#520/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC ) 87/12/ 1 23:19 ( 24)
SS>イセイジン(未知との遭遇編) 翡翠岳舟
★内容
果たして、くるのであろうか?僕の胸は高鳴っていた。歴史上の人物達の中
には初めての経験ほど、怖いものはないといっていたが、どうやらそれは本当
らしいなぁ、そう思えてきた。映画などでは何度も見たし(時には主人公の行
動にケチをつけた″余裕″なころもあったけなぁ〜)、話としてはショート・
ショートにもならないほど陳腐しているのだろうけれどそれは第3者として楽
しんでいる場合であった。何事もやっている当時者しか分かりえぬ恐怖・緊張
があるものだ。
とくに僕は今回のことに、現時点のすべてを賭けているといって良かった。
もとこれで失敗したら、学校にいけなくなってしまうだろう。(もっとも、そ
れほど学校に行きたいと思ってはいなかったが)あ〜、どうしよう、僕の行動
によっては″相手 ″にも多大な影響を与えてしまうかも知れないのだ。
僕がそそくさと、落ち着かなく足を動かしていると、相手は道路の向こう側
に現れた。あちらも緊張しているらしく、顔は下を向いていたため長い髪で隠
れていたがばかに青白く見えた。道路の左右を確認し、車が来ないのを見計ら
ってゆっくりと歩き始めた。しかし、真ん中のセンターラインのころから早歩
きとなり、ついには僕に向かって小走りになった。僕の思考は体を離れたよう
に興奮高鳴っていた。
「きょ、今日は・・・どうも・・・」
思考がそのまま音声に変換され、それが第1声となって発せられた。彼女の
ほうも2、3いったのだが、それ自体には意味がなかった。だが、それはそれ
でいいのだ。どうせぼくらは境遇の違った人間−−−異性人−−−なのだから
。遠く離れた感性が触れ合うには、このような挨拶から始まるものなのだ。
−−−FIN−−−