AWC DOG BOY −反逆 2057−   アンゴラ


        
#545/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QDA     )  87/12/ 6  16:49  ( 52)
DOG BOY −反逆 2057−   アンゴラ
★内容
 闇と混沌と一条の光。そこには、それしかない。そこ−−幾何学的な図形を
連想させる街−−は、その3つしか持ち合わせていない。
 −−息ができない。何も見えない。光は、あまりにも弱々しい。
 その光はどこから差し込むのか。それは、青白い肌をした少女の顔を照らした。
「みつけた。ここが、あの人の住む街。闇と混沌と狂気の街・・・。」
 少女の、長いストレートの銀髪が搖れた。涼風が、髪をもてあそぶ。
 少女は、長方形の図形から飛び降りると−−超人的な技で−−、軽やかに
走り去った。
 残ったものは。闇と混沌と狂気・・・?

 何も、要らない。物など、何も。ただ、彼は光を求めた。求めるのはたやすい。
だが、それを手にいれるのは不可能だ。太陽の光など、ここに有るはずがない。
 だが、何故だ?何故に彼は光を求める?光などなくても、生きていけるはずだ。
 彼の閉じ込められている牢獄は、ただただ暗く。闇の過剰に包まれる。
 彼は、生まれたときからこの牢にいる。理由はただ一つ。
 それは、彼が人外の者・・・犬だったからだった。
「こんばんわ」
 銀の月よりも透き通った声が彼をよぶ。最も、彼は月を見たことがない。星も
見たことがない。見たことがあるのは、この暗い牢獄と、「所員」と呼ばれる名の
衛兵だけだ。
 一人の「所員」は、彼に太陽や月、星の話や外界の話をしてくれた。彼は
そのせいで、処分されたが。
 振り向いた少年の目の前に、銀髪の少女。どうやって入ったのか。コンピューター
ロックのキィは音もなく開けられていた。
「君は誰?」
 ひとこと聞いて、少年は、無邪気に微笑んだ。
「ティンカー・ベル。」
 彼女もまた、ひとこと。
「じゃあ、ピーターパンは?」
「あたしはね、妖精なの。知ってるかな、妖精って。」
 ティンカー・ベルは悲しく微笑んだ。この機械だらけの世の中に、妖精の存在を
  知るものは余りにも少ない。
 その夜、彼女は一晩中彼に物語を語って聞かせた。少年は、幼子のように目を
きらめかせ、その話に聞き入った。
 彼女は、自分の知っている話を総て聞かせた。
 話終ったあと、彼の唇が動いた。
 −−外界に、太陽の光があるの?
「勿論よ。」
 ふうん、と言って彼は、夢見るような微笑を浮かべた。少女もつられて笑った。
 少女の姿を見ることができない、「所員」は気持ち悪そうに牢の前を数回、
通り過ぎた。
 −−僕も外に出られるかな。
 −−出られるわ、あなたはあの人の生まれ変わりですもの。
 −−あの人?
 −−そう。あの人は、あたしのせいで死んだの。あたしも、元はあなたと同じ、
   犬だったのよ。
少年は、胸に決意を秘め、不思議な少女−−ティンカー・ベルと別れたのであった。

 数日後。センターの外の小高い丘に、金属でできたの墓標が立てられた。
 彼は。死体となって太陽の光を目の当たりにしたのであった。
                                                  (fin)





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