AWC プロレス好きになった素   永山


        
#630/655 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  18/10/20  21:31  ( 59)
プロレス好きになった素   永山
★内容
 米国の元プロレスラー、ディック・スレーターが心臓病で死去。六十七歳。合掌。
 私、小学生中学年ぐらいからプロレス中継を観始め、最初は当然ながら日本人選手を
応援する訳です。が、初めて応援した外国人レスラーの一人が、このスレーター。シ
リーズは全日本プロレスの第八回チャンピオンカーニバル。ジャイアント馬場、ジャン
ボ鶴田、アブドーラ・ザ・ブッチャー、テリー・ファンクら内外十三選手が総当たり
リーグ戦で優勝を争う大会でした。そもそもリーグ戦自体観るのが初めてだったけど、
この大会は悪役レスラー三名からなるブッチャー軍団、ファンク一門ら四名のテリー軍
団、そして日本勢の全日本軍団という三すくみの構図が打ち出され、子供にも分かり易
く、興味を惹き易かった。テリー軍団は正義の外国人で、全日本寄り。スレーターは右
利きのテリーと言われることもあったように、テリーそっくりのファイトスタイルで当
然テリー軍団の一員。優勝候補は優勝経験のある馬場とブッチャー、元世界王者のテ
リーが三すくみの本命で、準優勝二度の鶴田がそれに次ぐ対抗馬と目されていたはず。
 蓋を開けてみると、開幕戦から馬場がブッチャー軍団の下っ端マスクマン、ミステリ
アス・アサシンにリングアウト負けを食らう波乱のスタート。スレーターはブッチャー
を追い込むも反則負け。その後星取りは、ブッチャーが割ってギザギザになったビール
瓶で、テリーの胸を突き刺すという凄惨な試合により根深い因縁を一層強める流れを経
て、テリーは馬場相手に押し気味だったのをブッチャーの乱入に気を取られてリングア
ウト負け、同日ブッチャーは鶴田をエルボードロップで仕留めようとロープに走ったと
ころを、リングサイドに来たテリーに文字通り足をすくわれて転倒、逆転フォール負
け。さらにリーグ戦とは無関係に割り込み参戦してきたザ・シーク(ブッチャーやテ
リーと因縁深い)が無差別乱入を繰り返した結果、スレーターが鶴田、馬場を連続撃破
する金星。最終的にテリー、ブッチャーの二名を一点差(馬場とは二点差)で上回った
鶴田とスレーターが決勝戦進出。
 だが決勝の一週間ほど前に、スレーターはブッチャーとの乱闘中に胡椒を投げつけら
れ、右目を傷めるアクシデント。決勝当日も包帯を巻いて片目の状態でリングに上がっ
た。試合は一進一退だったが、スレーターは片目の影響で距離感が掴めず、最後もコー
ナーポストに誤爆してふらついたところを、鶴田の原爆固めに切って落とされフィニッ
シュ。若い二人が争い、鶴田が初優勝を遂げるという新時代の幕開けを思わせる結末で
した。……実際にはこのあとも馬場がエースの時代は長く続くのですが。今考えると、
対等な格の馬場、テリー、ブッチャーの誰かを優勝させると他の二人と差を付けること
になるので避けて共倒れにし、ここらでぼちぼち鶴田にも優勝させておこうかとの段取
りで、相手には同世代のライバルであるスレーターが選ばれたといったところでしょ
う。
 試合展開も今のすれた目で見ると、フィニッシュシーンではスレーターが誤爆のあ
と、鶴田に投げられるのを待っている感じがもろに出ている等、名勝負とは呼びづら
い、せいぜい好勝負レベルの試合でしたが、プロレスを観始めて間もない子供心には印
象に残りました。特に、“悪者のブッチャーのせいで目に怪我を負っていなかったら、
スレーターが勝っていたかも”と強く思ったもんです。
 人気がさらに上昇したスレーターは年末のタッグリーグにも来日、次期世界王者の一
人とされていたこともあり、それなりにいい扱いを受けました。そして翌年の第九回チ
ャンピオンカーニバルに再びエントリー、今度こそ優勝をと意気込んでいたが、来日を
前に交通事故に遭って欠場。約三ヶ月遅れで別のシリーズに参加するも事故の後遺症再
発により途中帰国(ちなみにスレーター途中帰国のおかげでビル・ロビンソンのパート
ナー枠が空き、そこに立候補した天龍源一郎が海外再々々遠征前の自棄のやんぱちファ
イトでプロレス開眼、浮上のきっかけを掴む)。
 その後、交通事故の後遺症のせいなのか次期世界王者レースから脱落、日本での扱い
も徐々に悪くなり、新日本から全日本に転出してきた長州力に喧嘩ファイトを仕掛けた
ことでしばらく干されてしまう。長州が全日本離脱後にスレーターはまた来日するよう
になりますが、ライバルだった鶴田や天龍の後塵を拝し、負けこそ少ないものの中堅外
人に埋没。徐々にフェードアウトし、背骨の負傷が原因で引退。次に名前を聞いたの
は、交際女性をナイフで刺して逮捕されたというニュース(殺人未遂と当初報じられま
したが、保護観察処分で済んだところをみると痛み止めのための薬物影響下での傷害扱
いが正しい模様)。
 世界王者をも狙える位置にいたのが、交通事故のせいで転がり落ち、波乱の人生を送
った名レスラー。燻っていた天龍がスレーター欠場を端緒に、最後にはミスタープロレ
スと称される存在になったのは、まるで運が移ったかのようで、何とも言えぬものがあ
ります。

 ではでは。





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