AWC ●連載



#1157/1165 ●連載    *** コメント #1156 ***
★タイトル (sab     )  22/10/14  17:00  (109)
ニューハーフ殺人事件21    朝霧三郎
★内容                                         22/10/24 14:04 修正 第5版

副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。
まず、何故シニフィアンに跳ね飛ばされるのか。

警視に会って緊張したから、どっかこ洒落たカフェでリラックスしていこう
という事になって、
丸の内1stのパーキングエリアに警察車両を駐車すると、
三菱UFJ信託銀行本店の1階にある「DEAN & DELUCA カフェ丸の内」に入った。
天井が高いガラス張りの空間。
入り口のカウンターで、ブレンドコーヒーとパンプキンチョコチップケーキを
トレイに乗せて窓際の席へ。
「すごーい、お洒落」と明子巡査はきょろきょろしていた。
「私は本当にこういう、お洒落な空間が苦手で、
一昨日の現場のタリーズみたいなカフェですら苦手なんですよぉ。
大学も中大で田舎ですから、お洒落な都市空間が苦手で、
就職の時にも品川のオフィス街とか、ミクシィのある渋谷スクランブルとかにも
行ったけれども、
それこそ、だるまストーブと木の床ではない空間だから、
もう、自分の身体、特に胃腸が、そういうお洒落な空間を苦手にしていたんですよ」
店のカウンターの方を見ると、若いOL3人が財布だけもって買い物に来ていた。
カフェラテにクッキーを買うと、テイクアウト。
「三菱UFJ信託本店のOLさんですかね」と明子巡査。
「いやー、3時だから銀行員って事はないんじゃない? 
どっか、近所のOLだろう」
タイトなスカートでお尻ぷりぷりで、高いヒールを履いている。
「私、ああいうお姉さんにコンプレックスがあるんですよ」と明子巡査。
「こんな化学系建材の都市空間に居て、
コーヒーとクッキー食べて、うん○もぶりぶり平気でする、という。
自分の身体というエロス的なものと、
化学系建材というタナトス的なものの調和に優れているという感じがして。
だって、すごいと思いません? 
大理石みたいな柄の化学系建材に囲まれた空間で、
コーヒーとクッキーを買って、
おちょぼ口から胃腸に流し込んで、
今度はTOTOのウォシュレットのあるトイレに行って肛門から出すというのは」
と繰り返した。
「ああいうOLが、表参道のブランドショップでブランド品を買うんだ、
と思いますね」
「俺も似た様な経験をした事があるよ」と光男は言った。
「俺は埼玉のJ大学というFラン大学にいたんだが、
Schottのムートンジャケットを着ていたんだな。何故か。
Schottならブランド品だと思って。
それを着て、埼玉のJ大学から電車で、伊勢丹メンズ館まで行って、
クロムハーツのショップで、革ジャンを見ていたら、
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、60万円?
店員が出てきて「手が出ないでしょう」と言ってニヤついていやがって。
チャラ男の店員が。
「そのジャケット、豚革?」と俺のジャケットを指さす。
「豚革でしょう」と俺の顔に向かって豚革、豚、豚と連呼する。
俺には豚革が似合いだとでも? 
ふざけやがって。ショップの店員の癖に。
あのクロムハーツの革ジャンは松本人志とかが着ているのかなぁ。
それ以来伊勢丹メンズ館的なものが苦手になったよ。
それは、明子君の表参道のブランドショップみたいなもの?」
「そういう伊勢丹メンズ館とか、このディーンアンドデルーカとか、
三菱UFJ信託のオフィスとか、そういう都市空間の事を、
シニフィアンって言うんですよ。専門用語では。
それでその中で消費生活に戯れている限りは安定しているんですね、
精神分析的には。
でも、私はダメでしたね。私は胃腸が信じられない、という感じで。
タナトスな空間で自分のエロスな身体を維持するのに自信がなくて。
おちょぼ口でクッキーを食べてコーヒーを飲んで、
肛門から排泄して綺麗にウォシュレットで洗浄するという。
なんでミツさんはダメだったんですか?」
「俺はニキビだな。あの時、ニキビが出来ていた」
「そういうのも、精神分析的には、「母へのおねだり」なんですよ」
「俺は、母親に何もねだっていないよ」
「「母へのおねだり」というのは、おっぱいが出たり出なかったり、
うん○が出たり出なかったり、ニキビがあったりなかったりで。
つまり、身体とか脂肪とか、ぽちゃぽちゃぽちゃしたもの、エロス的なもの
に関わる事なんです。
都市空間に行くとそういうのが気になっちゃって。
そういうのを無くすために拒食症になる。
脂肪を全て無くせば、あったりなかったり、というのはもう起きないから。
母の愛があったりなかったり、というのはもう無いから。
斎藤警視の言葉で言えば、海馬的ではない、という感じで、尾状核的ですかね」
「ところで、品川のオフィス街とか行ったのに、何で警察官になったの」
「それは、都市空間はタナトス的で、エロスな身体が不安定だったから、
だから、桜田門に就職したという…」
「何で桜田門だと堂々としていられるの?」
「それは例えば
大東亜共栄圏の旧日本陸軍みたいなもので、「神の死」がないというか、
ナチスの親衛隊だったら軍服自体がアイデンティティになるから自信満々ですよね」
「よく分からないが」
ずずずずーっとコーヒーをすする明子巡査。
(30代、大宮ハリウッド座に通っている頃、ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、
へー、どこの誰?という感じだった。
その頃、素人もやらせるどうかと思って素人にも手を広げて行って、
5、6人と付き合っていた。
そうしたら、なんとこの俺の誕生日をアンナミラーズで祝ってくれた、女が3人で。
俺一人の為に。
その時、面倒くさいな、大宮ハリウッド座でジャンケンに勝ちさえすれば
すぐにただまんにありつけるのにこんな素人と絡んでいるのは、と思った。
その頃は伊勢丹メンズ館もなんとも思わなくて、ポロショップで、
試着が出来ない筈の被り物のシャツなど、何枚も着散らかしても平気だった。
なんたって、桜田門だからなあ。
桜田門の警察手帳を内ポケットに入れていれば、
ナチスの親衛隊の軍服を着ている様なもので、
伊勢丹メンズ館なんて屁とも思わなくなるのかもな。
しかし、今も桜田門だけれどもそんな元気はない。
加齢によって、シニフィアンとやらに弱くなるのかな。
或いは、金さえあれば、銀座の天ぷら屋や寿司屋に行ったりするのかもな、
小津安二郎の映画に出てくるジジイみたいに)
「つまり」と光男は言った。「シニフィアンというのは都市空間みたいなもので、
それはタナトスな空間だから、エロスに自信の無い人には居心地が悪い。
胃腸に不安があるとか肌が荒れているとか。そういう事か?」
「そんな感じですね。それでシニフィアンに跳ね飛ばされて引きこもる」
明子巡査はずーずずずっとコーヒーをすすった。





#1158/1165 ●連載    *** コメント #1157 ***
★タイトル (sab     )  22/10/25  13:56  (109)
ニューハーフ殺人事件22    朝霧三郎
★内容

副題:シニフィアンに跳ね飛ばされると最後はアナルに走る。
何故シニフィアンに跳ね飛ばされたのにシニフィアンを気にするのか。

「だったら、静かにアパートに引きこもっていたいのに、何で気になるの?」
「何が、ですか?」
「さっき、ミクシィ本社の入っている渋谷スクランブルとか言っただろう」
「はい」
「そう聞いただけで、ミクシィだけじゃなくて、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とか、
そういうのが、びびびびびーっと連鎖するのだけれども。
それは、西武が気に入らないとか、野田秀樹が気に入らないとかと
同じ感覚で、何でそんな事が起こるんだろう。
シニフィアンに跳ね飛ばされたのなら、
静かにアパートに引きこもらせてくれればいいのに」
「それはそういうものなんですよ。
私は都市空間がダメで、
就職の時に品川のオフィス街で目が回ったんですけど、
それより4年前、受験の時に、代ゼミに行ったんですけど」
「代々木ゼミナール?」
「ええ。
夏休みに抜け駆けして、友達には黙って、代ゼミに行った事があったんです。
そうしたら、すごいストレスで。
山手線なんて乗車率190%とか。
教室もすし詰め状態で。
それで嘔吐恐怖症になったんですね。
吐くんじゃないかという強迫観念に襲われたんです。
それで、近所の心療内科に行って、
それは1週間ぐらいで落ち着いたんですけれども。
1週間ぶりに駅前に行って、当時はまだ駅前に啓文堂とかあったんですけど、
書棚を見たら、新潮文庫の100冊とかがずらーっと並んでいたんですね。
それを見て、自分は新潮文庫の10冊も書かなければならないと漠然と思ったんです。
それと同時に、マザーテレサとか神谷美恵子とかジョン・レノンみたいに、
世界平和の為に活躍しないといけないと思えてきて」
「おいおい、それが、「渋谷で働くアメーバーブログの社長」となんの関係が
あるんだよ」
「だから、ミツさんだって、伊勢丹メンズ館でバカにされて、
埼玉の田舎に引きこもった時に、
西武が気に入らないとか野田秀樹が気に入らないとか出てきたんでしょ?」
「ああ」
「その時に、何かにハマったものありません。
オタク系のものでも、私の新潮文庫の100冊みたいなものでも」
「そういえば、俺、今でもボクシングジムに通っているだろ」
「はい」
「ボクシングに最初にハマったのは、あの頃だなあ。
ボクシングマガジンの別冊のボクシング年鑑にハマって
ボロボロになるまでページをめくったよ。
特にヘビー級のボクサーが好きで、
フレージャー、フォアマン、スピンクス、ホームズとかね」
「へー。正にそういう感じですよ。
シニフィアンに跳ね飛ばされた時にデータベースにハマるんですよ。
それがお経だとカルトにハマる。
ところが、新潮文庫の100冊にしろ、ボクシング年鑑にしろ、
そういうのは、ラインナップとして用意されたデータベースではなくて、
人間の脳が尾状核的だから、連鎖していってしまうものだと思うんですよ」
「おいおい、尾状核なんて斎藤警視の言っていた事じゃないか」
「でも、ああいうネズミの実験とか、心理学科でも結構有名で、
認知心理学も認知科学も似ているから知っているんですよ」
「へー」
「だから、ミツさんが、ミクシィ、とか、
「渋谷で働くアメーバーブログの社長」とか「はてな」とかが連鎖しちゃうのも、
尾状核的な人間だからですよ」
(俺が尾状核的な人間か。
そうかもな。
何しろ夕べアリスに感じちゃったんだから、
池袋や京都のガイシャに近いのかもな)
「渋谷といえば、渋谷系の音楽ってあるじゃないですか。
「フリッパーズ・ギター」とか「ピチカート・ファイブ」とか。
知ってます?」
「知ってるよ。時代だもの」
「あれって、リミックスサンプリングって言われるじゃないですか。
なんかのデータベースからカットアンドペーストしてきているって。
あれって、90年代になると、色々なストレスが増えたから…、
それこそ、だるまストーブや木の床から、化学系建材の建物になった、とか、
だから、尾状核的になって、それで連鎖しているだけじゃないかと思って」
「そんなに難しい事じゃないよ。
俺は61年生まれで90年代に30代だったが、
その頃給料も増えてきたから車も買って、
カーラジオはFMで、
J−WAVEが流れてきて。
タワーレコードが井之頭通りからファイヤー通りに移ってきた頃だけれども。
あの頃に金、土、日と遊んで
夕方に「サウジサウダージ」を聞きながら帰ってきたんだよ。
あの頃を忘れられる訳がない。
それが今や、J−WAVE、六本木ヒルズ、滝クリ、JAL「サウジサウダージ」が
セットになって、陰のシニフィアンになっているんだからなぁ。
シニフィアンに陽と陰があるなら」
「そりゃあ、一見セットになっている様に感じますが、
実は、ミツさんが尾状核的だから連鎖しているだけなんじゃないんですか?」
「じゃあ聞くが。
90年代、大宮ハリウッド座にハマっていた頃、
ホリエモンとか酒鬼薔薇とか、社会を騒がせている存在が、どこの誰ですか? 
って感じだったのは何故? 
何で尾状核的に連鎖しなかったの?」
「そりゃあ、そのストリップ劇場で、まったりとしていれば、
海馬のニューロンの受容体にまったりイオンが流れてきて、
受容体をふさいでしまうから、
もう、尾状核的なイオンは流れないんですよ」
「ふーん」
「私、池袋や京都のガイシャも、ミツさんの言う陰なシニフィアンに
尾状核的にびりびりしていた奴じゃないかと思うんですよね」
突然明子巡査は事件の話をしてきた。
「池袋のガイシャはA/X ARMANIで、京都のガイシャはメンズビギ
ですからねえ。そういう感じがしますね」
(池袋のガイシャは大宮ハリウッド座からリブレ高田馬場に行っている。
俺もガイシャも尾状核的な人間なのだろう。
何しろ、昨日アリスに感じちゃったんだから。
というか、どうして尾状核的な人間だとアナルで感じるんだろう)





#1159/1165 ●連載
★タイトル (AZA     )  25/11/02  17:15  (134)
ある試作その1   原案・文章:某AI 原案・編集:永山
★内容
前置き
 今回は、とあるAIに執筆してもらった短編小説をUPしてみます。
 用いたAIの規則・規約によると、「生成物は利用者のものでもあるし、AIを提供
している企業のものでもある。そして利用者は自由に利用できる」とのことなので、こ
こへ載せても大丈夫と判断しました。
 UPする箇所はとりあえず、プロローグから第一章の終わりまでで、AIが出力した
小説本文に私はなるべく手を入れていません。代わりと言っては何ですが、おかしな箇
所に指摘を入れています。かつてよくしていた指摘付き感想と同じですね。
 今回指摘した点が、AIがやりがちなミスなのか否かは分かりませんが、推敲時に注
意すべき傾向は何となく見えてくるかもしれません。

 ―― ―― ――

プロローグ

 東京湾の沖合に浮かぶ人工島――神谷アイランド。
 その姿は、夜の海に浮かぶ孤島のようでありながら、実際には本土と長大な橋と海底
トンネルで結ばれている。
 だが、橋を渡る車は少なく、島に住むのは神谷《かみや》家の人間と、数人の使用人
だけ。
 外界から隔絶されたこの場所は、静けさと緊張感が同居する独特の空気に包まれてい
た。

 神谷邸は島の中央に建つ。
 重厚な石造りの外観と、最新鋭のITセキュリティが融合した邸宅は、まるで近未来
の要塞のようだった。
 広い敷地には小さな庭園があり、季節ごとに手入れされた花が咲き誇る。
 邸宅の窓からは、東京湾のきらめきと、遠くに浮かぶ都市の灯りが見える。
 夜風が静かにカーテンを揺らし、部屋の隅に置かれた白い陶器の植木鉢には、季節の
花が咲き誇っている。
 ↑
編集者註.「咲き誇る」の表現が短期間に二度続いている

 神谷由紀子《かみやゆきこ》――この邸宅の主であり、神谷グループの総帥。
 彼女は毎朝、植木鉢の花を手入れし、花びらの落ち具合や葉の色に目を配るのが一つ
の日課だった。
「今年はよく咲いてくれたわね」
 そうつぶやきながら、由紀子は花びらを一枚一枚摘み取り、静かに微笑む。
                       ↑
              編集者註.異様な行動に思える。伏線ではありません
 その姿は、厳格な経営者というよりも、むしろ一人の繊細な女性のようだった。

 だが、島の静寂の中には、どこか張りつめたものが漂っていた。
 神谷家の人々も、使用人たちも、誰もがどこか緊張した面持ちで日々を過ごしてい
る。
                   ↑
             編集者註.「どこか〜」の表現が短期間で連続している
 外部からの訪問者はほとんどなく、時折、荷物を運ぶ業者の車が橋を渡ってくるだけ
だ。

 この島には、もう一つの特徴があった。
 緊急時には、専用の非常通報システムが本土の警察・消防と直結しているが、パト
カーや救急車が橋を渡って到着するには、どうしても時間がかかる。この“時間差”こ
そが、外界から隔絶されたこの場所の最大の特徴だった。

 ――やがてこの島で、一つの密室殺人が起きることを、まだ誰も知らなかった。


第一章 前夜

「最近、社長の様子が少し変なんです」
 家政婦の三浦玲奈《みうられいな》は、夕食後の片付けをしながら、同僚の警備員に
小声で漏らした。
「夜中に何度も窓を確認したり、カーテンを閉め直したり……」
「まあ、あの人は員は苦笑いを浮かべ、食器を丁寧に拭いた。
        ↑
編集者註.台詞が途切れ、次の文と一緒くたになっている。想像するに、
>「まあ、あの人は神経質なところがありますからねえ」
> 警備員は苦笑いを浮かべ、食器を丁寧に拭いた。
 だと思うのですが、そうだとしても警備員が食器を拭くのかと疑問



 ダイニングには、まだ食事の余韻が残っていた。
 由紀子は食後の紅茶をゆっくりと口に運び、窓の外をじっと見つめている。
「玲奈さん、明日の朝も花の水やりをお願いね」
「はい、承知しました」
 三浦は小さく頷き、由紀子の背中にそっと視線を送った。
 その横顔には、どこか疲れと不安が入り混じっていた。

 リビングでは副社長の俊一《しゅんいち》がノートPCを開き、明日の会議資料を確
認している。
「社長、明日の会議資料はこちらにまとめておきました」
「ありがとう。あなたも早めに休みなさい」
「はい……」
 俊一はどこか落ち着かない様子で、何度も資料を見直していた。

 ガレージでは大友直樹がドローンのバッテリーを交換していた。社長の秘書を務める
ようになって長いが、業務でドローンをいじるようになったのは最近のことだ。
(この機体、昨日のテスト飛行のか。プロペラに小さな傷がついてしまってる)
 大友はプロペラを外し、慎重に新しいものと交換する。
(社長は最近、ドローンの操作に夢中だ。まるで、新しいおもちゃを手に入れた子供の
よう)
 ガレージの壁には、由紀子が自ら撮影した空撮写真が飾られている。
 彼はふと、窓の外の夜空を見上げた。普段よりも星がよく見える気がする。声が出
た。
「明日は晴れそうだな……」

 夜の邸宅は、どこか不穏な静けさに包まれていた。
 廊下を歩く三浦は、カーテンの点検を終え、由紀子の部屋の前で足を止める。
 ドアの隙間から、淡い明かりと書類をめくる音が漏れている。
「……おやすみなさい、社長」
 三浦はそっとつぶやき、ドアノブに手をかけた。
 中からは、花の香りが微かに漂ってきた。
 彼女は思い出したように、「明朝は、植木鉢の花の水やりも忘れずに」と自分に言い
聞かせる。

 自室に戻る途中、三浦は廊下の窓から夜のくに見える都市の灯りが、波間に揺れてい
る。
                    ↑
           編集者註.何かが脱字している。想像を逞しくするに……
                「夜の海を挟んで遠くに見える」かな?
「この島も、昔はもっと賑やかだったのに……」
 彼女はふと、かつての神谷家の賑わいを思い出した。
 由紀子がまだ若く、家族が集まっていた頃の記憶。
 今はもう、静寂と緊張だけがこの邸宅を支配している。

 寝室に戻った三浦は、ベッドに腰掛けて深く息をついた。
「明日は、何事もありませんように……」
 そう祈るように目を閉じた。
(この時、彼女の胸に“殺意”は、まだ影も形もなかった――)
           ↑
 編集者註.今回分で一番驚き、呆れたのがここ。「犯人は三浦」と分かってしまう。
叙述トリックではありません。AIへの入力では、「本格ミステリを注文し、かつ、倒
叙ミステリを求めてはいない」のに。何ら工夫することなく、犯人の心理描写をスト
レートにやってしまうなんて、このAI、ミステリを分かっていないなあ。(^^;

 以上になります。
 文章そのものが味気ないのはとりあえず棚上げとしても、この出来映えはかなり厳し
いというのが正直な気持ちです。
 続きは、いずれ指摘付きでUPするかもしれません。面白いつっこみどころがあれば
いいのですが。(^^)

 ではでは。




#1160/1165 ●連載    *** コメント #1159 ***
★タイトル (AZA     )  25/12/02  17:51  ( 99)
ある試作その2   原案・文章:某AI 原案・編集:永山
★内容
前置き.ということで、第二章です。前回と似たようなおかしな箇所が散見、否、頻出
していると感じました。AIならではのミスって感じはしないし、面白みもあんまりな
いです。


第二章 事件当日

 朝の神谷アイランドは、春の陽射しに包まれていた。海から吹く風はまだ冷たく、邸
宅のガラス窓にはうっすらと水滴が残っている。
 三浦玲奈は、目覚ましのベルが鳴る前に静かに目を覚ました。制服に着替え、廊下を
静かに歩く。キッチンでは若いメイドが朝食の準備をしていた。

「おはようございます、三浦さん」
「おはよう。パンケーキの生地はできてる?」
「はい、今焼き始めたところです」
 ↑
編集者註.ちょっと変な会話。家政婦とメイドのやり取りだからって、「パンケーキの
生地はできてる?」「焼き始めたところです」だと、前者はメイドにパンケーキを焼く
権限はないことを示唆しているのに対し、後者はそれに反して焼いていることになる。
そもそも、焼き始めていることくらい、匂いで気付きそうなもの。これで家政婦の三浦
の鼻が悪いという伏線ならまだいいんですが、そういうことでもなく

バターの香りとコーヒーの湯気が、キッチンに立ちのぼっていた。
三浦は食器を並べながら、ふと窓の外に目をやる。朝日が差し込み、庭の芝生には夜露
がきらめいている。遠くには、人工島を囲む防波堤と、都市へと続く長い橋が見えた。

「今日も静かな朝ね……」
 やがて、由紀子がダイニングに現れた。

「おはよう、玲奈さん。花の水やりはもう済んだ?」
「はい、今朝もよく咲いています」
 三浦は微笑み、由紀子の後ろ姿を見送った。由紀子は毎朝、部屋の隅に置かれた植木
鉢の花を手入れするのを欠かさない。
「今年は本当に花付きがいいわね」
「花は正直ね。手をかけた分だけ応えてくれる」
 由紀子は花びらを一枚一枚摘み取り、独りごちた。
             ↑
 編集者註.また摘み取っている。理由に触れないといけないところでしょうに、AI
は気にならない模様

朝食のテーブルには、俊一と大友も揃った。俊一はまだ眠たげな顔でコーヒーをすす
り、「今日の会議、緊張するな……」とぼそりとつぶやく。
 大友はスマートフォンをいじりながら、
「社長、午後のドローン飛行はどちらの機体を使いますか?」
「新しい方にして。昨日のテストで古い方は少し音が大きかったから」
 由紀子はきっぱりと答えた。

 食卓には穏やかな会話が流れていたが、どこかぎこちない沈黙も混じっていた。俊一
は会議資料の束を抱え、「社長、資料はすべてデスクにまとめてあります」と報せた。
「ありがとう。あなたも遅れないように」
 社長の返事に、俊一は「はい……」と、どこか落ち着かない様子で何度も時計を見て
いた。

 朝食後、三浦は掃除道具を手に、廊下や窓辺を丁寧に磨いて回る。
「三浦さん、またカーテンの埃ですか?」
「ええ、社長が“窓際が気になる”とおっしゃっていたから」
 三浦は由紀子の部屋のカーテンをそっとめくり、窓枠の隅やサッシの溝まで細かく埃
を拭き取る。その手つきは、日々の習慣のように慎重だった。
 部屋の隅の植木鉢にも目を配る。「花びらが少し落ちているわね……」
 小さな箒で花びらを集め、植木鉢の土の乾き具合を指先で確かめる。
「水やりは……昨日したばかりか」
 軽く頷き、花の茎をそっと立て直した。
 そのとき、由紀子の声が背後から響いた。
「玲奈さん、今度の役員会のこと、聞いてる?」
「いえ、詳しくは……」
「この島の管理体制も見直すつもりなの。人員削減も避けられないわ」
 由紀子は何気なく言ったつもりだった。
     ↑
 編集者註.急に由紀子の心理に立ち入っている

三浦はその場で小さく頭を下げ、「失礼します」とだけ言って部屋を出た。廊下を歩き
ながら、胸の奥に小さな不安が生まれる。

 昼前、俊一はリビングでオンライン会議に参加していた。「社長は本当に厳しいな…
…」会議の合間に、ふと窓の外に目をやる。カーテンがわずかに揺れているのが見え
た。
 ガレージでは、大友がドローンのバッテリーを交換し、プロペラの傷を確認してい
た。「昨日のテスト飛行でぶつけたのかン操作アプリを立ち上げ、テスト飛行のログを
確認した。壁には由紀子が撮影した空撮写真が何枚も飾られている。
 ↑
編集者註.この辺り、よく分からない。第一章で記したこととほぼ同じだし、台詞は途
中で切れているし……

 正午過ぎ、三浦は再び由紀子の部屋の前を通る。ドアの隙間から、淡い明かりと書類
をめくる音が漏れている。
 三浦はよく通る、それでいて邪魔にならない声で「お昼のお茶をお持ちしますね」と
いつもの如く言った。返事はないが、彼女は静かに部屋を離れた。

 午後一時、邸宅は静まり返っていた。各々が自分の仕事に集中し、ただ、由紀子の部
屋だけが、静かに時を刻んでいた。
    ↑
 編集者註.邸宅全体が静まりかえっていると書いていながら、「由紀子の部屋だけ
が、静かに時を刻んで」と記すのは変

 三浦はキッチンで紅茶を淹れながら、由紀子の言葉を思い返していた。
「この家を出ていく……? 私の居場所は、どこにもなくなるの?」
 彼女は、家政婦としての自分の役割や、これまでの日々を思い返す。
「何か、私にできることは……」
 その問いに、誰も答えてはくれなかった。




#1161/1165 ●連載
★タイトル (sab     )  26/01/10  22:56  ( 79)
「ナショナリズム的誘拐事件」1    朝霧三郎
★内容
心療内科の娘の住友惠子(21歳。バーブラ・ストライサンド似)が誘拐された。
10月半ばとはいえ、東京は十分寒かった。
そろそろユニクロのヒートテックを買ってもいいぐらい。
惠子も寒い思いをしているかも知れない。
玉置誠(佐藤浩市似)は、その知らせを大学の6号館2階のラウンジで聞いた。
誠と惠子は大学のサークル、サルサ研究会で一緒だった。
サルサとはラテンのペアダンスで、何でそんなものが流行っているかというと、
カソリック系の大学なので、
南米からの留学生が多い為にそんなサークルが出来たのだった。
留学生はコロンビア人、エクアドル人、ペルー人などで、ほとんどが野郎だった。
大学は品川にあるfラン大学だ。
JR山手線大崎駅から首都高速C2の下を歩いて行った、
峰原通り沿いにある、全くお洒落ではない、
企業の研修センターか郊外にある学生会館を思わせる校舎の大学だった。
6号館2Fのラウンジスペースに玉置誠は、
友人の町田君(町田市在住の為。立花隆似)と
熊五郎(見た感じが熊。麻原彰晃似)と屯っていた。
サルサは、4F多目的スタジオで踊るのだが。
ラウンジは、時間帯によっては、ラティーノがうじゃうじゃいるのだが、
今は一人のコロンビア人がソファにいて、日本人の女が3人寄り添っていた。
ラティーノは、『シックスセンス』のテッド・バンディみたいな、
こまっちゃくれた顔をしている、頭が妙に小さい男だった。
スペイン人とインディオを掛け合わせるとああいう顔になるのか。
怪鳥音みたいな甲高い声で話す。
「日本の女、みんな優しい」
インターネットラジオで、コロンビアのFM局が流れていた。
曲はプエルトリカンパワーの曲。
「故郷を遠く離れて寂しくない?」と女の一人が言った。
「故郷の味ならアルコイリス五反田店に行けばいいんじゃない?」と別の女。
「あれはペルー料理よ。コロンビアとペルーじゃあ、
ライオンとハイエナぐらい違うんだから」
「だったら私が作ってあげる。サンコチョとか煮てあげる」
「サンコチョってバンドが『ルンバ・テ・トゥンバ』って曲を出しているよ」
「なに、頓珍漢な事言っているのよ。アグアルディエンテもあるのよ」
ソファーの反対側の席で、熊五郎が言った。
「全く友達が誘拐されてもなんとも思わないんだろうなあ、ああいう女どもは。
あいつら平気でコロンビア人を家に招くんだろう。
ここならいいが、俺は外人なんて絶対に、家の敷居をまたがせないね」
「だったら何でラテンダンスなんてやってんだよ」と誠。
「だって、
六本木のクラブだって日本人だけじゃあ白けるから黒人がいた方がいいけれども、
だからって、黒人を自分ちに入れるか」
熊五郎は渋い顔をしてコロンビア人を見ていた。
「全く、折角可愛い女を集めても、
ラティーノがやらせる女のリストを持っていて、
ラティーノ同士でそれを回してやっているんだから、
せっせと女を集めて、奴らに提供しているようなものだぜ」
「元々ラテンダンスが好きな女なんて、
ラティーノ好きなビッチが多いんじゃないの?」と町田。
「あいつらは、冒涜という意識がない未開人どもだ」と誠は言った。
「素人の女子大生なんて大事にしてやらないといけないのに。
傷物にしちゃいけないのに。
お嫁に行けなくなっちゃうから。
セックスのタブーもあるしな。
素人の女子大生とやるというのは、近親相姦的な感じもするし」
「お前も素人童貞っぽい事言うよな」と熊五郎が誠に言った。
「ラティーナだったら気楽でいいんじゃない?」
「ラティーナのうんこは許せるよな。
日本人の素人のうんこは許せないけれども」と町田。
「ラテン人なんて、ペットみたいなものだからだ」と熊五郎。
「惠子なんて元々ラティーノ好きのヤリマンじゃないか? 自業自得だよ」と町田。
「ラティーノ好きというよりか、日本人が苦手なんじゃないの? 
わちゃわちゃ系が苦手なんだよ。
どっちかというと、『東電OL』
(東電の慶応卒のキャリア女性がネパール人相手に渋谷円山町で売春をしていて、
最後は殺された事件)みたいな、
拒食症の女なんだよ」と誠。
「え、なに、どういう事?」
「手編みセーターを着ている様な女がわちゃわちゃ系で、
『東電OL』系の女ならブランド品を身に付けているんだよ」
「カルティエとかロレックスをしていたな、惠子は」と熊。
「金持ちだからな」と町田。
「システムが好きなんだよ」と誠。
「お前もシステムが好きなんだろう。fjクルーザーに女を乗っけて
カーナビをセットすると萌えるんだろう」と熊。
「まあな。とにかく、惠子を誘拐したのはラティーノだと思うね。
あいつら土人だから、
素人の女は大事にしてやらないといけないっていう感覚がないんだよ」
「惠子ももういい所にはお嫁に行けないな。無事に帰ってきても」と町田が言った。




#1162/1165 ●連載
★タイトル (sab     )  26/01/10  22:56  ( 86)
「ナショナリズム的誘拐事件」2    朝霧三郎
★内容
住友惠子誘拐の翌日、大学に警察が入った。
品川の外れにあるこのFラン大学に、パトカーが横付けされる光景は場違いだった。
昼下がりのキャンパスは、いつも通りのんびりしている。
講義に向かう学生、ラウンジでスマホを眺める留学生、
校舎の外では煙草を吸いながら時間を潰す連中。
そんな呑気な空間に異物が混じっている感じだ。
六号館2階のラウンジに、岩本警部補(遠藤憲一似。50歳)と
大友秋絵巡査(渡辺満里奈似。27歳)が姿を現した。
秋絵は現役の巡査でありながら、臨床心理士の資格を持ち、
脳科学にも首を突っ込んでいる変わり種だ。
ラウンジの一角で、サルサ研究会のメンバーを探す。
秋絵は駒込(岡山天音似)という男に目を留めた。
へらへらして、要領のよさそうな学生だ。
「住友惠子さんのお友達って誰か、知ってる?」
穏やかな声だったが、2人で圧をかけて逃がさない。
駒込は少し考える素振りをしてから言った。
「玉置誠だな。彼は……惠子のアッシー君みたいなもんでしたよ。
送迎とか、呼ばれたらすぐ行くし。
正直、利用されてたと思います。
キレてやったんじゃないですかね」
岩本はメモを取る手を止めなかった。
秋絵は、視線だけで誠を探している。
「どの人?」
「あそこにいるよ」とラウンジの奥に座っている玉置誠を指さした。
やがて二人は、玉置誠の前に立った。
誠は、警察というだけでドギマギしていた。
警察だの教授だの医師だのというだけで、ドギマギしてしまう。
「玉置さん」秋絵が声をかける。
「住友惠子さんのことで、少し話を聞かせて」
「……あ、あの、その……」
「落ち着いて。ゆっくりでいいから」
秋絵の声には、尋問の色はなかった。
誠は深く息を吸った。
「自分……アッシー君にされてた、って言われてますけど。
苦痛じゃなかったんですよ」
「どういう意味?」
秋絵が首を傾げる。
「自分はシステムオタクなんです」
誠は急に饒舌になった。
「待ち合わせは新宿の目。
そこから歌舞伎町の地下のサブナード駐車場に行って、
カーシェアはタイムズじゃなくて、三井の方で。
スマホで操作して、1000万のランドローバーを予約するんです。
湾岸線を走って、ららぽーとTOKYO―BAYまで走る。
その一連の流れが、たまらなく楽しいんです」
岩本は眉をひそめたが、秋絵は興味深そうに聞いていた。
「車を運転するのが好き、ってこと?」
「違います」
誠は即座に否定した。
「システムに触れるのが好きなんです。スマホのアプリで予約して、
時間になると、カチャっと車のロックか解除されてハザードが点滅して、
その瞬間が萌えるっていうか」
事情聴取が終わり、二人がラウンジを出ると、秋絵は小声で岩本に言った。
「彼は違うと思います」
「理由は?」
岩本は立ち止まらずに聞いた。
「システムオタクは、扁桃体の反応が独特なんです。鈍感なところと、
異様に鋭いところがあるんですが、
一度ハマると、前頭前野で興味が長く持続するタイプで。
クレッチマーで言えば、粘着気質寄りですね」
秋絵は、簡単にクレッチマーの気質分類論を説明した。
クレッチマーによれば、人間は3つの気質に分類できる。
即ち、循環気質(肥満型で社交的だが躁鬱気味)、
分裂気質(やせ型で、内向的、非社交的、神経質)、
粘着気質(闘士型で真面目、頑固で癲癇気質)である。
誠は粘着気質のシステムオタクなので、今回の犯人とは違うんじゃないか、
と秋絵は言う。
「誘拐犯じゃない、と」
「ええ。今回の事件、もっと粗い、場当たり的で、衝動的な感じがします。
循環気質っぽい匂いがします。
循環気質というのは、快楽を味わう扁桃体だけで生きている様な人間で、
思慮分別を司る前頭前野がないんですよ。だから場当たり的で」
警察が去ると、ラウンジは元のまったりとした空気を取り戻した。
誠は熊五郎の隣に腰を下ろし、低い声で言った。
「俺じゃねーよ。もっと、組織的な連中だろ」
「例えば?」
熊五郎が笑う。
「カンボジアあたりの中国人マフィアとか。
闇バイト使って、誘拐して、現金を奪取する。
そういうシステム化された犯罪に、正直、憧れるけど」
熊五郎は肩をすくめた。
「ノワール的なのがいいんじゃない? 誠、お前は素人の女が苦手だろ」
「……」
「『東電OL』みたいな、どこか壊れた女の方が、安心するタイプなんじゃないのか
?」
誠は答えなかった。




#1163/1165 ●連載
★タイトル (sab     )  26/01/11  13:50  ( 81)
「ナショナリズム的誘拐事件」3    朝霧三郎
★内容
誠は熊五郎と町田と一緒に、3号館の地下へ移動した。
地下1階のカフェは、地上の貧相なキャンパスとは切り離されたような、
おしゃれで落ち着いた雰囲気。
電源席も備わっており、PC作業をしている学生も多い。
が、席の半分以上は留学生で埋まっていた。
コロンビア、ペルー、どこか東南アジアの外人。
アメリカ、ロシア、イタリアなどの白人系もいた。
言葉の断片が交錯し、笑い声だけが大きい。
誠はそれを眺めながら、コーヒーを口にした。酸味が強いが、美味しい。
「少子化で学生が減っただろ」誠は独り言のように言った。
「だから留学生を入れるんだよ。勉強なんてどうでもよくて、
出稼ぎで来てるような連中を」
熊五郎は砂糖を三袋入れ、かき混ぜながら聞いている。
町田はスマホに目を落として黙っている。
「うちの大学だけじゃない。Fランだの専門だの、料理学校、
アニメの学校……どこも半分は留学生だ。
受け入れなきゃ経営が成り立たない。
だったら潰れればいいのに、って思っちゃうけどな」
(全くどいつもこいつも目先の事しか考えない)と思いつつ、
誠はコーヒーを一口飲んで、急に別の話を始めた。
「そういえばさ、システムの話だけど」
熊が顔を上げる。
「最近、アドレス110を買ったんだよ。
前はヤマハのJOGで、50ccに乗ってたけど、あれだと二段階右折が面倒でさ。
110にしたよ」
町田が笑った。「バイクの話かよ」
「違う。システムの話だ」誠は真顔だった。
「バイクが変わると、自賠責も任意も全部変更になるんだけれども、
令和七年十月二日の午後四時から、ってきっちり時間が決まってるんだよ」
誠は指でテーブルを軽く叩いた。
「だから納車も、その時間ぴったりにしてもらったんだよ。
そこがズレると、保険が効かなくなっちゃうんだよ」
熊は呆れたように鼻を鳴らす。
「で、メーカーの盗難保険があるんだけど、条件が厳しい。
駐輪中は必ずU字ロックをしておかないと保険が効かない」
誠の目が、少しだけ輝いた。
「だから十月二日、ローソン受け取りでアマゾンにU字ロックを注文したんだよ。
最初から“その日受け取り可”って表示されてたからな」
町田が口を挟む。「普通、バイク屋で買うだろ」
「それじゃダメなんだよ」誠は即答した。「ポチって、配送状況を追っかけて、
予定通りに来るかどうかを見る。それがいい」
声が低くなる。
「ところが、配達遅延、“翌日になります”って表示が出た」
誠はコーヒーカップを置いた。音がやけに大きく響いた。
「そんなの許されないよ。アドレスを受け取ってから丸一日、
盗まれたら保険が効かない状態じゃん。下手すりゃ15万は損する」
熊は苦笑した。「大げさだな」
「だからコールセンターに電話したんだよ」
誠はその時の声色を真似るように、少し鼻にかかった調子で言った。
「“お待たせいたしました、
アマゾンコールセンターの郭がお受けいたします”ってさ。変な中国訛りで」
町田が眉を上げる。
「で、どこから電話してるのか聞いたら、“北京です”だと」
誠は肩をすくめた。
「遅れたら困る、最初からその日って書いてあった、
って強く言ったらな……遠回しに脅してきた。
住所も知ってる、日本に住んでる中国人の知り合いもいる、みたいな言い方で」
熊五郎は一瞬、笑うのをやめた。
「もちろん、はっきりは言わない。でもなんとなくそんな事を言うんだよ。
バイク泥棒は在日の中国人かも知れない、とか。
こっちは個人情報を握られてるし。
電話の向こう側に顔のない中国人がいると怖いよ」
誠は少し黙った。
「その瞬間、思ったよ。こいつ、本当にマフィアの知り合いがいるかもしれない。
俺の住所も知ってる」
町田が言った。「考えすぎだって」
「そうかもしれない」誠は認めた。「でもよお、アマゾンのシステムって、
便利だけど、怖いよな。全部が繋がってるし。金も、住所も」
熊はコーヒーを飲み干した。
「結局、U字ロックは来たのかよ」
「翌日にな」
「じゃあ問題ないじゃないか」
誠は首を振った。
「違う。システム通りに行かないっていうのは、もうアウトだよ」
留学生たちの笑い声が、カフェの天井に反射して降ってくる。
誠はそれを聞き流しながら、どこか遠くを見ていた。
「バイク屋で買えばよかったのに、って言うだろ」誠は続けた。「でもさ、
アマゾンでポチって、予定通りに来るかどうか、追いかけてる時間が一番いいんだよ。
システマティックで……生きてる感じがする」
熊五郎は黙ったまま、誠の横顔を見ていた。
町田は何も言わず、再びスマホに視線を落とした。




#1164/1165 ●連載    *** コメント #1163 ***
★タイトル (sab     )  26/01/11  14:02  ( 42)
「ナショナリズム的誘拐事件」4
★内容
システムといえば、誠は最近、楽天モバイルに乗り換えたのだが…。
或る、学校帰りの夕方の事だった。五反田TOCのユニクロに寄った。
昭和の匂いが残る巨大ビルの中で、店内だけが均質な白い光に満たされている。
誠はヒートテック極暖を一枚手に取り、値札を確認した。1990円。
別にこんなものは通学用だった。サルサを踊る時には、
ドルチェ&ガッバーナを着ている。
本当は矢沢永吉をモデルにしているのでヴェルサーチェでも着たいのだが、
柱のささくれにひっかけただけで40万おじゃんにするのはもったいなので
買わなかった。
ユニクロのレジに立っていたのは、又しても中国語訛りの日本語を話す若い女だった。
名札にアグネスとあった。年は二十五前後、顔はBOA似か。
「ユニクロ公式アプリをインストールすると、五百円分プレゼントになります」
決まり文句のような口調だったが、その言葉に含まれる“アプリ”という単語が、
誠の注意を引いた。
「でも、格安スマホで、スピード遅いから」
「大丈夫です。今、入れてください」
彼女は即答した。
誠はその場でダウンロードを始めた。
だが、進捗バーは遅々として動かない。少し進んでは止まり、また止まる。
その間、背後の列は別のレジへと流れ、誠のいるレジだけ塞がった恰好だ。
でも中国人の店員のアグネスが“いい”と言ったのだから、いいだろう。
十分ほどして、ようやくインストールが完了した。
支払いが終わり、全てがスムーズに終わったと思っていたのだが、
アグネスが、お釣りとレシートを渡す時に、誠の手の平にぎゅーっと押し付けてきた。
(この中国女め、自己主張が強い。日本人だったら絶対に余計な事はしないのに)。
店を出ると、誠はすぐに電話をかけた。店長を呼び出し、事実だけを並べた。
その場でアプリを入れるよう指示されたこと。十分ほどレジが使えなかったこと。
釣り銭を渡す際に不必要な接触があったこと。感情は混ぜなかった。
翌日、同じ時間に店を覗いてみると、アグネスはレジにいなかった。建物の外で、
冷たい風に晒されながら、段ボールを整理していた。
薄い上着の隙間に晩秋の冷たい空気が入り込む様に見えた。
(俺がクレームを入れたからだ)と思って、誠はアグネスに接近して、声をかけた。
楽天モバイルではない、もう一台のスマホ2
ーー以前サルササークルにいた留学生から譲り受けた端末を取り出し、
番号を交換した。「何か仕事が出来たらやるよ」。善意の申し出の積りだった。
彼女は短く頷き、視線を落とした。その反応を、誠は肯定として受け取った。
帰り道、ユニクロのアプリを開く。購入履歴が写真付きで並び、
ポイントが加算されている。オンラインで買って、店舗受け取り。
大学の帰りに寄ればいい。ユニクロなんて、
ヒートテックとエアリズムとソックスしか買わないから。
柳井が気に入らないから。山口県の衣料品店のおっさんの癖に、
東レの技術と東南アジア人からの搾取で儲けやがって。こ狡い商売人が。




#1165/1165 ●連載    *** コメント #1164 ***
★タイトル (sab     )  26/01/11  14:08  ( 63)
「ナショナリズム的誘拐事件」5
★内容
システムといえば、誠は、
自分が知らない間にアッシー君になっている場合がやたらと多い、
という事実を思い出さずにはいられなかった。
誰かに「送っていってあげようよ」と頼まれた瞬間には、反射的に嫌悪感が走る。
人を乗せる、時間を奪われる、責任を背負わされる。
そういう生身の関係が、誠はどうにも苦手だった。
ところが一度、車に乗り込み、エンジンをかけ、
カーナビの起動画面が青白く点灯した瞬間から、事情は一変する。
住所を入力し、ルートが計算され、予想到着時刻が表示されると、
その行為はもはや「人を送る」ではなく、
「システムを完走させる」ことにすり替わる。
そうなった途端、誠の中で、奇妙な熱がめらめらと立ち上がるのだった。
その夜もそうだった。サルササークルの顔役で、月に一度、
新宿のクラブ・ライオンでレギュラーDJを務めている
djサミー(本名寒川。山口馬木也似のイケメン)と
djデラルス(オルケスタ・デ・ラ・ルスのカルロス菅野似)のイベントが
終わった後のことだ。
クラブ・ライオンは、靖国通りから一本入った雑居ビルの地下にあり、
階段を下りるにつれて湿った低音が腹に響いてくる。
フロアにはミラーボールが回り、紫と赤の照明が入り混じり、
汗と香水とアルコールの匂いが渦を巻いていた。
サルサというよりも、もはや人間そのものが回転しているような夜だった。
ラテン音楽特有の過剰な陽気さが、踊る者の体温を一様に引き上げ、
終電間際だというのに、誰一人として帰る気配を見せていなかった。
イベントの終わり際、同級生の保坂(村上春樹似)ーー痩せていて、
無表情で、どこか作家然とした雰囲気の男だーーが、
誠のところにやって来て、軽い調子で言った。
「春日部のペルー人の女の子が二人いるんだけどさ、送って行ってあげようよ」。
誠は即座に顔をしかめ、「冗談じゃねえ」と吐き捨てるように言った。
新宿から春日部。距離もあるし、何より、知らない女を乗せるという状況そのものが、
誠の神経を逆なでした。
ところが、クラブを出て、路上に停めてあった家のfjクルーザーに乗り込み、
エアコンを入れ、何となくナビの画面を立ち上げてしまった瞬間から、
歯車が噛み合い始める。住所を聞き、指でタップし、地図が引き伸ばされ、
首都高と一般道の選択肢が表示される。その一連の操作の中で、誠の中の拒否感は、
いつの間にか使命感に置き換わっていた。結局、ペルー人の女二人を後部座席に乗せ、
夜の首都高を北へ走った。カーステからは、
まだクラブの余韻のようなサルサが流れていた。
後日、その話を聞いた知り合いの駒込に、
「おめー、野郎のアッシー君もやっているのかよ」と笑われた時、
誠は反論する気にもならなかった。自分でも分かっていたのだ。
自分は、人に頼まれるから動くのではない。システムに触れてしまうから、
動いてしまうのだ、と。
その癖は、家の中でも同じだった。父、母、下の姉と暮らしていた実家で、
最近の話だが、母親から「お歳暮、二十件分、とらやオンラインで送っておいて」
と言われた時も、最初は心底うんざりした。住所録を整理し、商品を選び、
支払いを済ませる。その一つ一つが面倒に思えた。だが、パソコンを立ち上げ、
とらやオンラインのページを開き、myページにログインした途端、
誠の目は変わった。送り先一覧が整然と並び、過去の購入履歴が即座に呼び出され、
同じ操作を反復できる構造が見えた瞬間、胸の奥で、
システムオタクの炎が音を立てて燃え上がった。
気がつけば、二十件分の発送手続きを、一気に終わらせていた。
だが、完全なシステムは存在しない。
送り状に反映されない電話番号という瑕疵にぶつかり、誠は仕方なく、
とらやオンラインのコールセンターに電話をかけた。
受話器の向こうから聞こえてきたのは、はっきりしたズーズー弁の女の声だった。
丁寧ではあるが、どこか生々しい、人間そのものの対応。
その瞬間、誠は強烈な白けを感じた。
ああ、違う。自分が欲しいのは、こういう声ではない。
感情も訛りも介在しない、無機質で、完結した回路なのだ、と。
電話を切った後、誠は画面に残る注文完了の文字をしばらく見つめていた。
自分は、人に使われているのではない。システムに使われているのだ。
(なんでそうなるんだろう)と自分でも不思議に思った。




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