AWC 「モウ、フユハ、アケナイダロウ・・・」  ・COLOR


        
#323/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (BMD     )  87/ 9/10   0:43  ( 53)
「モウ、フユハ、アケナイダロウ・・・」  ・COLOR
★内容
 彼らはほんの軽い気持ちだったのかもしれない。けれども・・・

 ある暑い日の事であった。
某A機器が誇る中央管理センターの職員、中原はいつものように大型コンピューターの
前に座ると送られて来たデーターの整理を始めた。
 最近は極秘資料が多数送られてくるのでちょっとした間違いも許されない。
「ん、なんだこれは」
 最後のアクセス・タイムが朝の8:34をさしているのだ。今日ここにあるデーター
は全て昨晩送られたはずである。なぜ今日、アクセスしたのだろう? 中原は嫌な予感
がした。自然にキーボードを打つ速度があがってくる。
「やられたっ!」
 中原は立ち上がった。昨日の極秘資料が落とされている。侵入されたのだ。
こともあろうにあの資料を・・・

 この事件が与えた影響は大きかった。
 TV、新聞、週刊誌はニューメディア犯罪としていっせいにこの問題を取り上げた。
 ある評論家はインタビューでこう答えた。
「このような犯罪が起こる確率は非常に高かったんだ。技術のある奴なら簡単に出来る
からだ。それなのに対策も練らなかった国や企業に私は疑問をか感じるね」

 警察は緊急に特別対策本部を作り全力を挙げて犯人逮捕に乗り出した。
休日を返上した刑事の1人が愚痴をこぼした。。
「まったく軍事機密を盗まれるとはなんてドジだ」
 そう、A機器が社運をかけて開発している極秘資料、すなわち西側諸国へ輸出するは
ずの戦略兵器の機密をいとも簡単に盗まれてしまったのだ。

 そして2日後、警察は犯人F(19)が自首してきた所を逮捕した。幸い彼のスパイ
行為は無かったことが明らかにされ政府を安心させた。そして彼の部屋から証拠のディ
スケットが発見されたことで事件は終わったかのように見えた。

 だが秋になり涼しくなってきたころには各地で多数のBBSが閉局してしまうという
事件が起きていた。世間の風当たりが強くなってしまったのだ。
 そして「情報通信免許法」というのが国会を通り可決されたことがより一層拍車をか
けていった。いままで自由だったコンピューター通信が国家資格制となり年2回の試験
に受かった者だけネットワーキングを許される。反対の声も多数あったが結局その法律
は世論も手伝って強硬に施行された。

 そして冬、法律の施行後、ゲリラ的に無許可ネットを開局する者もいたが、その人ら
は警察の取締によって閉局していった。さらには従わない者には逮捕に踏みきった事も
あった。結局そのことはネットワークに対する世論を強めるだけの効果しか無かった。

 遂に始めての国家試験が行なわれた。受験者の数が当初予想されていた人数の半分に
もみたない事は会場のネットワーカーを大いに失望させた。
 会員数が極端に減ってしまった大手VANサービスは情報の不足と強烈な世論のため
次々にサービスの中止を発表していった。

 1人のネットワーカーはつぶやいた。
「・・・モウ、フユハ、アケナイダロウ」

          <おしまい>    BMD66811/COLOR

おまけ・これはおもいっきりのフィクションです。もし似た様な名称があってもただの偶    然ですのでご注意下さい。




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