AWC 「reservation on wednesday」ウイング


        
#547/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HRJ     )  87/12/ 6  23:22  ( 92)
「reservation on wednesday」ウイング
★内容
 …健二と淳美は、そういう仲だった。高校に入学し、健二がバレー部に入部、
さして淳美がそのマネージャーを志望した時から、二人の運命は…。
 「そんなに…大げさじゃないけどね。」
 淳美は、そんなつぶやきをもらした。今度、健二とデートする日を考えていた
時、たまたま入学時のことを思い出していた。
 健二は、半ばレギュラーであった。しかし、試合が近付くにつれて、徐々にス
ランプに陥っていった。入部して4ヶ月…。そんな時期ではあったが、こんな健
二でも、温情派の監督は第2セットの後半あたりで使ってくれた。健二は、そこ
そこの働きではあったが、監督の期待に応えた。彼は無心であった。心底バレー
ボールを好きである青年…に見えた。しかし、地区大会で準優勝まで勝ち残った
チームだ。他のメンバーだって、バレーボールが大好きであるに違いない。それ
なのに、淳美が健二にひかれていったのはなぜなんだろう?
 「…どうしてかなぁ。」…考えてるうちに授業が終った。
 「今日は…木曜日か。」淳美は、3階から駆け降りて、校門を飛び出した。2
本目の路地を曲った「自動販売機の団地」のような小広場にたどり着くと、ぴっ
たり予想通り、健二を見付けた。淳美は、息をきらせながら、顔では喜びを表わ
そうとしたので、少々複雑な表情になった。
 「やぁ、淳美ちゃん。何か飲む?」「…うん。それじゃね…」
 ガタガタンッ、と落ちてきたジュースを取り出して、淳美は飲み始めた。
 −−−なぜか沈黙が続いた。健二が話を切り出した。
 「…もう12月か…。寒くなったな。」「うん…。」
 「あのさぁ、……」「あっ、そうだ。」
 「えっ…?」淳美の突然の言葉に話の腰をおられた気がしたが、健二は淳美の
話を聞くことにした。
 「ファースト・キスのとき…覚えてる?」「あ、ああ、覚えてる。……」
 「あのときさぁ……」淳美は話しているが、健二は実はうわのそらで、別の事
を思っていた。ファースト・キスのことを思い出してるって事は…やっぱり同じ
こと考えてんのかな…と。さして、やっぱり、同じことって…などといらないこ
とを考えていたから、「健二くんっ。」淳美があきれた声で吐き捨てた。
 「ご、ごめん……。」「いいのよ、別に、どうでもいいことだもん。それより
さ、」
 そろそろくるかな、と健二は眉を寄せた。淳美が続けた。
 「いつも思ってたんだ、健二くんって、とっても優しい人だな、って…。たぶ
ん、そういうとこが好きだったのよ…。そう、そうよ! 優しいのよねっ。」…
淳美は自分自身の質問に答えるように、興奮気味に話した。さらに続けた。
 「うん…そうなんだ。優しいから…好きなの。」
 淳美のほほは紅潮していた。健二の気持ちも、あっちの方向に飛んでいたせい
か、妙に言葉が胸に焼きついた。鼓動が高鳴る。
 2人は、見つめあった。…そして抱きあった。1分、2分…。温かさとともに
、特に淳美は、優しさなんかを感じとっていたかもしれない。…2人は離れた。
 「…わたし、健二くんなら…」「えっ?」健二の目がぎょろっと見開いた。
 「…ゆ、ゆるしてあげても…いいと…おもってるんだ…」「…………」健二は
何と応答していいかわからなかった。血迷ったあげく、
 「…いつに…しようか。」
 淳美はいつがいいか、と真剣に考えはじめたが、健二はまじめに考えるどころ
ではなかった。…なぜかというと、健二は、時間や日付をきっちり決めるのがい
やだったからである(守れないから…というウワサもあるが)。心にもないこと
を言ってしまったな…とあれこれ考えているうちに、
 「来週の水曜日って、どう?」
 …あと6日もあるのか…と健二は思ったが、ま、次の水曜は早く帰れるし、そ
うするか、と、結局水曜日に、2人にとっての「初体験」が行われることに、な
った。
 健二はいろいろと、そのへんのことについて変な?雑誌などで調べたりした。
準備はばんたんだっ! …もうほとんど、はしゃいでいた。ただし、「スケベの
はしゃぎ」だが。

 「…いらっしゃい。」
 健二は淳美の家の中に入った。(どれだけこの日を待ち望んでたか…。)健二
は明らかに緊張していた。
 「緊張しなくて、いいのよ。」…淳美が言った。
 が、健二は、ハッとした。妙に、今の言葉が、悩ましかった。(もしかしたら
…。)
 「淳美ちゃんは…緊張しないの?」
 「…『ちゃん』なんてつけないで…。今日は…淳美って呼んでほしい…。」
 「…………」
 「その方が…感じるから…。」
 (やっぱり…。)健二は目をきつくして淳美に言った。
 「…初めてじゃ、ないんだろ?」
 「あっ…ごっ…」淳美は突然うつむいた。
 「ごめん…。実はね…。」
 「……」健二は、話を聞きたくなかったが、止める言葉が浮ばなかった。
 「…わたし、中学3年の頃、いとこの……お兄さんに、…その……」
 「…開発、されたの?」「…い、いや、………そ、そう。」
 淳美は、恥しさの絶頂にいるようだった。やっぱり健二は話を止めた。
 「いいんだ。俺だって…」「あのぅ…!」ところが淳美が話し始めた。
 「わたし…わたし。本当に健二くんが…好きなの。…でも、健二くんの気持ち
がわからないうちに、こんなことしちゃって……。」
 「いや、俺は…」−−−一瞬空気が止まった。
 「俺も…愛してる!」健二は、淳美を抱きしめた。
 「…いとこに、何度も、何度も……」淳美は泣きじゃくった。その時のことを
思い出すと、涙がとめどもなく流れた。
 「でもね…。」「えっ?」
 「…『膜』は、破れてないんだ…。」
 …とにかく、健二と淳美は、結ばれることになった。
 「…どうして、今日にしたかわかる?」
 「………犯された日?」
 「ううん…わたしの、誕生日なの。」
 ………こんなストーリーを夢見る作者であった。健二のしあわせものーっ!

                      (The End)






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