CFM「空中分解」 #0037の修正
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軽いジャズピアノの音が部屋の中に満ちている。 くくくっく、と独りで笑う。長い夜はいつもこうしてふけて行く。 「聞いてるの」 電話の向こうの声は生彩を欠いている。 「んん」 「頭が変になりそう」 「どんな風に」 「 何か 熱を持って、気が狂いそう」 べつにあなたの気が狂おうと私には関係ない。くくく、また少し 笑いながらウィスキーのグラスをとる。私は小さな悪意と嫌悪の中 に生きている。文学的な深刻かつ有意な状況を考えているのではなく、 自然とそういう環境に慣れてしまっているのだ。心にもない意地悪な 声が私を動かしている。暖かいように見えて、とてつもなく冷酷な 言葉を平気で口にする。 「どうかしたの」 「嫌なのよ、なにもかも」 「よくわからないな、」「なにかあったの」 「そうじゃなくて、 」 甘えているのだろうか。 煙草に火をつける。考えがまとまらない。なにを私に期待している のだろう。言葉がみつからない。 「それで あなたに電話を 」 「電話を」 受話器を持つ手は白く冷たい。 「聞いてくれる 」 私は受話器を置く。くくくと笑いながら。
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