◇フレッシュボイス2 #2099の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
・『ワトソン力』(大山誠一郎 光文社) 17/6551 刑事の和戸は、事件解決率驚異の一〇〇パーセントを誇る部署の栄えある一員であ る。ただし、彼自身は特にこれと言って事件解決に顕著な働きを見せたことはない。毎 回、回りの者が普段にない推理力を発揮して、事件を解決する。実はこれ、和戸の持っ ている特殊な力――周りの者の推理力を飛躍的に向上させる――ワトソン力のおかげで あると、和戸自身は知っている。 そんな和戸がはっと目覚めると監禁されていた。彼はあれこれ考え、かつて関わった 事件の関係者に犯人がいると想像する。犯人は関係者として事件を通じてワトソン力の 存在を確信し、それを利用しようと企んだのだ。五つの十字架を書き遺した射殺体、停 電になった展覧会での殺人、令嬢の婿選びの場での毒殺、雪の日の密室、飛行機内や長 距離バス内での殺人……いったいどの事件の誰が、監禁犯なのだろう? 本書のタイトルの読み方は「わとそんりょく」であって、「わとそんりき」や「わと そんぢから」ではなく、ましてや「わとそんか」なんて以ての外。(^^; 実にユニークな連作短編集。短編一つ一つの出来映えも一定水準をクリアして、満足 いく物を揃えるだけでも大変なのに、ワトソン力という設定上、いくつもの真相候補を 用意せねばならないという難題もちゃんとクリアしている。そんな多重解決ものを複数 用意し、全体を通しての謎の方もきれいに解決される。ワトソン力の設定を活かしてい るところも素晴らしい。一つ一つの事件に関して、いかにも本格なこってり感は乏しい ものの、これって裏を返すと、あれこれいじくり回すための用意周到な薄味って感じ。 ミステリでは長編よりも、(連作)短編の方がさらに書くのが大変な場合がある見 本、かもしれない。 ではでは。
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