AWC 詩篇 空中の書9      直江屋緑字斎


        
#296/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QJJ     )  87/ 8/31  11: 0  ( 35)
詩篇 空中の書9      直江屋緑字斎
★内容
<透明な卵 39行>

   透明な卵

球体の中に世界が視える
老いた書誌学者の説によれば
つがいの巨人族の
幾何級数的な交接
青みがかった眼の彼方
降る星も消えずに

壁の中に埋る耳
通廊に貼られた跫音(あしおと)
樹齢一千年の黒檀製テーブル
タップダンスを踊る
女の細いかかとが
鉋(かんな)に削られたように
ガラスの部屋に喰い入る

戦争の夢を語る少女
やわらかな脣(くちびる)の奥
なによりも尖った臀(しり)
体内における血の嵐
殺人者の盥(たらい)

烟(けぶ)る海へと漕ぎ出してゆく
龍の刺青を誇る腕
数億の日々が
数億の波の棘(とげ)を渡ってゆく

階段(きざはし)の下に
ゆらめく卵が
白髪の友の声音ひくく
ひらたく伸びた掌に
滴となって




前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 直江屋緑字斎の作品
修正・削除する コメントを書く 


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE