AWC ◆シビレ湖殺人事件 第3章・斉木ー1



#1049/1158 ●連載
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:21  (267)
◆シビレ湖殺人事件 第3章・斉木ー1
★内容

夜中過ぎになっても眠れなくて、僕は天井を見詰めて考えていた。
夕べ、女子3人と遺体を運んだ時のことを。
春田君の遺体を、鋤と鍬とGパンで作った担架で運んで、地下室に安置したのだが、
ちょっと離れて見ると、2体並んでいて、
それで、これは偶然じゃないと思ったのだ。
もうスイッチが入っているんだ。
最後の一人が死ぬまで、止まらない。或いは2人は残るのか。
今僕らが置かれている状況は、どんなんだろうか。
普通、こういうのって、『エイリアン』型の、異物が侵入してくるというのと、
『マトリックス』型の、夢落ちタイプがあると思うのだが、そのどっちだろうか。
そのどっちでもなく、外部の何かが作用して内部が変わっているという感じもする。
『アルマゲドン』とか『ディープインパクト』みたいに。
ナベサダが、京王線だか中央線だかは外部からの
電気、磁気で動いているみたいなことを言っていたが、ああいう感じだ。
ただこのタイプだと、地球全体が影響を受けるというよりかは、
電車に乗っている人だけが影響を受けるんじゃなかろうか。
というか、このロッジに関して言えば、男子3人居たのが一人になったのだから、
今まで3人で受けていたエネルギーを、
僕一人で引き受けなければならないのではなかろうか。
その事による自分への影響はなんだろう。
というか、夕べから自分の性欲のあり方が変わっている。
ある種の魚はメスだけになると一匹がオスに性転換するが、
オスが一匹だけになると性欲のあり方が変わる、ということはあるんだろうか。
そもそも最初っから変だったんだよなあ、僕の性欲は。
僕は寝返りをうった。
月は出ていないが、薄暗いならがも、部屋の様子が分かる。
ヒヨリが壁に向かって寝ていて、腰のあたりの膨らみも分かる。
珊瑚礁は満月の夜に産卵するというが、ああいう感じで、
ヒヨリも月に引っ張られて排卵するんじゃないのか、と、
あの膨らんだ腰を見ていて思う。
うちのクリニックでも、新月になると病室ががらがらになる。
あと、新月の出産は難産で、朝まで粘って帝王切開とかが増える。
あれは月に引っ張られる力が弱いからではないのか。
とにかく、ヒヨリは月に引っ張られて排卵し、
今度はその卵に引っ張られてこっちが勃起する、
それが普通の性の連鎖みたいなものだろうと思うのだが。
しかし、自分はそうではなかった。
そもそも精通の時からそうではなかった。
精通したのは中二で、普通よりかは遅かった。
あの頃の僕は性に関しては全く無知だった。
あの頃の僕のペニスは、包皮がカリんところに溜まった恥垢にひっかかって
剥けないでいたのだが、
あれを無理に剥くと、えんどう豆の様に脱落するんじゃないかと思っていた。
そのぐらいの無知で、産婦人科医の息子にあるまじき無知だったのだ。
それでも入浴の度に、少しずつ溶かしていって、そしてとうとうある晩剥け切った。
生後14年にして、とうとう外気に触れた自分の亀頭。
皮を剥いて突っ張らせて膨張させることだけで快楽を得ていた。
ただ、肛門の疼きはあって、自然とアナルをいじるようになった。
それがエスカレートして、ペンやらドライバーを枕元に並べておいて、
夜な夜なアナルへの挿入を楽しむ。
そうしてとうとう或る晩射精したのだが、それは全く物理的な刺激、
包皮を強く剥く事と肛門への刺激のみによる精通だった。
そもそもセックスのピストン運動さえ知らなかったのだから、
センズリという行為も思い浮かばない。
後で、クラスメートが、『中2時代』や富士見ロマン文庫を
ずりねたにしていたのを知って驚いた。
僕の場合は、精通の翌日に学校に行ったら、
スカートを履いた女子が廊下を走っていて、
膝の後ろが白くてちかちかしていて、
それで、あの根元に入れるのかと漠然と思った程だ。
だって、わざわざスカートを履いているのだから、
あの根元にターゲットがあると、普通に思うだろう。
アサガオだのチューリップだのの雌しべが花びらの奥にあるのと同じ構造ではないか。
そう思ってじーっと見ていた女子が僕の視線に気付いて振り返った。
そらがミキだった。
とにかく、決して珊瑚礁の卵に誘導されていた訳ではなく、
先に射精があって、後から卵をターゲットとしたのだ。
もっとも、ミキがセックスの対象というかズリネタになることはなかったが。
クラスも違ったし。
当面のセックスの対象は、エロ本だのAVだのだった。
そして、しばらくの間は、アナニー癖は影を潜めていた。
しかし、二次募集で入った高校でミキと同じクラスになったのだった。
その時のミキといったら、なんなんだろう、
『青い珊瑚礁』のブルック・シールズというか、
『恋愛同盟』のジェニファー・コネリーというか、
体がでかくて、眉毛が濃くて、目がパッチリしていて、
まつ毛が長くて。
性的な生々しさと、清潔さとが同居している感じ。
一方自分は体も小さいし、顔もイケメンじゃなかったし。
そういう僕らが対等に結ばれるというのは、イメージとしては、
グレートデンとかの血統書付きの犬と柴犬が交尾をする様な感じで、
染色体の数が同じなのかヨォ、という萎え方をするのであった。
しかしむしろ、ミキはクラスで圧倒的に美しく、僕の様なチンケな赤犬は勿論のこと、
何人といえども、彼女を恋愛の対象にすることなど出来ない、
彼女は個人の性欲を満たす対象である訳もなく、個人の愛の対象でもありえない、
と考えた方が萌える。
僕も含めて誰も彼女に触れる事は出来ないのだ。
当時、単純にグッドルッキングウーマンが好きで、
『スクリーン』だの『ロードショー』だのを購読していたし、
DVDで昔のハリウッド映画を観ていたが、
自分の好きな映画は『砲艦サンパブロ』で、
好きな恋愛の展開は、キャンディス・バーゲンとスティーブ・マックイーンだった。
キャンディス・バーゲンは、自由とかキリスト教の愛とかを信じて、
揚子江の奥地の修道院に中国人の青年の教育に行くのだが、
そこで義和団事変みたいなのが起こって、内戦状態になって、
マックイーンは彼女を救出に行くのだった。
でもこれは、個人の愛の為ではなく、アメリカの旗の為に、という、
そういうダンディズムの発露を求めてのことなのだ。
最低な展開は、『砲艦サンパブロ』のリチャード・アッテンボローで、
中国人売春婦と恋に落ちて、これがリベラルな愛だ、
とか、鼻の下を伸ばしていて、
あんな個人の欲望とか個人の愛みたいに無様なものはない。
僕の中ではバーゲンとミキが重なった。
どこかこの平和な日本で、僕がミキの為にダンディズムを発揮して
死ねる展開はないだろうか。
僕はミキの為なら死ねる。岩清水弘の様に。
当時、お気に入りの曲でも再生するみたいに、
繰り返し脳内再生していたシーンがあった。
学校の帰りに京王線の中で再生するのだ。
京王八王子から北野で高尾線に乗り換えると何時も連結部の近くに座った。
高尾線は、急勾配を上りながら大きく右にカーブする。
窓の外には北野周辺の平野部と片倉の山々が見えていて、
窓からは春の風が入ってきている。
突然、連結部のシルバーシートのあたりに、脳内ミキが浮き出てくる。
開け放った窓から、片倉の山の方を見ている。
風を受けるミキの横顔は、ローマのコインに彫刻してもいいぐらいの形の良さだ。
髪の毛が風になびいて、目を少し細めていた。
電車はどんどん加速していくと、やがて丘を登りきって、片倉の山をえぐったV溝の
下に入って行った。
一瞬車内に影が差した。
突然連結部のドアが勢いよく開くと、
悪役商会、丹古母鬼馬二と八名信夫が乱入してくる。
丹古母が勢いをつけてミキの隣に座り込む。
そして、匂いでもかぐように顔を近づけて、目をぎょろぎょろさせながら迫っていく。
ミキは体を小さくした。
「よぉ姉ちゃん」つり革にぶら下がっている八名が言う。「真っ直ぐ帰ったって
つまんねーだろう、これから俺たちとどっか行こうじゃねえか、
カラオケでも行こうじゃねえか、よお」
丹古母は考えられる限りの下品な笑い方で笑うと、首筋あたりをめがけて、
舌をべろべろべろと出す。
電車ががくんと揺れた。
八名が、「おっーっと」と言って身を翻すとそのままミキの膝の上に座ってしまう。
「電車が揺れたんだからしょうがねえや」
「やめろーッ」叫ぶと僕は敢然と立ち上がった。
二人は、一瞬あっ気に取られた様にこっちを向く。
そして、なーんだガキか、という感じで、ミキを放置すると
肩をいからせてこっちに迫ってきた。
「なんだこのガキが。スポーツでもするか」言いつつ八名が
こっちの襟を掴みにくる。
すかさず僕は手で払った。
おっ、猪口才な、みたいな顔をして更に手を突っ込んでくる。
それを又払う。
ネオ対エージェント・スミス、みたいな組み手をしばらくやるのだが、
丹古母が、遠巻きに僕の背後に回ると、懐からドスを抜いた。
そして卑怯にも背後からドスで僕の背中を袈裟切りに切り付ける。
白いワイシャツが裂けて背中の肉もざっくりと切れる。
「キャーッ」と悲鳴を上げてミキが顔を覆う。
しかし僕はがっばっと丹古母の方に向き直ると、超人ハルク並のパワーを発揮して、
まるで紙袋でも丸める様にぐしゃぐしゃにるすと放り投げてしまう。
今度は八名に向き直ると、「ちょっと待ってくれ。話せば分かる」
などと泣きを入れてくるのを無視して、同様にぐしゃぐしゃにして放り投げる。

ここらへんまで妄想が進むと、僕は我にかえった。
既に勃起しているし、アナルが疼いている。
アナニーしようかな、とふと思う。
しかしヒヨリに気付かれないだろうか。
首をおこしてヒヨリを見ると、往復のいびきをかいて熟睡している。
あれはノンレム睡眠の真っ最中で起きる事はないだろう。
挿入するものがないなあ、と薄暗い部屋の中を見回す。
そうだ、2階の便所に、柄付きのブラシがあった。
あれだと不潔だろうか。でもブラシの部分を挿入する訳ではないし…。
僕は、ヒヨリを起こさないようにそーっとベッドから下りた。
抜き足、差し足で、廊下に出る。
すぐ左手の便所のドアのところに行くと、蝶番が音を立てないようにそっと開けた。
ターゲットのブラシがコーナーに立てかけてあった。
手に取ると柄の部分の感触を確かめてみる。
握りやすいようにイモムシ状にはなっているのだが、バリなどは出ていない。
これだったらアナルを傷つける事はないだろう。これでやろう。
ついでにハンガーにぶら下がっていた手ぬぐいも失敬してくる。
便所から出ると、ヨーコの部屋もミキの部屋もドアが開放されていて、
暗い廊下に戸外のぼんやりとした薄明かりが差していた。
あそこにはリアルミキが寝ている。
なんだってこんな便所ブラシを肛門に入れないとならないんだ。
僕はブラシの柄を握り締めた。リアルミキにアタックすればいいじゃないか。
でもマックイーンだってキャンディスバーゲンを逃がした後、
中国人に射殺されたじゃないか。
それはあんまり関係ないけれども、とにかく、ミキは決して性の対象ではないのだ。
僕は便所ブラシを抱えると、自分の部屋に戻った。
ベッドに乗っかると、ベッドの横の手すりに手ぬぐいでブラシを縛り付けた。
口の中で唾液をぐじゅぐじゅやって粘度を増したものを柄の部分に垂らすと
指先で入念に塗りつけた。
これで準備オッケーだ。
ベッドに横になって尻を突き出すと、後ろ手に手をまわして柄を掴んで、
少しずつ挿入した。
ヌルッ、ぬるっ、っとイモムシ状の柄がアナルに入って行く。
全部入り切ると両手を前に回して右手でペニス、左手で睾丸を握った。
そういう状態で、腰の動きだけで、柄を出し入れするのだ。
柄の握りの凹凸が括約筋を刺激するたびにペニスがびくびくするのを更に手で揉む。
そして僕は妄想の中へ沈んでいった。
ここはどこだ。野戦病院だ。揚子江の上流のジャングルにある野戦病院だ。
僕は、さっき丹古母鬼馬二に切られた背中の傷の為にここにいるのだ。
暗闇の中からナイチンゲールの格好をしたミキが現れた。
かがみ込んで僕の顔を覗くと、ミキの男前な顔がランプに浮かんだ。
「包帯の交換にきました」
ピンセットやガーゼの乗ったトレイをもったままミキは背後に回った。
それから、かちゃかちゃ音を立てて準備をしていたが、
やがて、傷口に詰め込んであるガーゼを取り出す。
「いたッ」
「我慢して」言うと、ミキは背中で処置を続ける。
それが終わると、二の腕に手を乗せると耳元で
「まだまだ肉が盛り上がってくるまでには時間がかかりそうだわ」とささやいた。
「じゃあ体を拭きます」
ミキに背中を拭かれる。
背後から手を回して、腹、そして下腹部を拭いていく。
「あ、お腹が張っている。うんちしていないでしょう」
僕は小さくうなずいた。
「これだけ固まっていると浣腸では無理ね。カンシで、取り除きます」
ミキは尻のほっぺを広げると肛門を露出させ、クリームをまんべんなく塗った。
そしてカンシを突っ込むと固まった便をつまみ出して、鉄の皿に落とす。
からんと音をたてた。
又カンシを突っ込んで取り除く。から〜んという音がこだまする。
やがて綺麗に取り除かれると、ピンクの直腸粘膜が現れた。
丸で14年ぶりに恥垢が取り除かれた亀頭の様に綺麗なピンク色をしている。
「それじゃあ肛門の内側にクリームを塗りますからね。
必要な処置ですからくすぐったがらないで」
言うとミキは、クリームを乗せた指2本を肛門に滑り込ませてきた。ずぶずぶずぶ。
「ああーっ」
「我慢して」
クリーム擦り込ませるために、肛門の内側にぐるり一周指を這わせた。
ぬるぬるぬる。
更にもう一周、ぬるぬるぬる。
「あーーーッ」
「はい終わりましたよ。今度は奥の前立腺の方にも塗りますからね。
これは、治療上必要なことだから恥ずかしがらないで」
言うと指2本を付け根まで挿入させると、前立腺側を、ぐりぐりぐり。
「あーーーー」
「もう少し我慢して」ぐりぐりぐり〜。
「おおーーーー」
そしてリアルの僕は大量の射精をした。
ぴゅっぴゅっ、とペニスが痙攣する度に括約筋が閉まって、便所ブラシが上下に動く。
しかし既にそれは性的な快楽ではなくて、排便の際の肛門の感覚に成り果てていた。
はぁーと僕はため息をつく。
ベッドの上の精液を見て、こんな事ならトイレットペーパーでも敷いて
射精すればよかった、思う。
まあしょうがない。ヒヨリが起きない内に後始末をするか。
僕は身を捩って尻を突き出すと手でもってブラシを抜きにかかった。
が、抜けない。
あれっ? 抜けない。なんでだろう。
もしかして角度が悪いのだろうか。
直腸というのは胴体に対して垂直にあるわけではないのに、
ブラシは手ぬぐいで固定して垂直に刺さっているので。
そう思って更に身を捩ると手ぬぐいを解いた、
と同時に括約筋の反動で太腿の間にブラシが収まった。
尻を拭く様に手探りで、股にぶら下がったブラシを下方向に引いてみる、が、抜けな
い。
どうにもこうにも、抜けない。
どういうこった。ここ2日の食生活のせいで、体の脂が失われて、
肛門周辺も干からびた感じなのかも。
何か潤滑油になるものはないだろうか。
油とかバターとか、さしすせその中にないだろうか。
或いは、湖畔の泥とか桟橋のぬめりとか。
そんなのは不潔だな。
唾液で挿入したんだから唾液で抜けるんじゃあなかろうか、と思って、
又口内でぐちゅぐちゅやってから指でつまんで肛門の柄の周りに塗ってみる。
そしていきなり抜かないで、回転させてみようと試みるが、
既に性欲が失われている段階では、柄は完全な異物に感じられて痛くて回らない。
段々と焦りを感じている内に、そろそろ空が白々としてきた。
やっばいな。
ヒヨリが、うーん、とか言って寝返りをうった。
ヒヤッとして、毛布で下半身を覆った。
とりあえず床に落ちていたハーパンを膝に通すと履けるかどうかやってみる。
かなりぶかぶかのハーパンだったので、
どうにか便所ブラシはのぞかないですむのだが、
気付かれたらこの膨らみは隠しようがないのでは。
まいったなあ。
それから、あれこれ思案したが、どうにも思い付かない。




#1050/1158 ●連載    *** コメント #1049 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:22  (196)
◆シビレ湖殺人事件 第3章・斉木ー2
★内容
肌寒さで目を覚ました。うとうとしていたらしい。
開け放たれた窓から小雨が吹き込んでいる。
隣のベッドを見ると、ヒヨリがもぞもぞしていた。
そろそろ起きるな、と思うと、思った通り、あーとあくびをして上半身を起こした。
こっちを見据えて「おはよう」と言う。
そして、クンクン鼻をならして、「なんか変なニオイしない?」
しまった。入念に拭き取って菓子袋に二重に包んでおいたのだが、
多少は残っているのか。
「なんか カビキラーみたいなニオイ」
「昨日、殺虫剤をまいたでしょう。
だから、きっとこの湿気でそれが変なになったんじゃないのかなあ」
「ふーん」といって床を眺める。
廊下の奥からミシミシという足音が響いてくる。
ミキが、通りすがら「おはよう」と言って通り過ぎて行った。
ヒヨリもベッドを降りると、行こうとして、「行こうよ」と言ってくる。
「う、うん。先に行ってて」
「なんで?」
「ちょっと、そこを拭いてから行くから」と濡れた窓際を指した。
「はぁ?」と言って、一瞬、訝しげな表情を向けだ。
しかし、一人で出て行ってしまう。
ベッドから起き上がると、股間のブラシが、ハーパンで太腿に密着しているとはいえ、
肛門を引っ張った。
又、歩く時に脚を曲げると、逆に突き上げてくる。
どうにか抜けないか、と、再度、ハーパンの上から引っ張るが、
括約筋が握って離さない。
はあ、と僕は窓際に立ってため息をついた。
窓の外から苔のニオイが漂ってくる。
もしかしてさっきヒヨリが言っていたのは、僕のザーメン臭ではなくて
外気のニオイだったのかも知れない。
というのも、元々僕の精液にはそんなにザーメン臭はないからだ。
或いは、もしかして、オスが僕一人になったので何かの変化が生じて
ザーメン臭が出てきたのだろうか。
僕は、太腿の内側のブラシをさすった。
これ、見付かったらどうなるんだろう。
でも、もう男は僕だけなんだから、3人で抜いてくれれば野戦病院の3倍
盛り上がるんじゃなかろうか。
そう思った途端にブラシがぴくっぴくっと反応した。

テラスに行くと女子3人が、
手すりから手の平を出して雨の降り具合をチェックをしていた。
「とりあえずは止んでいるみたい」とミキ。
「どうする?」とヒヨリ。「又何時降り出すか分からないから雨天順延にする?」
「えー、また芋じゃあ嫌だ。つーか、2人も死んでんだよ。
どうなの、この状況、斉木君」といきなりこっちにふってきた。
「男の癖に。緊急事態だと思わない?」
「思うよ」サッシに寄りかかると股を閉じて立った。
「じゃあ、音頭とって」
「じゃあ、ちょっと雨が降っているけど、下見にだけ行こうか。
地図に描かれているイケスがあるかどうか。
ついでに、どっか向こう側に脱出出来る道がないかも見てこよう。
とりあえず、2、2で、ボートに2人、歩きで2人で行こうか。
僕がミキとボートで行くよ」
「え、何で?」とヒヨリ。
「折角ボートがあるんだかあれを使わない手はないし。
そうすれば漕ぎ手はミキでしょう。
次に体力があるのは僕だと思うから、一応舵取りは僕がいいかと」
3人はヒソヒソと打ち合わせとした。
「いいよ」とヒヨリが言った。「私とヨーコは歩いて行く」

桟橋に行くと、まずミキがボートに乗り込んで、
それから僕が乗り込んで、船尾に座った。
舵はなかった。
係留してあった丸太からロープを外すと、
手のひらでぐいっと押して、その手をヒヨリ、ヨーコに振って、
「それじゃあ向こうで会おう」としばしの別れを告げる。
ミキが漕ぎ出すと、どんどん桟橋から離れて、2人はだんだんと靄に包まれて行って、
やがて見えなくなった。
ミキの方に向き直って「漕いでもらってわるいね」と僕は言った。
「いいけど…、なんかここ、座りが悪い」
言いつつ、ぐいぐい漕いで行く。
舟は既に湖のただ中にあり、尚も水面の上を滑って行った。
湖畔を見ても、小道は霞んで見えない。
オールが水をかく音と、きしむ音だけが、山水画の様な景色の中で鳴っていた。
この湖面にたった二人なんだなぁ。
ミキは、スピードのエンゼルフィッシュみたいな柄の水着の上にTシャツを着ていて、
ウェストのあたりで縛っていた。
発達した大腿部、大きな腰骨は小便器を連想させる。
平らな腹に、漕ぐたびに腹筋が浮かぶ。薄い水着越しにそれが見えるのであった。
なんて美しいんだろう、と思う。
一体美しい身体を持っているというのはどういう気分なのか。
或る朝起きれば美しく、たまたま行った旅先の朝でも美しいというのは…
と観察していたら、突然、ミキがオールを手放した。
はっとして見ると、こぶしで太腿を叩いた。
「いててて。変な格好したら脚がつりそう。代わりに漕いで」と上目遣いに見る。
「でなければ叩いて」と言って脚を伸ばしてきた。
えっ、と思ったが、躊躇っているとかえってイヤらしいと思って、
平気な顔をして叩いてやった。
案外柔らかいんだな、と思っていたら、
ミキが、ぐっと力んで筋肉を浮かび上がらせた。
チンポがぴくっぴくっ、便所ブラシがくいっくいっ、と反応する。
「あっ」と唸った。
「どうしたの?」
「んー、なんでもない」
ミキはじーっと怪訝そうに見ていたが、又オールをとると漕ぎ出した。

やがて対岸のイケスが見えてくる。
岸から50メートルぐらいのところに、一辺が20メートルぐらいのイケスがあった。
イケスの内側から外までロープが延びている。
あれを引っ張ると、網が狭まって魚が寄ってくるのだろう、
と見ているうちにも、舟はどんどん岸部に迫って行って、
ガリガリガリっと舟底をこすって乗り上げた。
ミキがぴょんと飛び降りると舳先をもった。「早く降りてよ」
股間のブラシを気にしつつ、バランスを崩しつつ、僕も舟を降りた。
そして二人して舟を引っ張り上げたのだった。
辺りを見回すと、岸辺は三日月型をしていて、
真ん中にイケスにつながるロープが杭打ちされていて、
左端と右端は森の傘がせり出していて見えないのだが、
それ以外の場所は小道が見えていた。
「ヒヨリたち、来ないねえ。向こう行ってみよう」と言うと、
ミキは水際を歩き出した。
小さな波が打ち寄せている。
砂に、サンダルの足跡がついた。
少し行くと、ミキは立ち止まって、湖を見た。
今や霧はすっかりとはれ、水面もそれを取り囲む森も、くっきりと見える。
そして蒸し暑かった。
「ここって、巨大なプラネタリウムの中に閉じ込められているみたいな感じ。
その外から神様が覗いている様な感じ」と言ってミキは天空を見上げてた。
「夜になれば、プラネタリウムみたいになるかもね。今夜は無理だろうが」
「今夜は無理、って、ここに居るのが当たり前みたいになっちゃうね」
言うと、手の平でぱたぱたと顔を仰いた。
「あっつ。のぼせちゃった。喉も渇いたし」
「湖の水、飲む?」
「嫌だ。あんなイケスの水」
しかし、三日月型の岸部の突き当たりを見ると、木の槽があって、
脇にはホースがトグロを巻いていた。
「あそこって水場なんじゃない?」と僕は指差した。
そして、二人でイケスの前をザクザク歩いて横切って、槽の傍まで行ってみる。
それは、湧き水が注いでいる桶であり、そこからホースが出ていたのだ。
ミキは、いきなり手ですくって口に含んだ。「おいしい。ミネラルウォーターだよ」
自分もすくって飲んでみると、硬質のミネラルウオーターみたいな水だった。
二人で牛の様に飲みたいだけ飲む。
槽の脇にくっついている蛇口をひねったらホースの先から水が出た。
それを掴むと、ミキの方に向けた。
じゃーーーー。
「水着の上から浴びちゃえば?」
「いいよ。やめとく。でも顔だけ冷やす」
言うと手の平をすぼめて出した。
そこに水を注いでやる。
ミキは、ぺちゃぺちゃと頬を濡らした。
「今度は足」
言うと、僕の肩に手をかけて、裸の足を伸ばしてきた。
僕は、そこに水を注いた。
にょきにょきと指を動かす。
ホースのさきっぽをすぼめて水圧をますと、
彼女は指を動かして指の間の砂を落とそうとする。
「足を洗ってくれるなんて、イエス様みたいじゃない」
突然、肩の重みがとれた、と思って顔を上げると、ミキはシャツを脱いでいた。
やっぱり水浴びをする気なんだろうか。
しかし、槽の縁に手をつくと身を捩って足の裏を見ていた。
背中が大きくくり抜かれた水着で、背骨のくぼみがくねっている。
突然、こっちを見ると、「今度は私がぴちゃぴちゃやってあげる」と言って
ホースを奪った。「上、脱いじゃなよ」
えっ。僕は迷った。自分の華奢な体を見られたくない。
何をいっているんだ、夢が叶いそうじゃないか。僕はシャツを脱いで背中を向けた。
ミキは手を濡らすと、手のひらで肩甲骨のあたりから拭いてくれた。
「すごい。汗でべたべただよ」
脊柱を中心に左右へと水をぴちゃぴちゃと浸して行く。
そして、どんどんと下へ下へとずらしていく。
「腰の方まで汗だくだよ」といって背中の割れ目の下の方までぴちゃぴちゃと
濡らしていく。
今しかない、と僕は思った。
今しかないんだッ。
僕は勢いよくハーパンを下ろすと、「ここも汗だくなんです」と言って、
尻のほっぺを思いっきり広げて、尻を突き出した。
便所ブラシがびーんとおっ勃った。
「ギャーっ」叫ぶと ミキはホースを投げつけてきた。「なんなのよぉー、それは」
ミキは、サンダルの鼻緒を足の指で強く握って、踵を返そうとしていた。
僕が振り向いて、目があった瞬間、逃げようとする。
反射的にミキの水着の背中を引っつかむ。
「離して」と言いつつ無理矢理離れようとする。
が離さないでいたら、尻の割れ目が見えた、と思ったが、
次の瞬間、びりびりーっと裂けて、はっと手を引っ込めた。
ミキは脱兎のごとく逃げ出すと そのまま湖畔の道を走っていった。
その姿が、水着が大きく裂けていて、レスリンググレコローマンの選手みたいで、
ちょっと幻滅かも。

とにかく、その時に思った事は、ミキより先に帰らないと、
なんらかの弥縫策が打てないということだった。
慌てて踵を返すと、岸部のボートを湖に押し出して乗り込んで舟を出した。
しばらく漕いで、湖の中程に出ると、周囲の小道が、
森の間から見え隠れしているのが見えた。
それを見ていて、途中でヒヨリらと会ったら何か言うんだろうな、ブラシのことを、
と思う。
何て言い訳したらいいんだろう。
別にアナルに刺していた訳ではなくて、
背中を洗う積もりで股に挟んで持ち歩いていた、とでも言うか。
だったらズボンから出してみろ、と言われるだろうか。
とか思っている内に、脱力してしまって、オールに手を乗せたままうなだれてしまっ
た。
突然、今だったら抜けるかも知れないと思って、
ベルトを緩めるとハーパンを勢いよく下ろして、
舟底に背中を付けると、開脚して便所ブラシに手足をかけた。
そして、背中が舟底から浮く程、パンタグラフ方式でパカパカやったのだが、
やっぱり抜けなかった。
諦めて脱力した瞬間、コマでも倒れるように体がごろんと横倒しになって、
舟がバランスを崩して、危うく転覆するところだった。




#1051/1158 ●連載    *** コメント #1050 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:23  (257)
◆シビレ湖殺人事件 第3章・斉木ー3
★内容
ようやく、ロッジにたどり着くと、ミキ、ヨーコ、ヒヨリの3人が、
テラスの手すりに手をついて、見下ろしていた。
まるで漂流してきたボートでも見下ろす様に。
ミキは既にTシャツを着ていた。
既に何があったか話されているのだろうか。
しかし3人は何も言わず、黙って見下ろすだけだった。
「やあ、みんな。そんな所で何をやっているのかな」
と何事も無かったみたいに言いながら、近寄ってみる。
「臭いんだよ。死体が」とヒヨリが言った。
「だから、移動させないとならないんだよ。あっちの方に」と右手を上げた。
「あっち? キャンプファイヤー場でもいいんじゃないの?」
「そんな事したら飯が食えなくなるだろうが。向こうの方に、
貝塚みたいなのがあるんだよ。そこまで運ぶから斉木も手伝ってくれよ」
「もちろん」
そんじゃあ行こうか、みたいな3人は目配せをして、食堂の奥に消えて行った。
自分も テラスの階段を上ると、そそくさと食堂の奥に行く。
しかし、廊下の突き当たりまで行くと、もう酸っぱいニオイがたちこめていた。
階段の中程ではヒヨリが、「うー、無理ぃ」と、引き返えそうとしている。
ミキが立ち塞がって「無理って言っても無理だよ、4人じゃないと運べないんだから。
こうやっておけば大丈夫だよ」と言うとTシャツの首を鼻に引っ掛けた。
「後は見ない様にしておくしかないんじゃない」
ヒヨリは泣きっ面をTシャツの丸首で覆う。
地下室のドアをきぃーっと開けると腐臭は更に強まった。
鉄格子の向こうに、換気用の弁当箱大の小窓があって、2体の遺体を照らしていたが、
腐臭も風に乗って漂ってくるのだろう。
室内に進み入ると鉄格子を開けて中に入って行った。
蠅は舞っていなかった。
牛島はビーフジャーキー化していて仏像みたいに固まっていた。
春田の方は皮膚の炎症もあったので、
顔半分がケロイドの様なグロい状態になっていた。
「くさーい」ヨーコが素直に言った。
うえーっ、とヒヨリはえづく。
「しゃべるな、つーか、鼻で息をするな」とミキが鼻づまりの声を出した。
「さっさと運ぶぞ」
春田は、夕べ運んだまま、鍬鋤にGパンを通した担架の上に乗っかっている。
「じゃあ、前はヒヨリとヨーコで、後ろは重いから私と斉木君ね」
とミキが手際よく指図する。「それじゃあ、いっせーのせいで行くわよ。
いっせーのせぇー」で持ち上げる。
そしてみんなでよろよろと鉄格子の扉をくぐった。
特に苦労したのが階段のところで、前2人は目一杯手を下ろして、
後ろ二人はバンザイ状態で、団地からお棺でも運び出すような苦労をして運び出した。
どうにか裏口から出ると、もう蛇かカエルの死体でも捨てに行くような早足で
“貝塚”まで一直線に走って行く。
“貝塚”とは、山の斜面にある窪地で、
四方がソロバン玉の様な小石で出来ているのでそう呼んでいるのだろう。
深さは3メートルだな。
到着すると、上から見下ろして、「下ろすのは無理なんじゃない?」とミキ。
「むりむり。やむを得ないよ」
と、ミキ、ヒヨリで即決すると、担架をひっくり返して上から落下させる。
春田君は、ごろごろごろーっと転がって行くと、底で卍の様な格好になった。
ここで合掌。
そんな感じで、牛島君のご遺体も運ぶ。こっちは割と軽かった。

帰り道、ロッジに向かって坂道を下っていると、
ミキもヒヨリもTシャツから首を出して、
丸でバキュームカーでもやり過ごしたみたいに、
鼻の穴をおっぴろげて新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。
僕は思わずぷっと吹き出した。
「なによ」ヒヨリが睨んでくる。
「あまりにも美味しそうに空気を吸っているからさあ」
「は?」
「多少汚いものに接していた方が免疫力がついていいんだよ」
「は? てかさ…」と、一瞬言い返そうとしたのに言葉を飲み込んだ。
そして正面に見えてきたロッジを指差して言った。
「私はどうせグロ耐性がないから、私の為に地下室の掃除してきてくれる?」
「えっ。まだやんの?」
「そうだよ。あんなに汚かったら、まだ臭ってくるかも知れないし。
ほら。ちょうどあそこにバケツもあるし」
裏口の外水道のところに、用意しておいたかのように、バケツが転がっていた。
そして到着すると、ヒヨリがそれを持ち上げて、こっちの胸に押し付けてきた。
「ハイ、お願い」
「なんで僕が」
「だって、こっちはグロ耐性ないんだから」
「ざーっとでいいからやってきなよ」とミキまで言う。
そして屋内に入ると、三人に急かされるように、階段を降りて、
地下室に入って、そのまま鉄格子の中に入った。
遺体がなくなってみると、結構広いなぁ。
「一人じゃ大変だからみんなも手伝ってよ。あと掃除用具とかどっかにないのぉ」
と振り返った瞬間、3人はまさに鉄格子を閉めるところだった。がしゃーん。
「掃除用具は、お前の股間に刺さってんだろう」
3人は、何やらベルトの様なものを、鉄格子にまわして、施錠した。
鞄の取っ手と南京錠で作った輪っかだった。
「なにすんだッ」
「お前なぁ、股間にそんなものぶら下げて、私に説教してんじゃないよ。
このアナニストが」
3人でガチャガチャと施錠の具合を調べてから、3人共、踵を返した。
「ちょっと待ってぇ」
しかし3人はドアの向こうに消える。
ドーンと扉が閉められた。
一瞬、部屋が揺れる様な気がした。

僕は、鞄の輪っかに飛びついてガチャガチャやって壊そうとしたが、
素手ではどうにもならなかった。
それに外れたとしてもどうにもならないんだ、と思った
あぁ、と呻きながら、壁に背中を付ける。
小窓から入ってくる陽の光が、空中のホコリに反射して光の筋を作っていた。
僕は、壁に背を付けたまま、ずずずずずーっとその場に座り込んだ、
犬が尻尾を巻く様に肛門を前に出す感じで。
ハーパンの隙間からブラシの頭が飛び出してくる。
あの3人はずーっと僕をここに閉じ込める積りでいたんだな、と考えた。
どの段階で作戦が開始されたんだろう。
やっぱ森の中で3人が再会した時に相談したんだろうな。
その前に、なんでイケスのところでミキを襲ったりしたんだろう、とも思う。
それよりなんで夕べアナニーなんてしちゃったんだろう。
そもそもなんでこういう性癖なんだろう。
色々考えたが、考えがまとまらなかった。
光の筋をぼーっと眺めていると、瞼が重たくなってきた。
そしてそのまま眠りに落ちていった。

そして目を覚ました時には、小窓から月明かりが差していた。
そうすると、何と 青い暗闇の中にまたまたナイチンゲールの格好をした
ミキが浮かび上がるではないか。
そしてこんな状況なのにまたアナルが疼きだす。
もう、やめてくれーッ! 
僕は両耳を押さえてイヤイヤをする様に頭を振ると脳内ミキを追い払った。
でも何時もこういうタイミングで脳内ミキは出てくるし、アナルは疼くのだった。
今みたいに、夜、一人で居る時とか。
或いは、もうちょっと長いスパンで言うと、風邪をひいて学校を休んでいる時とか。
或いは、もっと長いスパンで言うと、高校入学前で日常生活が中断されている時とか。
つまり解離的な状況でミキは現れてくる。
そういう時のミキは、イデア的というか、身体を持っていないから動物的な欲求も無
い。
ウンコもしなければまんこもない。
だから、ペニスを刺すという事は有り得ない。
そして、ちょうど疼いていた肛門に、
ナイチンゲールの様に職業的な使命感から奉仕する、というのが妄想のパターンだっ
た。
どうやったら、大人の愛というか、
普通にキスしたりセックスしたり出来るんだろう、と考えた。
それは、解離があったら駄目なんじゃないのか。
それは、切り花みたいなもので、根が無い感じ。
もっと連続していないと駄目なんだ。
生きている女っていうのは、大地に連続している、というか、
花もあれば根もある訳で、綺麗な体もあればウンコ系もある訳で。
成熟した愛というのは、その両方を受け入れないと。
でも、あのイケスに居たのは、リアルミキなんだよな。
どうしてリアルミキにあんなナイチンゲール的奉仕を求めたんだろう。
それは、あまりにも脳内ミキが大きくなりすぎて
リアルミキを飲み込んでしまっただめなんじゃないのか。
だから、リアルミキに接する為には、脳内ミキを消してリア充すればいいんだ。
つまり唯脳的な状態を回避すればいいのだ。
それにはどうすればいいか。
とりあえず、首でも締めて、頭に行く血流を止めてしまおうか。

僕は、立て膝をした格好て、スリーパーホールドでもかけるみたいに、
腕を首に巻いて考え事をしていたのだが、
このまま上体をぐーっと前に押し付ければ首が絞まるんじゃないか、
と思ってやってみる。
すると、頚動脈の脈拍が、どくんどくんと強くなって行くのが分かる。
脳に血を送ろうと、必死になっているのだろうか。
緩めてやると又元に戻る。
もう一回、ぐーっと締めてやる、と、又どくどくいいだす。
しかし、それ以上は強くはならなかった。
試しに手の平で締めてみたが同じだった。
圧迫が足りないんじゃないのかと思って、何回もスリーパーホールドをかけてみるが
上手く行かなかった。
その内、首が痛くなってきて、首をぐるぐる回していたら、
通気口の鉄格子が目に入った。
あそこにベルトを通して首を圧迫すれば…。
僕は立ち上がると、ハーパンからベルトを抜いて、
そこらに転がっていたバケツを踏み台にすると、鉄格子に渡して輪っかを作った。
ぱんぱーんと引っ張って強度を確かめる。
壁に背を付けて、その輪っかに顎を乗せると、
喉笛にかからない様に頚動脈の位置にもっていく。
臍の前で脈をとりながら体重を預けた。
すると、手首の脈拍でも心臓が苦しがっているのが分かる。
僕はにんまりとして脚に力を入れた。心臓も楽そうになる。
そして又体重を預けて心臓を責める。
心臓がバクバク言い出した。
今度は少し長めに苦しめてやるか、と、やっていたら、
目の前がだんだん白くなってきた。
アハハ。
しかし、僕って何時でもハンズフリーだな。アナニーの時もそれで失敗したのだ。
ふと目を凝らすと、入り口のドアのところに誰かが立っている。
「誰だ」
「何をやっているの?」ヨーコだった。彼女は鉄格子のところまで来ると
「死ぬ積もり?」と言った
「何しにきたんだ」
「これ、夕ご飯」しゃがむと、鉄格子の隙間から芋を2個転がしてきた。
夕ご飯? もうそんな時間なのか?
「そんなところから早く下りてきて」と言って、ヨーコは立ち上がった。
もっさりヘアーに浮腫んだ顔が月明かり浮かんだ。
その顔を見て、ああ、こんな事やっていても無駄かもなぁ、と思う。
だって、こうやって首を締めて脳を矯正すれば肛門性愛から解放されるとか
思ったのだが、
ヨーコのムーンフェースを見れば、やっぱりヨーコにはヨーコの気質があるように、
僕には僕の気質があって、それ故の運命みたいなものがあるんじゃないかと。
「もしかしたら僕も君も死ぬ運命なんじゃないか」僕は不用意に言った。
「えっ」
「今、突然思い付いたんだけど、
今まで死んだ奴らって染色体異常で取り除かれたんじゃないかと思って」
「えっ」
「男にも女にも染色体異常っていうのがあるんだよ」と僕は言った。
「男だと XYYシンドロームが牛島だろ。
     XXY、クラインフェルター症候群が僕だろ。
     XXYY、ヌーナン症候群が春田だろ。
女だと、XXX、トリプルXシンドロームがミキ、
    XXで普通なのがヒヨリ、
    X一本のターナー症候群がヨーコ」
「あなたもどっかおかしいの?」
「ああそうだよ。この胸を見てみな」僕はTシャツをめくって見せた。
「こんなに貧弱な体格なのに乳房だけでかいだろう。
こういうのはクラインフェルターの特徴なんだよ。
だから、僕も含めて、男子3人は取り除かれる運命だったのでは…」
「ミキも取り除かれるの?」
「XXXはスーパーフィメールっていうぐらいだから生き残るかも。
でも、X遺伝子一個の君は…」
「死ぬというの?」
「かも知れない」
「どうして私がそれだと分かるの?」
「そりゃあ見れば分かるよ。産婦人科医だから。春田と君は似ていると思うよ。
ヌーナンが女に起こるとターナーになるんだよ。
キャベツ畑人形みたいに頭がでっかくて、眉毛が薄くて。
そういうところが類似しているんだよ」
「そういえば春田君は眉毛が薄いのを気にしているな、って思ったの。
一緒に居る時に、甘い香りがしてきて、
あれ、これミクロゲンパスタのニオイだ、って思った。
それは私も使っていたので分かったのだけれども。やっぱり同類だったのか」
「性器はどうだった?」
「え?」
「牛島と春田のペニスを見たんだろう」
「牛島君のはでかかった。春田君のは小さくて…」
「金玉はどうだった? 半分股間にめり込んでいなかった?」
「そこまでは見ていない」
「もしそうだったら彼は確実にヌーナンで、
僕の診立てが正しかった事になるんだがなぁ。
そうすると君もターナーだという可能性も高くなる」
言うと僕は月明かりに浮かぶヨーコの文字通りムーンフェイスを見た。
「もし、君がここで胸と性器を見せてくれれば正しい診断がつくんだけれども。
どうかな、見せてくれないか」
「いやだ、そんなの」
「僕だって、ほら、こうやっておっぱいを見せているんだから」
言って僕はシャツをめくりあげてひらひらさせた。
「いやだ。恥ずかしい」
「いいじゃないか。こっちだって見せているんだから」
言うと、シャツを思いっきり引っ張った。
「ほら、こうやって見せているんだから。ほらぁ」
と、その瞬間バランスが崩れて足の下のバケツが外れた。
ビーンとベルトが頚動脈に食い込む。
「うっ」
急に目の前は真っ白になった。
慌てて、ベルトの間に指を突っ込もうとするが自重で食い込んで入らない。
「ううう」
足が空を蹴って、ズボンが脱げるとブラシが露出した。
目の前が暗転すると、どす黒い血の海の様になる。
ヨーコの顔がぼやけてきた、と思ったら、
でっかい顔に離れた目が狛犬みたいで。
あれはなんだ、と僕は思った。
あれはもしかして…。
ここはもしかして…。
ここがどこなのか分かった。
そう声に出そうとしてももう出ない。
ここがどこだか分かったぞ、と思いつつも、意識は薄れて行った。
ブラシがずるっと抜け落ちて、大量の脱糞をした。どぼどぼどぼ。
黒い血の海に2匹の狛犬が加わった。
そいつらは「放送の時間だー、放送の時間だー」と言った。
しかし目の前は真っ暗になった。




#1052/1158 ●連載    *** コメント #1051 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:23  (212)
◆シビレ湖殺人事件 第3章・斉木ー4
★内容
《はい、お疲れー。
とうとう合宿も3日目が終了したね。
そっちでも色々起こっているみたいで、
女に入れあげて自らくびれる、なんてことまで起こっている様だね。
今日は、何故時として科学者はMADになるのか、
ということを話そうと思っていたんだけれども、
彼も女にMADになっていたとも言えるから、
関係あるかも知れないね。
さて、それではまず、前回の復習から。
さあ、みなさん、前頭前野に気合いを入れて聞いて下さいよ。

えー、前回はリンパ球の成熟について言ったんだよね。
B細胞の表面には免疫グロブリンというグローブみたいなのが飛び出していて、
その先っぽで病原菌をキャッチするのだが、
そのグローブを用意するにあって、
まず、皮からグローブを作る様な段階があって、
それは一次リンパ器官、骨髄で行われるんだったよね。
それから、そのグローブが骨髄からリンパ節に移動してきて、
そこで実際に病原菌とボールをキャッチしている内に、
だんだんグローブが柔らかくなって掴みやすくなる。
これは二次リンパ器官における成熟だよね。
この2つを合わせてクローン選択説と言うんだが、
文言としては、リンパ球は“あらかじめ”“ひとそろい”のクローン、
つまりグローブを持っていて、抗原刺激を受けて更に成熟する、
というものだったね。
ただ、そう言ったところで、100億個ものグローブをどうやって用意するんだ、
という疑問もあって、
そこで、利根川進の実験も紹介した。
しかし利根川進はあくまでグローブ縫製の方法を説明しただけであって、
誰がやっているのかは言わなかったんだよね。
いくら“あらかじめ”とか言ったって、自動的に出来るんじゃあ
慣性の法則に反するだろう。
そこで、私は、これも又、宇宙の磁気によるものである、と言ったんだったよね。
つまり第一回では、遺伝子の複製はDNAポリメラーゼに宿った
宇宙の磁気によるものと言ったが、
前回は、骨髄におけるリンパ球の成熟も、宇宙の磁気によるのであり、
これをクーロン選択説と命名したんだったよね。
以上が前回の復習。
えー、さて、それじゃあ、今日話そうと思っていたMADについてだが、
ちょうど今日、またまた昼間の理系進学クラスの話だけれども、
或る生徒が、
彼は将来、研究者になりたいとか言っているんだが、
彼はマウスのゲージの掃除をするのに、手袋をしているんだよね、
糞で手が汚れるとか言って。
ところがその手袋を洗濯機で洗うと、
今度はその汚れが洗濯機のドラムに移るかも知れない、
更にそれがタオルや下着に移るかも知れない、と、
切り無しに伝わって行くと言んだよね。
こうなると、これは汚れではなくケガレだね。
これが一種、MADな状態と言えると思うんだが。

どうしてこんなことになっちゃうのかを、ちょっと考えてみると、
この彼の場合だったら、
洗濯機を回して、洗剤入れたっけ、とドラムを覗くと、
あんまり泡立っていない、とか、
洗濯水がドラムの方まで浸っていくなあ、とか色々考え出すでしょう。
そうやって脳で考えた瞬間に、
完璧に綺麗な状態とか、無限にケガレが伝染していく様子とか、
そういうのを妄想してしまうんだよ。
脳で考えると、完璧とか無限とか、極端なことを言い出すんだよ。
じゃあ、こういう状態から回復するにはどうすればいいかと言うと、
脳と身体とで、脳的になり過ぎているんだから、わざと身体的なことをすればいい。
手洗いで洗うとか、思い切ってマウスの糞にまみれてみる、とか。

で、ここで何が起こっているかを、心理学とかなんとかではなくて、
私が前々から言っていた、過剰と去勢で言うとねぇ、
これは、過剰が枯れてしまって去勢過多になっちゃっているんだね。
前回私は、遺伝子そのもの、とか、病原菌みたいなものは、
過剰なものであって太陽系的なもの、
遺伝子のコピーとか、骨髄やリンパ節に磁気が宿るみたいなのは、
去勢であって銀河系的なもの、と言ったが。
それは、人間全体についても言えるんだが、
食べるとか、排泄するとか、セックスするとか、
副交感神経的なものは太陽系的なもので、
心臓だの脳だの、交感神経系で亢進するものは銀河系的なもの、
と言えると思うのだが。
人間のスケールにおいては、この2つがバランスしていなくちゃいけない。
微細なレベルで言えば、タンパク質の合成という太陽系的な事と
ゴルジ体の去勢という銀河系的な事はバランスしていなくちゃいけない。
或いは、もう少し大きい範囲で言うと、
人間の呼吸の回数は、寄せては返す波の回数と同じというけれども、
臓器としての肺という太陽系のものと、地球の自転という銀河系的なものが
バランスしていなければいけない。
そのバランスが崩れるとどうなるかというと、
微細なレベルだったら、タンパク質もないのにゴルジ体が作用すると、
鍋の空焚きみたいな感じになってしまうんだね。
そうするとゴルジ体から化学物質が出てきてあアレルギーみたいになるかも知れない。
そういうことをもっと大きい範囲で言うと、
心臓だったら、運動という過剰もないのに、
電気的にパチパチしていて不整脈を起こす、とか、
脳でいうなら、恐怖の対象みたいな過剰がないのに、
セロトニンの放出が止まらない、みたいな状態。

このケガレの彼は、まさにこういう状態になっちゃっている。
だって汚れてもいないのに、ケガレていると言っているんだから。

じゃあ、なんで過剰と去勢で去勢過多になると潔癖症になるかというと、
前にも言った様にDNAポリメラーゼとかリンパ節とか脳とか、そういうのは、
宇宙の磁気が宿って去勢するものだから、
宇宙の幾何学的なもの、イデアみたいなものが宿っているんだね。
だから、例えば、本当の三角形は厚さをもたない二次元のものだ、とか言って、
三角定規のイデアを求めだすんだね。

だから、過剰と去勢で去勢だけしかない時の脳というのは、
幾何学的に美しいものを真、と思ってしまうんだよ。
これはもう、MADな状態だと言っていいと思うんだが。
だから、彼が科学者になりたいなら、そういうMADな状態に陥らない為に、
常に実験で世界との連続性をキープしていなければならない。

ところが、過去の偉大な科学者であっても、MADに陥った人は結構多いんだよ。
こっからが今日言いたかったネタなんだが。
例えば、免疫学の巨人と言われて、利根川進の研究所の所長でもあり、
クローン選択説の元になった自然選択説の提唱者でもあった、イエルネ、
その人も又、MADな人だったんだよね。

ここでちょっとイエルネの自然選択説を言いたいんだが、
クローン選択説の元になった説だから、似たようなもので、
やっぱり、100億個のリンパ球が“あらかじめ”用意されている、
というのが前提になっているんだけれども、
それが一つのネットワークでつながっている、というんだね。
どうやってそんなネットワークが出来るのか、というと、
人間の最初の免疫反応というのは、受精4週目ぐらいで母体の血が流れてくるから、
その時に起こるか、
無菌室で育ったとしても、何かを食べるのだから、
どっかで非自己とは接するのだけれども、
とにかく、非自己と接触することで、或るリンパ球が反応するでしょう。
そうするとその反応したリンパ球も他のリンパ球にしてみたら非自己だから、
第二の反応が起こるでしょう。
そうするとそのリンパ球も又別のリンパ球にしてみたら非自己だから
第三の反応が起こる…、という無限ループが100億回繰り返されて、
100億個の個性を持つリンパ球が誕生する、と言うんだね。
しかも、このリンパ球はグロブリンの先っぽ同士が、
ETの指みたいに接触していて、通じ合っていると言うだねえ。
そういう状態の100億個のリンパ球の集合体がある。
そうすると、今、新しい病原菌が接近してきて、それに対応するリンパ球が、
100億個の真ん中へんあったとしても、ピピピッっと連鎖していって
反応出来る、あたかも、ファイル共有ソフトのWinnyでつながっている
100億個のPCがあって、そこに、今、新しいPCを買ってきて、
一番端っこに接続すれば、たとえ隣のPCに目的のファイルがなくても、
インデックス情報で検索していけば、100億個の真ん中へんにある
PCのHDDにあるファイルも検索する事が出来る…、みたいな感じで。

そんな馬鹿な事があるかッ。
ただ、免疫の世界では、
なんかの毒細胞に他のリンパ球から分泌されたグロブリンが2個刺さって、
そのチョキとチョキを橋渡しするように病原菌がくっついて、ショートして、
毒細胞から毒が出て、アレルギーショックを起こす、とかいうのはあるんだが。
だけれども、この場合には、むしろ、イエルネの脳のニューロンの先っぽが
他のニューロンとショートを起こしているから、こんなことを考えるんじゃないの? 
いや、私の場合には、細胞に刺さったレセプターとレセプターの架橋によって
ショートが起こって、化学伝達物質が出てくる、とは考えないで、
あくまでも、ニューロン周辺の或る物質に磁気が宿ることで、
イオンの流れがシャープになる為にキレる、と言いたいのだが。
まぁ、それはともかくとして。
このイエルネの説の前半の、免疫反応の連鎖、なんていうのは、
先の学生のケガレの無限ループ、みたいな感じがしない? 
やっぱり、こういうことを考えるのは、世界との連続性が失われていて、
びんびん脳内に電波が飛んでいるからなんじゃないのか、と思うんだが。
イエルネっていうのは、城に引きこもって考えていた、とか、
教会で思索に耽っていた、とか言われているんだよね。
つまり実験から遠ざかっていた人なんだよねえ。
だからそんなになっちゃったんじゃないのか。
そういう訳で、このイエルネの自然選択説はMADだし、
そこから派生したクローン選択説もMADなんじゃないか、と私は言いたいんだが。

それが、今日言いたかったことでした。

さあ、それじゃあ、今日の犠牲者について少し言及しておこうか。
今日生徒の一人が肛門性愛に目覚めて、
それが原因で死亡するという不幸がありました。
それは、男子生徒の数が減ってきたから、性転換を起した、なんてことじゃあない。
じゃあ何かと言うと、前述のケガレの彼ではないが、ちょっとしたことで、
太陽系と銀河系とで、銀河系が優位になってしまったんだね。
それはどういうことかというと、例えば、くしゃみというのは、
ハクションとやるんだから、自然な事であって、
粘膜的な事であって、それは太陽系的な事だから、いいんだけれども、
それを、見目麗しい女子が、美しい声で歌ったりすると、
その途端に、歌声は脳の事だから、銀河系的な事が優勢になってくる。
そうやって、一回、世界との連続性を欠いてしまうと、
どんなに綺麗な人でもウンコもすれば屁もひるという当たり前のこと、
太陽系的なことを受け入れられなくなってしまうんだね。
そして、銀河系的なものが、どっと出てくる。
さっき言った、三角定規のイデアが出てくる、みたいに、女性のイデアが出てくる。
斉木君はそういう状態に陥ったんだな。

…まぁ、実際には、ニューロン周辺の或る部位に磁気が宿って
イオンの流れがシャープになるんだから、
例えば顔細胞のニューロンの束の内、
輪郭のニューロンだけにさーっとイオンが流れて、
皺のニューロンとか、シミのニューロンとかにはイオンが流れない、
ということが起きる、それで、その女子の顔が綺麗に見える、
ということなのだが。
だから、磁気自体が幾何学的な意味を持っているというよりかは、
磁気によってイオンの流れが早くなると、
曲線的な事を見失って幾何学的な輪郭だけを見る様になる、ということなのだが…。

では、そこからの回復はどうすればいいか、というと、
斉木君がやったみたいに、首を締めて、脳的な再取り込みを阻止する事で
身体的な状態に戻ろうとするのも手かも知れないが、
むしろ、身体的な事をすることで、世界との連続性を回復すればいいのであって、
それは、春田君の様にウンコを食う、というんじゃああまりにも太陽系的すぎて、
今度は脳が留守になる可能性もあるので、中庸をとって、
その女子のオナラでも嗅げば、世界との連続性が回復して、
MADな状態から逃れられたのではないか、と想像するのである。
以上が斉木君に関して思うことだが。

まあ、今日はこんな所なんですが。
比較的短かったね。

じゃあ、次回は、明晩6時スタートです。
バッテリーを交感して、ディスプレイの前で待っていて下さい。
それじゃあみなさんおやすみよ。




#1053/1158 ●連載    *** コメント #1052 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:24  (198)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー1
★内容
朝方、夢を見た。
私はキャンプ場にいて、体育座りをしていて、みんなと一緒に芋を食べていた。
腸が、クルルル、と鳴った、鳩でもいるみたいに。
そしてオナラがしたくなる。
どうせみんな同じものを食べているのだから、とたかをくくって、
少しすかしたら…くさーい。
なます系のニオイで、濃度も濃く、こんなのが漂ってしまったら誤魔化しようがない。
これはもう自分で全部吸ってしまうしかない。
私は咄嗟に、体育座りをしているその太ももに頭を突っ込んで、思いっきり吸った。
全部自分で吸ってしまおうと思ったのだ。
ところが春田君が背中から、「ヨーコちゃんオナラした?」と言ってきた。
ええー、わざわざみんなの前でそんなこと言うかよ、と思って、
太ももの間から顔を上げて振り返る。すると春田君は既にそこには居ない。
あたりを見回すと、ちょっと離れたところの砂利の上で、
春田君がミキを追いかけていた。
二人とも裸で、靴だけは履いているので、ストリーキングみたいに見える。
ミキは、ヘルペスが伝染るー、とわめいている。
春田君はトイレットペーパーを右手に掲げてひらひらさせている。
スローモーションで追いかけっこをする二人。
突然春田君が方向転換すると私の方に迫ってきた。
そして、私の腕をとって、私を連れ去った。
二人三脚の様にして、ロッジに入ると、暗い階段を上って、部屋に連れて行かれた。
それからベッドの上で脱がされる。
恥ずかし固めで固められて、ちょめちょめを舐められだす。
それから春田君は肛門の方を狙うのだが、私は太ももで突っぱねて逃れた。
私は、湖のほとりに行くと、ちょめちょめを洗っていた 
私のクリちゃんは、多分舐められせいで、ヘルペスに感染していて、
斑状に湿疹が出来ていた。
大きさは、カブトムシの幼虫ぐらいあった。
擦るとかえって色素沈着してしまうと思って、
ぴちゃぴちゃ湖水で洗ったのだが、綺麗にならなかった。
顔を上げると、あたりの雰囲気は三途の川みたいな川原で、
対岸の空は紫色に染まっていて、あっちが地獄なのかと思う。
反対側の空は東なのに何故か夕焼けで染まっていた。あっちが八王子なんだなと思う。
そっちの方から、♪夕焼け小焼けで日が暮れて山のお寺の鐘が鳴る…、という
子供たちに帰宅を促す市の放送が聞こえてきたのだった。

そこで目が覚めた。
あー、夢だったのか、とほっとした。
しかし、天井を見ると、やっぱりここはシビレ湖のロッジだった。
夢から覚めても又夢か。
ガバッと起きて隣を見ると空のベッドが。
最初の日、あそこで牛島がベッドを作っていたのを思い出した。
でも、陥没した山道から落ちて死んだんだ。
それから春田はただれて死んだ。
斉木は首を吊って死んだ…と芋づる式に思い出す。
え? どういう事? とボーッと考える。
つーか、目を覚ました時から股間に、
何か今までに感じた事のないエネルギーを感じているのだが。
肛門の括約筋からテコの原理で立ち上がる何かを。
なんなんだろう。
私は腰を浮かせて、ズボンとパンツを一気におろした。
するとそこには、立派なペニスが。
ぎょえー!
夢の中のとは違って、白くてでっかくて、ジュゴンの鼻みたいに仮性包茎のチンポ。
それが朝勃ちというのだろうか、股間からむっくりと起き上がっている。
なんじゃ、これはー。
うわーっ、なに、これ、とかゲジゲジでも見せられたみたいに
両手で遮って身をよじって逃げようとしても自分に生えちゃっているし。
私は逃げるのを諦めて、ベッドに座ると、じーっとペニスの尖端を凝視した。
尿道のところは、舌の裏の唾液が出てくるところに似ているか。
それが、今にも唾を吐き出す唇みたいに盛り上がっている。
あそこから精液がぴゅぴゅっと出てくるのだろうか。
普段はしぼんでいてオシッコを出すのだが、興奮すると勃起して精液を出す。
こりゃあ、ウォシュレットのノズルよりも不思議だぞ。
でも、何かぶっかけるものって大抵ああいう形をしている。
目薬とかイチジク浣腸とかケチャップとかマヨネーズとか。
つーか、私のちょめちょめはどこへ行ったんだろう。
ベッドの上で片膝を立てて、ペニスの奥を覗き込む。
すると、半分めり込んだ睾丸があって、その向こうは肛門であった。
つまり私のはない、というか、元あった私のの周りに、
ぐわーっと昭和新山の様にペニスが盛り上がってきたのか。
斉木も死んで男が居なくなったので、性転換を起こしたってことか。
うわー。
後ろに両手を後ろに突いて身を反らせた。
その瞬間、肛門付近に少し力が入って、びくっとペニスが反応した。
なんだ、今のは。
もう一回意識して肛門に力を入れてみた。
すると、クレーンの様にくいっくいっと反応する。
なんなんだ、この感覚は。こういう感覚は今まで持った事がない。
乳首が固くなるのは鳥肌がたつのに近いもので、あれとは違う。
こうやって自由に動かせるというのは
…と私は肛門周辺に力を入れてペニスを上下させたのだが…
小鼻を膨らませるのに近い感覚だ。
鼻って軟骨で出来ているので膨らませることが出来るが、
ペニスも海綿体が充血すれば筋肉に付随した軟骨みたいな感じになるのだろうか。
肛門を締めっぱなしにして、ペニスを上げっぱなしにしてみる。
感じとしては、素手にドライバーでも握っていて、
その鉄の部分も身体の一部という妙な感覚。
うーん、唸りながら、それを凝視する。
私はそーっとイチモツに指を伸ばした。そして触れてみる。
途端に、びくっと反応した。
うーん。
思い切って、手の平で掴んでみる。
イチモツは、手の平を押し返すように膨らんだ。
試しに私は、ジュゴンの鼻状包皮を剥いてみた。
べろーん。
真珠色に光る亀頭が現れた。
ぐーっと剥きっぱなしにすると、ぐーっと充血して、
カリのところなどは飴色に光るのである。
それから私はゆっくりとしごいてみた。
びくびくっと反応する。
それには性的な快感も伴うことも分かった。
更に数回しごいてみる。
はぁ。なんだろう。気持ちいい。こういう快感は知らなかった。
左手を後ろに突っ走ると、腰を浮かせて、更にしごいた。
なんだろう。はぁはぁ。
私はどんどん大胆になり、どんどんしごく。
はぁ、気持ちいい。
私は、何かを目指しつつ激しくしごいた。
はぁ、はぁ、はぁ…、気持ちいい。
はぁ、はぁ、あっ、あっ、ああああー…
突然精液が飛び出した。
鼻水の様な液体が、ポンプか何かで押し出す様に、ぴゅっ、ぴゅっと飛び出てくる。
もはや自分では止められない。
あー、あー。どうしよう。あー、止めて!
そして、透明でザーメン臭のない精液が、太ももやシーツに飛び散った。
あー、どうしよう、と私は思った。
てか、なんなんだ、この罪悪感は。
数秒前の興奮は、一瞬にして消え失せ、
焦燥感と罪悪感がないまぜになった様な感覚が後頭部から押し寄せて来る。
なんだろうこの気持ち。
丸で人でもあやめてしまったかのような取り返しのつかない事をしでかした様な感じ。
心の中で、ごめんなさい、もう2度としませんと祈った。
そして、すっかり意気消沈して 飛び散った精液を見詰めていた。
もしかして、人類の道徳の起源は、この罪悪感にあるのではないか、と思いつつ。

しばらくじーっとしていて、少しは落ち着きを取り戻した頃、
それでも物悲しい気分のままで、私は枕カバーで太ももやらシーツの精液を拭った。
そして股間の一物を見る。すっかりふにゃふにゃになったジュゴンの鼻。
射精後の罪悪感は薄れてきた。
しかし、こんなものがあること自体やばいのだ、という女性としての焦り…はなく、
むしろ、ちんぽの掃除もしなくちゃ、と思ったのだ。
自分のイチモツだから清潔を保とうと思うのか。
剥いてみると、白っぽい貧血したような亀頭が現れる。
ぐーっと竿の付け根から絞り出すと尿道に残っていた精液が出てくる。
こうやって、剥けば剥けるし、皮かぶりにもなるのは、一粒で二度おいしい。
包皮をいじくっている内に、前に斉木が話していた妙な話を思い出した。
なんでも、斉木が知っているもっともぶったまげた外来は…。
仮性包茎をなおそうと思ってアロンアルファでくっつけようと思ったら、
手が滑って真性包茎の状態でくっつけてしまって、
その状態で小便をしたら、包皮にぼんぼんの様に尿がたまって、
その状態で搬送されてきたのだが、
切開してみると接着剤は亀頭にまでべっとりついていたので亀頭ごと切除した、
というものだった。
でも、自分の包皮をぐーっと伸ばして指を丸めて握り締めてみても、
ここにおしっこをするのは無理だ と思う。
斉木のやつ、話を作ったな。だいたい斉木んちは産婦人科であって泌尿器科じゃない。
という事は、染色体異常とかの話も話半分に考えた方がいいんだろうか。
斉木は言っていた。
春田は染色体異常で、睾丸が半分股間にめり込んでいると。
そして、類似の異常が私にもあると。
そういえば私の睾丸も…、と、私は、ベッドに座ったまま、片膝を立てて、
ペニスをもちあげて、半分めり込んだ睾丸に触れてみると、ぐりぐりやってみた。
これは、斉木が居なくなってオスが居なくなったから、
私の性染色体がアクティブになってペニスが生えてきたのだが、
その性染色体に春田みたいな異常があった、ということか。

それにしても、と、私はペニスを握った、この存在感。
ペニスから睾丸のあたりをにぎにぎしながら、
それにしてもさっきの性欲の強さは凄かったなぁ、と私は思い出した。
男性の性欲の強さは、べピースモーカーが一日タバコを吸わないで、
肉体労働をして、夕食にステーキを食べて、濃いコーヒーを飲んで、
そこで一服した時のがくーんと来た感じの百倍ぐらいの強さ、
と故牛島が話していたが まさにそのぐらいの強さはあったな。

しかしこうやってちんぽが生えてみると、吸いたいのはタバコじゃなくて、
女のビーチクだな。
は? 今、私、何て思ったんだろう。
女の乳首が吸いたい? 
げっ。私、心まで男になってしまったのだろうか。
しかも、たった今、もうしませんと祈ったのに、
又、吸いたいなんて思いだしていて。
又、溜まってきたんだろうか。

しかし、オレが欲しいのはビーチクじゃなくてケツやその奥の割れ目、
つまり他の女のマンコだ。それは微かに色素沈着しているものの、
静脈が透けて見えていて、それで大理石の様な模様を作っている、そんなケツで、
後ろから広げると、肛門の皺は綺麗に放射線状に広がっていて、その下側には、
本当に鮮度の良い、少女の瞼の様な小陰唇、少女の涙腺の様なクリトリス…。
オレはおっぱい星人じゃなくてけつフェチなのか。
私じゃない。私の脳が思っているわけじゃなくて、
オレのY遺伝子が勝手にそう思ってんだろう。
あのぴゅぴゅっていう痙攣は、脳がやってんじゃないから。
勝手に痙攣しているのだから。くしゃみみたいな免疫反応に近いよ。
もしかしたら、配偶子になった段階で、精子も卵子も非自己で、
射精も排卵も免疫反応なんじゃないのか。
その非自己が、私を支配して、ターゲットを探し出す。
熟れた果実の奥にいる、スーパーマリオのピーチ姫みたいな、卵子を。
オレは、半分勃起したペニスを2、3回しごいた。
しかし、停止した。もう空砲を撃つのはゴメンだと思ったのだ。
私はベッドから起き出すと、立ち上がってパンツを上げた。
勃起したペニスの亀頭が、すっかり頭を出している。
ハーパンをずり上げたが、これだと勃起したペニスが透けて分かる。
私は部屋の隅に行くと、丸めてあったGパンに脚を突っ込んでずりあげると、
ペニスを押し込みながらチャックを閉める。
すごくきつく感じるが、これはペニスのせいばかりではなく、
なんか、体全体が大きくなった気がする。




#1054/1158 ●連載    *** コメント #1053 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:24  ( 68)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー2
★内容
下に下りて行ってテラスに出ると、
真ん中へんでヒヨリが芋の芽をナイフでえぐっていて、
手すりの方ではミキが丸椅子に座って湖の方を見ていた。
とりあえずヒヨリのところに近寄って、タオルの上に転がっている芋を覗く。
「あら、芋の芽を取っているのね」
「は?」ヒヨリは顔を上げた。「なに、おねえ言葉使ってんの?」
「じゃが芋も3日目になると芽が出てきちゃうのね」
「つーか、これっきゃねーだろ」
何があったって、オメーは芋しか食えねえだろうが。
それにしても、日に日に黒くなっていくな。
スモーキーマウンテンのフィリピン人だな。
ときめきゼロだよ。

さっとミキの方を向いて、手すりの方に歩いて行くと、
手すりに寄りかかってミキを見下ろした。
丸椅子に腰掛けて湖を見ているんだが、
タンクトップだから、脇の下から広背筋の辺りがよく見える。
既に腋毛が伸びていた。
下はGパンを切ったホットパンツで、
弛緩した筋肉が丸椅子の上でカエルの腹の様に広がっていた。
あそこをぶちゅーっと吸って、
ぶちゅ、ぶちゅ、ぶちゅっとズレて行って奥のピーチ姫を吸いたい。
ちんぽがビクッと脈打って心臓も不整脈を打った。
ペニスと心臓は連動しているのか。
だったら、視覚から脳、心臓、ペニスと伝わっていくのか。
性欲はY遺伝子の仕業ではなくて脳がやっているのか。
いや、そうじゃなくて、溜まっているからこそミキが目に入るんだよ。
中二が竹やぶにエロ本を見付けるみたいに。
「なに見てんのぉ?」ミキが怪訝な表情を向けた。
「なんかオヤジっぽいよ。つーか、なんでGパンなんて履いてんの」
「他のは汚れたんだよ」
「様子が変」言うと、立ち上がった。「さてと。じゃあ、芋でも食うか」
そしてヒヨリも立ち上がって、キャンプ場の方へ移動していった。

「私も行くー」っと踵を返したのだが、
その瞬間、ガラスにオヤジの亡霊が写った、と思ったのだが、それは私だった。
Y遺伝子、というか、オヤジ遺伝子の権化と、
オヤジの視線に耐えていた女子が同居している。

キャンプ場のカマドで芋を茹でながら、ヒヨリ、ミキとで、体育座りで待っていた。
丸で、アリ・マッグローとグレース・ケリーだな。
アリ・マッグローってどこが綺麗なんだろうとふと思う。
「なに見てんの?」ヒヨリがじろりと睨む。
「見てねーよ」
こいつ邪魔だな。

芋が茹ると、ミキと一緒に、どぼどぼーっと湯を捨てた。
鍋を戻すと、底に転がった芋を、3人で棒でつついて取り出す。
ヒヨリは、塩を振って食べていた。
私とミキは砂糖をまぶして食べる。
「もう、最後の芋にしたいよねえ」と私は言った。
「そうだよね」とミキ。
「でも私とミキは、これが最後の芋になるんだよね」と言って、ヒヨリをチラ見。
黙って芋を食っている。
「ねえ、ミキ」私は言った。「あそこのイケスって、
網の底からロープが出ていて、それを引っ張ると、
魚が集まってきて、そこをモリで突くんだよね」
「うん。そうだね」
「それって、ボートの上から突くんだよね」
「そうだね。沖から突くんだね」
「だったら舟に3人も乗っていて突くなんてバランス悪いから、
ミキと二人で舟で行こう。ヒヨリは歩いていって」
「えっ」ヒヨリがぼそぼそ食いながら顔を上げた。
「ヒヨリはどうせ漁なんて出来ないんでしょう?」
ヒヨリは芋を持ったまま焚き火をじーっと見ていた。
「別にいいよ。でも、嫌に指図するじゃん。
ヨーコってこんなに積極的だったっけ」ヒヨリはミキを見た。
「さあ」とミキは首を傾げる。




#1055/1158 ●連載    *** コメント #1054 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:25  (276)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー3
★内容
桟橋に行って、ミキが舟に乗り込むと、左右にぐらぐらしたが、
しゃがんでオールを広げると安定した。
それから、私がモリを携えて乗り込むと、船尾に半ケツを乗せる様な格好で座った。
桟橋のヒヨリに「じゃあ、向こうでね」と言って、橋桁のところの丸太を、
モリの柄でぐーっと押した。あーばよ。
桟橋から離れると、ミキが力強く漕ぎ出した。
舟はずんずんと進んで行く。
身をよじって桟橋を見ると、ヒヨリがどんどん小さくなる。
更にミキはどんどん漕いだ。
私はせわしなく後ろを振り返って見た。
ヒヨリはどんどん小さくなり、やがて、靄に見え隠れする様になり、
その内すっかり見えなくなった。
ひっひっひっ、邪魔者は消えた。
喜々として ミキの方に向き直った。。
前屈した状態で、どぼんと水をキャッチすると、ぐいーっと仰け反るってかく。
タンクトップを臍のところで結んでいるのだが、
オールをかく度に、薄い皮膚の下に腹筋が浮き出る。
「すごい腹筋。板チョコみたい」ミキは既に薄っすらと汗をかいていた。
「それにしても蒸すよね。それ脱いじゃえば」
「えっ。この下何も着てないんだよ」
「そっかー、水着は斉木に破られちゃったんだものね。
でも、脱いじゃえばいいのに。誰も見ていないよ。見ているとしたら骨川筋子」
私は湖畔をみやった
小道は、靄があるので、途切れ途切れにしか見えないのだが、
ヒヨリの影は見えなかった。
湖畔の見えるところは、靄のせいで、浮島の様に見える。
靄の出る冷たい湖面に、どぼんとオールが沈む音と、
キーッというオールを返す音が鳴っている。
ただ舟の上だけはその運動のせいで、むんむんしている。
ミキを見れば既にはぁはぁしていた。はぁ、はぁ…。
空気がこっちに流れていて、ミキのワキガが臭ってくる。
でも、病的なものではなくて、風呂に入っていないからだろう。
腹からは、肌そのものの匂いも漂ってくるのだ。
冷たいミルクの様な、水泳の後の更衣室で匂う、純粋な人間の匂いだ。
とか嗅いでいる内に、丸で自分が狼とかハイエナとかの野生動物に
なってしまったかの様に感じた。
そして私は膝小僧に顔を埋める、隙間から猫目でじーっと獲物を見る。

やがてイケスが見えてきた。
岸辺から4、50メートルぐらいのところに、
ゴルフの打ちっぱなしのネットみたいなので四角く囲ったイケスがある。
その角に近づくと、ミキはオールを水に入れて舟を止めた。
「あれーっ、ロープが解けている」イケスをみやりつつミキが言った。
「あそこのロープが、本当はイケスの外側まで伸びていたのに。
あれを引っ張ると網が引き寄せられて魚を集められるの」
ロープはイケスの内側に浮かんでいた。
「だったら 泳いで取ってくるしかないよ」
「えー」
「だってそれっきゃないよ」言うと私は足元のモリを取って、
「ほら、こうやってモリで取ろうと思っても届かないし。
ミキが泳いで取ってくるしかないよ」
「だって、裸だよ」
「だってしょうがないじゃん。
つーか私しか見ていないんだから恥ずかしくないでしょう」
「えぇー」ミキはロープの方を見ている。
「ほら」
「えー」
「もう行くっきゃしょうがないでしょう」
「あー。もう」キッとこっちを睨む。「結構強引だよね。
前はもっとぼーっとしていた感じがするけど」
言うとホットパンツの前ボタンを弾くようにして外した。
「いいから、いいから」言いながら三日月状の岸辺から、ロッジの方に、
湖畔の道を見渡した。まだヒヨリは見えない。

ミキは舟の上で立ち上がり、背を向けて、ホットパンツを脱いだ。
それからパンツも脱ぐ。
脱いだ瞬間、パンツのちょめちょめが当たっていた部分が、
ハンドエイドでも剥がすみたいにしっとりした感じで剥がれていって、
多少黄ばんでいるのが見えた。
だったら陰部も多少汚れているんじゃないか、と尻を見る。
尻と太ももの境目に横ジワが一筋。尻のほっぺは結構硬そうで、窪んでいた。
広げて舐めてあげてもいい。でもそんなの湖水で綺麗になってしまうだろう。
ミキはタンクトップに肘を入れると首から抜いた。
最後に、背中で合掌でもする様な柔らかさで、ブラのホックを外すと、
両肩を湾曲させてブラを外した。
もはや全裸なのだが、両肩を内側に湾曲させて、
尻のほっぺを固く内側に窪めていて、
更衣室で陰部を隠す様なか弱いものだった。

ミキは、舟底に膝をついて水の温度を確かめる。
その時、広背筋の向こうに乳房が見えた。
石膏っぽい青白さで、乳首と乳輪の縁だけが淡いブルーベリーで、
乳首の周りはまだ色づいていなくて、
まだ誰にも吸われていないんだなぁ、と思った。
とにかくその柔肌は如何にもか弱く、ペンキを塗った舟とか、
青汁みたいな水面とか、イケスの網にこびりついたぬめりとか比べて、
肌色のクオリアが、なんとも、
アオカン的無防備さを放って浮き上がっている。
自分のY遺伝子がそう思わせるのだろうか。
だって、人間だって自然のものなんだから、
自然の中で浮き上がって見えるのは、
ただ単に自分がスケベで、
竹やぶにエロ本が浮き上がってくるのと同じ原理なんじゃないのか。
でも、シュワルツェネッガーの『プレデター』でも
サーモのスコープで見るとジャングルの中で人間の肌が浮き上がってくるので、
人間の素肌って、自然とは違うのか。

「あんまり見ないよ」ミキはちょっと口を尖らせてこっちを見た。
舟縁に乗っかって小鳥の様に掴む。
それから、風呂にでも浸かるみたいに、舟縁を後ろ手にして、
ちょぽーんと水に入っていった。
冷たそう。
立ち泳ぎで、イケスのところまではすぐに到達した。
ミキは、イケスの縄のぬめりをチェックした。
それから縄を押し下げて、跨ごうとするのだが、縄はそんなに深くは沈まず、
何回か試みるが諦める。
そして両手で縄を掴むと、全体重をかけて沈め、コースロープでも乗り越えるように、
思い切って頭からイケスの中に飛び込んで行った。ざぶーん。
そしてそのまま潜ってしまったのだが、
イケスの真ん中へんで、巨大マンタが浮上するみたいに浮き上がった。
首を振って髪の水を振り払う。
そしてすぐにロープを見付けると、首を出したまま、
泳いで行って到着。
ロープを掴むと掲げ上げてこっちに見せる。
すぐに身を翻して、横泳ぎで戻ってくる。
イケスの縄を、背面跳びみたいにダイナミックに超えると、
すぐに船縁まで戻ってきた。
「ほら」と言ってロープを差し出しながら、舟縁に手を掛けてくる。
なんとなく私は、やっぱ体育会系はすげーな、と呆気に取られていたのだが、
慌てて受け取った。
ミキは、舟縁に両手を突くと、舟ががくんと揺れるのも構わず、またいできた。

舟の上に立つと、まず、髪の毛の水を、犬みたいに、ぶるぶるぶるーっと
震わせて払う。
それから 手グシで髪をかきあげながら、ぐーっと胸をそらして、
堂々と肢体を晒した。
髪からまだ水が垂れてきて、長い睫毛に雫を作り、目をしばたかせている。
眉は太く、陰毛はカーリーな剛毛だった。
それから、手のひらで腕や太ももの水を払っている。

とか言っても、
ヌーディストビーチに居るヨーロッパ人みたいな感じではなくて、
日本人の中で優れたものという感じ。
尻とかが白人の様に丸っこくなくて、腰骨がV字状に鉄アレイを置いた感じで、
お尻のほっぺが窪んでいる。
肌の白さも、大理石というよりかは陶器の様な白さで、
イメージとしては崎陽軒のシューマイの醤油さしの「ひょうちゃん」みたいな感じ。
だから、近親相姦的タブーも感じるのだが、
ほとんど鬼畜ののりで、私は、勃起していた。
ペニスはGパンの中で行きどころを失っていて、
早く解放してやらないと折れる可能性もある。
早く取り出して、放出したい。ミキの中に。
私は策略を巡らせた。
足元にあったミキの服の上に、濡れたロープを乗っけたのだ。

一通り水しぶきを払ったミキが「拭くものないのぉ?」と舟の底を見回した。
「なにー、私の服、濡れているじゃない」
「あー。ごめん、間違えて濡らしちゃった。かわりに私のを着て」と
自分のを引っ張る。
「そうしたらヨーコが着るのが無くなっちゃうじゃない」
「いいよ暑いから。でもミキは寒そうだからこれを着て」
言うと、私は、あや飛びみたいに勢いよくTシャツを脱いでミキに放った。
私はノーブラだった。
ミキはシャツを胸にあてて、こっちを見ていた。
「下も貸してあげる」臍をへこめると、Gパンのボタンを外した。そして
ジッパーに手をかけて「でも見たら驚くよ、私のちょっと違うんだ」と言う。
Gパンとパンティーを一気に下ろした。
窮屈さのせいもあって 半勃ち状態だったペニスが、ろくろ首みたいに、
ぐにゃーんと空中に投げ出され、しかしすぐに完全に勃起したのであった。
ミキは微動だにせず、じーっと見ていた。
「ミキのせいでこうなった。どうにかして」と言うと少しにじり寄る。
ミキはじーっと見据えながら中腰になる。
「逃げないで、お願い、化け物じゃなんですから、逃げないで」と更に踏み込む。
しかし、ミキは後ずさる。オールに触れて、がくんと舟が揺れた。
「危ないッ」と私は言った。
ミキは腰を低くしたまま、睨んでいる。
今、湖に飛び込まれたら逃げられる、と直感した。
突然、私は、綱渡りでもするみたいに詰め寄って、
どんどん舳先に追い詰めると、とうとう裸の肩を掴んだ。
ミキは身を固くしてしゃがみこみ、私はミキに抱きついた。
しかし、お互いしゃがんだ状態での抱擁のため、
今一肌が合わさっている感じがしない。
舟底にでも身を横たえてくんずほぐれずしたいのだが、舟底はごつごつしているし、
それだったら岸部に乗り上げてあの砂の上で、
などと湖畔の方をきょろきょろ見ていたら、突然ミキが体を入れ替えてきた。
あッ、一瞬空が見えた、と思ったら、舟底に背中をしこたま打ち付けた。
いてーっ。
その上に、ミキが乗っかってきて、逆袈裟固めの格好で押さえ込まれてしまった。
起き上がろうとしても、水泳で鍛えたでかい背中は微動だにしない。
ミキは押さえ込んだまま、ちんぽを握ってきた。
「すごいじゃない、これ。どうしてこんなものついてんの?」
「知らない」
「前から付いていたの?」
「今朝起きたらそうなっていた」
「なんで?」
「知らないわよ」
「これ、擦ったらぴゅっと出るの?」
「知らない」
「何にも知らないのね。実験してみようか」
言うと、ミキは猛烈な勢いでしごきだした。
反射的に、下半身を硬直させて堪えた。
そして、なんとか体を抜こうと、両手を突っ張って逃れようとするとするのだが、
逆三角形の分厚い背中の肩甲骨をぐりぐりさせて、こちらの胸部を圧迫してくる。
そして、男前の横顔を見せて、こっちの様子を見ながら、さらに激しくしごく。
ほらほらほらほら。
私は、肛門と尿道に力を入れて、絶対に行くものかと頑張っていた。
しかし、それよりも強い痙攣の予感がじんわりと迫ってくる。
あー、もう駄目だ、もう我慢できない。
「イクッ!」
言った瞬間、ドピュッっと精液が放出された。
筋肉の硬直を乗り越えての痙攣なだけに、その強さも激しく、
精液は、水面にまで到達してぽちゃんと音をたてた。
途端に又あの罪悪感が押し寄せてくる。
はぁー、もう駄目だ。死にたい。
私は、そばにあったTシャツで顔を覆った。
「すっごいね」
言うと、ミキは汚れた手を水面に浸した。
「どうしたのよ、これ」
「知らないよ」
「元からこうだったの?」
「だから今朝からだってば。性転換じゃないかと思って」
「そんな馬鹿な」
「だって男子がいなくなってから生えてきたんだから」
元々はカサブタだったのがどんどん大きくなって、
今朝になったらこんなに見事なペニスになっていたのだ、と経緯を説明した。

言うだけ言うと、舳先に移動して、Tシャツだけかぶると、膝を抱えて、
緑の水面を見ていた。
それは私は、例の罪悪感と戦っていたのである。
男はセックスの後、こんな気分なのだろうか、と想像した。
ベッドの隅で女に背を向けてタバコを吸うのは、もう用済みだからではなくて、
この気分と戦っているのだろうう。
でも又溜まってくると、タバコをもみ消して2回戦目を要求する。
結局男にしてみれば、女は居たり居なかったりするのか。竹やぶのエロ本みたいに。
なんか、搾り取られて抜け殻になる感じもする。
他にやる事はないのか。

どん、と舟の中腹で音がした。ハッとして目を上げる。
タンクトップにホットパンツ姿のミキがモリで舟底を突いていた。
「しょんぼりしている場合じゃないよ。まだ漁があるんだから」
「漁?」
「まずズボン履きなよ」
私は、しゃがんだままパンツを履いて、ズボンに脚を突っ込むと、
立ち上がって履いた。
ほーら、とモリを渡される。
先端の30センチぐらいが鉄で出来ていて、亀頭ぐらいの矢じりがついていて、
ずしりと重い。
両手でしっかりと握ると、前後に揺さぶって、気合を入れた。
男にはオトコの武器がある。
そっか。抜け殻にもハンティングがあったのか。
その時、岸辺にヒヨリが現れた。「おーい」波打ち際で手を振っている。
「何やっての? 揉め事?」
「これから魚を捕るところ」
ミキは怒鳴ると、ロープを持ち上げて引っ張り出した。
最初ロープがビーンと張って、それからぐいぐい引っ張ると、
網が狭まるのと同時に舟も引き寄せられて行った。
舟がイケスにくっつく頃、行き場を失った魚が暴れ出した。
私はモリを抱えてイケスを覗いた。
黒い魚の背が群れていた。
「やって」とミキ。
「よっしゃー」
振りかぶる様にモリを持ち上げると、眼下にモリを投げた。
一発で命中して銀色の腹が水の中で暴れ出す。
モリは抜けないまま揺れていた。
手繰り寄せて柄を掴むと、魚があばれて、ブルブル振動が伝わってくる。
なんだ、この手応えは、と私は思う。
猫の首をいじっていたら喉を鳴らした様な。小鳥でも握っている様な。
その振動が自分の心臓にも伝わってくるようではないか。
こりゃあ癖になりそうだ。
両手でしっかりと掴むと、ふんばって引っ張り上げた。
30センチぐらいのニジマスみたいな淡水魚だった。
足で押さえてモリを抜くと、白いペンキの舟底に魚が跳ねて、血が流れ出した。
すぐに魚は跳ねなくなったが、エラは動いていて、中のピンク色のひだひだが見える。
それからエラを閉じて動かなくなった。
ふと岸部を見たらヒヨリが所在無げに立っていた。
「お前もて伝えー」と私は怒鳴った
ヒヨリは、口をおさえつつ、手のひらでノーノーというジェスチャーをする。
「意気地のないやつは放っておこう」とミキに声をかける。
私は、又、イケスを覗くと、黒い背中めがけてモリを突き立てた。
すぐに、ブルブルっという振動が伝わってくる。
しばらくその振動を味わってから引き上げると、一匹目より更に大きなマスだった。
それも足で蹴飛ばして舟の底にうっちゃる。
私は、更に、3匹目、4匹目と、自転車の空気入れで空気を入れるみたいに、
ぱかぱか脚を広げて、メッタ刺しに刺した。
もうアドレナリン出まくりの、釣りキチのおっさんみたいな脳になっていた。
合計5匹を上げたところで、ミキが、もういいと言った。




#1056/1158 ●連載    *** コメント #1055 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:26  (258)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー4
★内容
キャンプ場に帰ると、カマドの横の、大きい石の上で、魚を下ろした。
まず、腸を出して、エラのところにナイフを入れて、さーっと横に引いて半身を取る。
裏返して又さーっと引いて半身を取る。
そうすると、頭と骨だけが残る。
「うまいじゃない」
「ガールスカウトでやっていたから」
しゃがんだまま背後のヒヨリを見ると、一人で芋を煮ているわい。ひひひ
ヒヨリを無視して、ミキを二人で、下ろした魚を棒に刺して、
炉端焼き風にカマドの周りに並べた。
焚き火の火力も、3日目とかになると、炭になった燃えかすが大量にあり、
炭火焼きの様になって、火力が強くて塩梅がいいのだ。
焼けてくると、脂が滲み出してきて、パチパチいった。
「醤油、垂らしてみな」
私は上の方から醤油を垂らした。
ぼわーっと火が上がった。
ウオオオぉー。
「そろそろいいかもしれない。ヨーコ、一口いってみな」
私は一本を取り上げると焼きイカでも食べる感じで、がぶりといった。
「うめー。ぷりぷりだよ」
「どれどれ」言うとミキも食う。「おいしい。サバのみりん漬けじゃない。
塩でやれば塩サバになるかも」と言ってむしゃむしゃ食べる。
ヒヨリを見れば、芋の皮を剥いているではないか。
「ヒヨリもいい加減芋ばかりじゃあ干からびるよ」とミキが言った。
「いいの。放っておいて」と塩を振る。
『フルメタルジャケット』のスナイパーみたいになっちゃっている。
あんなになっちゃったら困るな、と、私は、むしゃむしゃ食った。
しかし、ふとミキを見ると、じーっと焚き火を見詰めていて、瞳に炎が映っている。
もしかして今、イケスでの事を思い出しているんじゃないのか。
私も炎を見詰めた。
「さっきはごめんなさい」私は言った。
「えッ。いいよ。…よくないけど」
「もう二度としないよ」言いつつ、がっくり頭をたれて 自分の股間を見た。
もしかしたら 腹が張るとちんぽも張るかも。
ハッとして、私は魚の串刺しを火の中に放り込んだ。
バーっと火の粉が上がった。
ミキがびっくりしてこっちを見る。
私は足元に転がっているナイフを拾った。
「なにする気」とミキ。
「ちょんぎってやる」私は腹を引っ込めてGパンのボタンに手をかけた。
「やめなよ」
「じゃあ、私にこれがあった方がいいの?」と私は自分の股間を押さえた。
「ぷっ」隣で芋を食っていたヒヨリが鼻で笑った。
「つーか、私にもそのちんちん見せてよ」
ムカつくー。
ヒヨリは更に、「オナベは人差し指が短いって言うじゃん。ちょっと見せてみな」
と言って、人の手首を掴んできた。
「離せよッ」と手を振り払う。
私は思いっ切り睨んだ。
ヒヨリは、意地悪そうな蔑むような目で見ていやがった。
「下山したら医者に診せればいいんだよね」とミキが何故かヒヨリに言った。
「それって婦人科? 泌尿器科?」とヒヨリ。
「性同一性障害の外来」とミキ
「そんなのあるの?」
「あるよ。埼玉医科大学に。性転換手術もやっている」
「へぇー。でもヨーコの場合、もう生えちゃっているんだから、
手術の必要はないんじゃない?」
なんで人の下半身で盛り上がってんだよ。
「無理だね」と私は呟いた。
「え、なにが」とミキ。
「そんな病院に行ってどうこうなる話じゃないんだよ。
ホルモンの問題じゃなくて染色体異常なんだから。
牛島、春田、斉木って、みんなおかしくなって死んでんだから、
私だって順番にそうなるんだよ」
「え?」
「私は斉木から聞いたんだ。
牛島、斉木、春田は
XYY XXY XXYY
で染色体異常で除草されたんだよ。
女子は、ミキ、ヒヨリ、私が
    XXX、XX、X
だから、XXのヒヨリとXXXのミキが生き残るんだよ」
「私もおかしいの?」とミキ。
「そうだよ。でも、XXXなら子供も出来るから生き残るんだよ」
「なーんだ、私だけが正常なんじゃん」とヒヨリが勝ち誇った様に、
プハーみたいな笑みを浮かべた。
ムカつく。
「でも、誰にも相手にされないんじゃあ意味ないよ」と私は言った。
「は?」
「ミキは斉木に襲われたし、私だって、牛島、春田に襲われているんだ。
あんた誰にも襲われていないじゃん」
「それは、そいつらが奇形だから奇形を狙ったんじゃね?」
「ちょっと待って。今、私のこと、奇形って言った?」とミキ。
「言ってないよ。つーかヨーコが私だけが正常だって言ったんじゃん、
でも、正常でも意味ないとか、おかしくない?」
「お前が正常だとかいうのは斉木が言ったことで、
学校はどう思っているかは分かんないよ」
「なに、それ」
「こんな魚を食べさせたり、明日はと畜があるんだから、
そういうのみんな駄目じゃあ、そっちが除草されるかも知れない」
「除草? なにそれ。誰がやんの?」
「そりゃあ男子が除草されたのも、磁気とか何かの影響かも知れないし、
私にオチンチンが生えてきたのも、何かの影響かも知れない。だから私が」
私は目の前にあったナイフを握ると前に差し出した。
「あんたを刺したとしても何かの影響かも知れない」
「ちょっと、なにやってんの」とミキはなだめてきた。
が、ヒヨリはナイフから目を離さないまま腰を浮かせた。
そしてイチローみたいな感じで、じりじりと焚き火の向こうに回り込む。
そしてチラッっと脇を見ると、素早く、転がっているモリを拾った。
「なにやってんのぉー」
「ミキは平和ボケしているのよ」炎の向こうからヒヨリが言う。
「もう3人も死んでいるのよ。何時4人目が死んでもおかしくないじゃない」
自分の台詞で興奮したのか、炎の向こうからいきなりモリで突いてききた。
あぶねっ。
後ずさったら、踵に石がひっかかって、私は尻餅を付いた。
手を付いたところに、ちょうど魚の腸が捨ててあった。
私はそれを鷲掴みにすると、ヒヨリめがけて投げつけた。
「これでもくらえーッ」
顔からフルーツ・オブ・ザ・ルームのTシャツにかけて、べちょべちょっと、
へばり付く。
「ゲーっ!」ヒヨリはモリを落とすとTシャツの前に伸ばして飛び跳ねていたが、
脱ぎ捨てると顔の腸を拭った。
それからモリを掴むとこっちを睨む。
その形相が、血はついているわ、焚き火の炎に照らされるわで、すげー迫力。
しかもあんなに長いモリで突かれたら、こんな短いナイフでは応戦できないと、
今更分かった。
私は、不利と感じた。
だんだんと後ずさると、踵を返して、とりあえず去る。
「どこいくのよ」背後からミキが叫んでいた。

そんなの無視して、だーっと走って行って、湖畔の小道に出る。
そのまま時計回りに、タッタッタッーっと走って、ロッジも通り越して、
更に少し行って、右脇にそれている貝塚に至る坂道に入って行った。
そこを途中まで上ったところで、やっと止まって、キャンプ場の方を見た。
遠くから見ると、焚き火は100円ライターの火みたいに見える。
人の影までは見えないが、追いかけてくる様子はない。
空は既に夕暮れどきで、空の上の方は暗くて紫で、
そこまで焚き火の白い煙が立ち上っていた。
どうしようか、と思った。
途中にロッジが見えるが、あそこに帰ってすっとぼけて寝ていれば、
うやむやになってしまうだろうか。
でも腸までぶっかけちゃったし、なかったことには出来ないな。
それに、走っている間中、Gパンがペニスを圧迫していたせいで、
睾丸からペニスにかけて、鈍い痛みを感じるのだが、それで思ったのだが、
なかったこtになんて根本的に出来ないんだよなぁ。
ふぅー、っとため息を吐くと、踵を返して貝塚の方に顔を向ける。
私は、そっちの方にとぼとぼ歩いて行った。
貝塚の淵まで来ると、下を見下ろした。
むわーんと、シュウマイが腐った様な死臭が、が漂ってくる。
くせっ。
手で鼻を覆って見下ろすと、まず斉木が見えた。
夕べ上から落としたので、でんぐり返しの途中みたいな格好で丸まっている。
その下には牛島。
その隣の、春田がきもい。豚の丸焼きを丸太から下ろした様に、
両手両足を揃えて横になっているのだが、
背中とか顔とかが生ハムでも貼り付けたみたいにただれている。
あそこからこの臭いがしてくると思うと、うぇーっ。
Tシャツの襟を鼻まで引っ張り上げた。
そういえば、斉木が 私と春田はは似ていると言っていたな。
私がターナーで春田がヌーナンで、
ヌーナンが女に起こるとターナーなのだ、と。
見た感じも似ていて、手足が短くて顔がでかくて眉毛が薄くてどんぐり眼で、
つまりキャベツ畑人形みたいな感じで。
あと、ヌーナンの金玉は半分めり込んでいるから、
春田のがそうだったらヌーナン決定、
そして、私の金玉も半分めり込んでいるから、ターナー決定。
でも、待って。
もし春田の金玉がライオンみたいにぶらーんとしていたらどうなるんだろう。
そうだとしても、私は私でターナー決定なのか。
でも、もし春田の金玉がライオンみたいだったら、
そもそも斉木の言っている事が全部滅茶苦茶ってことも言えるかも知れない。
だったら別に私は除草される必要もなく、
埼玉医科大学に行くだけでいいんじゃないのか。
私は貝塚の底を見下ろした。
Tシャツから鼻の先が出た。
ちょっと臭いが、いっちょ確かめに行ってみるか。
ナイフをGパンの尻のポケットに差すと、地面に手を付いて、
後ろ向きで貝塚を降りて行った。
胸のあたりまでは簡単に降りられたが、そっから先は、
つま先を引っ掛ける出っ張りが無かったので、
つま先を擦りつける様にしてずり落ちて行って、やがて、
地面に手を引っ掛けただけの万歳状態になった。
そして、力尽きて手を離すと、ずずずずずーとずべり落ちて行った。
脛はGパンで守られていたが、前腕に幾重もの擦り傷を作った。
いてーっ。
ただの引っかき傷だ、と思ったら、血がぷちぷちとビーズの玉の様に吹き出てきた。
もう私、満身創痍だな。
血を手のひらで擦りながら、春田の亡骸のところに行って、なんとなく見渡す。
春田は、パンツ一丁で、両手首足首をくっつけたまま、向こうを向いていた。
背中など紫に晴れ上がっていて、そこにローソクでも垂らしたみたいに
ぽつぽつと湿疹が出来ている。
花札の桜に、こういう絵柄があったぞ。
私はしゃがみこむと、パンツの後ろに手を掛けて、ずーっと下ろして、
力任せに足首から抜いた。
そして、片足をぐーっと帆掛け舟の様に持ち上げると、ペニスの裏側から観察した。
すると、彼の金玉は…ライオンどころじゃなくて、去勢された家猫の様な、
くるぶしが2つあるような睾丸だった。
そしてそれは私のと同じだ。
眉毛もチェックしてみよう。
後頭部の髪の毛をグッと引っ張ると、顔ががくんと上向きになった。
あご髭の様に湿疹ができているが、顔の上半分は湿疹は無く、
沖縄の豚の顔みたいに、茶色く腫れていた。
我慢してじーっと見ると、ミクロゲンパスタの香りが漂ってくる。
ああ、こいつも格好よくなりたかったのか、と思う。
しかし、全く効果はなかったようで、眉毛が薄いのを通り越して、
窪んでいるので眉の形が分かる、という感じなのだ。
それは私の眉毛と同じ。
ということは、やっぱり彼はヌーナン、私はターナー、と私は納得した。
はー、と、ため息一個。
私は、遺体から離れると、反対側まで行って、ナイフをそこいらに放り投げると、
壁に寄りかかる様に地べたに座った。
ボーッと春田の亡骸の方を眺めていた。するとその近くに鍬鋤が突っ込んである
Gパンが転がっていて、尻のポケットからスマホが覗いていた。
ふと思い出した。あそこには、“エビデンス”なるエロ動画があったなあ。
なんとかいうAV女優が私に似ているとか言っていた。
どんな女だろう。
立ち上がって、そばに行くと、ポケットからスマホを抜き出してきて、
又、元の位置に戻ってきてしゃがむ。
そして再生した。
それは、AV女優が、フェラでごっくんした後、お掃除フェラ、と称して、
2回目3回目の射精をさせるというもので、男優がむずがって、
もう無理、もう無理、と後ずさるのを腰にしがみついて、ちんぽを両手で握って
チューチューアイスでも吸うみたいに吸うものだった。
いいなあ、と単純に思った。
こんな時でも。
つーか、射精なんてキスより簡単なのだ。
小便するよりか面倒でもうんこするより簡単。
私は、ズボンのファスナーをあけて、既に勃起しているちんぽを握った。
でも自分で握っても、さっきミキにやられた様な気持ちよさはない。
他人にやられたいんだよなあ。
つーか、今は舐められたいんだよなぁ。
ふと、自分で舐められないか、と思う。
自分は藤原ひとみに似ているし、自分で舐めたらこのAV男優みたいに、
藤原ひとみに舐められた気分になるのではないか。
オレはそっくりGパンを脱ぐと、ケツの下に敷いて、あぐらをかいた。
前屈みになって吸おうとしたが、全然届かない。
こうすりゃあいいんじゃないか、と、右脚を思いっきり持ち上げると、
アホみたいに舌をのばしてペニスをしゃぶろうと試みた。
そして、どんどん脚を上げると、ヨーガのポーズみたいになって、
舌をベロベロ出しながら自分のちんぽに近づいて行ったら、…がくっと、
脚が首にかかった。
オレはαの様な格好になった。
しかしこの格好になると舐められるのだ。
しばし自分のちんぽを舐めていた。
妙な気持ち。自分のちんぽであって自分のちんぽじゃないような。
抜歯の麻酔の後に、舌の感覚が無いような感じだ。
もしかしたら、お掃除フェラでむず痒いというのはこういう感じかも知れない。
オレはもう、必死に舐めて、首の力だけで自分フェラして発射しようと頑張っていた。
突然ふくらはぎが、つったー、つった、つったぁー。
痛タタタタ。
つったまま、ぐーっとオレの首の後ろを締め付けていく。
痛い、痛い、痛い。
αのオレを、ぐーっと、γの様に締め付けていく。
痛い痛い。
めまいがしてきた、と思ったら、ぼきっと音がして、
目の前が一瞬真っ白になって、そして外れた。
私はごろんと後ろにそっくり返った。
オレンジ色の空が目に入ってきた。
そして、オレンジの空がぐるんぐるん回り出した。
すぐに、魚を吐いた。
これはやばいと思ったがもう動けない。
まだ、オレンジ色の空は見えていた。
すると、貝塚の上に、ミキとヒヨリが現れた。
彼女らはオレンジ色の空に、レンガ色の影になって浮かんでいた。
彼女らに呼び掛けたが、声にはならない。
私は死ぬんじゃないかと思った。
しかし、彼女らの声はまだ聞こえたのであった。
彼女らはこう言っていた。
「もうすぐ ほーそーだよー」




#1057/1158 ●連載    *** コメント #1056 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:27  (172)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー5
★内容
《はい、お疲れー
それでは今日も講義を始めたいと思います。
えー、まず、前回までの復習から。
えー、まず第一回は、人間には過剰と去勢がある、ということを言ったよね。
例えば、血液なら、造血幹細胞からリンパ球が出来るのが過剰であって、
骨髄その他で自分を攻撃してしまう様なリンパ球を阻害するのが去勢である、と。
或いは タンパク質なら、遺伝子からタンパク質が合成されるのが過剰であって、
ゴルジ体で体に合わないタンパク質を阻害するのが去勢である、と。
それで、この過剰というのは、なんか、光合成みたいなものであって、
太陽系的なもの、
一方、去勢というのは、宇宙の磁気が骨髄に宿って行われる、というような、
銀河系的なもの、と言ったよね。
それから第二回目は、
クローン選択説というリンパ球成熟に関する現在の定説があって、
それは 人間はあらかじめひとそろいのクローンを遺伝子の中にもっている、
というもので、
それに対して、実はそうじゃなくて、骨髄とかに宇宙の磁気が宿って、
それで濃淡のあるクローンを作って行くのだ、
というクーロン選択説を言ったんだよね。
それから第三回目は、そういう、クローン選択説なんていうのは、
私に言わせればMADなんだけれども、
なんでそんな仮説を言うのか、というと、
それはイエルネという人が、実験を離れちゃって、
古城で一人妄想するからそうなってしまう、とか言ったんだよね。
実験で絶えずリアルに接していればそんな事にはならないのだが、
実験を離れて非連続が発生した瞬間にMADになる。
そういえば、斉木君もミキと手をつないでいる間は、
ミキにも花も根もあるんだなあ、と思えるが、
手を話した瞬間に脳内ミキが立ち上がってきて、そのミキは、
ウンコも屁もしない空気の精、みたいになっちゃうんだ、とも言ったんだったよね。
以上が前回までの復習。

さて、今日は、悲しい事に、男子に続いて、とうとう女子の犠牲者が出てしまったね。
それは一体何が起こったのか。
男子が居なくなったので、鯛の一種みたいに、性転換が起こったのか。
或いは、アブラムシみたいなものなのか。
アブラムシというのは夏の間にはメスだが秋になるとオスになるんだね。
8月も下旬にさしかかったので、そうなったのか。
いやー、高等生物にそんな事が起こる訳がない。

それじゃあ、ヨーコ君には何が起こったのか。
もしかしたら、ホメオティック突然変異が起きたんじゃないか、とも考えられる。
これは何かと言うと、例えばエドワード・ルイスという人は、
ハエの頭部のHOX遺伝子の突然変異によって、
頭から脚が生えてくる、という奇形を発見したが、
もしかしたらヨーコ君にもHOX遺伝子の突然変異が起こって、
それでペニスが生えてきたんじゃないか。
…ということで、今日はHOXというのについてちょっと喋ってみたいと思う。
それでも最後には又クーロン選択説に関わってくるのだが。

じゃあ、HOXっていうのは何か。
その前に、ヒトって、受精卵から始まって、2つ、4つ、8つ、と分裂して行って、
ある細胞は目に、ある細胞は脚になるでしょう。
同じDNAなのに。
それは、どうしてかというと、ヒトの細胞が分裂して行って、極性…臍の方を植物極、
背中の方と動物極と言うんだが、それがどんどん分裂していって、
どんどん極性が出てきて、

そうすると、頭節、胸節、腹節、と大まかな体節が決まってくる。
そうすると、HOX遺伝子という遺伝子郡が作用して、
頭節では、遺伝子の頭に関する部分だけをONにして、
腹節では遺伝子の腹に関する部分だけをONにする、という事が起こる。

具体的に言うと、脊椎動物だったら4つの染色体上に、
HOX遺伝子群という一群の遺伝子の並びがあって、
つまり、ながーい遺伝子の一部に、HOX遺伝子というのがあって、
で、これも、遺伝子だから、3'側と5'側があるのだけれども、
この遺伝子郡の3'側に位置する部分が作用すると、
ながーい遺伝子全体に関しては頭に関する部分がONになって、
5'側に位置する部分が作用すると、遺伝子全体では尾っぽに関する部分がONになる、
みたいな事が起こる。
実際には、3'側に位置する部分が作用すると、或るタンパク質を生産して、
それが転写因子に影響を与えて、タンパク質合成の時に、
頭部の構造に関する遺伝子だけを活性化させる、という事が起こるのだけれども。

そうすると、
同じ遺伝子でも、頭にあれば、3'側が作用するので、
頭部に関する遺伝子だけが活性化して、目、鼻、口とかが出来る、
胸部にあれば、3'〜5'の真ん中辺が作用するので、
胸部に関する遺伝子だけが活性化して、おっぱいとか腕とかが出来る、
腹部にあれば、5'側が作用するので、腹部に関する遺伝子だけが活性化して、
尻とか脚とかが出来る…という感じになる。

分かる? 同じDNAでも、頭部にあれば、目になったりするんだけれども、
腹部にあれば脚になったりする、と。

まあだいだいHOXというのはそんな感じなんだが。
あと、補足説明というか、このHOX遺伝子群で面白いのは、
人間でも、ハエでも並びが非常に似ていて、
ハエのHOXを壊して人間のを移植しても、作用する、
というぐらい似ているんだよね。
これに関する現在の定説は、共通祖先の名残がHOXに残っているから、
とか言われているのだが。
ただこのことに関して、私は、同じ太陽の影響を受けているんだから、
ヒトでもハエも頭は上にあるんだと考えた方が自然だろうと思うのだが。
ひまわりが太陽を向いているのはお日様を浴びたいからだ、とかいうと、
目的論だ、とか言われそうだが、そう言われてもやっぱりそうだろう。
というか、前から私は、発生の段階では、
太陽系とかそういう過剰なるものが原因している、と言っているのだから、
同じ太陽系にいる生物は、同じHOXの並びをしていても普通なんじゃないの。
わざわざ共通祖先の名残なんて言わなくても。

あと、もう一つ面白いのは、
頭節ではHOXの3'辺りが作用して、
胸節では真ん中へんが作用して、
腹節では5'辺りが作用する、と言ったが、
遺伝子での状態での並びと、それが発現して体になった場合の並びが一致している、
というのは不思議だと思わない? 
この不思議さにピーンとこない? 
だって、細胞の構造を思い出してもらいたい、
細胞があって、核があって、その中にDNAがあって、
その中にHOX遺伝子群があるんだが、
そのHOXの並びと、個体の並びが同じだなんて、
丸で、HOXをよーく見たら、頭、胴、脚が見えた、
ぐらいに不思議なことなんだが。
お前らにピーンとくるかな。
だってその細胞が60兆個集まって一個の人間を作っているのに、
60兆分の1個の遺伝子の並びも、頭、胴、脚の順番になっているんだよ。

このことに関しては、現在の定説っていうのは特になく、謎とされているんだね。
ただ私に言わせれば、
これは、過剰と去勢の去勢の方で説明出来るんじゃないかと思う。
私は、前から、遺伝子自体は太陽系で出来ていても、
遺伝子のコピーとなると、
DNAポリメラーゼの亜鉛酵素が磁力によって活性化なんたら、
ということを言っていたと思うんだが、
今回のHOXが発現するというのも、結局はコピーの段階の事だから、
磁気的に説明出来ると思うんだな。

それはどういう事かというと、
まず、HOXを模式図的に言うと、
3'側から5'側が、頭から尻尾って感じで並んでいるのだから、
これを、自転車のギアみたいな凸型のギアとして考えると、
3’←凸←5’ という様な感じのギアになると思うんだが、
この凸型の回転軸に与えられるエネルギーが強くなるに従って、
どんどん先っぽの小さいギアへとシフトしていく、と考えると、
この回転数を磁力、凸型のでっぱりを電気と考えると、
アンペールの法則の右ネジの法則みたいに考えられるだろう。
回転数、つまりギアを回す力が大きいほど、ギアの先の方まで、電気が到達すると。
そうすると、磁力に関しては、さっきちょっと触れたみたいに、
腹側が植物極、背中側が動物極で、更に背中側が又分裂していって、と、
どんどん極性が、つまり磁場が強くなる訳だから、
そうすると、腹より背中、背中より頭の方が、極性的に、磁力は強いのであるから、
頭のてっぺんでは、磁力的回転力が強いから、
ギアは先端の方に移動している、
つまり、3'末端のHOXがアクティブになっていて、他はスリープ、
という状態になっている。
そうすると、目の位置では、遺伝子の全てが目を作ろうとする、という理屈になる。
分かるかな。
この理屈を上手く使えばips細胞だって磁気的に作れるかも知れないんだぞ。
まぁ、それはいいんだが。
とにかく今日言いたかったのは、HOX遺伝子における太陽系と銀河系の関係でした。
どうだろうか。驚きをもって理解出来たであろうか。
それともカリキュラムもだんだんきつくなってきたので、もうぼーっとしているか。

あと、ヨーコ君に起こったことをちょっと言っておくと、
シビレ湖にきて、環境も変わったので、磁力がHOX遺伝子に与える影響も変わって、
それで、もともとあった染色体異常がアクティブになった、
という事も考えられるかも知れない。
いや、そんなことはないよ。
突然変異というのは遺伝子レベルで突然な訳で、
発現の段階で突然に起こるものでもないので、
別にシビレ湖に来たからどうこうなるってものじゃなくて、
元からあった染色体異常が、徐々に発現していった、ということじゃないのか。
そんな事は最初から分かっていたのに、なんだか、
ヨーコ君に関係あるかのように言って出汁にしちゃった感じだが。

今日はこんなところです。
それでは明日はとうとう最終日ですが、
残りの皆さんは怪我などないように注意してカリキュラムを終わらせて下さい。
なお、最終回の放送は、午後2時から開始しますので、
バッテリーを交換して待っていて下さい。以上。




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