#164/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XBA ) 87/ 4/ 3 14: 4 ( 59)
「彼からの手紙」(ある医師の日記より) 1 フウ
★内容
彼から手紙が来た。いつものことだが、今回は少し違った。
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『
お久し振りです。あれから、もう3年もたったんですね。早いものです。これま
で、色々なことを経験してきましたけど、あの時の経験は特に素晴らしいものでし
た。本当に感謝してます。
実は、来月1日から3日まで、是非、お会いしたいのですが。どうでしょうか。
勝手な話しだとは思いますが、お願いします。
それでは。
』
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12日
今ごろ、なぜ、会いたがるんだ。もう縁は切れた筈なのに。まさか。いや、彼に
だって、得にはならない。そんなことをする筈がない。
だが、しかし。あり得ることだ。
返事を書くべきだろうか。放っといても来るだろう。彼の家だ。どうせ、来られ
てしまうのなら、日時を指定してやろう。その方が迎え易い。
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『
本当にいいんですか。断られるものと思っていました。
僕は1日の夕方、そちらへ行きますので、よろしくお願いします。
それでは。
』
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23日
まずかったか。正直に断るべきだっただろうか。彼が心にもないことを書けると
は思えないが、3年の間に、お世辞の一つでも言えるようになったのだろうか。
とにかく、奴を追い出さなくては。会わせるのはまずいだろう。
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28日
奴には3日ほどホテル住まいをさせる。少々無駄な気もするが、仕方ない。
しかし、彼はこの3年間、何をしていたのだろう。可笑しなことに、私は何も聞
いていない。毎月のように手紙をもらっていたのに。彼は自分のことを何も書いて
いなかった。それを私は、彼の心の傷のせいだと思っていたが。
もしかして、3年前から、この時を待っていたのだろうか。だとすると。
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31日
いよいよ、明日、彼が来る。どんな風に変わったか、それとも変わっていないか。
恐ろしい気もするし、楽しみな気もする。いずれにしても、会えばすべてが分か
る筈だ。
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1日
彼が来た。いや、きっと来ているのだ。でも、もしかしたら、来ていないのかも
知れない。分からない。
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つづく
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