AWC 深夜連載小説 「イルージョン」(7)クエスト


        
#625/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XKG     )  87/12/28   1: 3  ( 59)
深夜連載小説 「イルージョン」(7)クエスト
★内容
 秋本さんが楽しみにしておられますが、この話、まだほんの入口です。
パワーが持つかどうか。
でも、これを毎日書く癖をつけたい。

       「イルージョン」(7)
 ラミとデートする日がやってきた。
サチはもう楽しみで楽しみで、指折り数えて待ち焦がれていたのだった。
 商人の店の前にラミはいた。
可愛らしい顔がサチを見つけて微笑む。そして手を振って挨拶をする。
「最高やなー」
サチはもう酔いしれていた。
ラミと歩き始める。
浜辺は朝の爽やかさで満ちている。
朝日がラミの顔をくっきりとさせる。
本当に恋している時はただ二人で過ごすだけで幸せなのである。
 村を外れ、最早二人の他にはただ美しい自然があるだけ。
サチはヤシの木の下にラミを誘った。
「これ、あげるよ」
サチは珊瑚のネックレスをラミに手渡した。
「僕が取ってきて細工したんだ」と、話す言葉も東京風。
「あら、本当に?でも悪いわ。サチは彼女がいるのに」
「そんなことないさ。君だけだよ。僕の胸がときめくのは」
ラミはまんざらでもなさそうである。
サチはそっとラミの肩に手を回した。
「あーん、だめよ。私達、知り合ったばかりじゃない。いけないわ」
ラミははっきりと拒絶した。
「そ、そうだね。いやあ、ごめん」
サチは謝った。しかし、ラミがはっきりとした態度をとるのを却って好ましく
思った。
 また、口説き甲斐があるというものである。
(ほんまかなー。これは中年の考え方ちゃうやろか。)

 また二人は歩きだした。
「私、ちょっと泳ごうかな」
ラミは海を見ながら言った。
「お魚の捕まえ方、教えて」
「えっ、ええよー」とサチは思わず大阪弁に戻り、声をうわずらせた。
 ラミは岩影へ消え、やがて小麦色の肢体が空に踊り水飛沫が立った。
サチはそれを茫然と見ていたが、やがて自分もすっ裸になると
海へ飛び込んだ。

「いやーねー、サチったら裸になって」
ャルナは笑いころげた。
よく見るとルナではなくラミの間違いであった。あーあ。
よく見るとラミはちゃんと下着を付けている。
余りに素早く飛び込んだので、サチは全裸だと錯覚したのである。
「ははははは。歯歯。ごめんごめん」
サチは仕方なくまた浜に戻り、服といっても半パンだけだが、身に付けた。

 二人は青い海の中で自由になった体を楽しんだ。
まったく、海中では重力の作用から解放されて、身も心も軽くなる。
作者も海が好きなのだが、ここ数年はチャンスがなくて行っていない。
残念である。
「魚はね、ぶくぶく、友達になればいいんだよ」
「こわがらせちゃ、ダメさ。ぶくぶく」
海中でサチはそんな意味のことをラミに仕種で伝えると、
深く深く潜っていき、魚の群れの中へ溶け込んでいった。

                     つづく




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