#1822/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (GKD ) 89/ 9/13 8: 6 ( 25)
『PAPER −(2)』 藤沢守
★内容
翌日、探偵が私のアパートに来た。殺された田沼のことで、顧客名簿に私の
名前が出ていたから話が聞きたいということだった。
スケジュール表は私が持っているから、おそらく私が昨日、田沼の家を訪れ
たことは警察でも知るまい。しかも、探偵ならなおさらのこと。そう思って私
は平然とした顔で探偵に応対した。
玄関で迎えたこの探偵はグレーのTシャッツの上にだぶだぶのコートをはお
り、紳士帽を被った妙な男だった。
探偵は「南原光次郎」と書かれた名刺を私に差し出した。
探偵は最初は型どおりの質問をしていたが、最後に名簿の人物であなたの借
用書がないとニヤリと笑って言った。
意外だった。まさかそんなところを調べてるなんて。
「わかりました。確かに私は昨日、田沼の家に行きました。でも、私が行った
時にはすでに死んでいたんですよ」
探偵は信じていない様子だった。
「そうだ、家政婦が知っていますよ」
と私が言うと、探偵は家政婦などいないと否定した。
「そんなまさか……」
探偵は私を疑いの眼差しで見ていた。
「待って下さい。私は犯人も田沼さんが殺された方法も知っているんですよ」
探偵は黙っていた。
「嘘だと思っているんですか。いいでしょう、証明しますよ。ただし、田沼さ
んの家に行ってからです」