんでいた。教授は そのとき非常に喉が渇いてきたのであった。 折しも、その路上にジュースの自動販売機が置かれてあるのを発見した彼は足を 止め、秀太郎君にこう語りかけた。 「秀太郎、おまえ、喉が渇いたろう?」 「ううん、おじいちゃん。ボクちっとも・・・」 「あっ、ああそうかい。でもきっともう直ぐ渇いてくるよ。おや?、丁度こん なところにジュースの自動販売機があったよ」 等と言って、彼はおもむろに自販機の中に百円玉を投入したのであった。 ところが次の瞬間、野良理教授の顔が苦痛に曇ったのであった。 「ないっ!」 おそらく読者にも、こんな経験の一度や二度はあるだろう。ところが教授の場合 は、日頃余り自動販売機などという、文明の利器に接しない性格であったため、 このときの驚きは我々には想像できないくらいのものだったのかもしれない。 ・・・機械の中は見事に空であった・・・ 野良利教授のバラード 第二話:恐怖の自動販売機(つづく)
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