AWC CFM「空中分解」



#1832/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC     )  89/ 9/19  15:45  (119)
B型プロレス小説 前田日明対ブルーザーブロディ   永山
★内容
「あの」時の対決が実現したと思ってください・・・。

 先に入って来たのはブロディだ。「移民の歌」の曲にあわせて、チェーンを
振り回しながら入って来た。
 「WHAU、WHAU、WHAU、WHAU、WHAU、・・・」
一斉にテープが投げ込まれる。続いて反対側から前田が入って来た。ガウンは
着ていない。リングサイドまで来て、前田がブロディを見上げる形となる。い
つもと違い、ブロディはつっかけない。激しいにらみ合い。大歓声が沸き起こ
る。前田がようやくリング内に入った。
 「・・・ブルーザー、ブローディ!」
 「・・・前田ー、あきぃらー!」
リングアナにコールされても、二人はにらみ合いをやめない。レフェリーのボ
ディチェックの時も同様だ。
 「カーーーン!」
ゴングが鳴った。円を描くようにゆっくりと周り始める両雄。ブロディが立ち
止まって、大きくスタンスを開き、片手を高くかざした。それに応じて前田も
手をあわせる。次の瞬間、ブロディは前田の左腕を捻り、手刀を落とした。観
衆がどよめく。続けてブロディは前田の顔をかきむしり、髪を鷲掴みにしてコ
ーナーに打ちつける。レフェリーが割って入り、離れる。前田は頭を振って気
合いを入れ直した。
 「ファイッ!」
レフェリーが再開を促すと、またもブロディは手をかざした。前田もそれに応
じる・・・と、見せかけていきなりブロディの右膝の内側にローキック!2発、3発と蹴ると、ブロディは右手を高くあげ左手を頭にやり、大げさに(?)痛
がってみせる。前田はブロディの腕を取ってアームホイップ。続いてアームロ
ック。ブロディは髪をかきあげながら呼吸を整えているようだ。ブロディが立
ち上がった。そして前田にチョップを連打!前田も2発は耐えたが3発目にな
って、手を放した。逆にブロディが腕を取り、ロープに振った。かえって来る
ところを、カウンターのキングコングキック!前田、ダウン。しかし、受身は
取っている。その前田めがけ、ブロディはギロチンドロップ。さらに抱えあげ、
ワンハンドボディスラムでたたきつけた。再度ギロチンドロップを狙ったが、
これは前田がよけて失敗。前田は尻餅をついているブロディの顔面めがけ、キ
ックを繰り出す。1発は受けたものの、後はカバーする超獣。そして立ち上が
りながらキックを受け止めると、前田を押し倒した。前田が怒って突っかかる。
組み合って、ロープ際にもつれる両雄。レフェリーが割って入る。ブレークの
瞬間、前田がエルボーをブロディの肩口に打ちつけた。今度はブロディが怒っ
て掴みかかる。またも割って入るレフェリー。何とか試合再開となるが、もう
喧嘩ファイトの様相を見せ始めた。いきなり蹴りに出る前田。それを受け止め
ようとするブロディ。しかし徐々に後退する。ファンの大歓声。前田がブロデ
ィをロープに追いつめると思われたが、ブロディは自らロープに飛ぶと、その
反動を利して前田にキングコングキック!前田の顔面にクリーンヒット。ダウ
ンする前田。その首を掴んで引きずり起こし、相手の腕を自分の首にかけさせ
たブロディ。そう、ブレーンバスターの体勢だ。一気に引き抜いて、叩きつけ
る!覆いかぶさるブロディ。
 「ワン、ツ・・・。」
カウント1.5で返す前田。前田を引きずり起こしもう一度ブレーンバスターを狙
うブロディ。しかし、引き抜こうとした瞬間を前田は体勢を入れ換え脇固めに
移行した!しかし、関節技を研究していたかブロディ、前方に回転して脱出。
素早く立ち上がり、チョップを打ち下ろす。だが、腕を放さなかった前田はブロディを捕まえフロントスープレックスで投げた!さらに引きずり起こし、キャプチュードでブン投げる!前田、カバーに入る。
 「ワン・・・。」
カウント1ではね返すブロディ。ここら辺は意地の張合いだ。前田は再び蹴り
を繰り出す。ところがブロディは足を取ると、立ち上がって前田を引き倒し、
両足を抱え込んだ。逆エビ固めか?いや、ジャイアントスウィングだ!1回、
2回・・・、14,5回転してやっとブロディは前田を放り投げた。さらに前
田を抱えあげ、アバランシュホールド!そしてコーナーに下がり、大きく片手
を振りあげ、アピールをする。ブロディが走った!キングコングニードロップ!
カバーに入るブロディ。
 「ワン、ツー、ス・・・。」
ギリギリのところで前田の足がロープに届いた。信じられないと言った顔のブ
ロディ。前田を引きずり起こし、ロープに振ったかと思うとドロップキック!
ふっ飛ぶ前田。ここでブロディはヘッドロック。怪力で締め付ける。しかし前
田は力を振り絞って、腰に手を回しバックドロップ!バランスが崩れ、両者後
頭部を打ちダウン。ブロディが僅かに先に起き上がり、前田をロープに振って
ドロップキックを狙った。だが、今度は前田がロープを掴んだため、ヒットせ
ず。ダウンしたブロディの後ろに回り、チキンウィングフェースロックを狙う。
しかし、怪力のため極らない。仕方なく裸締めに移行する前田。しっかりと足
も固めた。観衆から、
 「お、と、せ!お、と、せ!・・・」
の声も沸き上がる。だが、ブロディコールも負けていない。そして目を疑うよ
うな事が起こった。足を固められているにも関わらず、ブロディは立ち上がっ
たのだ。そしてゆっくりとロープに近付く。ロープに手が届きロープブレーク。
 [WUOAAAAAAAAAA・・・・・・・・・・・・!」
ため息にも似た歓声が沸き上がる。驚きのためか、やや責めあぐねた感じの前
田。そこをすかさずブロディはチョップ、水平チョップだ。虚を突かれた前田
は後退。それでも踏んばって、チョップを返す前田。ブロディのやや大振りの
チョップをかわすと、うまく腰を抱えた。すかさず、サイドスープレックス!
だがブロディは何事もなかったように起き、前田の腰を捕らえ、お返しのサイ
ドスープレクッス!そしてダウンした前田にエルボーを落とすと、コーナーに
かけ登った。フライングニードロップか?だが気が付いた前田は起き上がって、コーナー上のブロディにパンチ、そしてデッドリードライブで投げ捨てた。そ
れだけかと思ったら、ブロディが膝をついて立ち上がった瞬間、前田が動いた。
ニールキック、一閃!ブロディのこめかみにヒット!ふらついて動きまわりな
がら、苦しむ(?)ブロディ。前田は蹴りを出して、ブロディの動きを止める
と、スロイダー!仰向けに倒れたブロディにギロチンドロップを狙った前田。
が、僅かなところでよけられた。反対にブロディは前田を抱えあげ、シュミッ
ト流バックブリーカーで何度も叩きつける。さらに頭上に掲げ、アルゼンチン
バックブリーカーだ。そしてなんと、そのままバックフリップ!しかし、これ
は体勢が悪すぎた。両者、ダウン。やはり、前田の方がダメージが深い。ブロ
ディは距離を取ると、前田めがけてフットボールタックル。続けて前田を起こ
しロープに振ってキックを狙ったが、かわされ、逆に前田がロープの反動を利
したエルボー。やけに大きく後ろに下がったと見えたブロディ、自らロープに
飛び、前田に対し、ボディアタック!同時に前田、無意識の内にと思われるニ
ールキックを繰り出した!両者ダウン!
驕@「ワーン、ツウ、スリー、フォウ、ファイブ、シックス、セブン、エイト、
ナイン・・・、テン!」
 「カン、カンカンカン。」
沸き起こる歓声。
 「23分07秒、両者KO、23分・・・。」
新・格闘王対超獣革命の対決はドローに終った。意外にも(?)試合後、握手
を固く交わす両雄。試合後のコメントで、ブロディは
 「マエダがインディペンデントグループ(独立団体・UWF)時代にした発
言を聞いたときは、本当に腹が立って、奴のところに上がってやろうかとおも
った程だった。しかし、奴の言った事もまんざら嘘ではないな。だが、今度や
ったときはブロディレヴォリューション(革命)の勝利となろう(笑)。」
と語ったと言うことだ・・・。
−了−

 プロレスファン以外には、何の事やらさっぱり分からないでしょう。すみま
せん。前田は今、ブームを起こしていると言われているUWFのエースで、彼
が新日本という団体にいたとき、対決を望まれていたのが、このブロディです。
ある時、この二人の対決が決まったのですが、ブロディ選手がトラブルを起こ
し、来日しませんでした。その後、二人は異なる団体のリングに上がるように
なり、昨年の夏、ブロディ選手はプエルトリコにて、レスラー仲間に刺され、
死去してしまいました。夢の対決は本当に夢となったのです。その夢をせめて
文字の上でも実現させようと試みたのが、これです。





#1833/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HYE     )  89/ 9/21   0:35  (115)
シンパサイザー NINO
★内容


   シンパサイザー


 彼がアクセスしたネットには電子掲示板があった。その日、彼は一枚の掲示を読
んだ。


  明日、私と同じ事をしてくれませんか。ただし、次にあげる項目に該当す
  る方だけにお願いしたいのです。

   車:アルト。詳しい形式はこだわりません。要、カー・ステレオ。
   BGMのためのカセット:ニューオーダー、『ブルー・マンデー』
    (30分カセットに、この曲を片面二回づつ四回録音したもの。これ
     は今から用意しても可。友達から借りたレコードまたはカセット、
     及び貸しレコードは使用禁止)
   白いTシャツ、黒いジーンズを着る方。
    (ともにメーカーにはこだわりません)
   自宅から、南側に海がある。(ただし、車で20〜30分程度の距離)
   一人っ子であること。
    (年齢と性別にはこだわりません。両親とも健在なのが好ましい)

  そして、明日して欲しいこと。

   11時、起床。目覚し時計等で起きるのはなしです。
      食事をして下さい。できれば、トーストとコーヒー程度の。
   12時、エンジン始動。海岸に向かう。(カセットをかけて)
   12時半、海岸到着。海の見える位置に車を止めてから、浜辺に立つ。
      夕日が見えるまで、そうして海を見ながら、浜にいる。
   (疲れたら座ったりしていいです。絶対立っている時間は最初の30分
    とします。誰にも声をかけてはいけません。誰にも返事をしてはいけ
    ません)
   19時、止めた車の中で、カセットを聴く。
   20時、自宅へ向かう。
   21時、親が作った食事をとってください。父、母、どちらの作ったも
      のでもいいです。その間、親と会話しないでください。テレビも
      不可。
   22時〜24時、あなたの感じたことを、ここのボードに書いてくださ
      い。
  (些細な注意ですが、カセットを聴く時、無録音部の早送りはなしです)

  これで終わりです。重要なことは、あなたがこれをする事を誰にも話さな
  いことです。これは絶対のルールです。

   では。明日。私と同じ事をしましょう。           あみや


 ネットから抜けると、彼はカセットを用意した。レコードから、テープに落とす。
もう一回、かけ直して、テープに落とす。カセットを裏にし、もう二回、それをし
た。
 床につき、ぼんやりと彼は思う。もし起きれたら、やってみよう。

 彼は11時に目が覚める。変だと感じる。今日は日常と違う気がする。
 自分は会社に行くのを忘れるほど、疲れて、眠たかったか?
 彼はトーストとコーヒーを前にして、ぼんやり思った。

 浜について、彼はぼんやり海を見た。
 空は雲っていて、夕日は見れそうにない。
 右手の弓なりに浜が曲がっているその先に、一人男がいた。
 縁のない眼鏡をかけた、白髪の老人だった。
 なら、違うんだ。

 昼間なのに、波もそんなにないのに、サーファーが戯れていた。
 また右手方向を見ると、男がいた。
 その男は、白髪の老人ではなかったのだ。
 さっきは、老人にみえただけだ。

「おい。中村だろ?」
 彼の後ろで、彼を見つけたように誰かが言った。その呼び掛けた男は、彼の前に
まわり、しゃがみこんでいる彼の顔を確かめるように見た。
「中村じゃねぇか。どうして返事しないんだよ」
 高校時代の彼の同級生だった。ただそれだけの男で、高校時代も含めて、話した
ことは一度か、二度だった。
「ひさしぶりだな」
 ボードに書いてあった約束だ。話をしてはいけない。彼はそう考えると、とても
気持ちが落ち着いた。自分を知っている人間と会うのは、とても緊張する。まして
や、話をするなど、もっての外だ。そうなれば、もっと動揺するし、もっとイライ
ラする。
「……中村、どうしたんだ。気分でも悪いのか?」
 前を塞ぐ人影を抜いて、彼は海を見た。
「中村、今どうしてんの? 大学行ってんの? 働いてるの?」
 彼にはその声は聞こえない。
「なんなんだ。お前、気が狂ったのか? それとも、なんか悪いこと効いたか?」
 右手方向の男も、座って、海を見てる。波の音だけが、繰り返す。
「それより、なにやってんだ? サーファーの友達でもいるのか?」
 彼の目の前の男は砂を蹴って、言った。
「じゃあな。さいなら」
 彼は髪の上に掛かった砂を払った。

 彼はアルトの中で、『ブルー・マンデー』を聞いた。完成されたダンス・ナンバ
ーなのに、とても暗い曲に聞こえる。彼がどこかで読んだ、このバンドの解説が影
響している。彼がこの曲の批評を読んだ所為なのだろう。
 都合、八回聞いて、彼は家に向かう国道を走り出した。

 家には、誰もいなかった。
 全部、壊された気がした。
 彼は冷蔵庫から、冷えた炒めものを取り出した。
 これも、親の作ったものであることに違いはない。
 なら、いいんだろう。
 彼は、親と食事しながら、しかも会話しないという事に、なにか意味を感じてい
た。だから、親が家に居ないことで、今日一日が無駄になったような気がしたのだ。
 思い出してみると、別に、親と食事してください、とは書いてなかった。
 だから、いいんだ。別に、約束破りじゃない。

 彼はアクセスして、メッセージを書いた。


    あなたと、今日、同じ事をしました。
                                タクヤ



 おわり




#1835/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC     )  89/ 9/22  12:34  (141)
K&A殺人事件       永山
★内容
登場人物
*秋元康助(あきもとこうすけ) *神田保夫(かんだやすお)
*進道ケイ(しんどうけい)   *玉置三枝子(たまきみえこ)
*ハリー長山(はりーながやま)  *吉田刑事(よしだ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 「君達、コモンセンスって言う単語、知ってる?」
アメリカ帰りの長山が、その場にいる者全員に聞くように言った。
 「知らないよ。」
秋元が言った。
 「分からないわ。」
進道が言った。
 「知ってる訳ないじゃないの。」
玉置が言った。
 「・・・。」
神田は黙っている。
 「そうかなあ、これ、常識なんだけどねえ。」
 「アメリカでは、常識かも知らなくても、日本では違うわ。」
長山の言葉にムカついたのか、進道が反発した。
 「NO,NO.日本でも常識なんだなあ、これが。分からないなら、辞書を
引いてごらん。それにしても、君達はいったい何を勉強してるの?いくら日本
の英語教育が欠陥だらけだからと言って、この程度の単語も知らないとは・・
・。もっと、フルーツフルな勉強をやり給えよ。何てね!あ、そうだ。フルー
ツフルって言うのは、<実りある>っていう意味だよ。ハハハ・・・。」
そう言いながら、長山はその場をたった。
 ここは、とある喫茶店の中。中学時代に同級生だった長山が親の都合でアメ
リカに行ってから3年後、高2になった今日、帰国した長山の歓迎会をやって
いたのだが、上のような次第になってしまった。秋元ら四人に言わせると、長
山は中学の時から自分が混血であることを自慢気にしており、キザな奴であっ
た。それがアメリカに三年いたせいで(?)一層、拍車がかかった感じと言え
た。多感な時期の彼らにとって、長山の言動は、殺意を抱かせるに充分だった。

 「第一発見者は、どなたですかな?」
 「あ、お、俺です。」
吉田刑事の問に、秋元が詰まりながらも答えた。
 「状況を話してください。」
 「昨日の土曜、俺達のサークルで出している<フォース>の編集会議をやり
に、部室に集まりました。あ、ホントは部とは認めてもらってないから、仮部
室なんですけど・・・。」
 「それはいいから。で?君達の『超常現象研究会』の部屋・この別館4階で、
何があった?」
 「昼飯を食ってなかったから、誰が買い出しに行くか、アミダで決めました。
みんな、ホカホカ弁当にしたんですが、長山だけがハンバーガーでないとダメ
だと言ったんで、二人、買い出しに行くことになりました。それで保夫・・・
神田君と進道さんが行きました。神田君が弁当屋に、進道さんがハンバーガー
ショップに。その間、俺と玉置さんは、部屋を出ていました。」
 「何故?」
 「長山の奴が、原稿を書きたいから一人にしてくれとか言って、俺達を追い
出したんですよ。」
 「俺達、とか言うことは、君達二人は、ずっといっしょにいた訳?」
 「いいえ、別々でした。」
玉置もうなずいた。
 「ふん。続けて。」
 「先に神田君が帰ってきたんだけど、ハンバーガーを待っている長山はうる
さがるだけだろうと思ったから、そのまま外にいて・・・。しばらくしたら、
進道さんが帰ってきたので、部屋に戻ってみると長山が死んでたんです。たま
驍スま、俺が先頭だったから、第一発見者ってのになったんです。」
 「ふむふむ。神田君、君は弁当屋から帰ってきて、すぐに秋元君にあった?」
 「そう。」
 「証明できる人はいる?」
 「いえ。」
 「そうか。じゃ、進道さんは?」
 「もちろん、まっすぐ帰ったわ。でも、証明してくれる人なんて・・・。」
 「困ったなあ。じゃあ、K&Aって血文字を残していたんだけど、何か、心
当たりは?」
 「さあ・・・。」
みんな、首をふる。
g田刑事は余程、こう聞こうかと思った。
 (秋元のイニシャルはK・A。神田の「か」は、KAだ。進道ケイの「ケイ」
のつもりでKと害者が書いて、それに気付いた彼女が&Aを付け足したのかも。
玉置が他の3人に罪をきせるつもりで、書き残したのかも知れない。しかし、
&はどういう意味だろう。秋元と神田の共犯て事か?そうだとしても、いくら
アメリカかぶれの長山と言っても、わざわざ&と書く必要があろうか。「と」
で充分ではないか。わからん。)
 「分かった。もういいよ。」
吉田刑事が言った。

 長山の死因は、腹部の刺し傷。凶器のナイフは、現場に落ちていた。ナイフ
は魔術用の物で、飾りとして部屋においてあったらしい。他に後頭部に鈍器で
殴られた跡があり、これは、やはり現場にあった何もいけていなかった花瓶に
よるものと推測される。共に、指紋はきれいに拭き取られていた。部屋には神
田が買ってきた弁当からこぼれたのか、何かの煮汁が床にしみを作っていた。
 さらに調べが進み、重大なことが明らかになった。玉置にはアリバイがあっ
たのだ。玉置に思いを寄せている「女子」が二人、当日の昼に玉置が校庭の隅
の方でたたずんでいるのを「見つめていた」と言うのだ。玉置は犯人ではない。
では、誰が?
 「・・・という訳なんです。頼みますよ、何かいい知恵を。」
 「吉田警部。『頭の体操』って本を全巻、読んでごらんなさい。自ずと犯人
は分かりますよ。状況にもぴったりと来る。」
吉田刑事に質問されたその探偵が答えた。
 「全巻?そんな暇、ないんですよ。犯人が逃げるかも知れないじゃないです
か!」
 「大丈夫。まず、逃げないですよ。」
 「そうでしょうか・・‘゜」
g田刑事は、納得のいかない様子であった。それでも、「頭の体操」を全巻買
い込み、一気に読み上げた。確かに、犯人は分かった・・・。

 「どう考えても、君しかありえないんだ。」
吉田刑事のその言葉に、相手は驚いたようだ。刑事が続ける。
 「我々は初めに、共犯の可能性を考えた。だが、どの組合せを考えても、共
犯をするメリットがないんだよ。つまり、アリバイの証人としての、共犯の役
目を果たした人が見当たらない。これは、単独犯だ。それで、害者が残した血
文字だがね、あれは明かに一筆書きで書かれたことが分かった。つまり、進道
ケイさんではない。彼女が犯人だとしたら、害者はK&Aと書き残す訳ないし、
彼女が&Aを付け足したのもありえない。」
相手は黙っている。
 「では、秋元君か?違うだろう。これもK&Aと書き残す理由が見つからな
い。K・Aで充分なはずだ。つまり、犯人は君となるんだが・・・。」
 「ちょっと待ってください。僕が犯人だと言う証拠は?」
相手−−神田が問い返した。
 「君が弁当を買いに行ったんだったね。何を買った?」
 「秋元がハンバーグ弁当、進道さんと玉置さんはからあげ弁当。僕は・・・、
そうそう、別に決めていなくて、その日、新メニューになったと言う中華どん
を買いました。」
 「それとだ。君は事件発生後、秋元君達と一緒に部屋に入ったとき、弁当は
どうしていた?」
 「そうですね、慌てていたので、放り出してしまったんでした。」
 「つまり、部屋の中には持ち込んでいないと?」
 「そうです。」
 「結構。では、聞くがね、部屋の中には、煮汁のような物がこぼれていたん
だ。分析の結果、中華料理の汁と分かった。君が行ったという弁当屋にあるメ
ニューの内、この汁を含んでいるものは、中華どんだけなんだよ。」
 「それは・・・。もっと前に買ってきて、こぼしたとも考えられるじゃない
ですか。」
 「言っただろう。中華どんは事件当日にできた新メニューだって。君の言う
ことは、ありえないんだ。」
こう指摘され、神田は少し、青ざめた表情を見せたが、すぐに戻った。
 「ハハハ・・・。やっぱり、ばれちゃったか。衝動的にやってうまく行くと
は、思ってませんでしたが。思ったより、早かったなあ。」
 「君がやったんだね?」
 「そうです。あいつ、いつも人を見下したような態度をとりやがって、気に
くわなかった。僕、これでもかなり、プライドは高いんですよ。ところで刑事
さん。あいつは何で、K&A等と書き残したんです?」
驕@「今となっては、推測でしか言えないが、多分、こうだよ。K&Aをちゃん
驍ニスペルで書くと、KandA。つまり、KA(か)N(ん)DA(だ)にな
るんだ。」
 「・・・フッ、あいつらしいや。刑事さん、コモンセンスっていう単語の意
味、知ってます?常識ですよ。」

 コモンセンス<COMMONSENSE>−−−「常識」と言う意味である。

驕|終−



#1836/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (TKH     )  89/ 9/22  14:57  ( 61)
   老人 2
★内容


 爽やかな朝だった。九月も半ばに入り、公園の木々は鮮やかに赤く染まり初めていた。まだ朝も早いせいか、人影も殆ど無く、小鳥達が朝のコーラスを楽しげに奏でている。公園の丁度真ん中あたりを流れる小川のせせらぎは、まるで都会の中にある公園とは思えないほど清らかな美しさで流れていた。
 老人は、そんな早朝の公園を散歩するのが日課になっていた。歳のせいでもう何年も前から杖をつかないと歩くことが出来なかったが、それでも老人はその朝の散歩をかかすことはなかった。噴水のそばに小さなベンチがあり、いつもの様にそこに腰を下ろすと太陽の光が、気持ち良さそうに噴水の湧き出る水と戯れている。
 セオドア・ジョンストン。
 宇宙物理学者、宇宙知識生物探査船パイロット。彼の栄光はこの60年もの長い間、遠宇宙の探査に費やされ、そして終った。
 彼の発見したものと言えば、数々の重要鉱物資源を保有する未知の小惑星や、単純細胞しか生存しない数え切れないほどの未開発な惑星だけだった。
 長い宇宙探査の生活に支払った彼の代償は、決して小さな物ではない。
 アルタ第3惑星では、肺機能を犯され、ヨーグダ連星では、すざましい紫外線の為に目をやられた。不自由な右足は、ベガ第16惑星で怪我した名残りである。地球の平均寿命には、まだまだ余裕有る歳なのだが、その身体は実際に、医者も見放す程に悪かった。
 鳩が数羽、彼の足元にやってくる、彼はポケットから朝食のパンの残りを小さくちぎっては、その鳩達に投げてやる。鳩は、勢い良くその餌にありつく。
 彼には自分の歩んできた人生の中でたった一つだけ、非常に心残りな事があった。それは、人類以外の知的宇宙人と言う存在に、結局一度も、巡り会えなかったことである。
 宇宙に何億という数え切れないほど存在するはずの地球型惑星。しかし、未だに単純細胞以上の高等生物の存在は人類史上、今だかって誰にも確認された事はなかった。
 鳩が突然、なにかにおびえるように飛び立った。ふと、見ると、可愛らしい女の子が立っているではないか。
 栗色の髪をした。そう、歳の頃で言うとまだやっと3、4才という頃だろうか、と
にかく目の大きなとても可愛らしい子だ。
 彼は不思議そうに、彼の事をじっとを見ているその女の子にやさしく笑顔をかえした。 女の子は、ひょいと首をかしげると。
「叔父さん、宇宙人?。」と、聞いた。
「え!。」と思わず答えてしまったが自分がよぼよぼの年寄りであることに気がつくと
「いいや、私は地球だよ。」と、やさしく答える。
すると、その女の子は。
「ごめんなさい、うちのおじいちゃんと同じ臭いがした物だから。」
「おじいちゃんは、もしかしたら、宇宙船のパイロットかい?。」
「ううん、おじいちゃんは、ウノ星人よ、そして、ママは、キウヨ人。」
「え!。」彼は、その子が彼の事をからかっているのだと思った。
女の子は、また、可愛らしく首をかしげると。
「叔父さんは、やっぱり宇宙人よ。だって今、この星に地球人なんていないもの。」
彼は、笑いながら。「年寄りをからかうのは、およし。」と答える。
すると、少女は、しばらく不思議な笑顔で彼の顔を見ていたが。
「叔父さん、きっと宇宙を旅し過ぎて目を悪くしたのね、私が直してあげる。」
そう言うと、少女は彼の目に、そのかわいらしい手を当てると小さな声で何か不思議な
呪文を唱えた。
 手を取った瞬間。何と言う事だ!。
 その子姿はいままで見た事も無いような気味の悪い姿に変わっているではないか。
手には、奇妙な水掻きのようなものがあるし、体は、その巨大な頭部を支えるのがやっ
となぐらいに痩せ細り、ぬめりのある灰緑色をしている。両目は、顔の大半を占めるくらいに大きく、その色は、不透明な黄色に光りながら、今、気味悪く彼の目をじっとのぞき込んでいる。
「あ!。パパだ。」
そう叫ぶ彼女の指差す方向を見る。そこにはとてつも無く大きな青薄色のまるで芋虫のような気持の悪い生き物ががのそのそと彼の方に向かって歩いてきて「お早ようございます。」と、耳障りな声で挨拶をした。

彼は、恐怖の余りに大きな悲鳴を上げながら目を閉じた。


                          1986年3月FREMING



#1837/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (GVB     )  89/ 9/23   0:35  (105)
大型高橋小説  「高橋」             ゐんば
★内容

 某日……
「大型小説第四キャラクターオーディション」が行なわれた。
 各地区予選を勝ち抜いた精鋭四十七名の中からさらに勝ち抜いた十名の中から、
いよいよ大型小説の登場人物がひとり選ばれようとしている。ここ審査員室では、
審査の最終結果がまとまろうとしていた。
「では」審査委員長の松本喜三郎が言った。
「ま、今回はこの高橋ってやつで決まりですね」杉野森弥三郎の発言である。
「このどことなくとぼけたキャラクターといい、ときおりみせる鋭さといい、こ
ういう存在は貴重ですよ」
「それに、どことなく特定の色がないのがいいじゃない」梅田手児奈が相づちを
打った。「彼なら、どんなキャラクターでもこなせそうな気がするな」
「それでは」喜三郎が言った。
「発表に移りましょうか」弥三郎はドアをあけて係員に伝えた。
 表彰式の後、三人の控え室に高橋が呼ばれた。
 入ってきた高橋はつとめて笑顔をつくろうとしているが若干緊張の色が見える。
「私が高橋です」
 やはり堅くなっているらしい。
「どうも」喜三郎が言った。
「そんなわけで高橋さん。ぜひ我々と一緒に大型小説をやってほしいんです」弥
三郎はにこやかにほほえんだ。
「小説の経験も少しあるんですってね」
「ええ、まあ、ちょい役で」
「それはたのもしい。期待してますよ」
「えーと、名前がタカハシヒロシ。性別男、千葉県出身。タカハシヒロシってい
う字はこれでいいのね」
 手児奈は「高橋博」とホワイトボードに書いた。
「ええ。あの、正確に言うと、高橋の高は旧字体です」
「というと、ナベブタの下の口が上下に突き抜けていて」
「ええ、そうです」
「なんかハシゴみたいな字」
「そう、そう」
 手児奈はホワイトボードを書き直した。
「おーい出てこないぞ」新人登場のお知らせを書こうとワープロに向かっていた
弥三郎が言った。
「『たかい』で出てこない」手児奈がのぞき込んだ。
「新字体しか出ないよ」
「ふーん。じゃ、『こう』でやってみたら」
「高甲工項候校公光好効講交考香行広後攻巧口功向航孔江弘港硬稿郊頁肯洪孝恒
浩厚坑黄宏藁桁鮫釦亙蛤尻幌熊咬肛廣胱膠餃恍崗洸敲鑛……ないね」
「おや」喜三郎が言った。
「部首辞書機能があったはずよ」
「髞。なんて読むんだこの字は」
「わたし、区点コード調べてみる」
「うん。よく使う字だから出てきそうなもんだがな」弥三郎はキーをあれこれガ
チャガチャ叩き続けた。
「はて」喜三郎が言った。
「ねー。その字、漢字コード表に載ってないよ」
「あら」喜三郎が言った。
「へー。第二水準にもないの」
「うん」
「ありそうなもんだけどな」
「でも」喜三郎が言った。
「困ったね」
「困ったな」
「高橋さん。まことにいいにくいのですが」弥三郎が振り返って言った。「あな
たの受賞を取り消さなければなりません」
「えっ」高橋の顔がさっと青ざめた。「な、なぜですか」
「だってねー」
「名前がちゃんと書けないんじゃねー」
「な、なんとかなりませんか」
「そうはいってもねー」
「小説の中でいちいち、
 『その時       ■
            ■
     ■■■■■■■■■■■■■■■
         ■     ■
         ■■■■■■■
         ■     ■
         ■■■■■■■
         ■     ■
      ■■■■■■■■■■■■■
      ■           ■
      ■  ■■■■■■■  ■
      ■  ■     ■  ■
      ■  ■     ■  ■
      ■  ■■■■■■■  ■
      ■          ■■ 橋はつぶやいた』
 なんて書くわけにいかないじゃん」
「だって」高橋は泣きそうな顔になった。「僕は、ずっとこの名前を使ってきた
んだし、いままでだってこの字で困ることなんか」
「気持ちは分かりますけどねー」
「JISにないんじゃねー」
「お願いします。お願いしますっ」高橋は土下座せんばかりに頭を下げた。「J
ISなんて、たかが十六ビットのコードじゃないですか」
「だけど、そのJISコードにないってことは、そもそもパソコン通信の世界で
は存在できないってことだよ」
「そうよ、@橋さん。あら、おかしくなってきちゃった」
「ほら、これがあなたの本当の姿なんですよ、@橋さん。だんだん存在に無理が
かかってきた」
「うむ」喜三郎が言った。
「だから悪いことは言わないから、諦めたほうがいいですよ」
「いやです。お願いします。ここにいさせて下さい」
「じゃあ、あなたはここでアイデンティティーを保てるんですか。こんなことを
やってても、あなたはある人には●橋かもしれないし、■橋かもしれないんです
よ」
「そこまで自分を捨てきれるもんじゃないでしょ」
「そんなんじゃない。そんなんじゃないんです。僕は、ただ、僕は、存在を認め
てもらいたいだけです」
「むり」喜三郎が言った。
 その時、@橋の存在が影もなく消えた。

 そんなわけで、大型小説はこれからも三人でやってゆくのであった。

                              [完]



#1838/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HYE     )  89/ 9/23  14:25  (141)
白い頭巾の女  NINO
★内容



 森の少女がいた。森に住んでる。ただそれだけの意味の、森の少女だ。とっても
若くて、しかも一人暮しをしていた。だが、男ができなかった。森の自給自足の生
活を支えるためには他人が楽しく男と遊んでいる時にも、掃除洗濯薪割り、料理と
風呂焚きをせねばならないのだ。狩りも、畑仕事も、家や家具の修理もしなければ
ならない。
「悲しいわ。私って不幸。こんなに美しいのに、男の一人もいないなんて」
 彼女の家には鏡はなかった。あったとしても、比較の対象を知らないのだ。自分
を美人と思い込むのも無理はない。しかし、お話の都合上「「いや、作者の見たと
ころ、彼女は美人だった。
 そう言った訳で、暇があっても男を漁りに街に出ていくこともできなかった。そ
れは、街が森から遠いことと、もう一つ、狼のせいだった。だから、彼女の趣味は
読書だった。とにかく本は多かった。もう一軒別の小屋が立っているほど、彼女は
本を持っていた。
 彼女の持っている本は、作家でもあり森のもう一人の住人で、唯一彼女の親族で
あるお祖母さんの家から頂いてくるものだった。彼女は一年に一回七夕様の日が来
ると、お祖母さんの家に遊びにいき、風呂敷いっぱいの本を持って帰るのである。
「さあ、いよいよ明日は七夕さま。新しい本に出会えるのだわ」
 彼女は毎年この日を楽しみにしていたが、今年は特別だった。それは、お祖母さ
んが去年こう言ったからだった。
『来年は、お前に本以外のプレゼントも上げよう』
 彼女は笹に短冊をかけて祈っていた。そこにはこう書いてあった。
『お祖母さんのプレゼントが色男でありますように』
 何ということだろう。さっき言った新しい本に出会える喜びなぞ、一かけらも彼
女の頭にはなかったのである。これには作者もびっくりした。


 遂に織り姫と彦星のデート当日となった。彼女はクソ暑いのに白いネッカチーフ
を頭にまいて行った。彼女は独り言を言った。
「何で洋服がこの一着しかないのかしら」
 フォークロア感覚に溢れる、伝統的で可愛い西ドイツ(だっけ? デンマーク?
 オランダ? 作者の不勉強をお詫びします)風のお洋服であった。彼女のイッチ
ョラ(って、どういう漢字だったろうか?)だった。
 お祖母さんの家に着くまでを書くのが面倒という作者の都合によって、彼女は烏
たちがつるしたブランコにのってお祖母さんの家に着いた。
 そして、ノックもしないでいきなり部屋に入り込んだ。クンクン。彼女は鼻をヒ
クつかせ、匂いを嗅いだ。
「血の匂いだ」
 彼女はバスケットに入っている手裏剣を持った。彼女の隠遁生活は、自分をくノ
一だと錯覚させるに十分なほど、孤独で、辛かったのだった。
「良く来たね」
「お祖母さん? どうしてベッドの中にいるの。何処か具合でも悪いの?」
 そこまで言っておきながら、彼女は妙な不信感に襲われた。
「違う、違うわ。あなた、お祖母さんじゃない」
「どうしてさ。さ、はやく私に顔を見せておくれ」
 彼女は手裏剣を持ったまま、一歩一歩、ベッドに近付いた。
「さあ、はやく」
 そのチラリと見える耳が、まず怪しかった。
「なんで長髪(ロングヘア)で耳を隠しているはずのお祖母さんが、耳を出してい
るのよ」
「あんた、はっきり言って長髪はダサイわよ。ショートカットが流行ってるんだか
ら」
 そうだったのか。彼女は世間と隔絶されているために、流行に乗り遅れている自
分を恨んだ。長い髪を誇りにしてきた私なんかは、今やトレンディーじゃないんだ
わ。
 しかし、だ。髪の毛が針のように尖がっていいものだろうか。
「嘘ついてるんでしょ。髪がまるで針のようだわ」
「これはね。アンテナになってるのよ。妖怪が近づくと髪の毛が立つのよ」
 うーむ。彼女はそんな話を聞いたことがあった。たしか、幼いころ……
「って、キタロウか。おまーわ!」
「どーでもいいから、顔を見せてよ」
 また一歩、ベッドに近づくと、近眼である彼女は顔を次第にそのお祖母さんらし
き者に近付けていった。
「目も口も変だわ。お祖母さんと違う」
 ベッドに寝ていた「狼」は、彼女の襟元から豊かな胸が覗いているのを見て、思
わず×××が×゛っ×した。
「まあ、お祖母さん。股間が×゛っ×してるわ」
 手のひらをパッと開いて、『まあ驚いた』という、古典的仕草をしていた彼女は
総てに気が付いた。
「男だっ。男ね」
「そうさ、ばれちゃしかたねぇ。何を隠そう、俺が『ベッドの狼』だ」
「ヒャッホー。待ってました」


 念願かなった彼女のネッカチーフは赤く汚れてしまった。本来なら、ここで終り
たいのだが、行方不明のお祖母さんのことを書き忘れていた。
「お祖母さん。全部見てたのね」
 窓からヒョッコリ顔を出していたお祖母さんを見つけ、彼女はそう言った。
「この歳になると、男は相手してくれないもんでな。私の寂しさを少しでも紛らわ
そうという意味も込めて、お前にプレゼントをしたわけさ」
「ありがとうお祖母さん。……この男連れて帰っていい?」
 お祖母さんはほころんでいた顔を急にしかめて、
「いやそれが駄目なんだ。この男は妻と子供がおってな……」
「本当? 狼さん」
「そうなんだ。俺は離婚する気はない」
「遊びだったわけ?」
「そうだよ。そういうもんと相場が決まってる」
「お前は本を持って森にお帰り。この男は毎年七夕様には来てくれるって言ってる
から」
「俺とおまえは織り姫と彦星というわけだ」
「いやよ。私はもう森へは戻らないわ」
 お祖母さんは家を回りこんで部屋に入った。我がままを言う彼女を無理矢理森に
つれ返すためである。そして彼女の手を取り、
「いいから黙って森に帰りなさい」
「男がこんなにいいものだなんて、私今まで知らなかったわ。もうあんな生活は嫌
よ」
「この我がまま娘っ!」
 お祖母さんは彼女を平手で叩いた。
「いたいっ。よくもやったわね」


 激情に駆られた彼女はお祖母さんを殺してしまう。自分も殺されると思った『狼』
は警察を呼んでしまった。警察はあっという間にやってきた。
「あなたが連絡をくれた男の方ですね。状況を説明してください」
 男は、かくかくしかじか、これこれこういう訳で、と説明をした。
「そこの女、殺人容疑で逮捕します」


 検察側はホトホト、参っていた。なにしろ、彼女は犯行を認めようとしないので
ある。これだけ証拠を揃えても、自白しない。彼女の言い分はこうである。
「森の狼がお祖母さんを食べちゃったのよ。私もあの男も無罪だわ。早くここから
出してちょうだい」
 彼女は赤いスキンじっと見つめ、それを手で弄びながらそう言った。
 仕方がないので、自白のないまま裁判に持ち込んだ。なにしろ、決定的な証拠が
沢山あるのだ。負ける訳がない。しかし……
「彼女は精神的な異常があります。従って彼女は故意に殺意をいだいて犯行に及ん
だ訳ではなく、犯行時は精神に異常をきたしていたと思われます。よって……」
 祖母殺しで十年の懲役が、この一言で執行猶予となってしまった。彼女は助かっ
た訳ではなく、色情狂として精神病院に入ることとなった。


 この噂が広まっていく間、話はねじ曲げられ、付け加えられ、都合悪い部分は忘
れ去られていくうちこの『アカスキンチャン』という伝説は、『赤頭巾ちゃん』と
いう、物語としての完成を遂げたのであった。


   おわり


  関係のないたわごと

  裁判、ならびに警察、検察、弁護士関係、等、それら用語やその処置が
 まちがっていたり、リアルさに欠けていることは、作者不勉強のためであ
 り、おわびをせねばなりませぬ。文体、その他のとっちらかりも私の責任
 です。しかし、赤頭巾の本当の結末ってどうでしたっけ? 狼に食われて
 おしまい? 狼の腹の中から助け出して、良かった良かった? 狼が娘を
 食べるのを躊躇して、お父さんお母さんのところに娘さんを嫁に下さいっ
 て言いにいった? 遠い記憶だなぁ。忘れてしまった。




#1839/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (SZA     )  89/ 9/23  16:21  (199)
THE LONGEST POEM ALL OVER THE WORLD ( 6 )    CAT
★内容

昨日は隣の旦那の告別式だった
蓬莱のたまのやまで行ってきた
新しい時代を見ずに急逝してしまった彼だが
ぽっかり逝ってしまったのは よしとしなければなるまい
救急車がピーポピーポやって来て医大につれて行かれたと思ったら
その日内に天国逝きさ お陀仏さ
死んで人は褒められる
ワープロが上手で 郷土史に造詣がふかいと
何べんも褒められていた  スライドで
また大変正義感の強いお方だったとも言われていた
俺に対しては 「てめいは何をしているのだ」と
遠藤ととの境界に植木をしていると すごんで来たのが
最後になってしまったな    奴には
不正を質そうとして 悪者にされてしまった俺だ
「俺が何をしようと貴様には関わりのねえことよ」
俺も言ってやったが それが最期になってしまったな
昭和時代の事になってしまった

その日ひと日にせめて何か一言を
思えば ふけがでなくなったなあ

親しみをこめて触るのかもしれぬが
触るというよりは 叩くというやつで
殴りつけるというやつで
猪豚の指の先は 相変わらず 痛かった
俺が酔っぱらって 妻に触ったとき
妻に攻撃を受けた
猪豚は 俺が酔っぱらったときと同じである
夢中で 何を言っているのか
何をしているのか
おそらくは 何一つ 自分の行動を意識に上らないでいるらし

完全に人から俺は俺の名を奪い返した
誰一人として 俺を記憶している者がいなくなった
兄貴ももう電話を掛けてよこさないだろう
ましてや 不動産業の ごろつき奴らもだ

団子によく似た従姉妹がいた
はやくにお嫁に行ってしまって
話す機会がなくてしまった
団子は従姉妹によくにていた
従姉妹に団子がよくにていた
従姉妹はていこといった
ていこあね と言わなければならないことまでは知っていた
その後 長ちゃんは元気かね という
かぜの便りだけは耳にしていたが
実物を見ることはなかった
馬を飼っていた婿殿に
せっせと従っている横姿だけは見えた
あの家の前を通ることはあっても
あの家に入ることは一度もなかった
これからも 決してあの家に立ち寄ることはないだろう
文叔父が亡くなったとき 人混みの中で
たった一度話をしたことがある
50年も経った後の話である
団子と瓜二つの他人のそら似
否 元姉妹であったって不思議ではない
元姉妹であってもかまわない 問題は
団子が俺への憎悪をちらりと見せたことがあったことだ
泥棒根性でひたかくしに己が性を隠していて
自分より弱いとみた者へみせる奢りであったろう
てめえの世界には空があっても
他人の世界には空が無い自惚れた話
てめえの能面は 俺には何の価値もない事なのだ
団子が もう一度俺を中傷しようとするのは
丁度てめえの皺くちゃな性器を晒すようなものだ
やはりここにも血のかよわぬ話をする者がいたというだけのこと
この団子と従姉妹とが全く関わりの無いことだとしながら
なんとこのようなうじょうじょした沈澱物は
やはり天から降ってくるにちがいない
従姉妹の能面つらも ああどうしても好きになれないのだ

若年寄りが俺に懸命に教えていた
過年度の生徒は直接行って学校で合流する
終わったら 3年の引率教師に ありがとうをいいなさいと
退屈な 気持ちの悪い つまらぬ忠告  一応感謝はするぜ
ものの言い方が 少し足らぬ  おこがましけどな とか
それまでは気の回らぬ知能偏差値 47のやから
蔭で総て出来てしまっている話
その話を名前を伏せて押しつけてくる
団子 猪豚らが そう言っているんだろう
それを断わってからでないと
血の通う話にはならないのだぞ
盗人根性のてめえには分からないだろうなあ

トイレにゆく 用を足して拭く
いつになくペーパーが優しかった
絶対に柔和であった
何よりの激励であった
泪が出るほど嬉しかった
もの言わぬペーパーに合掌して
宜しくお願いします と唱えて 祈る
ああ 堂々の 山田 泉
昔の戦歌を思い出すままに

中間テストの計画表 テスト範囲表
受験の心得 英語通信 6枚  計 8枚
生徒達に英単語の力をつけてやりたいと思って
ああ 疲れた 妬まれこそすれ 感謝されたためしがない
いけない いけない 人に感謝を要求しているのか
そうではなかったはずではないか
今の考えを撤回するう
報われることの知らない充実感
修行がたりん 俺よ
激しく 分裂気味に ゼロへゼロへと
頑張って下さい 神を信じて
せめて 神だけは 信じさせて下さい
お願いします

猫の平均寿命は人間の5分の1年説
妻は暫くしてから7分の1年説を唱えだした
テレビ談義の影響である
家にきてから5年になる もう35才か
加齢がちとはやすぎはしないか
チコの顔面に皺が見えだした
老けやすい原因はな チコよ
少しも君は笑うことをしないからだ
少しでも笑えたら 寿命の調整ができただろうに
起きるときも一緒に起きて
コンピュータの前で俺がキーボードを叩いておれば
チコは俺の胸と膝の間に挟まって
寝丸まらなければならないという
俺が何か呟けば 振り向いて 見上げて
俺の口元を注意深く見つめるのだ
その時はチコは猫の顔でなくなる
水はガブガブ呑んだ
食べ物が胃袋に合わないと
口からもりもり吐いた
丁度 うんちのさまであった

痺れるような未明の寒さ
菓子屋の裏の踏切が懸命に鉦を叩く
カンカンカンカンカンカンカンカン
中空で烏が真似をして囃したてる
カアカアカアカアカ カ カ カ

突然フロッピーデスクの2の装置が動かなくなった
NEC PC-9801UV PERSONAL COMPUTER のトレイドマークが恨めしくなる
まず 本体からデスプレーを降ろしてやって
キーボード 電源 プリンター マウス スキャナ等のコネクタを
取り外して 横にして軽く叩いてみる
プラスドライバーは内容が合わない ネジがびくともしない
顔の部分がはめ込みになって 取れそうだ
無理をして外せばそのあとが恐い
どうして 1がスルスル入って 2は入らないのか
日新舗道の特大の懐中電灯を持ってきて
デスク装置の中を何とか覗く
綿ゴミにチコの毛までが 敷き詰められている
年に一度は 掃除もしなくちゃならねえのだな
1はフロッピーを入れ終わらないうちに
外に押し出すような軽い弾力が動作す
2には全く無い されるがままだ 何処かが引っかかっている
無理無理2DDのフロッピーを差し込んでみる
2DDは壊れたっていいのだから 相当硬い
それ以上にまずくなろうとも
やれるだけのことはやって見ねばなるまい
それ以上の傷も 修理は一緒だ
しつっこく繰り返した 一向に手ごたえがない
精巧な器械だ 騒ぎもしないで
釘の頭が一つや二つへし折られているのじゃないかな
仰向けにして 差し込んでみる
反対から差し込んでみる
横に立てて何度か同じことをやってみる
風呂に入りながら考えた
明日も成人式の祝日の振替休日でお休みだ
システムワールドにも誰もいないだろう
すると明後日になる 代替を借りるにしても
それとて保証はない 前回同様郡山に運ばれて行って
直ってくるまで 約2週間はかかる
本体の故障はこれで2度目だ
やっぱり初めから出来が悪かったのよ
プリンターの故障のときも酷い眼にあったものな
セミナーの集計も次に控えているというのに
冷蔵庫を開けては アイスクリームを取り出して喰らう
妻に タバコを吸わないようにしているものだから
口が寂しくて 喰うこと喰うこと と冷やかされる
俺はタバコなど吸いたくはねえのだぞ と心の中で怒鳴る
昭和天皇崩御後1週間目だ 新たな平成元年の御代の呟き
書斎に戻ると 諦めがつかず 何かやってみる
もう梱包にして 修理にやる段取りでもするか
フォントが入っているときにおかしなことになってしまったのだ
フォントに何か仕掛があったのでは
NO39の英語通信は駄目になったみたい
色鮮やかに入り乱れ 地獄に落ちるときの
怪しきまでの形相よ
コンピュータとひとつになって嘆き苦しむ
そしてソフトの皆と一心同体でありました
フロッピーの尻にシッペーをくわせた
ある日ある時のの偶然の仕草
あれ コンピュータが カチカチと何か云ったようだぞ
どれもう一度 中指を親指で弾くのだ
そう 確かな反動が伝わってくる
では正式に差入れてみるか  バッチャン
3.5インチのフロッピーが重厚におさまってくれるではないか
思わず合掌しました 涙もでてきました
抱いてもやりました 乱暴に扱って御免ね
だいぶ汚れてきていた きれいに拭き拭きしてあげようね
君分かる 神を信じていたから



#1840/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC     )  89/ 9/23  19:27  ( 17)
人間が望むもの       永山
★内容
 あるところに、大変、正直で親切な人間がいました。男か女か分かりません。
その人が、ある時、道端で倒れていた老人を助けてあげました。よくあるパタ
ーンですが、この老人は、実は、神様だったのです。神様が言いました。
 「心やさしき人よ。一つだけ、願いをかなえてやろう。おまえが望むことは
何でもじゃ。」
 「ほ、本当ですか!では、いくつでも願いがかなうようにしてください!」

パッシーン!

 「いい加減にせんか。おまえも民話に出てくる正直者のように、素朴な願い
を言わんかい。」
 「で、では・・・。我々人間の望んでいることを、全て、かなえてください。
これが私の願いです。」
 「良い心がけじゃ。かなえてつかわそう。」
神様がそう言った瞬間、その世界に人間はいなくなってしまった、とさ。

 −おしまい−



#1841/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC     )  89/ 9/23  19:29  ( 43)
君子危うきをすべからず   永山
★内容
 君子(きみこ)は、大金持ちの黒田高志に雇われているただ一人のメイドで
あった。
 黒田は妻に病気で先立たれ、その欲求を君子に求めて来ることがしばしばで
あった。君子は嫌であったが、逆らうことも出来ず、言いなりになっていた。

 しかし、ついに我慢出来なくなり、黒田を殺そうと決めた。君子は推理小説
を何十冊とむさぼり読んで、数多くのトリックの中から、ナイフを閉じ込めた
ドライアイスを網目状の物の上に置き、それが被害者の心臓へ垂直になるよう
に、天井に設置するというものを選んだ。これならば、自分がアリバイを作っ
ている間に、ドライアイスが気化し、ナイフは被害者の心臓に一直線、となる。
うまい具合いに、黒田の寝室のベッドの上には、通気孔があった。また、彼は
「行為」の前に精力ドリンク、後にウィスキーを飲む習慣なので、ドリンクに
睡眠薬を入れ、ウィスキーのためのアイスボックスにナイフ入りのドライアイ
スを隠しておくことにした。
 夏のある夜、君子は実行に移した。さすがの黒田も眠ってしまった。君子は
用心のため、手袋をしてから、通気孔のフタを外し、例のドライアイスを置い
た。そして窓を開けておき、家中を静かに荒し回った上で、黒田に服を着せた。
泥棒が侵入し、目を覚ました黒田と格闘の末、ナイフで殺して逃げた、という
筋書きである。睡眠薬が検出されるであろうが、いつも飲んでいたのだと言え
ば良い。君子自身は、友達に会う約束を取り付けてあった。

 次の朝、君子は友達の家でアリバイを作っておいてから、黒田の家に戻った。
近所に聞こえるように、
 「泥棒です!旦那様。」
と、大声で叫びながら、黒田の寝室に入ってみた。部屋の中を覗いた瞬間、君
子は気を失うところであった。黒田は生きていた。ナイフはどこにも見あたら
ない。黒田が、目を覚ました。
 「何だって?うっ、ひどく荒されたな、これは。」
部屋を眺めて言った。
 「早く110番せんか。何をグズグズしているんだ。えーい、もういい。わしが
かける!」
 黒田はこう叫ぶと、電話をかけるために、部屋の外に出て行った。君子は、
まだ呆然としながらも、通気孔を見た。
 「あっ・・・。」
何と、ナイフの柄の部分が長すぎて、通気孔の網目に引っかかっていたのだ。
 「失敗だったわ・・・。とにかく、どけておかなくちゃ・・・。」
気付かれぬ内に回収しようと思い、君子は通気孔のフタを外そうとした。
 その瞬間、ナイフの位置が少しずれ、網目の対角線と重なって、隙間から、

 −−− すっ。 −−−

と落ちた。                                      −END−




#1849/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QDA     )  89/ 9/29  20:40  (  4)
ひとり                  アンゴラ
★内容
ひとりはさびしいの。
ひとりはつらいの。
だから、せめて。
わたしのとなりにいて。



#1850/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (YWE     )  89/10/ 4  10:25  ( 26)
ディア・フレンズ
★内容
 彼女のオムレツの作り方には、ちょっと変わったところがあった。まず、大
きな使い込んだフライパンに、無塩バターをひとかたまり溶かす。
「だって、ミルクって絞りたては甘いのよ。ミルクから作るものがしょっぱい
なんておかしいわ」と、僕の顎のあたりを見ながら彼女は言った。彼女の家は、
北海道で何十頭も牛を飼っている大きな牧場だった。山の上にあって、見おろ
すと遠くに街の灯が光っている、そんな場所だったと言う。
 人の顎のあたりを見ながら話すのが彼女の癖で、顎を見れば、その人間が何
を考えているかたいていわかる、と彼女は主張する。
 割って黄身がピンと立つような新鮮な卵を二個ボウルでとく。ミルクをちょ
っと足してかき回す。その頃には、もうフライパンのバターから、かすかに湯
気が立っているはずだ。
 卵を全部フライパンに注ぎ、コショウを軽くふる。秋の雲のようなかたまり
がいくつか出来たら、手早くかき回して均一にする。上まで焼けてこないうち
に、フライ返しで半分に折る。手首のスナップをきかせてひっくり返す。これ
が彼女はとても上手だった。以上、おわり。
 つまり、塩をかけないのだ。塩は、必ず皿にもってからかける。
 そんなオムレツの朝食を、何回僕たちは食べただろう。ある時、なんで焼い
「十一歳の時、お父さんが女の人と家出したの。牧場の牛が病気で死んで、土
地も家も全部売ったわ。引っ越す最後の日に、お母さんがオムレツを作ってく
らぽたぽた涙がフライパンの中に落ちていたわ。しょっぱいオムレツだった。
だから、オムレツには、フライパンの中にいるときだけは、塩を入れたくない
 ぼくは、よく分かる、と顎をなぜながら言った。それから少しして、彼女は、
電車の窓から「じゃあ」と言って走り去った。その後彼女には、会っていない。
突然涙があふれてきた。その光景が、彼女の言った北海道の山の上の牧場のよ
無数の光の点は、地上に舞い降りた銀河のように見えた。
 久しぶりに流した涙は、干し草のような味がした。



「CFM「空中分解」」一覧



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