#254/1850 CFM「空中分解」
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野獣のおきて 第二章 (2)
★内容
2
昭和59年7月21日午後1時15分。
警視庁特犯課の非常電話が鳴った。
受話器を把ったのは課長の石野警視正である。
歳は40半ばを過ぎたばかりだが異様に老けてみえる。頬は痩せこけて、肌の
艶はまるで無い。
る。ク−ラ−は効いているが省エネとかで、あまり室温を下げて貰えないのであ
る。
電話を切った石野課長の顔が一瞬、引き攣って蒼醒めた。
宛ら、臨終間近の病人の様である。
「 望月 君 !」
石野課長は非常電話に視線を落したまま望月部長を呼び寄せた。
特務部部長、望月 巌警視だ。
緊迫の空気が流れた。
余程重大な事件であろう。でなければ、ここ特犯課の非常電話は滅多に鳴らな
い。
しばらく課長と小声で話し込んでいた望月が、矢庭に無線器の横にある黒板の
前に立った。
「 聞いてくれ。
合わせて二十三人を人質にし、篭城を続けている。犯人は一時間置きに人質を
射殺、既に二人が殺された。所轄、並びに付近の警察に応援を頼んだが現在の
状況では人質の救出は不可能と判断、本庁に応援の要請があった。
そこで我が特犯課において特務部隊を直ちに編制し現場に急行、人質の救出と
犯人の鎮圧に向かうよう上(総監)からの命令だ。」
何人かがたくしあげたYシャツの袖を下ろしていた。
「 更に鑑識からの報告によると、M−16カ−ビンを所持しているらしい。」
呻き声が漏れた。
「 カ−ビンが!?」
沖田警部補が我が耳を疑がって問い質した。
カ−ビン銃といえば自動小銃である。暴力団でさえ入手はむずかしい。
望月が続けた。
「 犯人の身許はいま照合中で、カ−ビンを何処から入手したのかは分かってな
い。ただ‥‥‥」
額の汗をぬぐいながら、少し間を置いた。
「 人質の中に、草薙の妹が含まれているようだ。」
「 ええっ!!」
課の全員が草薙のデスクに顔を向けた。
休みの日は大体そうだ。風呂好きである。
それでいて自宅の風呂は入りたがらない。
湯上がりにビ−ルを2、3本飲み、あとはウィスキ−を呂律がまわらなくなる
程、胃に流し込んでから寝むり込む。
ジャック・ダニエル、バ−ボンウィスキ−だ。
今頃はそうしているであろう。