◇フレッシュボイス過去ログ #2581の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
・『ルピナス探偵団の当惑』(津原泰水 原書房)17/5552 エッセイストが自宅で殺される。現場の仕事机には、宅配ピザの空箱があっ た。様々な要因から犯人は犯行後、残っていたピザを食べたと推測されるのだ が、一体何のためにそんなことをしたのか(「冷えたピザはいかが」)。 中庭に横たわる遺体。一面の雪に人の足跡は疎か、何の痕跡もない。しかも 中庭に通じる扉は、外側からロックされていた。自殺かとも思える状況だが、 死んだ作詞家は、ダイイングメッセージらしきものを残していた。何故か、鏡 文字で……(「ようこそ雪の館へ」)。 進行中の舞台で、ベテラン女優が死ぬ。代役で急場を凌ぐ間に、死体が消え、 再び見つかったときには、その右腕が切断され、なくなっていた。危険を冒し てまでこんなことをするメリットがあるのか(「大女優の右手」)。 校則だけは厳しいルピナス学園の生徒、吾魚彩子らが謎を解いていく。 味気ない粗筋紹介になってしまいましたが、本作はお薦めです。 多分、この作者は頭の切れる人ではないかと。 講談社の少女小説文庫用に書いた二編に、書き下ろし一編を加えた中編集と いうことなのですが、それが俄には信じられないほど、文章が洗練されていま す。キャラクターは明らかに少女小説&ライトノベルらしさたっぷりなのに、 難解な言い回しや省略が多い。切れすぎていて、一読しただけでは飲み込みに くいというのが全体のぼんやりとした印象です。 そのキャラクター。登場人物一覧で、あるキャラクターの説明に、「さして 取り柄のない美少女」って書いてるんですよ。普通、そんな発想(設定)はし ないし、しても、登場人物一覧で説明しないだろーと思うのだが、それをぬけ ぬけとやって、ちゃんと活かしている辺り、ただ者でない。 筋立てにしても、確かにミステリなのだけれども、それでいてミステリに対 するアンチテーゼを垣間見せているようにも感じられます。もちろんそういう 試みをする作家は他にもたくさんいますが、本作の作家(あるいは作品そのも の)が凄いのは、嫌味にならず、刺々しさもなく、面白い本格推理小説に仕上 げているところ。幻想・ホラー畑の人だと思っていたら、大変しっかりしたミ ステリになっていたので驚きました。 細かい点で疑問がなくはない(たとえば犯人がピザを食べたと断定する理由 に乏しい。持ち去ったのではだめなのか、とか)のですが、本筋には無関係で すし、気にしない(笑)。 読了して、こういう書き方もあるのだなと、新鮮に感じました。 ではでは。
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