AWC RUN☆AWAY 〈1〉  Last Fighter


        
#99/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  87/ 1/24   9:54  (131)
RUN☆AWAY 〈1〉  Last Fighter
★内容
.
    「RUN ☆ AWAY」   by 八木 裕介
     (RUN ☆ ONLY! partII)
.
「ねぇ.....」
 篠原の背後からとても甘い声が聞こえた。
 篠原は自分が呼び掛けられていることは勿論しっていた。だが聞こえないふ
りをした。
「ねぇってばー、ハニー....」
 声の主が再度呼び掛けた。
 篠原はおそるおそるふり返った。
「ハニー!」
 あの娘だ!
 篠原にとっては忘れることのできないあの娘!
「うわ〜〜〜うわうわ〜〜〜〜〜!」
 篠原は予想していたものの思わず叫び上がっていた。逃げようとしたが何故
か、足が動かない。
「ハニー.........」
 ゆっくりと、その少女は篠原の体に腕をからめた。
 そしておもむろに目を閉じて、唇を篠原の唇に近ずけて........

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 篠原は飛び起きた。
 夢?
 そうか、夢か。
「はーはーはー、ぜーぜーぜー....
 そうか、夢かー...........
 あ゛ー、よかったー。まったく!あれから3年も経ってるっていうのに..
 あんときゃ、逃げてる間にあの娘の上司らしいやつが来て、連れていったか
 ら逃げきれたもんなー。うん、あれも夢だと思えばいいんだ。
 大体、あんなことが現実に起きるはずがない!
 あれは!夢だ!夢!
 しかし、眠るたびにこうじゃおちおち眠れんなー。」
と、篠原はいかにもわざとらしい、説明くさいセリフをいっきにいった。
 ふと顔を見上げるとそこに奇麗な女性がいた。
 顔は笑っているが、肩がわずかにふるえている。はらわたは煮たぎっている
らしい。
 ここで始めて篠原は自分が椅子に座っていることに気ずいた。
 目の前には机、前のほうには黒板、まわりを見渡せば完壁な教室である。
「篠原くん.......」
 目の前に立っている女性がそう話掛けた。
「な、なんですかーー?? く、工藤先生...!?」
 篠原はおもいっきり明かるい声を出して笑って答えた。だが、顔に冷汗が流
れている。
 工藤先生も、にっこり笑って。静かな口調で言った。
「何が、よかったの?」
「えっ、いやー悪い夢を見てまして夢で良かったなーと....」
 工藤先生は、机に手をついた。
「へー、それはそれは良かったわねー。夢で.....」
「は、はははははは はい。よ、よかったですー。」
 そのやりとりを見て、まわりの女生徒たちがクスクス笑いだした。
「篠原くんっ!!!」
「は、はいーー!!」
 だしぬけに工藤先生の目がつり上がった。バックはむろん稲妻である。
「君は、何回言われればきがすむの!!
 何度も!何度も!おんなじことを!
 授業中に!あれほど寝るなと言ってるでしょう!
 それだけでもけしからんのに、さらに加えて授業妨害ですって!
 篠原くん!!!
 昼休みに教官室にきなさーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!」
教室のガラスが4枚割れた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 あれからもう3年もたっている。
 篠原も今は高校2年生だ。
 篠原の通っている学校は、「三由高校」といってなかなか偏差値の高い学校
である。篠原は中学の時にはあまり成績の良い方ではなかったがこの学校を受
けて、みごとに入ってしまった。
 受けた理由はいくつかある。
 1つは、試験日が早く試験度胸をつけるため。
 さらに、共学校だったため。
 さらに加えて生徒の男女比が、1:3だったからである。
 そんな理由で受けたのだ。親も、進学主任も、担任も、さらに本人も、まさ
か受かるとは思わなかった。
 おっと!
 話がずれてきた。もとにもどそう。

 時は昼休み。場所は教官室。工藤先生と篠原が向かい合っている。
「『33』。これがなんの数字か判る?」
「せ、せんせいの年ですか?」
 工藤先生はこけた。しかしすぐさま起き上がって怒鳴った。
「しつれいね! わたしはまだ、25です!!!」
 工藤先生は、『まだ』という単語を強調して、『25』という数字のアクセ
トを弱くしていた。
「これは!」工藤先生は机を叩いて続けた。「前回、数学のテストでの あなた
 の成績です! このテストの平均点覚えてる?」
「え、え〜っとたしかー..はちじゅうご.....」
「87です!!」 工藤先生は、きっぱりと言った。
「ははは.....」篠原は、苦しまぎれの笑いをした。
「まったく!」 工藤先生は、目を細めてちらっと篠原を見た。
「こんな成績をとってるのに、なぜ私の数学の時間に居眠りをするのかね!」
「先生! それは違います!!」
「えっ?」
 篠原は突然立って真顔で横を向いた。
 おもむろに目をつぶった。まるで、青春映画の一コマのようだ。
「先生...僕が授業中に寝るのは、なにも........」
 篠原の目つきがいつになく真剣になった。 工藤先生もその勢に乗せられて
真剣な表情となった。
 篠原がゆったりと目を開けて、顔を工藤先生の方へ向けた。
「なにも先生の数学だけじゃない! 国語だって、英語だって、現社だって、
 みーんな僕は寝ています!!」

          どっがらしゃん!!!!

と、字に書けばこんな音になる音が教官室に響わたった。
「こ、こ、この〜....」
 工藤先生は、ぶっ倒れて下敷になっている椅子の下から起き上がって、叫ん
だ。
「大ばか者ーーー!!」

          ばしっ!!

 いつの間にか持っていたハリセンで、工藤先生は思いっきり篠原の頭を叩い
た。
「な、なにも叩くことはないじゃないですか。」
「こうでもしなきゃ、君は判らないでしょ!」
 工藤先生はハリセンの先を左手に置いて、椅子に座りなおす。
「それに、君は授業中に早弁もしてるでしょ! なんで授業中に、ごはんなん
 て食べるの!」
 ばしっ! 工藤先生は再度机を叩いた。
「ごはんを食べないと、おなかがすくじゃないか」
と、篠原は、まるでR・田中一郎みたいなことを言った。
「おなかがすくと、お肌が荒れるんだぞ。お肌が荒れると、ナンパの成功率が
 悪くなるじゃないか。」
と、続けざまに角川文庫の火浦功の書き下ろし、『大熱血』P160のシャラ
のセリフのようなことを言った。
 ばしん!
 工藤先生のハリセンが、再び篠原の頭に直撃した。
                〈つづく〉




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