AWC 本の感想>『皇帝と拳銃と』   永山


        
#1627/1729 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  20/11/28  20:51  ( 30)
本の感想>『皇帝と拳銃と』   永山
★内容
・『皇帝と拳銃と』(倉知淳 東京創元社)13/4441
 小説家の男が共作の相方をジョギング中に殺害。自転車によるアリバイを作ったが
(「運命の銀輪」)。大学教授の男は横領をネタに脅迫してきた職員を、構内が工事中
であることを利したトリックで事故死もしくは自殺に見せ掛けて葬る(「皇帝と拳銃
と」)。劇団を主宰の青年が金貸しの叔父から好意で貸してもらったと思っていた金の
返済を急に迫られ、無理ならばおまえの恋人を愛人にすると言われた結果、偶発的に死
に至らしめてしまった。役者でもある恋人にアリバイ工作を頼み、切り抜けようとする
(「恋人たちの汀」)。女性写真家が彫刻家の男を仕事場で自殺したように細工する。
その意図は……(「吊られた男と語らぬ女」)。
 名前に反して死神のような風体の乙姫警部が、犯人の偽装工作にのっそりと迫る倒叙
ミステリ連作短編集。

 評価がやや難しい感じ。刑事コロンボシリーズや古畑任三郎シリーズが人気を博し、
何度もそれらの映像作品を観てきたであろう日本の読者は、倒叙ミステリに対するハー
ドルが自然と高くなるというもの。先行作品に比すと物足りない。
 倒叙ミステリの傑作エピソードに多い、犯人への共感や同情は本作ではほとんど感じ
取れませんでした。「恋人たちの汀」が多少あったかな。このエピソードについては、
色んな要素を詰め込んで、作者がちょっと欲張りすぎたんじゃないかという気がする。
 倒叙ミステリにおいて犯人の用いるトリックはたいしたものでなくても問題ないの
で、ここでは取り上げないとして、逆に倒叙ミステリの肝と呼べる決め手についてはど
うかというと、いささか弱かったと言えそう。切れ味や決定的なロジックかどうかで判
定すると、どうしても先行作品より劣って見えてしまう。
 キャラクターはどうか。誰が見ても死神そのものの乙姫というキャラはユニークで面
白いんですが、それを活かし切れていない印象が強かった。毎回毎回、犯人が乙姫を見
て死神だ……と感じるシーンもくどくて、後半にはうんざりしてくるかも。初対面時に
驚く以外に、別の見せ場があったらよかったのに。
 でも、読んで損をしたと言うほどではなく、平均的よちょっぴり上の倒叙ミステリっ
てところでしょうか。「吊られた男と語らぬ女」の変化球に救われた部分もあり。

 ではでは。





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