#611/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XKG ) 87/12/20 23:38 ( 68)
深夜連載小説 「イルージョン」 クエスト
★内容
しばらく後のある日、サチは久し振りにルナを誘った。
南の島であるから、車もない、ディスコもない、映画館もないが、その代わり
白い珊瑚礁、青い海、緑なす密林がある。
村を少し離れると、もう辺りに人影はなく、やりたい放題、違った、安らぎを二人は
覚えるのであった。
サチはルナの手を引いて、密林を抜け、小高い岡の一つに登っていった。
ルナはおとなしくついてくる。口数の少ない少女である。
でも、ときおりサチに見せる笑顔が充分それを補っていた。
岡の頂上に着いた。村が遥か下に見える。その向こうは白い砂浜、青い海、そして
白い珊瑚礁。小舟が何隻か浮かんでいる。
「今度は舟に乗って海へいこか」サチはルナに言った。
ルナはだまって、こっくりと頷いた。
ルナの丸い顔に汗が浮かび、妙にセクシーである。
サチはこの間のタムの言葉を思い浮かべた。
「僕はリーナともう寝たで。」
ルナは南の島の少女として、ごく当たり前だが、体をごく僅かな布切れで隠している
だけである。
小麦色の腕、はち切れそうな脚...
すぐそばに僕のルナが。ムラムラ
「お昼御飯食べる?」ルナが話かけた。
「え、ああ、そうしよか」
「サチったら何ぼんやりしてるの。おかしな人」
「いや、御免。ちょっと...」
ルナの体に興味を持っていて、ちょっといろいろしてみたいなどと言えはしない。
お昼御飯を食べた。ルナの手作りの料理は美味しかった。
具の入った蒸し御飯、豚のもも肉の照り焼き、パパイヤのジュース、といったところ
だろうか。(南の島の人、何食べてるんでしょうねー。今度、千里が岡の民族学博物館
行って、調べてきます。)
太陽が眩しい。サチとルナは木陰で食後の時を過ごしていた。
特に話すことはない。静かな時が流れる。
ルナの胸が呼吸する度にかわいらしく動く。
サチは手をしびれさせていた。
さっきからルナの肩に手を回して、ルナを抱き寄せようと思っているのだが、
唐突にそういうことをして、ルナがびっくりしないだろうか。
ひょっとして、ルナに嫌われて、村中いいふらされ大恥をかくのではないか、
などと一人で考えてしまっている。
ほんと、こういう時は誰も助けてくれませんねー。
「魚を捕まえる要領だ」
「相手を怖がらせずにそっと、優しく...」
サチの心にそんな強引な連想が閃いた。しかし、きっかけ、ふんぎりはなんでもいい。
サチはルナの肩をそっと抱いて、ルナを自分の方に引き寄せた。
ルナは目を丸くして、少し驚いたようであったが、微笑みながら俯いている。
サチは安堵した。
ルナの体温、ルナの鼓動、ルナの吐息、全てが心地よい。
「ルナ、こうしていると、本当に心が溶けてしまいそうだよ」
ルナはだまって俯いたままだ。でも、逃げようとするわけでもない。
サチは少し大胆になってきた。
ルナの顎に手をやり、顔を上げさせる。
ルナの大きな瞳がサチを見つめる。
上気して、頬が赤い。
サチはルナの小さな唇に自分の唇を重ねた。
「サチはルナのものね」
「そうだよ、僕は君のもの。そして、君は僕のものさ」
「ずっとね」
「ずっとだよ」
と、いいつつサチの心はまだそうはっきりとはしていない。
村の中にも、まだ他にサチの気を引こうとしている女の子がいる。
まあ、みだりに手を出す訳にはいかないが。
ルナは素敵だ。僕の好みだ。でも、これで全てなのだろうか。
サチは自分に与えられた幸せの価値がまだ分かっていなかった。
クエスト
えっと、間違えました。「つづく」と書くつもりでした。
つづく