AWC 街路樹と風(1)【少女達】 コスモパンダ


        
#550/1850 CFM「空中分解」
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街路樹と風(1)【少女達】 コスモパンダ
★内容

街路樹と風(1)【少女達】 コスモパンダ

 ひゅーーーーー…………。
<おっ、来た来た>
<久し振りだねぇ。今日はどんな話を持って来たんだい?>
 ひゅーーーーー…………。

「ねぇねぇねぇ、さっきのどう?」
「えっ、見てないよ。もっぺん、見よう」
 ドタドタドタ。
「キャハハハハ……」
 ドタドタドタ。
<賑やかだ。足音が行ったり、来たり>
「や〜だよー」
「どうして」
「だってさー、バス停の真ん前じゃん」
「うん」
「中が丸見えだよ。ばれちゃうじゃん」
「見えちゃうかなー」
「見えるよ」
「うーん、だけど、二人って書いてあったよ」
「や〜だ」
「早く行かないと、無くなっちゃうよ」
「あんなとこでやってさ、また見つかったらどうすんの」
「………」
「この前、小僧寿司だって、やばかったのに………。今度は牛飯だよ。ぎゅうめし」
 アッハハハハ。
<何がそんなに面白いのかな?>
「女二人でぎゅうめし屋に入ってくだけで、恥ずかしいよー」
「そうかなぁ?」
「だって、学校でまたなんて言われると思う? 『あいつら、小僧の次は牛飯だぞ』、
なんて………。考えただけで、きゃははははは………」
「まだマックの方がいいよ」
「でも、かなり遠く行かないと見つかっちゃうよ」
「もうすぐクリスマスだしね。早くしないと・・」
「なに、プレゼントするの?」
「へっへっへっ、ちょっとね」
「女の子の一番大事なもの?」
「ばーか。そんなんじゃないよ」
「だけど、アルバイトするからには・・」
「ちょっと、掛かるんだ。まとまったお金がいるの」
「プレゼントも大変だ」
「親もうるさいし」
「困った、困った」

<ほっほっほっ>
<そういう訳かい。おーい、またこの子らに逢えるかね?>
 ひゅぉー…ぉ………
<こりゃ失礼。当然でした。それじゃぁ、わしからの伝言を伝えてくれんか?>
 ひゅーーーー
<なぁに、大丈夫さ。お前さんの負担にはならんよ。頼む>
 ひゅゅゅゅんんんん…………
<そうか、そうか、それでは………>

 ひゅーーーーー
 高い空から見た地上は、薄く白いものを被っている。早い雪。
 セーラー服姿の少女が二人、歩道を歩いている。
 一人は肩まで届く長い髪で、もう一人はショートカットのおさげだった。
 気の早い店は、いやいやもうそんな時期だ。クリスマスツリーを飾っている。
 キラキラ光るツリーのライトは色とりどりの光を放ち、少女達の頬を照らしている。
 ひゅるるるるる…………
「ウワーッ、寒い!」
 少女達のうなじを、頬を冷たい風が撫でていく。
 強い風に思わず、二人は襟を立てた。
 街路の木から、黄色い葉が散った。
 傾いた夕日に照らされた無数の葉は金色に輝いて舞っていた。
「きれい」
 長髪の少女が呟いた。
 もう一人の少女はしゃがみこむと、足下に舞っている一枚の葉をつかまえた。
 綺麗な扇形の黄色い銀杏の葉だった。
「何してるの?」
「綺麗な形でしょ」
 ショートカットの少女は長髪の少女に、銀杏の葉を見せた。
「どうしたの?」
「本のしおりにいいんじゃないかって・・」
「そうね。なぜ?」
「彼、本が好きなんだ」
 ショートカットの少女は、その銀杏の葉を大事そうにカバンの中から出したノートに
挟んだ。
 二人は並んで歩き出した。
 長髪の少女が呟いた。
「こんな映画見たわ。彼と・・・」
「それで?」
「一度、こんな所を二人で歩こうって・・」
 金色の絨毯を敷きつめた街路を歩いて行く。
 街は師走。ジングルベルの音色が響いていた。

繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙縺i第1話完)繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙




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