AWC DOG BOY  −− 追憶ヴァージョン −− アンゴ


        
#612/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QDA     )  87/12/22  16:10  ( 74)
DOG BOY  −− 追憶ヴァージョン −−   アンゴ
★内容
 月よ。何を照らすのか。過去の栄光に浸る、愚かな人類を照らすのか。
星よ。何を見るのか。最終戦争の影響で。ぼろぼろになった日本を見るのか。
 コンクリートでできた、その建物は。表札に、「遺伝子研究センター」と。
それだけ、書かれていた。建物の周りの、高い塀は。全てを遮る。温もりを
忘れた文明の。愚かなる建造物よ。
  塀のそばの、今となっては数少ない電柱の影に。二人の少年が。
「兄ちゃん。ここにいるの?僕の、友達。」
「僕らの、だ。」
 兄が否定をする。
「僕らの友達は、ここに?」
 無言で諾く。拳を握りしめて。微かに震えているのか・・・?
 タン!!塀に上る。素晴らしい跳躍力。これが、この15、6の少年のものか?
弟も、また。同じようにして、塀の上へ。
 二つの影は、コンクリートの壁の中に。消えた。
 −−けたたましい、サイレンが!!
「兄ちゃん!!」
 不安そうに、弟が。兄が、それを力づけるように、
「大丈夫。こっちだ!!あいつの温もりを感じる!!」
 温もりすらない、廊下を二人の少年は駆け抜ける。兄は、ここの内部を
知りつくしているのか?上手に道案内をする。
「こっちだ!!来い!!」
 3つめのかどを曲がったところで、二人は立ち止まった。
 そこには。幾何学的な建造物の溢れる、近代的な街が・・・!!
「こんなところに・・・」
 かすれた声で、兄が。
「兄ちゃん」
 弟が促す。兄は、振り向いて笑い、走りだした。

 足音に気付き、犬の耳を持った少年は。顔を上げる。
「二人とも、どうしてここへ!?」
 少年の声には、喜びと微かな驚きが含まれている。
「もちろん、助けに来たんだ。僕達は親友だろ?」
 悲しい笑みを、犬耳の少年は浮かべ。
「帰って。ここは、君の来る場所じゃないよ。もうすぐ、所員が・・・来た!!」
 少年の入れられた牢の付近まで、銃を持った所員数人が迫っている。
「君たち。侵入できたのは立派だが、帰ってもらおう。ここは、君のような子供が
 来るべき場所では・・・」
 兄が、所員の声を遮る。
「帰れ?帰れるかよぉ!?−−こいつは、僕の親友だ。あんた達、お国の為に
 遺伝子を改造され、こんな風にされたこいつは、僕の親友だ。」
「僕らの、だよ」
 弟が水を差す。
「僕達だって、見ろよ!!」
 兄は、トレーナーの片袖をちぎる。むき出しの腕は、塗装はされていたが、
確かに金属質。
「この腕や、体・・・!!このせいで、僕達は人間として認められなくなった!!
 あんた達政府の犬が、僕らの体を勝手に改造したせいで。」
 兄は、フッと微笑を浮かべ、犬耳の少年を見た。
「こいつは、ある日突然、犬にメタモルフォーゼした。いや、人間だけど。
 耳がついただけだよ!?なのに、あんた達は、こいつを連れ去った!!
 他の人間に害を与えると言って!!でも、こいつは、僕達の仲間なんだ。
 異端者の僕達の、たった一人の・・・!!こいつがメタモルフォーゼしてから、
 たった3日だけど、3だったけど、僕らの仲間だったんだ!!」
 所員は、叫ぶ少年を冷やかに見ていた。そして、一言部下に命令した。
「撃て」・・・と。
 心臓を貫かれた少年は、死にはしなかった。弟は、冷たい床に。
「ひぃ・・・!!ば、化物だ!!」
 所員の一人が、叫ぶ。
 少年は、ニヤリと凄絶な笑みを。
「化物にしたのは、どっちだよ!?おまえ達じゃないのか!?」
 胸から火花が散る。むき出しになった、配線が。
「僕は、死なない。絶対に、死なない・・・。あんた達に一矢も報いずに、死ねる
 ものか!!」
「おまえ・・・。弟を殺されたのに・・・?」
「もとからこういう計画だった。こいつのサイボーグ化された部分は、四肢だけだ。」
 胸から散る、火花の量が、多くなる。
「計画達成だ。あばよ、僕の・・・いや、僕らの親友。」
 振り向いて、にこやかに鮮やかな笑みだけを残して、少年は。所員の中に
突っ込んだ。
 爆発。
 堅固な牢のおかげで、犬耳の少年は一人、生き残った。
「ばかやろぉ・・・。オレを残して死ぬなよ・・・。」
 涙が、頬をつたって。溢れた。
                                                     (Fin)




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