AWC 空中分解2



#3129/3137 空中分解2
★タイトル (UYD     )  93/ 4/23  12:15  ( 19)
タイガース日記  KEKE
★内容
 10試合ほどやって、阪神はまずまずの位置にいると思う。この
まま2勝1敗くらいのペースでいけばいいだろう。

 巨人はやっぱりという感じ。長嶋長嶋と騒ぎ過ぎて選手が萎縮し
ているようだ。昨日のプロ野球ニュースで豊田がそう言っていたが
、まさしくそのとおりだと思う。打席であれだけ力がはいっていて
は打てません。

 中日は意外なかんじ。デキが良すぎる。いずれ落ちてくると思う
。今が最高のデキで、これはいずれ裏目にでてくるだろう。まあ、
いいとこ4位というところじゃないの。

 広島はいい。このまま走ってしまうかもしれない。優勝の一番手
だな。

 ヤクルトもこのままとは考えられない。今にきっとでてくるだろ
う。

 横浜はこのままだな。最下位はまず確定だろう。



#3130/3137 空中分解2
★タイトル (UYD     )  93/ 4/23  21:57  (  4)
タイガース日記4/23  KEKE
★内容
一茂に打たれて敗けるとは。完全に安全パイと思っていたが。
まあいいだろう。年に一度の狂い咲き。長嶋親子もたまにはいい思いを
しなければ可哀相。だが年に一度だけだぞ、阪神投手陣。明日からはぴっちり
締めてやれ。



#3133/3137 空中分解2
★タイトル (KCF     )  93/ 4/24  10:39  (186)
掲示板(BBS)最高傑作集45
★内容

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
股間のなぞなぞ  [3/27]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

○  缶を金槌で叩くと、どういう音がするでしょうか?

                                            答:「カーン!」

○  股間を金槌で叩くと、どういう音がするでしょうか?

                                            答:「コカーン!」
                                (「ボコ!  ウギャー!」は間違いです。)

納得のいかない方のためにもう一つ

○  プロレスラー、キラー・カーンの弟子で、股間が異常に発達した
  レスラーは誰?

                                            答:「キラー・コカーン」

○コメント
「股間を金槌で叩いたときの音として、
『ボコ!  ウギャー! ピーポーピーポー(救急車のサイレンの音)』というの
ではダメでしょうか?」というメールをいただきました。
「ウギャー!」から「ピーポーピーポー」までの時間が短すぎます。数行空けて
いたら部分点を与えたのに、残念です。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
スキー靴を履いての車の運転  [4/3]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 先日、私は久しぶりに車でスキーに行ってきました。スキー場は、私が行く直
前に大雪が降ったらしく、雪がいっぱいあり、しかも快晴とあって、本当につい
ていました。しかも、宿泊していた旅館では女の子のグループと知り合いになり、
夜遅くまで一緒に酒を飲むこともできました。
「こんなラッキーなことばかり続いていいのかなあ」と思ったら、やっぱり最後
に嫌なことが起こりました。旅館を出発する寸前に、買ったばかりのナイキのシ
ューズを盗まれてしまったのです。そこで私はしかたなく、帰りはスキー靴をは
いて車を運転せざるを得ませんでした。

 最初のうちは問題なかったのですが、関越自動車道(高速道路)に入った途端、
なんとパトカーが私の車に近づいてきて、「前の車、路肩に寄りなさい。」とマ
イクで怒鳴り始めたのです。私は「やばい!」と思い、すぐに車を路肩に止めま
した。
 別にスピードを出しすぎていたわけではないので、「なぜなんだ?」と不思議
に思っていると、パトカーから20歳くらいの若い警官が降りてきて、私の車に
近づいてきました。私は、ドアウインドウを下げ、警官に尋ねました。
「私が何か悪いことしましたか?」
すると警官は、「不審な走り方をしていた。」と答えたのです。
 私はその答に全然納得がいかないので、頭にきて、「何なんだよ、その『不審
な走り方』って?」と文句を言ってやろうかと思いましたが、スキー靴を履いて
運転をしていたことがばれたらやばいので、車の外へ出ずに運転席から、
「申し訳ございません。これからは公明正大な走りを心がけます。」と言って素
直に頭を下げて謝りました。
 でも、これがよくなかったのです。私があまりに素直に謝ったため、その警官
は私が何かを隠していると感じたみたいなのです。そして、警官は私に、「車か
ら出ろ。」と命令してきました。
「寒いから嫌だ。」私はどうしてもスキー靴を見られたくないので反抗しました。
「怪しい。何か隠しているな。早く外に出ろ。」その警官はますます私を疑いま
した。
 私はハンドルにしがみついて抵抗しました。しかし、パトカーから45歳くら
いの中年の警官が応援に駆けつけ、私は2人の警官によって車の外へ引きずり出
されました。
 私はスキー靴を手で覆い隠しました。しかし、当たり前のことですが手よりも
スキー靴の方が大きいので隠しきれません。若い警官は、
「お前、何隠してるんだ。」と言いながら、私の手を払いのけました。
2人の警官は、私の足元をじろじろ見ながら言いました。
「スキーの帰りだな。」
「そうらしいですね。」
 私の車の屋根にはスキー板が積まれていました。スキー板はシートに包まれて
いたわけではなく、裸のまま車の上に載っていたのです。私の足元を見るまでも
なく、誰がどう考えたって私は「スキーの帰り」です。私がそのとき万が一「わ
らじ」を履いていたとしてもやっぱり私は「スキーの帰り」に決まっています。
この警官達はいったい何なんでしょうか。
 でも、スキー靴を履いて車を運転していたことについては何も言われなかった
ので、私は素直に、
「はい。おっしゃるとおり、私はスキーの帰りです。志賀高原から東京に帰ると
ころです。」と、とりあえず言っておきました。私は、「これで大丈夫かな。」
と思ったのですが、すぐに、中年の警官がまずいことを言い出しました。
「あれ? スキー靴履いて車を運転していいのかな?」
私は「やばい!」と思い、すぐに弁解しました。
「あれ! スキー靴履いて車を運転しちゃいけないんですか? 知らなかったな
ー。 どうもすみませんでした。」
こんな言い訳で許してくれるわかけがないのですが、2人の警官は私から離れ、
自分達だけで相談を始めました。
「先輩。私はスキー靴履いて運転しちゃいけないなんて聞いたことがありません
けど。」
「俺も聞いたことないけど、いけないんじゃないの。」
「でも先輩。交通法規にそんなこと書かれていませんよ。」
「こういうことは、交通法規ではなく、安全運転教本に書かれているんだ。」
「安全運転教本ならパトカーの中にあるから私が持ってきましょう。」
 若い警官はパトカーに行き、すぐに安全運転教本を持って戻ってきました。彼
は目次を見て、
「えーと、『車を運転するときの履き物に関する注意』、これですね。」と言っ
てページをぺらぺらめくり、やがて「履き物に関する注意」を読み始めました。
「えーと、『裸足で運転してはいけません。また、ハイヒール、サンダルなどの
脱げやすく不安定な靴を履いて車を運転してはいけません。』 先輩。スキー靴
はダメとは一言も書いてありませんよ。」
「そうだなあ。スキー靴は脱げにくく、安定性が抜群だからなあ。」
「やっぱりスキー靴はいいんですよ、先輩。」
 話し合いがまとまり、2人の警官は私の所へ戻ってきました。
「今日は大目に見ておくが、今度からは許さんぞ。」若い警官は私にこう言って
きました。
 私は何を大目に見てくれたのかよく分からなかったのですが、そのまま謝れば
警官達はすぐにどこかへ行ってくれそうだったので、
「わかりました。今後、このようなことが絶対ないよう注意いたします。」と頭
をかきながら警官達に言い、深々と頭を下げました。すると、警官達はパトカー
に戻り、猛スピードで走り去りました。

 私は納得のいかない警告に対する怒りと、スキー靴については問われなかった
という安堵のため、複雑な心境のまま車を走らせました。
 私は、次のインターチェンジで高速道路を降りました。まともな警官にスキー
靴を履いて運転しているところを見られたら、今度は絶対にまずいことになると
考え、靴を買うことにしたのです。しかし、高速道路を降りたところは超田舎で、
靴屋さんどころかコンビニすらほとんどありませんでした。結局、2時間ほど探
し、大きなスーパーマーケットでナイキの模造品である「ナイケ」のスポーツシ
ューズを2500円で買い、それを履いて東京に無事帰ってきました。

 みなさんもスキーに行って旅館で靴を盗まれた場合、いつ私と同じ運命になる
かわかりません。また、みなさんの場合は、スキー場で金を使いすぎ、新しい靴
を買うことができずに、結局はスキー靴を履いたまま自宅まで車を運転しなくて
はならないことになる可能性がないとは言えません。

 そこで、スキー靴を履いて車を運転する時の問題点を、私の経験に基づいて少
しばかし述べさせていただきます。

 スキー靴の第一の難点は、靴が馬鹿デカイことです。
とくに幅が大きいのが致命的です。履いている靴の幅が大きいため、ブレーキを
右足で踏むと、必ずアクセルかクラッチも同時に踏んでしまいます。従って、ス
ムーズな運転などできるわけがなく、警官に「不審な走り方をしている」と思わ
れてしまう可能性があります。

 第二の難点は、足首の曲げ伸ばしがまったくできないことです。
スキー靴を履いていると足首が常に曲がった状態ですので、ペダルをおもいっき
り踏むことができません。しかし、それでも急ブレーキをかけるときなど、ペダ
ルをおもいっきり踏まなくてはならないことが車の運転中は必ずあります。そこ
で、強引にペダルを踏んでしまうわけですが、その場合は必ずダッシュボードの
下に膝を激突させてしまいます。従って、自宅に着いたときは両足の膝の半月盤
がボロボロになっていることでしょう。

  第三の難点は、足の裏の感触がまったくないことです。
普通の靴を履いていれば「ペダルの踏みごたえ」があるのでスピードの微妙な調
節が可能です。しかし、スキー靴の場合は、靴底が分厚く、さらにバックルをき
つきつに締めているため足の感覚が麻痺して、ペダルを踏んでいるんだか踏んで
いないんだかまったくわかりません。従って、非常に危険です。

 第四の難点は、重いことです。
スピードを落とすためにアクセルからブレーキに右足を踏み換えるとき、靴が重
いと足が思うように上がらないため、ブレーキペダルを右側からスキー靴で蹴飛
ばしてしまいます。そうするとブレーキペダルを根元から折ってしまう可能性が
あります。しかし、履いているのがスキー靴なため、右足を怪我することはあり
ません。

 第五の難点は、足はスキー靴を履いているのに、手は何も付けていないという
のは不公平に思えることです。
そこで、手にスキー手袋をはめてハンドルを握ることになります。車内は暖房が
入っているので、運転中、ハンドルではなく車のラジエーターを握っているので
はないかと勘違いしてしまうほど手が熱いはずです。
 やがて、スキー手袋から汗が湧き出てきます。その汗は上腕を伝わり、肘から
下にポタポタ落ちます。手はハンドルを握っているわけですから、肘から落ちた
汗は下にあるズボンに吸収されます。すぐにズボンは手から流れ出た汗でびちょ
びちょになり、今度は足を伝わってスキー靴の中に染み込みます。この時の足は、
地表を突き破ってマグマに直接足を接触させているんじゃないかと思うほど熱い
はずです。
 車に同乗している友人達は、あなただけにそんな苦痛を味あわせるのは酷だと
同情してくれるので、みんなも車の中ではスキー靴を履き、スキー手袋をはめ、
汗だくになります。したがって帰りの車中は、サウナの中で焚火をしているとき
に、何を思ったのか、焚火の上から灯油をぶっかけてしまったという、そんな熱
さになるでしょう。

○コメント
文章の中で、車のルーフにスキー板を積んでいれば、足は何を履いていてもスキ
ーに行く途中、あるいはスキーの帰りになるというようなことを書いてしまいま
したが、これは間違いでした。車にスキー板を載せていても、足にスキューバダ
イビングの「足ひれ」を履いて車を運転していた場合は、必ずしもスキーに行く
途中、あるいはスキーの帰りとは限りません。ただし、この状態で警官に見つか
った場合は、挙動不審と見られ、警察に連行される可能性がありますので注意し
て下さい。


これで終わりです。掲示板(BBS)最高傑作集46をお楽しみに。

                                                          フヒハ




#3135/3137 空中分解2
★タイトル (TEM     )  93/ 4/24  19: 7  (121)
当世源氏(6)        うちだ
★内容

〜いいひとでいてね〜

ある夜突然、浅雄が女の子を連れて僕のアパートにやってきた。
「タミオ〜。金貸してくれー。あとで絶対返すから」と浅雄。
「イキナリなんだよ、それは」
さすがに温和な僕も突然寝入りばなを起こされて“金を貸せ”と来られたら、
そりゃ気分よくない。それでも一応二人を中に通してインスタントコーヒーを
入れて出した。浅雄は数カ月前にバイト先で知り合った大学生だ。女の子のほ
うは僕の初めてみる顔だった。入ってくるなりずっと下をむいたまま黙って座っ
ている。髪の長い子供っぽい輪郭の娘だった。下を向いたままだから顔ははっ
きりと分からない。浅雄が喋りはじめた。
「この娘、俺の友達でさ、ちょっと事情があって今日帰れないんだ。俺んち泊
めるわけにはいかんし、なんとかしてあげたいんだ」
浅雄って人が元気がないというとわざわざ来てくれてるような、ほーんと気の
良い奴なんだけどね、寝起きで機嫌が悪い僕は少しだけイジワルを言ってみた
くなる。「じゃ僕のアパートに泊めてけば?」
「・・・タミオ。お前は悪い奴じゃないけどこと女に関しては、どーーも信用
おけないんだよな。この娘、美也子ちゃんてゆうんだけど、この娘はそういう
フシダラな娘じゃないんだよ」浅雄は鬼のような形相で僕にくいさがってくる。
顔には人格がにじみでるとかいうけどあれは嘘だ。浅雄なんて世話好きですご
くいい奴なんだけどふだんも凄く恐ろしい顔をしている。まさに鬼瓦。
「フシダラねえ」僕は苦笑する。「そんなことはどーでもいいけどさ。お金も
貸すのはいいよ。でもせめて訳を教えてくれない?」
美也子ちゃんはうつむいたままだ。浅雄は少し躊躇したけどもそもそと話はじ
めた。「タミオさあ、透って知ってるよな?」
「えーと・・・前に浅雄のこと迎えにきた、なんか奇麗な顔した奴、だろ?」
浅雄はこくりとうなずいた。彼がまだバイトをしていたころ、店をひいた後か
らスキーへ行くとかで何度か車まで店に彼を迎えに来た同じサークルの男の一
人が透だ(そのサークルは夏・サーフィンとダイビング、冬・スキーというお
気楽なものらしい)。僕も少し話したことがある。透には“伝説”が数多く残
されていると浅雄は笑って僕に教えてくれた。透は口説かなくても女の子が落
ちるとか、高校の頃は土曜の放課後の学校の正門に彼を迎えに来る車の女がは
ちあわせて取っ組み合いの喧嘩が始まっただの。彼には双子の姉がいて、やっ
ぱりモテるんだけど、これも人を人とも思わない女らしいとか。ま、それはお
いといて。
「あいつ・・・透さぁ二万円で美也子ちゃんのこと売ったんだよ」
「売ったぁ〜??」
思わずすっとんきょうな声を出す僕。ううっと浅雄のとなりで、かの美也子ちゃ
んが泣き出した。浅雄は“もっと気を使ってくれよう”ってな感じの視線を僕
に送る。浅雄は壊れ物に触るみたいに彼女の肩に手をかけたて彼女をなぐさめ
はじめた。浅雄の話によると美也子ちゃんは前からイイナアと思っていた透か
らデートに誘われて有頂天になって出掛けていったそうだ。帰る段になって透
が無理やりラブホテルに引っ張り込んだという。
「でな、それだけでもヒデーんだけど“俺のこと好きならなんでも言うこと聞
くだろ”とかゆってそのホテルの部屋に別の男が待たせてあるんだぜ。美也子
ちゃん、びっくりして逃げてきて、さっき俺のところに連絡くれたんだ」
「????」僕は首を傾げた。浅雄が言葉を続ける。
「いや、その男ってのは同じサークルの杉本って奴で、後で本人から聞いたん
だけど透が“女連れてくるから”っ言うから金を渡してホテルで待ってたらし
い。まさか顔見知りの美也子ちゃんが来るなんて夢にも思ってなかったって言っ
てた」
「なんだそりゃ」
あんまりといえばあんまりな・・・それって単に馬鹿にされてるってことじゃ
ないだろうか、美也子ちゃん(杉本って奴もね)。遊んでポイの比じゃないと
思う、なんて本人目の前にしてさすがに言えなかったけど。僕は思わず頭をか
かえた。人を人とも思わない透。それでも彼のことを追い回す女の子が絶えな
いというのはひとえにそのルックスによるものだろう。僕はいつか見た彼のこ
とを思い出していた。身長180センチのスラリとした体型。そつのない喋り
方。切れ長の澄んだ眼。あっさりした顔つき。天使みたいに罪のない爽やかな
笑顔。その下にそんな悪魔のような心があるなんて想像できる女の子がいるだ
ろうか。で、その夜は結局、僕は浅雄にお金を貸した。一人暮らしの僕が一万
円の出費は痛いけど、浅雄は金のことはきっちりしてくれる奴だし。それに彼
が美也子ちゃんのことを好きだというのがはたから見ている僕にもはっきり分
かったからね。浅雄は僕に何度も礼を言って美也子ちゃんを送っていった。浅
雄はきっと、ただただちゃーんと美也子ちゃんを送って、まじめに帰っていく
んだよな。まあそこがあいつのイイトコなんだけど。

二、三日後に浅雄はお金を返しに僕のバイト先のコンビニエンスストアまで来
てくれた。それからあの日以来、美也子ちゃんと結構喋れるようになったと喜
々として話して帰っていった。

いつものようにバイトで入ってて、レジを打ったり商品を並べた
りしていた。でも新しく出来たピザ屋のバイトの時給がイイもんだから、コン
ビニエンスでのバイトはその日が最後だった。夕方、黒いワンピースの若い女
がヨーグルトを買った。
「一〇三円のお買い上げになります・・・袋はいいですか?」
「あの・・・タミオくん・・・でしょ」
と言われて僕は目を上げた。いつかの夜、浅雄が連れてきた女の子だった。長
い髪をポニーテールにして片えくぼで笑っている。こうして見るとちょっと可
愛かった。
「あ・・・えーっと、確か浅雄の友達の・・・」
「美也子よ」
美也子ちゃんはニコリと笑って言った。それから一〇三円きっかりでお金をく
れた。「倉田クンからここだって聞いたから、一言お礼が言いたくて・・・」
倉田クンというのは、浅雄のことだ。
「そーか・・・美也子ちゃんはもう大丈夫?」
「うん、もう元気。この間はゴメンナサイね」
「はは、お礼なら俺よりも浅雄に言ってよ。すっごく心配してたからさ、あい
つ」
うふふと美也子ちゃんは困ったように笑った。「そのことなんだけど・・・私、
すっごく感謝はしてるのよ? 倉田クンていい人なんだけど・・・」
僕はレジの手を止める。「だけど?」
「・・・何か最近、映画とかいろいろ誘ってくれて・・・倉田クンはいい人な
んだけど、付き合うとかそう風には、私考えられなくて」
「ふーーーん。なるほどね。じゃ美也子ちゃんはどんな奴がいいの?」
「えー・・そうねー」美也子ちゃんはいたずらっぽく笑った。「そうねえ・・・
タミオくんとか結構タイプ・・・なんてね」そう言うと僕の目をのぞきこんだ。
「そぉう?」僕は笑ってヨーグルトのパックを手渡した。「じゃあさあ、今度
どっか遊びに行かない?」
「行く行く!」それから美也子ちゃんは電話番号をメモして僕の手に握らせて
帰っていった。次の日、浅雄が日本酒の一升瓶を片手に僕の部屋にやって来た。
僕と浅雄は黙って飲んだ。浅雄はしたたか飲んで帰り際、“美也子ちゃんにハッ
キリ振られた”と言った。僕は黙って聞いていた。浅雄はいいやつ。だけどそ
れだけじゃきっと駄目なんだ。美也子ちゃんはこのあいだの浅雄の話じゃ“透
に無理やりホテルへ引っ張り込まれて云々”ってことだったけど、ホントのと
ころ“透なら一回でもイイから”ってその気でついて行ったんじゃないかな、
なんて僕は思う。なんとなくだけどね。僕はジーンズのポケットに入れたまま
になっていた電話番号のメモのことを思った。女の子って残酷だ。透ってやつ
はほんとにヤナ奴なんだろうけど、そんな“残酷”な部分をいやってほど知っ
てるんじゃないかと思った。そんなことは知らなければ知らないままのほうが
いいのに。

で、唐突なんだけど美也子ちゃんの話はこれでおしまい。例のコンビニのバイ
トはあの日が最後だったし、電話番号のメモはジーンズのポケットに入れたの
を忘れて洗濯しちゃったから彼女とはそれっきり会っていない。浅雄は相変わ
らず、ときどきふらりと僕のアパートに来たりしている。今、彼は一生懸命別
の女の子にアタックしてるらしい。(報われるといいんだけどね)
浅雄は美也子ちゃんが僕のバイト先に来たことは知らない。永遠に知らなくて
いいと思う。
                             おわり



#3137/3137 空中分解2
★タイトル (KCF     )  93/ 5/ 8  16:16  (170)
掲示板(BBS)最高傑作集46
★内容

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
非常コックに注意!  [4/10]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 バスによく乗る方はご存じと思いますが、バスの後方には必ず「非常出口」が
あります。この出口は運転席から自動的に開けることはできず、非常出口のすぐ
そばにある「非常コック」をひねらなければ開きません。実際にこの非常コック
をひねって非常ドアを開けたことのある人は少ないと思いますが、緊急の際、す
ぐにバスの外に脱出しなければならないときに必要不可欠なものですので、その
使い方は必ず覚えておかなければなりません。

 私の友人にオーストラリア人の女性がいますが、彼女が先日、「非常コック」
に関する話をしてくれました。
 彼女は千葉県でアシスタント・ティーチャー(日本の公立中・高校で英語を教
えるネイティブの外国人)をしています。その彼女が先日、福島県で同じ仕事を
している女友達(この人もオーストラリア人)と2人で猪苗代湖を旅行したそう
です。
 湖に行くため、彼女達は駅からバスに乗りました。2人ともオーストラリアの
大学で4年間日本語を学んだので、かなり日本語が流暢です。ですから、運転手
が福島なまりの強い日本語を話しても問題なく湖行きのバスに乗り込むことがで
きたそうです。
 バスには乗客は誰も乗っていませんでした。そこで2人はガラガラのバスの後
部座席に座りました。やがて彼女達は、座席の横の壁に、「非常コック」と赤い
太文字で書かれていたのに気付き、2人で顔を合わせて大爆笑したというのです。

  彼女は私にこの話をした途端、笑い出しました。私は、何がおかしいのかさっ
ぱりわからなかったので、彼女にどうしておかしいのか尋ねてみたのです。

 彼女が言うには、英語では「コック(cock)」はもっぱら「男性器」を意
味するというのです。だから「非常コック」に笑いころげたと言うのです。

  でも、これが大爆笑するほどおかしい話でしょうか。私は彼女からなぜおかし
いか説明してもらっても全然笑いませんでした。

 彼女があれだけ笑うには、バスの中で「非常コック」の赤い太文字を2人が見
つけた後に何かあったに違いません。そこで私は猪苗代湖行きのバスの中で何が
起こったか想像してみました。


 「非常」という日本語の単語は初歩的な語句なので、彼女達はすぐ「emer
gency(非常用の、緊急の)」と理解できたはずです。しかし、次の「コッ
ク」はわからなかったのではないでしょうか。私も国語辞書を引いてわかったの
ですが、日本語の「コック」は「横にねじったりして開閉する栓」を意味するの
です。この外来語の意味を正確に言える人は日本人でも少ないのではないでしょ
うか。したがって、日本語が相当できる彼女達でもその本当の意味を知っていた
とは思えません。しかし、「コック」がカタカナであったため彼女達はそれが外
来語であるということはわかったはずです。だから当然、彼女達は日本語の「コ
ック」が英語の「cock(男性器)」と同じものだと思ったに違いありません。
 つまり、バスの中で彼女達が「非常コック」の文字を見つけた時、彼女達の頭
ではすぐに、「emergency cock(非常用男性器)」と翻訳された
はずです。
 そうなれば彼女達は必死になって「非常コック」を探し始めたに違いありませ
ん。しかし、「横にねじったりして開閉する栓」はあったけど、「非常コック」
は結局見つかりませんでした。そこで「変だ!」と感じた2人はバスの運転手の
所へ行き、「非常コックがありません。」と言いました。
バスの運転手は、
「え! そんなはずはないよ。」と驚き、後部座席にやって来ました。そして彼
は、座席の横にある日本語の「非常コック」を指さし、
「そこにあるじゃないですか。びっくりさせないでくださいよ。」
と彼女達に言いました。
彼女達は、
「え? これが『非常コック』ですか?」
と言って驚きました。でも彼女達は日本人と外人の間に解釈の違いがあることが
分かったのですぐに納得しました。そして彼女達は、「コック」の英語本来の意
味を運転手にゼスチャーを交えながら懇切丁寧に説明してあげました。
 バスの運転手は、昔の日本人が英語の「cock」を誤解して日本語に取り入
れてしまったことを悟りました。そして彼は、日本では「コック」は「横にねじ
ったりして開閉する栓」を意味することを彼女達に教えてあげました。
また彼は、それだけではなんなので、
「このバスには英語の『非常コック』もあります。」
と訳のわからないことを言いながら自分のズボンのチャックを下げたのです。
 彼女達は、日本では「コック」というのは「横にねじったりして開閉する栓」
であることをすでに十分承知していたので、2人して彼のチャックから出ている
「栓」を横にねじったりしました。
 やがてバスの運転手は救急車で猪苗代救急病院に運ばれました。

  おそらくこのようなことが起こったのではないでしょうか。でなければ彼女が
あれほど笑うはずはありません。

○コメント
その後、そのオーストラリアの女性に「実際はこうだったんだろ?」と問い詰め
たところ、彼女は
「運転手のチャックから出ていた『栓』をねじった角度は32度くらいだったの
で、救急車で病院に担ぎ込まれるほどのことはなかった。」と白状しました。
私の推理は間違っていました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
スキーで一番楽しいこと  [4/10]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 みなさんはスキーに行って何が一番楽しいですか?

 もちろん、わざわざお金と時間をかけて遠くの山にスキーに行くわけですから、
「スキーをすること。」
が一番楽しいという人が多いと思います。もうちょっとしゃれた人なら、
「白銀の斜面にシュプールを描くこと。」などと文学的な表現を使い、
「私はスキーがうまいんだぞ!」という自慢を言外に匂わせるのではないでしょ
うか。

 また最近は、スキーがさほど好きでないのにスキーに行く人がけっこうたくさ
んいます。こういう人は、スキーで一番楽しいことに、
「一日中滑った後に旅館に戻ってから入る温泉」を挙げるかもしれません。ある
いは、
「アフタースキーのディスコでのナンパ」などという、何のためにわざわざ金を
かけて山奥まで来たのか首をひねってしまうような人もいることでしょう。

 いずれにしろ、「スキーで一番楽しいこと」は人によってさまざまのようです。
 しかし実際には、上に述べたようなことが「スキーで一番楽しいこと」ではあ
りません。上記のように答えた人々はスキーの本当の喜びを隠しています。その
真の喜びとは、スキーをした人なら誰でも間違いなく体験しているものなのです。
その喜びの瞬間には、人々はみんな笑顔を浮かべ、あまりの快感に「あーん!」
というため息すら漏らしてしまう人も非常に多いのです。

 さて、その喜び・快感とは何でしょうか?
 記憶力のいい人はもう思い出したと思いますが、頭の悪い人のためにここで述
べておきます。

 それは「スキーを終えて、スキー靴を脱ぐことです。」

 スキーをするときは普通、カチカチに固いスキー靴を履き、バックルをキツキ
ツに締めて滑ります。ですから、どんなにスキーがうまい人でもしばらく滑ると
足がガンガン痛み出します。こんなの楽しいわけがありません。これはむしろ拷
問です。
 やがて、夕方になりリフトが止まります。そこでみなさん旅館に戻り、乾燥室
でスキー靴を脱ぐのですが、その瞬間、すなわち拷問から解放された瞬間、極上
の快感が全身を駆け巡ります。この快感が得られるからこそ、みなさん交通渋滞
や満員電車に凝りることなく何度もスキーに行くのです。

 でも、この快感を味わうために時間をかけ、大金を払ってわざわざスキー場ま
で行く必要があるのでしょうか?
 よく考えると、こんな快感は自宅でも味わうことができそうなものです。しか
し、そこはやはり、他人の目を気にしすぎる日本人。自宅でスキー靴を脱いで快
感に浸っているところを近所の人に見つかりでもしたら、自慰をしているところ
を家族に見られたくらいに恥ずかしい思いをしてしまうのです。そんなわけだか
ら日本人は、お金と時間をかけてわざわざスキー場に行き、スキー靴を脱ぐ快感
をエンジョイするのです。

 それに比べ、外人は割り切っています。ヨーロッパ、とりわけスキー発祥の地
であるノルウェーの人々は日本人のように他人の目など気にしません。といって、
ノルウェー人は家族の目の前で堂々と自慰をしているとは言っていませんので早
合点しないでください。
 ノルウェー人はスキー靴を脱ぐ快感を味わうためにスキー場などには行きませ
ん。彼らはまず、スポーツ店に行き、スキー靴を買います。その時、店員には、
「スキー靴を脱いだときに一番快感のある靴をください。」ときっぱり言います。
そして、自分の足のサイズよりもはるかに小さなスキー靴を購入し店を出ます。
彼らはスキー板やストック、スキーウェアなどは一切買いません。家に着いたら
先ほど買ったどう見ても足が入らなそうな小さなスキー靴に自分の足を強引に押
し込み、バックルをキツキツに締め、さらに靴の周りに針金をグルグル巻いて外
へ出ます。後はもう、ぶっ倒れるまで町内を駆け巡り、足がうっ血し、足の感覚
が完全に麻痺したところで家に帰り、スキー靴を脱ぎ、「スキーの最高の喜び」
を味わうのです。この時彼らは近所を気にせず大声で、「ウォー!」という快感
の雄叫びを上げるのです。
 前回のアルベールビルオリンピックでノルウェーが大活躍したのはみなさんご
存知の通りです。5年後の長野オリンピックで多くのメダル獲得をめざす日本人
にとって、ノルウェー人から見習うことは非常にたくさんあるのではないでしょ
うか。

○コメント
メキシコオリンピックだと思いますが、マラソンで、エチオビアのアベベが裸足
で走って優勝し、全世界の人々を驚嘆させました。でも、今後誰かがスキー靴を
履いてオリンピックのマラソンに優勝したら、アベベのこの偉業も一瞬にしてぶ
っ飛んでしまうことでしょう。


これで終わりです。掲示板(BBS)最高傑作集47をお楽しみに。

                                                          フヒハ




「空中分解2」一覧



オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE