CFM「空中分解」 #0089の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
藤代教頭が突然立ち上がってヒステリックな声をあげた! 「犯人はこの中にいるとでも言うのか!」 「ええそうです、そして...その犯人は貴方よ!!!」 絵美の指さしている先には国体選手で体操教師の玉井孝がいた。 「どうして僕がそんな...デタラメもいいかげんにしたまえ!」 青ざめた顔で無理に笑顔をつくって玉井孝は答える... 「いいえ、先生はあの時体育館から、渡り廊下を通って私達の跡をつけていたのです。 ただ練習熱心にも犯行の直前まで鉄棒をしていたのが間違いですわ。 よく拭いたつもりでしょうけど、滑り止めの粉がユニホームに付いている事までは 気が付かなかったのです...私のスカートにはっきりと粉が付いていました」 「デタラメだ!」 玉井教諭が、立ち上がって叫んだ! 「先生、もう覚悟してください...先生のはいている、そのスリッパの穴は、 理科準備室にあったスリッパのものです...どう説明されるおつもりですか? スカートの粉も、なんの粉か警察で調べてもらってもいいんですよ?」 あくまで静かで冷静な絵美の声が続く... チッ!と舌打ちの音がしたかと思うと、いきなり出口に向かって走りだした... 横合から佐々警部と警官2人が飛びかかって乱闘になったが、玉井はほんの2−3分 で押さえられて手錠をかけられ、外に連れて行かれた。 乱闘の後で息を荒くしている佐々警部が絵美の肩に手を置き、話しかける... 「どうして、犯人が分かったのかもう一度よく教えてくれないかな?」 「簡単ですよ、学校で使う白い粉っていえばチョークか鉄棒の滑り止めの粉くらいしか ないけど、チョークの粉なんて手だけしか付かないから誰でも付いたことが分かれば 手を洗うわ。 でも鉄棒の滑り止めならトレーニングウェアに、すごく付くし白いユニホームでは 体に付いたことすら分からないでしょ?だから体操の玉井先生があやしいな?って 思ったの」 「スリッパは?」 「あれは俊江が思いだしたんだけど、俊江ってドジでしょ?それで試験前日の化学の 実験の時、劇薬を一滴こぼして自分のスリッパの先に小さな穴を 明けちゃったんです、 叱られるから理科室のスリッパと内緒で取り替えたんですって」 「ハハァそれがこの前理科室に来た時、 スリッパに穴が無いので不思議に思った訳か?」 「ご名答!で、さっきは俊江がそれとなく先生がたのスリッパを調べて犯人を 突き止めたって訳!さっき先生方の座っている横を通る時、 私にウインクして犯人を教えてたの分かりませんでした?」 「いや、全然気が付かなかった...ところで警視総監賞は欲しいかな?」 「それって小遣いになるの?」 絵美が瞳を輝かせた。 「ならないよ...小遣いに不自由しているのかね?」 「ええ、そりゃもう俊江と二人で売春やりたいくらい!」 絵美はガッカリした表情を露骨に見せてショッキングな事を口走った。 佐々警部の驚いた顔... 一夜明けて、日曜日も返上の愛知県警の取調べ室では... 「死体に水なんてかけませんよ..慌てていたし蛇口を取り替えるのがやっとでした、 もちろんその場から逃げて帰りました...実習室の鍵?そんなもの知りませんよ、 今更隠しだてなんて、する訳ないでしょう」 「なぜ殺したんだ...しかも流しで溺れさせるなんて...」 「あの女は、この俺に体力だけで、デリカシーの無い男は大嫌いだと言いやがった.. いまさら同僚のところなんかに嫁にいかれてたまるものか...」 「可愛さ余って憎さ百倍というやつか...」 玉井孝が、絵美を襲った凶器も、新体操のコン棒で、水道の蛇口に後藤教諭の指紋が 付着していた事も総て疑いを恋仇に向けさせるためのものであったことを自白していた。しかし死体に水をかけて、滑り止めの粉が被害者についた事を隠ぺいする工作に ついては、実に頑強に否定するのだ... しかも家庭科準備室で毛利美保を殺してから、おお慌てで逃げたので戸なんか締めた 事は覚えていないし、鍵なんて知らないとの事である。 毛利美保を流しで溺死させたことは認めているのだから、これ以上隠す必要もなく、 まんざら嘘でもなさそうなので佐々警部も困ってしまった。 日曜日なので、遅く起きてきて、朝食を食べながら新聞を読んでいた俊江は..... 「俊江!なんですか食事時に新聞なんか読んで!行儀が悪いですよ」 「だって私の学校の先生が殺人犯人なんだもの、興味あるわよ...」 「人の殺し方だけは学校で習わないようにね」 「はいはい...毛利先生も二股かけるからドジったのね... キレイな花には刺がある...って事か、私も気を付けなくちゃ」 そのころ、絵美の家に佐々警部から電話が入っていた。 「いやあ...警察の恥を話すようだが、被害者をズブ濡れにした覚えはないと 犯人の玉井が、じつに頑強に否定するのでね..まんざら嘘でもなさそうだし... 家庭科準備室の鍵も掛けた覚えはないと主張しているんだ..困ってねぇ」 困惑しているのが、ありありと見て取れる声の調子であった。 そうなると絵美としても、もう一度推理をしなおして見る必要がある... 自分の部屋でベッドに寝ころびながらカセットデッキにテープをセットして60年代の ポップスでカスケーズの『悲しき雨音』という曲を聞きながら推理を展開してみた。 音楽をベッドで聞くのは、絵美の考えごとをするときの癖である... 「ええっと、まず死亡時刻は夜の8時前後...そして発見は朝の7時に用務員さんと 教頭先生、家庭科準備室は鍵がかかっていて用務員さんでは戸があけられなかった のか...あの日、午後8時頃には..たしか雨が降っていたはず... 後藤先生は6時頃別れて、帰った... すると午後6時から8時の間に玉井先生が毛利先生を殺してから何が起こったか?」 ベストものの60分のカセットが終わりに近付き、 ビーチボーイズの『サーファーガール』に移るころ絵美の推理は、だんだんと形を作り 上げてきた... なにか、おかしい事がある...それが具体的な形になってきたのは、 それから一時間も後だった。 「そうか!そこがおかしかったんだ!!」 ヘッドホンを投げ捨てると部屋のドアを開けて階段を走り降りた、その時! ガラガラ!ドシーーン!! ものの見事に階段から足を踏み外し、お尻で7−8段滑り落ちて顔をしかめた... 尾底骨をイヤというほど打って、しばらくは声もでない... 「事件が解決するまで命があるかしら?」 お尻をさすりながら独り言をいう... 母親がデパートに行っていたのが、せめてもの幸いである...肩の怪我に加えて、 足でも折ったらどんなに心配するか... いや、どんなに小言を言われるか知れたものではない。 やっと玄関の脇にある電話の受話器を取ると、愛知県警の番号をダイアルした.. 「もしもし、警部さん?なんとか糸口が分かったんですけど、 明日授業が終った頃、学校に来ていただけません?」 佐々警部は、すぐにも聞きたそうであったが、しぶしぶ翌日という事を承知した。 月曜日は、まさに秋晴れという天気で、空の高い所にはウロコ雲が流れていた。 試験の後なので採点の終った科目から答案が返された。 「俊江、数学はどうだった?」 俊江は、いかにも落胆したようにオーバーな仕草で肩を落とした... 「もう駄目...我が恋は答案用紙とともに去りぬ...よ」 「随分ロマンチツクなものと一緒に失恋するのね、まさか0点って事はないでしょ?」 「かぎりなく近いわ...」
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