AWC こんがらがりそうでこんがらがらない   永山


        
#690/3052 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  18/12/14  20:36  ( 38)
こんがらがりそうでこんがらがらない   永山
★内容
 WOWOWで放送の映画「祈りの幕が下りる時」を録画視聴。ネタバレ注意です。東
野圭吾による加賀恭一郎シリーズの同名小説が原作で、二〇一八年一月二十七日公開。
ん? 公開から十ヶ月強でテレビ放送されるのは珍しいような。
 滋賀県の女性が東京の安アパートで、他殺体になって見付かる。現場の部屋の住人は
男性で、行方不明になっている。被害女性の押谷直子は急に上京を決めたらしく、その
少し前に養護施設を訪れた折、施設に居座っている年老いた女性が同級生・浅居の母親
ではないかと声を掛けてちょっとしたトラブルになっていた。そのことから、押谷は東
京で女優をやり脚本家・演出家として成功した浅居博美を訪ねたのではないかと警察は
目星を付け、廣見に話を聞く。博美は押谷と会ったことをあっさり認め、特段何事もな
く別れたと答える。博美にはアリバイが成立したため、押谷殺しの犯人ではあり得な
い。
 加賀は、押谷殺しの捜査には携わっていなかったが、従弟の松宮が加わっていたた
め、簡単な情報のやり取りはあった。その過程で、犯行現場にあったカレンダーの各月
に、日本橋にある橋の名前を書き込んであると聞かされ、目を見張る。というのも、
昔、加賀の家を出て行った母親が病死したとの報を受け、受け取った遺品の中に、同じ
書き込みのあるカレンダーがあったのだ。筆跡は母のものではなかったため、晩年の母
が付き合っていた男性・綿部俊一が書いたものではないかと考え、ずっと綿部俊一を探
していたのだった。
――中盤に差し掛かる手前ぐらいまでの粗筋は以上。加賀自身の生い立ちにも関わる事
件を扱った、シリーズの掉尾を飾る作品という位置付けみたいです。力が入っていま
す。
 少し前のドラマ「サイレントヴォイス」への感想と似た感じになりますけど、実にシ
ンプルで古典的なアイディアを効果的に使っています。観る者にすぐにそれとは悟らせ
ないよう、何段階も踏む必要がある、込み入ったストーリー展開になっていますが、映
画の序盤ではやたらとテロップが出て、状況を説明してくれるので分かり易い(ていう
か、いくら何でも観る人の理解力を軽く見積もりすぎと思ったのほど馬鹿丁寧)。
 一箇所、これミスディレクションのつもりなのかな、違うのかなと思ったのが、押谷
直子が東京へ行く前に、同僚に漏らしていた言葉「贅沢しに行く」。これを聞いて、私
は最初、「ああ、お決まりの脅迫してお金を手に入れるつもりなんだな」と感じたんで
すけど、違った。うまくミスリードされてしまったんですが、では押谷が言っていた贅
沢とは何だったのか。東京に行って、それなりのホテルに泊まって、人気の舞台を観劇
することが贅沢、と言えばそれまでなんでしょうけど、押谷は飽くまでも旧友に会うの
が主目的なんだから、贅沢とは違う気がする。※個人の感覚の問題です(笑)。
 何にしても、シンプルで古典的なアイディアを使っているとは言え、謎解きには趣向
を凝らしており、加賀が加賀であるからこそ真相に至るきっかけを掴めるというのは、
よく考えられていると感心しました。

 ではでは。





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