AWC 本の感想>『碆霊の如き祀るもの』   永山


        
#629/655 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  18/10/19  19:52  ( 35)
本の感想>『碆霊の如き祀るもの』   永山
★内容
・『碆霊の如き祀るもの』(三津田信三 原書房)18/5562
 怪異蒐集家にして作家の刀城言耶が担当編集者の祖父江偲及び大垣秀継とともに訪れ
たのは、海と断崖によって閉ざされた集落。そこには四つの怪談が伝わっており、しか
も一つは現在進行形であるという。足掛け二日を要し、苦労の末に現地に辿り着いた一
行。休養を取った翌朝、早速一つ目の怪談の地である竹林宮へ、土地の所有者である宮
司の案内で向かう。竹林宮はその名の通り、竹が極度に密集した一帯で、中央には洞が
あるのだが、そこに至るまでが迷路のようになっている。蜘蛛の巣をかき分け、蛇に注
意を払いながら進んでようやく中央に行き着くと、そこには餓死したと思しき男の遺体
が。刀城らより一足先に乗り込んでいた悪評高き民俗学者・及位廉也だった。及位は身
体の自由を奪われていた訳でもないのに、迷路を戻ろうともせずに何故飢え死にしたの
か? その状況は竹林宮の怪談として伝わる話を彷彿とさせた。
 これ以後も、怪談をなぞるかのような不審死が相次ぐ。他に誰も出入りしていない物
見櫓からの墜落、砂地に足跡のない状況下で銛で刺された上に撲殺された男、巨大な閂
の掛かった納屋での首吊り……。そして事件全体に影を落とす碆霊とは?
 ホラーミステリーの名手が贈る長編推理。

 普通に面白いという表現は、こういうときに使うのがいいのかもしれない。ホラーの
看板を付けているけれど、普通にミステリとしても面白い。
 第一章で、四つの怪談が綴られているんですけれど、これが結構長く感じます。退屈
ではないし、ホラーらしく怖いんですが、とにかく長い。作品の構成上、途中途中で一
話ずつ挟むという形を取れないのは分かりますが、ちょっと工夫が欲しかったところ。
ミステリの部分を匂わせるだけでも、だいぶ違ったのではないかしらん。
 そこを乗り切れば、あとは一気でした。事件が起きてからはなお加速した感じでした
が、それ以前もレギュラーキャラクターらの軽妙なやり取りもあって、すいすい読み進
められます。ただ、あまりに軽妙で、怖さがどこかへ行ってしまった感がなきにしもあ
らず。本作の作風なら、もう少し怖くなるよう、重々しさがあった方がよかったかも。
何て言うのか、書きっぷり?が二時間サスペンスの軽さに通じているような気がして、
空回りというかずれというか、とにかく勿体ない。
 最終盤、探偵役の言城が推理を語り出す章は圧巻。伏線の回数が凄まじい。そして真
と偽の解答が入り乱れる辺り、多重解決を思わせる趣向でよく考えられており、感心さ
せられました。
 そして締め括りの終章。ここで再びホラーの世界に引き戻すやり口は、定番ながらも
事前に暗示がされていることもあって、うまさを感じます。よくできています。

 ではでは。





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