AWC 悩む 朝霧三郎



#1428/3021 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (sab     )  20/06/23  17:20  (167)
悩む     朝霧三郎
★内容                                         20/06/23 17:54 修正 第3版
ミステリーで動機とか設定ってどれぐらい重要なんでしょうか。

「金田一少年」の天樹征丸がインタビューで
「犯人が復讐したくなった気持ちに感情移入出来るぐらいの
動機がないとダメだ」などと言っていますが。
しかし、「吸血鬼伝説殺人事件」にしろ「銀幕の殺人鬼」にしろ、
昔近親者が殺された、という程度のありがちなものが多くて、
別に凝った動機があるとも思えないのですが。

で、現在、#1333に書いた
条件反射トリックのプロットを書いているのですが、
どうしても、動機が弱い気がして。
6人も殺すなんて相当な動機がないとダメなんじゃないか。と思えるのですが。
というか、何故、そもそも6人も殺すのか、というのには前段の話がありまして。

実は、この作品は元々は「仏教高校」を舞台にした連続殺人でありまして。
「胎蔵界曼荼羅」という小さな仏像が9体描かれた曼荼羅があるのですが。
人が殺される度にその曼荼羅の仏像に×印が付けられていく、
という連続殺人を思い付いたのです。
(「なろう」あたりに連載する積りだったので、
とにかく沢山事件やトリックがないとダメだと思って)。

「仏教高校」の設定では、
クラスメートが9人いて、
その中の花子、一太郎は二卵性双生児。
一太郎は幼少の頃、秀丸と川で遊んでいて死んでしまった。
そして秀丸はその事を非常に気に病んでいる。
というのが設定です。

そして、誰かが、この8人(一太郎は既に他界しているので)
を連続して殺していくのですが。
殺害の方法は、仏教高校らしく、催眠やら瞑想で呪い殺す、みたいな感じで。
そして6人を呪い殺したところで、犯人秀丸が名乗りでる。
(9人の内一太郎は既に他界していて、それから6人死んだ訳ですから、
生き残りは犯人秀丸と花子という事になります)。
秀丸は花子に言う。「胎蔵界曼荼羅で我々9人は一つの魂だった。
そして涅槃に戻るには9人がセットになって戻らなければならない。
一太郎は既に曼荼羅に戻っている。
そして自分が呪い殺した6人も曼荼羅に戻った。
今娑婆にいるのは花子と自分だけだ。
これから自分は自殺して曼荼羅に戻る。
その後、花子さんもついてきてくれないか」
そういって崖から飛び降りて自殺する。

つまり、秀丸が良心の呵責から、一太郎を涅槃に戻したいと思い、
その為には、全員死なないとならないので、
(胎蔵界曼荼羅から涅槃に戻るには、9体一式でないとダメなので)
連続殺人を行った。というのが動機だったのですが。
そして、その方法が、催眠や瞑想で呪い殺す、
みたいな類のものだったのですが。
これじゃあ、全然トリックになっていない。と思いまして。
そこで、催眠に似ている条件反射トリックを考えたのですが。

しかし、条件反射トリックを思い付いてみると、
「これは、設定として、仏教高校というよりも、
精神病院か何かで行われた方が自然だなあ」
と安直に設定を変更してしまいまして。
そうすると、「胎蔵界曼荼羅から涅槃に帰る為に6連続殺人をする」、
という理由もなくなってしまい、つまり、
ホワイダニットもなくなってしまってのですが。

それでも、例えば、
「院長が息子の内の一人だけに全財産を譲ると言っていて、
その一人が他の兄弟に恨まれる事を恐れて逆に全員を殺そうとする。
その際、院長の孫をそそのかして殺させるのだが
(条件反射トリックで殺すと面白いよー、などと)、
その孫がサイコパスで殺人の快楽に目覚めてしまい、
どんどん殺す」というのでいいんじゃないか。などと安直に考えていましたが。

しかし、プロットを進めていくと、
「これだけ殺すんじゃあ、大団円で、
相当な動機が明かされないと読者は納得しない」と思えてきて。

因みに、一回一回の殺人に関しては別途動機を用意してあるのですが。
例えば、サイコパスの孫が、
病院の入院患者に、
「お前の家は貧乏なのにターゲットの家は豊かで楽しい人生を送っいる。
だからこういう条件反射トリックで殺してしまえ」
などとそそのかして殺させる、というものですが。
その様にして縦糸横糸の横糸を書く積りでいたのですが。
ただ、そういう殺人が6回行われて、
最後の縦糸の黒幕の動機を明かすとなると、
精神病院の遺産相続やらサイコパスどうたらでは弱い、と思えて。

そんな時に、
「「仏教高校」の時の「胎蔵界曼荼羅」というのがあれば、
動機としてはいいんじゃないのか」
などと思ったのですが。

しかし、「仏教高校」には条件反射トリックというのは似合わない、
催眠や瞑想なら似合うが、と悩んでいるのです。

そもそも、「胎蔵界曼荼羅」から涅槃に戻る為に9人死ぬ、
という設定からトリックが出てきたので、
永山さんのアドバイスの様に、トリックを1つか2つに絞る、
というのでは、そもそもの設定から考え直さねばならず、
なかなかそうも出来ないでいるのですが。
(その割には、「仏教高校」という設定をいとも簡単に
精神病院に変えてしまったのですが。)。

そこで、もし暇だったら、アドバイスをお願いしたいのですが。
(何で、創作教室でも同人でもないのにアドバイスなんて求めてくるんだ、
と思われるかも知れませんが、
ここも電脳同人という事でよろしくお願いします。
暇だったらでいいですから)。

状況としては、そもそもは「仏教高校」という設定で、
呪い殺す、というトリックで、
連続殺人を想定していた。
ところが条件反射トリックを思い付いたところで、
設定を精神病院に変えた。
しかしプロットを練ってみると、動機が弱いと感じる。

そういう場合にはどうしたらいいでしょうか。
@条件反射トリックでも、「胎蔵界曼荼羅」から涅槃に戻る為という動機を使う。
つまり設定を「仏教高校」に戻す。
A条件反射トリックだったら精神病院の方が設定としては合っているので、
遺産相続やらサイコパスといったおざなりの動機でよしとする。

どっちですかねえ。
永山さんの仰るように、「トリックを1つか2つに絞る」とかにするとなると、
小説の全体像を全て書き直さないとならなくなり、
短編だったらそれも出来るのでしょうが、
長編となると、いちから考え直さなければならない様な感じがするのですが。

以上、お暇だったらアドバイスをお願いします。

(本当に、同人誌にでも参加して誰かのアドバイスを欲しい気持ちですね。
前にそう思って若桜木虔さんの通信添削を1ケ月だけやったのですが。
ただひたすら添削するだけで、
小説の構造がどう、とか、トリックがいいとか悪いとか、
そういうアドバイスは一切なく、1ケ月でやめました。
もう一人有名な講師に鈴木輝一郎という人がいるのですが。
どうも信用出来ない。
youtubeにオンラインでの講義の様子があるのですが…。
しかし、「ばらのまち」受賞の「少女たちの羅針盤」も
鈴木輝一郎の講座から出たらしいです。
年齢の事が相変わらず気になっていまして。「鮎川哲也賞」も無理、
「アガサ・クリスティー賞」も無理、と思えていて、
「ばらのまち」しかないなどと思いはじめています。

因みに島田荘司の「傘を折る女」をyoutubeで見ましたが、微妙でした。

あと、「探偵・由利麟太郎」1話を見ましたが。あれだけの人間関係で、
何が何やら分からなくなり。
ちょっとでもカットバックを入れられると誰が誰だか分からなくなる程
自分の脳は老化してしまったのか。とも思いましたが。
しかし「病院坂の首縊りの家」を思い出して、横溝正史って相関図が
ごちゃごちゃなんじゃなかったっけ、などと思いましたが。)

ではまた。

追記。
だいたいミステリーの読者ってトリックとロジックにしか興味がないのでは。
とも思いますね。
「吸血鬼伝説…」で言えば、エレベーターのトリック、
と、
「風呂場のドアを開けた時、あの女はバスタオルを胸に巻いていた」
というロジックというか謎解きというか、
その2点にしか興味はなく。
実は昔、犯人の姉がボンベイタイプの血液を大量に抜かれて死んだ、
とかなんとかいう動機はどうでもいいんじゃないのか。と思いますが。
だとしたら、設定なんて「仏教高校」でも精神病院でも
どっちでもいいのでしょうか。







#1429/3021 ◇フレッシュボイス2    *** コメント #1428 ***
★タイトル (AZA     )  20/06/23  21:28  ( 59)
試験的に私見を   永山
★内容
動機>
 動機は凝らずにシンプルであってもミステリは書ける。動機に凝るのならそれ自体が
明かされたときに読者に驚きをもたらすものであってほしい。トリック類別集成にも
「意外な動機」という項目があったと思います。

 天樹征丸の言葉は動機の強さ、ここでは恨みの深さをしっかり描くべきという意味な
のかなと解釈しました。犯人の身勝手さを強調するとか、謝罪が嘘だったとか。動機の
タイプは必ずしも凝らなくてもいいと。


 という訳で、Aの動機を凝らない方向で、と言い切ってしまうのもどうかと思うの
で。
 動機に「胎蔵界曼荼羅」を活用する方向を探ってみますと。


舞台設定>
 「胎蔵界曼荼羅」を作品に登場させるために、「仏教高校」でなければならない理由
はないように感じました。
 仏教高校の代わりに精神病院を絡ませたいのであれば、病院経営が傾きかけたときに
院長(もしくは理事長?)が気まぐれで占い師に見てもらったところ、「胎蔵界曼荼羅の
絵図を院長室の北側に貼りなさい」と言われて、ダメ元でやってみたら経営が持ち直し
た。そこから院長ははまってしまい、涅槃思想を信じるようになり、院内には胎蔵界曼
荼羅が当たり前にある――これでもいいと思うんですが。

 ここからそもそも論になるんですけども、「胎蔵界曼荼羅」を元にした動機だったん
だと終盤に来て明かされても、読者の大半は一発では飲み込めない気がします。「信念
の犯罪だったのね」ぐらいの理解はしてくれるとしても、腑に落ちる感じが多分しない
ので納得しづらいのではないでしょうか。
 胎蔵界曼荼羅にこだわるんでしたら、見せかけの動機としてクライマックス前に読者
へ説明・提示するのが効果的かもしれません。たとえば――
 殺人が起きる度に、院長が大事に持っていた胎蔵界曼荼羅の仏像が一体ずつ、×印を
付けられていたことに刑事の一人が気付く。その後調べが進んで、こいつ(挙げられた
例では秀丸)が犯人で涅槃思想が動機なんじゃないか?と提示。秀丸の元に駆け付ける
もすでに自殺したあとで、花子も巻き添えを食らって倒れていたが運よく生き残った。
ところが本当は全て花子の犯行で、ときに秀丸を操り、ときに自ら手を下して六人を葬
っていた。
 ――こんな具合になりましょうか。病院を舞台にすると高校よりも登場人物間のつな
がりを過去に求めにくいと思うので、見せかけの動機は、絵図の仏の顔にそれぞれ何と
なく似ていたとか、仏に個別に名前があるのでしたらその名前をどこか連想する氏名の
持ち主だったから巻き込んだ、とでもしておく。
 で、本当の動機は、財産の独占とか弱みを握られて脅迫されていたとかシンプルにし
て、花子が殺したかったのも六人中半分程度で残る半分は秀丸に罪を擦り付けるため。
 こんな風にすれば、条件反射トリックと「胎蔵界曼荼羅」に基づく動機を一作品で活
かす余地があるのでは。

読者の興味>
 ジャンルの性格上、トリックやロジックが一番の眼目になることが多く、それ故に読
者の最大の関心はトリックやロジックにあったとしても、他がどうでもいいってことで
はないと思います。動機が捻ってあってユニークであれば感心するし、トリックやロジ
ックに結び付いていたら拍手を送る。
 ただ、そういう捻った殺害動機だと読者が推理のしようがない領域であることがほと
んどなので、トリックやロジックが主で動機は従、興味の対象として後回しになるとい
う事情はあるかもしれません。

 取り急ぎですが、以上のような感じで。読み落としがあったらすみません。
 何かまた思い付いたら意見として書くかもしれません。そのときは今回書いたのとは
まったく別のことを言う可能性もありますが、あしからず(汗)。

 ではでは。




#1430/3021 ◇フレッシュボイス2    *** コメント #1429 ***
★タイトル (sab     )  20/06/24  00:48  ( 40)
早速のレスありがとうございます
★内容                                         20/06/24 00:49 修正 第2版

長文のレスありがとうごさいます。

「胎蔵界曼荼羅」だの涅槃だの言っても、読者は「そうだったのかー」
とは思わないんですかね。
やはりそんなのは見せかけの動機にしか使えないのでしょうか。
私など、考えている内に、マジで、
「死んで涅槃に行くと思っている人は多いんじゃなかろうか。
だから一太郎の魂を救う為に秀丸がみんなを殺すというのは
読者は納得するんじゃなかろうか」などと思えてきて。

例えば(あんまりいい例ではないですが)
戦争中の話で
「死んで靖国で会おう」と言って仲間に特攻させたとしたら、
読者はどう思うんでしょうか。
本当に靖国で会えると思うのか、
靖国に行こうと言って騙したと思うのか。

それの現代版みたいな感じで、「胎蔵界曼荼羅」だの涅槃だの
着想したのですが。

例えば、花子はときどきてんかん発作を起こし、
その時死んだ一太郎からメッセージが届く、
などとしたら、
「胎蔵界曼荼羅」だの涅槃だのは「ある」と読者は思うんじゃなかろうか。とか。

こういうところで、独りよがりというか、
一人で納得してしまうのが怖いのですが。
だいたいオカルト小説ではなくミステリーなので、
そんなところで説得力があってもしょうがないとも思えるし。

それにしても早いレスありがとうございます。
ではまた。











#1431/3021 ◇フレッシュボイス2    *** コメント #1430 ***
★タイトル (AZA     )  20/06/24  20:33  ( 24)
らしさのハードル   永山
★内容
動機について>
 作品の雰囲気や時代設定など、描き方次第で変わってくると思います。
 例に挙げられた靖国の方は、時代背景を描写することで、ある程度普遍的に作中人物
のみならず、読者も「そういう時代だったんだな」と理解できる。
 一方、一太郎からメッセージが届く云々は、通り一遍の描写だと作中人物の一部が信
じているだけに終わりそうですが、書き込むことによって他の作中人物や読者も「そう
いうこともまああるかもなあ(この作品世界では)」と思わせることはできるはず。

 ミステリ小説においても、オカルト部分には説得力があった方がいいです。現実的・
論理的・科学的に解決できたけれども、それでもなお謎が残ったという形は割と古くか
らあるミステリの終わり方の一つのパターンですし。
 綾辻行人の『霧越邸殺人事件』(新潮社)は、本格ミステリと超常的な物ものの狭間
にある物語という点が、高く評価されていたように記憶しています。


 あと、本題を離れますが、物語作りにおける独りよがりはほんと怖いですね。動機の
設定にとどまらず、物語作りのあちらこちらで関わってくる感じで、ある意味、自分が
試されているような。
 自分にとっての常識が世間では非常識、あるいはその逆もないとは言えない。自分が
苦心して作り出したつもりの謎が、世間の多くの人からすれば謎でも何でもないなんて
ことにでもなったら、頭が痛い話どころでは済まないだろうなあ。幸い、そんな目に遭
ったことはないですけど。

 ではでは。




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