AWC ●楽戦楽勝ごりら男●完結 老人ゲーマーの巻 ワクロー3


        
#3127/3137 空中分解2
★タイトル (AKM     )  93/ 4/22   4: 7  ( 72)
●楽戦楽勝ごりら男●完結 老人ゲーマーの巻 ワクロー3
★内容

 ◆楽戦楽勝ごりら男◆20 老人ゲーマー

 キリストの生誕歴(つまり西暦)2035年12月1日土曜日。
80歳になった僕は、どでかいデパートが主催する『懐古骨董趣味
/電脳遊技展』の会場に陳列している展示品『ブロック崩し』の前
によぼついて立ち尽くしていました。

 こみ上げる懐かしさ。青春時代の興奮。展示品のケースによだれ
をだらだらだらだらしたたらせながら、

 『あふぁふぁ、こりは、こりはああーーー』歯が抜けてしまって
何を言っているのだかさっぱりわからぬ言葉で、じじいの僕は『ブ
ロック崩し』ゲーム機に頬ずりしている。

 コンパニオンのばあさんが、露骨にいやな顔をしながら『展示品
によだれをたらせては困るんだよ』と、冷たく言いはなつ中、懐か
しさを讃えた胸の興奮は治まらなかった。青春の日々、このゲーム
機と対して、1球全面クリアパーフェクトを立て続けに出していた、
反射神経と100円だまの日々。

 的確を誇ったパドル操作を誇っていた右腕もいまやぶるぶる震え、
目もしょぼついて、軽快に動く、玉の移動を示す輝点を追うのがや
っとです。コンパニオンのばあさんに執拗に懇願する僕。

 『なんだってー。これがやってみたいだってー。100円だまが
あるだって〜。じょうだんば、いっとかんねー。この機械は伝説的
電脳ゲームメーカー/タイトーが生み出した、電脳ゲームの始祖と
もいえるゲーム機の骨董品ばい!このくそじじい。あんたがさわれ
る機械じゃないんだよ』

 にべもなく追い払われるのでした。

 そのころ、同じデパートの子供向けのゲームセンターの一角に、
66歳になる知人Rが、今は誰も振り向かなくなってしまったぽん
こつゲーム機。『ストリートファイター2』の前にやってきました。

 若い頃の無理がたたったのか腕の震えが激しい知人R。それでも、
スト2の前に立つと、一瞬の気合いがよみがえるのか。100円だ
まを投入する。この機械の方もゲームコーナーの片隅で40年以上
にわたって息ながらえてきただけに老朽が目立ちます。

 最新鋭マシンが時折派手な電子音を出すたびに、電波干渉を受け
るのか、スト2の画面はよれよれによじれます。コントローラーは、
通算50万人近いゲーマーがいじり回してきたので、手ごたえがな
いほどふにょふにょです。ボタンは6つともカバーがとれていて、
連打すると指の皮につき刺さる。こんなことでは、電撃もローリン
グアタックも繰り出せないでしょう。

 『ありゃー』

 ふにょふにょのコントローラーで手元が狂ったのか、はたまた自
分の腕の震えから選び損なったか。知人Rは最弱の『バイソン』を
選んでしままいました。そうして機械が選択したのは、なんという
皮肉か。ごりら男=ブランカ。

 ラウンドーファイトー。。。。の合成音声も今では張りがありま
せん。
 66歳になった知人Rを空想するのは、このくらいでやめにして
おきましょう。20世紀日本が産んだせつな的な真剣勝負『ストリ
ートファイター』は電脳ゲームの傑作として歴史にのこるでしょう。

 しかし、このゲームを操った町のストリートファイターたちの名
前は残らないかも知れません。誰も記録しないヒーローたち。その
一人が知人Rだったというわけです。

 ちなみに知人Rは、11人抜きが挫折したがために面接に間に合
い、みごとその会社に就職を果たしたそうです。スト2の達人を社
員として迎えるその会社は、なんという幸運でありましょうか。

              (以上完結)





前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 ワクロー3の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE