CFM「空中分解」 #0044の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
男は確信した。 あの噂に間違いはない。彼は、鈴木教授は明らかにあの新薬を 完成させたに違いない。これは、俺の泥棒としての、カンでもあ るのだ。 男は準備を万端整えた。もちろん鈴木教授の研究所に忍び込む ための準備だ。そしてあの新薬を使いこなすための...。 かねてから、教授が飲んだ人間が透明になってしまうという、 脅威の新薬を作ろうとしている事は、知るひとぞ知るところであ る。ただそれはまだまだ実用化にはほどとおいという話であった。 しかし、男はついに聞いたのだ。教授が新薬を完成させたと. ..。 もしかしたら、それはただのデマかもしれない。しかし彼の泥 棒としての長年のカンがそれは真実だと告げていた。そして作戦 決行の日は今日の夜...。 夜が来た。 彼は泥棒ルックに身を包み、七つ道具を持って教授の研究所に 忍びこむ。(今どきこんな格好をしている方がよっぽど怪しまれ るが、彼は長年の習慣を決して改めようとはしない。) こんな所へ忍び込むのはおてのもの、手慣れた仕種で道具を使 うと、いとも簡単に中へ入る事ができた。 中は真っ暗だ。教授はもう自宅に帰ったのだろうか。 静かに辺りをうかがいながら前へ進む。中は外から見たより、 狭く、そしてみすぼらしかった。 そして、ついに彼は薬品庫に辿りついた。 G−28 彼がまえもって調べておいた、透明になれるという新薬のナン バ−だ。 G−28..G−28..G−...G...。 あった!! そのビンには間違いなく、G−28と書かれたラベルがはって あった。歓喜に震えながらビンの蓋に手をかける。そして、口を つけると...。 「待った! 」 部屋の中が急に明るくなった。部屋の入口には鈴木教授が立っ ている。 チッ! 彼は心の中で舌打した。いたのか..。しかしここま でくればもうこっちのものだ。 男は教授にかまわずそれを飲みほそうとした。 「や、やめろ! それはまだ完壁じゃないんだ! それにおまえ がどうしてもそれを飲むと言うなら、俺は秘密を守るため、おま えを撃ち殺さねばならんのだ! 」 教授の手にはピストルが握られていた。 教授は顔面蒼白、ひきつった顔に冷汗が流れている。ピストル を持つ手もこころなしか震えているようだ。 男はピストルを見て一瞬たじろいだかに見えた。しかし彼は不 敵な笑いを浮かべていった。 「撃ち殺すだと? 馬鹿な! 姿の見えなくなった俺をどうやっ て撃つというんだ。さあ! 撃てるもんなら撃ってみろ! 」 男はそう叫ぶや否やそれを飲みほした。それと同時に、彼は計 画どおりありとあらゆる衣服を脱ぎ捨てた。七つ道具も..。 そして、男は完壁に消えたのである。 彼は自分の手を見ると、消えたことを確信し満足そうにうなず いた。(もちろん見える筈はないのだが...。) 「どうだ! 消えたぞ! 撃てるもんなら撃て! もうこれで俺 は完壁な泥棒だ! 」 男はそれだけ言うと黙りこんだ。声で居場所を発見されるのを 防ぐためだ。 しかし今度は教授が不敵な笑みを浮かべた。 「泥棒君。君の今日の夕食はカレ−だっただろう? 」 図星であった。彼は教授がなぜそんなことがわかるのか不思議 に思ったが、みつけられてはたまらない。男はひたすら黙ってい た。 「おまけに君はひどい便秘だろう? その様子じゃ十日は出して ないな。」 これまた図星だ。少々不気味に思いながらも、彼は黙っていた 「いたしかたない。それでは死んでもらおう。」 そう言うと教授は微塵の迷いも見せずに、銃口をピタリと男に 合わせた。 「なぜだぁっ!! なぜ俺の居場所がわかる?! 」 男はおもわず絶叫した。 銃声がとどろいた──。 そして、悲痛な叫びをあげると、彼は倒れた。即死。(もちろ ん見える筈もないが...。) 教授は男の死体を見おろしながらつぶやいた。 「馬鹿なやつだ...。この薬を使うにはな。絶食と...こい つが必要不可欠なのさ。」 教授はそう言うと、イチジクかん腸を握りしめながら部屋の奥 へと消えていった。 そしてそこには...男の死体ならぬ、胃液にまみれたカレ− ライスの残骸と、十日分の宿便が、痛々しくも転がっているばか りであった。 <Fin.> *感想、批評等いただければさいわいです。 そのさいには「フレッシュボイス」によろしく。 もちろん直接メ−ルででもかまいません。 よろしくお願いします。 というわけで YHB58543 COTTEN SMITHでしたっ!!
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